第1章 第2話「いきなりですが温泉旅行に行きます。」
──白い世界の夢が終わり目が覚めるともう朝だった。
とりあえずあの夢の話は誰にもしない。心の中にそう決めて寝室を後にして庭に出向いた。
リペアはいつも朝食は庭にある白く小さめの丸テーブルとイスに腰掛けてゆっくりと食べる。
外に出るとリペアは朝食の準備を俺の分までしてくれていた、リペアは俺の存在に気づく。
「あ、しーゃんおはー」
眠そうに言った、大きなあくびもしていたのでよっぽど眠たいのだろう。
「なんだ眠そうじゃねーか何かしてたのか?」
「うん、少し調べ物をね」
「何調べてたんだ?」
「それはちょっとね、こっちの事情ってのがあるから言えないのよ」
苦い顔もしていたのでこれ以上は追求しなかった。
──とりあえず朝食を食べて学校に向かう準備をしていた。あいにく教科書とかは要らないので準備と言えども持つものはリペアに作ってもらった昼飯と頼まれていたセイクリッドウォーターだけだ。
リペアと少し喋りそろそろ時間だから帰ると伝えて帰路に向かった。
帰路はとてもスムーズだった、むしろおかしいと思うくらい森の中は静かな様子だった。これなら夜中にあった盗賊達も居ないだろうと思う。
それにしても静かだ元々あまり猛獣の類いは出ない森ではあるが鳥の1匹も飛んでいないと来た、森の中は風により木が擦れ合う音しかしない。
安直ではあるが俺はスムーズに帰れるとラッキーにしか思っていなかった。
何事も無く森を出た、少し平野を歩けば王都に着く、平野に行けば何人か荷物を抱えた商人や魔獣退治にでも行くのだろう王国親衛隊の兵士達が動きにくそうな鎧を着て腰に剣を携え俺が行っていた森とは逆の森に行った。
王都に着けばいつも通り、いやいつも以上に賑わっていた。
今日は王都では祭りがある。年に1度の大きな祭りで王都誕生を祝う祭りである、そのため観光客たちがいっぱい来て、まるで道は満員電車に乗っているかのようである。
朝っぱらって程でもないがこんな時間から帰るやつなんて俺以外いなかったからすぐに帰れた。
学校につく頃には3時間目が終わっていた。4時間目の半ばであったので俺も少々腹が減ってきた、祭りで色々食べ物を買っていたので屋上で食べようと屋上に向かった。
屋上は俺以外誰もいなかった⋯⋯俺以外にサボりが3人いる、うんあいつらだ。
「お!やっと志龍帰ってきたぜ!遅かったなー」
この嫌ほどうるさい声の主はこの世で俺が知っている中でただ1人だけだ。
「うるせーハル、おめーが言えた立場でもないだろ」
大きい笑い声をあげた。
「それもそーだな!」
こいつの名は桐太刀晴人、通称ハル。身長は166と平均くらいである本人はもっと欲しいと牛乳をいつも飲んでいるが一向に伸びない、俺としてはカルシウムを取っても背は伸びないと言ってあげたいがなんか言いたくない。
晴人は剣使いで剣術は化物だ、加護も化物だがそれはまた話そう。
「あんたどっか寄り道してたでしょ、はぁ全くもうサボり魔のくせに生意気よ」
目を細めてため息を付きながら言ったのは美穂だ説明は省こう。
世界でも類を見ない理不尽な罵倒に心が折れそうです。
「いいじゃないのですよー、時間にルーズなのは誰にだってあることなのですよー、でも遅すぎなのですよー」
このとてつもなく緩んだ声とのほほーんとした笑顔が特徴のエルフ、名前はレプリカ・プレア、加護は持ち合わせていない加護なしであるが戦闘能力は極めて優秀。
然し兎に角曲がったことが嫌いで罪という言葉に過剰反応してしまう癖がある。
主には魔法をがんがん使ってくる脳筋タイプであるがその魔法はとても強力で厄介だ。あと隠し技も持ち合わせている。
この3人は小学校の時からの仲でハルとプレアは残り2人の魔導騎士団、そうこの4人がこの学園の魔導騎士団だ。
それにしても3人が3人俺のことを馬鹿にしてきた、特に真ん中のやつおい酷いぞ人を罵倒することが得意なドS幼なじみ。
まあ俺も悪いから買ってきたものの袋を開ける。
「わりーわりー祭りだから少し混んでたんだよ、ほら土産あるからさ」
3人とも物で釣るなと言っていたが目を子供のようにキラキラ輝かせていたので説得力は皆無に等しいものだった。
皆に串焼き1本と美穂にはセイクリッドウォーターを渡し俺も屋台で買った串焼きを食べた。
そういえば何で3人は屋上にいるのだろう、そう疑問に思いハルに聞く。
「そーいやハル、何でお前ら屋上に居るんだ?美穂はともかくプレアとハルは何でいるんだ?」
「俺とプレアは美穂に呼ばれただけだよまだ理由は聞いてないんだよなー」
串焼きを食べながら答えてくれた。
「そーなのか、んじゃ美穂何でなんだ?」
よくぞ聞いてくれましたと言わんばかりの笑顔を見せた⋯⋯可愛い。
「ふふーんよくぞ聞いてくれました!実はねこの学園に来てもう2ヶ月が経ちました、それでこれを見て!」
一つのチラシを見せてきた、そこには水龍都市ウォータースペルンの温泉旅行と言う文字の書かれたチラシだった。
ふむ温泉とは興味があるな、あの暖かい湯に浸かっているだけでなぜ人はあんなに幸せなのか興味がある。
かく言う俺も温泉は大好きだからな。
でもどうしてこの時期に温泉のチラシを、俺は疑問に思ったので
「このチラシがどうかしたのか?」
呆れた顔をされた。
「んなもん決まってるじゃない、温泉旅行よ!」
「⋯⋯は? 頭おかしいのか?」
「少なくともあんたよりはましよ」
「ひっでぇ⋯⋯」
軽い罵倒は置いておく。
いや何でこのタイミングで温泉旅行が出てくるのか俺の頭の中は?がいっぱい浮かんでいた。
「⋯⋯理由を説明してもらおうか」
「まああなたのその緩んだ頭じゃ理解が難しいかもね、簡単に言えば、学園長が気休めにと1週間の休暇を与えてくれたのと同時に、都市付近の森の魔術結界の調査もして欲しいとの事だよ」
なるほどと納得した、だが最初の罵倒は納得いかないぞ。
魔導騎士団にはこういう仕事も任されることが多い、遠出には問題は無い慣れもあるからな。
だが調査の場所が森であることが少し気になった、朝の件があるからであろう、そしてウォータースペルンの付近の森は魔法結界も安定していると聞いたから妙に感じた。
魔術結界とは近くにいる生物、無機物問わずに感知できる簡単に言えばセンサーのようなものだ。
この結界の管理は都市の森の管理者が管理している。
森というのはとても大きい、結界は森の周りに結界石という物を置きそれを管理者と繋ぐというものだが、1つデメリットがある。
結界の問題部分は管理者でも分からない、これがどういうことか、簡単だ広い森の周りにある1つの結界石を見つけるというものだ、これはもう砂漠に落ちた針を探すとまではいかないがそれ位の労力はかかる。これは実にだるいものだ。
俺ははぁとため息をついて、
「それでいつ出発なんだ?」
「ふふーんいつだと思う?」
「⋯⋯⋯⋯再来週くらい?」
「ぶっぶーはっずれー正解は3日後!」
「「「3日後?!」」」
みんな一斉にそう言った。それはそうだろう3日後なんてあまりに早すぎるし通達が遅すぎる。
するプレアが
「3日後かーちょっと通達遅いのですよー」
相変わらずののんびり口調で言った。
「ごめんねーでも私も聞いたの1週間前くらいだからその時はびっくりしたよー」
返すとプレアも納得したみたいだ。
「学園長もルーズすぎなのですよー」
苦笑いしながら言った、俺も全くの同意見だった。
「それで準備物は?」
「まあ普通に1週間の旅行だから1週間分の着替えと、あ、あと魔導服は持ってきてね、私たちって分からなくなるから、んー後は各自で欲しい物を持ってきたらいいよー」
まあそんなものだろうと思っていた、でも1週間分の着替えかー⋯⋯重そうだな。
昼も終わりもう夕刻に差しかかる時間になった、日ももう落ちにかかり、とても熟した柿のように赤くなっていた。
──少し図書館で水龍都市について調べておきたいことがあったので調べていた。この学園の図書館は馬鹿みたいにでかいので少し苦労した。
久しぶりとはいえども1日ぶりに帰宅をした、だがここは俺の家では無い。
「あ、やっと帰ってきたのね。遅かったじゃないこののろま」
⋯⋯うん、何で俺が罵倒されたかの理由は気にしないでおこう。それよりも声の主だ、まあこの罵倒で分かるだろうが美穂だ。
そうここは美穂の家だ。
──13年前、雨の日だった、俺は1人でぽつんと傘も持たずにその家の前に立っていた。
家の家主である美穂の父親が俺の存在に気づき家の中に入れてくれた。
今思えば不気味だろう、自分の名前は知っているが、父母を知らずどこから来たのかも分からない何でいたのかも分からない、そんな奴を家の中に入れたのだから。
養護施設にでも入れようかと美穂の父母が話していると、ロングの黒髪でいかにもお姉様タイプの女の子、そう美穂が
「あなた名前なんて言うの?」
「⋯⋯⋯⋯みつき しりゅう⋯⋯」
「そう! 私はなつき みほ! 今日から家族ね! よろしく!」
などと言う意味のわからないことを言い出すから父母は大混乱、でも俺は嬉しかった、名前以外何も知らない自分を家族と一緒にしてくれて。
感謝している、いつもこの家族には、特に美穂あいつにはいっつも馬鹿にされるが返しきれない恩がある、いつでも感謝している。
俺が自室でベットで寝転んでいるとドアがノックされた音が聞こえた。
「⋯⋯⋯⋯志龍⋯⋯」
⋯⋯声の主は美穂だ。
だが美穂はいつに無く真剣で少し弱々しい声で俺を呼んだ、いやいつも通りだ。
驚くだろ? でもこれが彼女にとっての「素」なのだから。
「なんだ?相談事でもあるのか?」
美穂は頷いた。
俺はベットの上で座り、美穂も隣に座った。
「今回の件、みんな無事に帰ってこれるかしら⋯⋯」
美穂は弱々しく言った。
これが彼女だ、いつもはリーダーシップをとってとても明るくて友達の多い少女だ。
でも本当は、いつもおどおどしていて、何事にも不安を感じている、自分を過小評価し過ぎている、簡単に言えば、菜月美穂はとても臆病なのだ。
「不安なのか」
「うん⋯⋯森が安定しない時は何かしら良くないことが起きるの、私、志龍を失いたくないの、もう誰も失いたくないの⋯⋯お父さんやお母さんのように」
⋯⋯1つ前の訂正をしよう、家族には感謝している、だが、その感謝している家族ももう美穂以外誰もいないのだ。
5年前、夜の出来事だ、美穂の両親は結婚記念日ということで2人でレストランに行った。
⋯⋯だが行ったっきり、2度と俺達の前にその優しい笑顔を見せることが出来なくなった。
そのホテルはある犯罪集団のテロの被害に会いそのレストランにいた全員が惨殺された。
未だ犯人は捕まっておらず、その犯罪組織は世界に名を轟かせるものになった。
その頃からだろう美穂も元は明るい少女だったのが、今のような性格になってしまった。
それともう1つ変わったのが強さを求めるようになった、自分の強くなって仇討ちと言っているが、俺を守りたいからだろう。
──俺も強さを欲する、美穂を守るためだ、あいつは臆病だ、俺がいなかったら何も出来ない、昨日も意思疎通の中では強がっていたが、心中不安だったのだろう、俺は美穂を守る、そう決めて強さを欲している。
だから俺は彼女の「素」の前では馬鹿を演じよう。
「安心しろ、俺はそう簡単に居なくなったりしない、何てったって俺だからな!」
根拠も何も無い発言だった。それでも、彼女の心を勇気づけるには十分だったみたいだ。
さっきまで瞼に涙を浮かべていたのが無くなり、強く、嬉しそうなありったけの笑顔を見せてくれた。
「うん!」
この一言だけで俺は明日も頑張れる。
人はなぜ大切な人を命をかけて守ろうとするのか、その答えは俺は単純だと思う、その人の何かを守りたいからだろう、俺にとってそれはこの笑顔だ。
臆病で自分のことを常に過小評価している彼女が持っている、この安心した様な笑顔、俺にとってこの笑顔は世界で1番価値のあるもとだと思う。
美穂も安心したようで、今日は一緒に寝ることになった。
──さて皆さんにクイズでも出そうか、俺の隣にはとてつもなく可愛い幼なじみが今います、今まで何回、いや何百回と一緒に寝たことがある、さてここからが本題だ、俺は童貞であるが丸かバツか!
⋯⋯タイムアップだ。
正解は丸だ、そう俺はこんなにも可愛い幼なじみが隣で何百回も寝ていて、少なくともチャンスはあったはずだろう⋯⋯だが未だに俺は童貞だ、何故か考えてみた、考えるのが苦手な俺でもすぐに答えにたどり着いた。
そう俺はチキンなのだ!ああ筋金入りのチキンだ!ほぼ家族のような関係でもう学園の1部では夫婦とも呼ばれているくらいだ、なのに!キスすらしたことが無いのだ。
どこかで童貞が許されるのは小学生までというセリフを聞いたことがある、これに俺を照らし合わせてみよう、どうだ自分が惨めになってきたよ。
でも今日なら!今日ならキスくらいは行けそうだ!美穂も寝ているし、今日こそは!
と思い俺は美穂の方に向いた。
キスは辞めた、寝ている時にも不安な顔をこいつはしている。
よほど不安なんだろう、俺の左手を両手でずっと強く握っているのだから。
俺はさっきまで考えていたことがあまりにも馬鹿みたいで恥ずかしくなった、俺は美穂の方を向いてもう片方の手で頭を優しく撫でてあげると、表情が少し笑顔になった。
俺ももう寝ようと考え瞼をゆっくり閉じた。
朝起きようとすると体が重い、疲れているのかと思ったが、これは物理的に重い。
なぜ重いか、答えは単純だった、俺の耳元でスースーと寝息を立てている美穂だ。
しかし実にいいものだ、俺が仰向けで寝ているから美穂は俺の上でうつ伏せの状態であり、彼女の胸部がダイナミックに俺の胸元付近に当たっている、柔らかく優しい感触だ、実に素晴らしい。
そういうのも美穂は結構育ってる方だいや確実に他人より大きい、学園内バスト選手権か何かやってみたら2位にはなるだろう。
あ、ちなみに1位はプレアだあいつはもう規格外だ。
起こしてやろうと思ったが生憎ら気持ちよさそうに寝ているものだからもう少し寝ていても大丈夫だろう、今日は土曜日、学校は休みだし。
しばらくして俺も寝ていたのだろう、2度寝して起きてみたら美穂と目が合った。
「おはよう」
顔を赤らめた。
「お、おおはよう!」
すぐさま俺から離れてベットから落ちて頭をいたそうに抑えていた。
大丈夫かと聞こうとしたがだいぶん興奮しているみたいなのでこれはそっとして置かないとこちらにも被害が来ると思い手を差し出して立たせるだけはした。
「あ、ありがとうね!」
「どういたしまして」
また顔を赤らめて朝ごはん作ってくる!と大きな声で言っていたが美穂⋯⋯もう12時だ。
昼下がり、俺と美穂は旅行用の服や雑貨が欲しかったので近くの大型ショッピングセンターに買いに行き今は少し疲れたのでチェーン店の喫茶店で休憩している。
「そーいえば志龍、あなた全国模試どうだったの?」
聞かれたのでため息を付きながら
「筆記、実技共に全国1位」
「あーあやっぱそーよね私今回も全部2位だったからねー」
そ、つまるところ俺は天才なんだ、厨二病なんかではなくただただ単に天才なのであった。
全国模試、筆記実技共に1位なんて前代未聞なことだった、まあ2位もそうだが。
今俺の知識の量は、昔いた知識の賢者と同等であろう、いやそれ以上に持っている可能性もある。
何故これくらい知識を入れようと思ったのか、簡単だ、俺は今、無いものを探そうとしているからだ。
昔考えた、無いものを探すにはどうしたらいいのか、簡単に答えが出てきた、それはあるものをすべて探し尽くせばいいのだろうと。
そう考えたその日から俺は必死にあるものを手に入れようとしたその結果、全国1位と言う成績をずっと修められた。
だがそれがどうしたと言いたい、無いものを探すためにあるものを探しまくった、リペアに頼んで大図書堂まで探した、だが無かった、最近になって諦めなんかも出てしまったのかもしれないあんな夢まで見てしまったのだからな。
もう1つ、実技に関しては、これはただ単に才能なのだろう、こうやって自分で言うのもなんなのだがな、
例えばそう魔力総量、これは生まれながら決まっている、だが生まれ時はそこまで多くない、成長期と同じ頃にだんだん増えていくもの、言わば身長みたいなものだ。
そして第1成長期が終わる頃に魔力総量の増加も終わり、それがその人の魔力総量になる。
まあ単純にいえば成長と共に増えていくものだ。
魔力総量を確かめる方法はある、方法は簡単だ、自分のが知りたかったら自分の右手の人差し指を自分の額に乗せ、一言。
「ガルゲンよ我に我の力を見せたまへ」
ガルゲンとは紀元前にこの方法を見つけた人、魔力総量を見る時は彼の名を言うことが暗黙のルールとして決まっている。
先ほどの1文を言うと、主系統に差はあるが1つ景色が見える。
火系統であれば大地燃え上がる炎の世界
氷系統であれば全てが凍っている氷の世界
風系統であれば暴風吹き荒れる風の世界
地であれば地割る大地の世界
闇であればブラックホールのような暗黒の世界
光であれば光に包まれた光の世界
が見える、一般的な第1成長期が終わった人であれば直径10m程の小さな球体をしている、これが魔力総量のイメージというやつだ。
そしてその世界では暑さも感じない、風の暴風も、氷の凍てつく寒さも、何も感じない。
俺は1度やってみた、主が氷だったので氷の大地が広がっていた、永遠に永遠に続く様に広く大きいように思えた、いや実際大きかった、言いようのないくらいに俺の魔力総量を表したものは大きかった。
10mの球体、いや太陽などの天体も比にならない、いや出来ない位の大きさで当時は宇宙の果て位の大きさがあるんじゃないかと思ったし、この宇宙では表しきれないものかもしれないと思った時もあった。
それ位大きいということは魔力総量も化け物といえる。
あ、ちなみに魔力を感じる魔力感知と言う魔術もある。
魔力は使うと回復するものだが、回復にも個人差はあるし、使い果たすと歩けなくなるし体が動かなくなる。それが戦闘であればもう終わりだろう。
それ位魔力は人の体と密接な関係があるものだ。
さっきと同じ方法で他人の魔力総量も見ることは出来る、美穂は俺よりは余裕で少ないがそれでも化け物じみた量を持っている。
魔力総量や知識では勝っているが心の芯の強さというか強欲さは俺も美穂には負ける。
そう思っているとコーヒーは無くなり喫茶店から外に出た。
買い物も順調に終わり俺は美穂の趣味の服を買った、自分で服を選ぶと大変なことになるので美穂に任せている⋯⋯見習わなければな。
買い物が終わり家に帰るとご飯を食べた、美穂はビーフシチューが得意でよく作ってくれる、味も美味しいし飽きない、少しずつ味を変えているのだろう。
ご飯を食べ終わったら、森の調査でもしかしたら戦闘が起こる可能性が少なからず否定出来ないので武器の手入れをした。
俺は撥の手入れをしていた、手入れと言ってもホコリなどがないか布で拭くだけだ。
美穂も隣で弓の手入れをしていた、これは美穂が祖父から貰った弓だそうで美穂の火系統とも相性がいい。
出発前日は何もせず2人でオンラインゲームに没頭していた。
こう見えて美穂はネットでガンゲーの死神と呼ばれている、本人に言うとキレられるので禁句だ。
出発日、朝は早かったが誰も遅れなかった、出発時間になったのでみんなでゲートに行くとハルが子供じみたにやけ顔を浮かべた。
「志龍だんちょーなんか一言気合はいるの頼むわ」
俺がはぁ? って顔をしてるとプレアと美穂が「そーだそーだなんか頼むよー」と言った、こいつらマジでふざけんなって思ったが、仕方がなかったので。
「あー全団員に次ぐ、 この1ヶ月の疲れを癒す目的がこの旅行の目的だ、仮に森の調査で戦闘になったとしてもあまり無理はするな、ゆっくりと旅行を楽しもう!」
「さーて、これより水龍都市スペルンの7泊8日旅行開始だ!」
──数日後俺は思い知らされた、自分の甘さに。
俺は甘く見ていた、この森の調査を
「あーあ、貴方様にてございましたか」
周りには無惨にも死んだ王国魔道騎士団の兵士達が1人は目玉を片方失くし、1人は腹が開かれ腸がその辺に飛び散っていた。
皆奴がやったのだろう
「あーあ名乗ってませんでしたね」
「私は黒魔道教、副司教、強欲のシリウム・ソ・ミヤソンです」
奴はそう名乗った。




