第1章 第22話 ルーベル学園祭編 傲慢で強欲でされども持つ勇気
いつも見てくださっている皆さんには本当に感謝しております。
今回もよろしくお願いします。
始まる前に、戦う相手と並ぶ、彼女はこっちを見て
「よろしくね晴人君」
「あ、ああ、よろしくクラン⋯⋯えっとー」
「クラン・ミブリシアンよ、まあ下は覚えるほどの事でもないからクランでいいよ」
「ああ、そっすか、じゃあ改めてよろしくお願いしますクランさん」
少し驚いた顔をしていた
「どーかしましたか?」
「驚いたは、そーゆことする人とは思ってなかったから」
おい俺の事どんなやつだと思ってたんだよ、まあそれはそれとして、この人綺麗だな、プレアとはまた違った綺麗さだ。
いやプレアはあいつはほんわかとしていて何て言えばいいのかわからないが軽く緩い綺麗さを持っている。
対するクランさんは、凛々しい、細くでも少し筋肉質で鍛えているのがわかるそれでも肌は白く雪のような美しさを持っている、プレアとは逆で凛々しい綺麗さを持ち合わせている。
暫く見ていると向こうが
「何? 見られると少し恥ずかしいんだけど」
「いや⋯⋯すいません⋯⋯」
「まあいいわ、それより」
先程も真剣な表情ではあったが、それ以上にこちらまで緊張をしてしまう。
「この試合、絶対に負けられないわ、私の為にも、生徒会の為にも」
俺をまっすぐ見て彼女はそう語る、
「魔導騎士団、貴方達が我々を守ってくれているのは知っている、私も入りたかった、誰かを守りたいその想いがあった、でも」
「でも?」
「入れなかったわ、最終試験で落ちて私は入れなかった、でもこの想いはまだ捨てられなかった、生徒会に入って特訓をした、誰かを守る強さを得るために、そして今日、私は貴方を倒して私でも守れると証明するの」
「それとあの馬鹿会長が無様にやられたからこのままでは生徒会のこれからにも関わってくるから尻拭いをしなくちゃならないのよ」
そう言って彼女は少し笑った、俺も笑って
「いい笑顔すんじゃねえか副会長さんよ」
「そお? 貴方もよ」
まじで?! 生まれてこの方プレアに怖いとしか言われなかったのに、いい笑顔ってまじかよ、嬉し!
でも俺は彼女に伝えるべきことを伝えた。
「でもなまだ迷いがあるぜその目には」
「何? 迷い?」
「思い当たる節があんじゃねーのか? まあ俺はここまでしか言えないけどな」
と言って俺は会場に出る、そしたら耳がキーンとした
「うるせー! ここめっちゃうるせー!」
会場がさっきの試合もあって大盛り上がりしている、頭がくらくらするほどの歓声が会場の中心であるここに集められている。
「頑張れよ剣使い! 負けんじゃねえぞ!」
「うっせ! 剣じゃねえ刀だ刀覚えとけ!」
どこの誰かわからない声に俺は答える、そーしているのなーんかどこかで聞いたことのある声がするぞ? ん? 耳を済ませると
「──────」
ん?
「──てよ」
もっと耳を澄ませると
「勝てよ天然あんぽんたん!」
「誰が天然あんぽんたんだ! 志龍!」
志龍が笑い転げている、横には美穂とプレアもいる、そして美穂から
「負けたらレポート全員の分頼むわよ」
笑顔で言われた、絶対勝ってやる⋯⋯勝たなきゃ死ぬより怖いことが起こる。
そしてプレアから
「負けたら次こそ滅多刺しなのですよー」
あかん、それはダメなやつだよプレアちゃん、まあ勝ってやるよ。
そして志龍は何も言わないが、目で伝わってくる、
(勝ってここまで来い、待ってるぞ)
待っとけその頂で、狂犬であり狂刀が今すぐその頂まで上り詰めてやるよ。
ほっぺを叩いて気合を入れ直して俺は進む、もうクランさんは場所についていた。
「さあ準決勝第2試合、最凶の剣士、晴人選手対冷静な分析まさに精密機械、クラン・ミブリシアン選手の一戦が間もなく開始します!」
「なんでもあり、だが禁術は無しだ、勝負は負けを認めるか我々が勝負ありと判断するかの二択だ、それまでは時間制限も無いので充分戦ってくれ、健闘を祈る!」
と言い
「それでは両者位置について」
位置についた時、クランさんは俯いて
「貴方に言われた言葉意味がわからないわ、私に迷いなんて無い」
「いーやある、断言してやろ」
「ならこの想いに迷いが無いことを教えてあげるわ」
「教えてみろよ」
そう言って俺は刀を取り出す、漆黒の刃は美しく輝いている。
向こうはいつでも詠唱を始められる準備をしている、お互い準備万端だ。
「では初め!」
開始する、教えてやるよ迷いがあることを。
風系統の魔法を使ってくる、俺はそれを黒で
「魔食い」
食べる、そして相手が魔法を撃つその一瞬のリロードを逃さずに俺は突っ込む。
そして彼女との間合いを詰めて右手と右足を出して突きをする、
「そう来ると思ってたよ」
彼女は左に逃げる、俺は左足を前に出す、左足を軸に回転して右手に持っていた刀を左手に持ち替えて胴を切る。
彼女は
「驚いたね、私を切るのに躊躇をしない、尊敬するよその精神」
「知るかよ」
もう少しで切れる
「でもねそれは分身さ」
切ったが感触はない、そして後ろに気配を感じる、後ろを振り向くと腹に右の正拳が腹筋を貫いてきた。
そして左の裏蹴りを顔にくらった。
「ぐはぁ!」
「驚いた? 私ね結構体術得意なのよ」
「だ、だろうな⋯⋯腹筋を貫かれたぜ」
「そう、それなら良かった、ああそれと今までの動き全部読んでたわよ」
はっ、すげーなやっぱり、全部読まれたのか、そらそーだなこんな単細胞簡単に読めるよな、
「でもな、クランさんよ、こーいうのは知ってるか?」
一瞬で間合いを詰める、そしてその首に刀を当てる
「読んでいても防げないし攻撃できないものもあるんだぜ」
と言うと「ふっ」と笑って
「知ってるわよ、そんなこと、とっくの昔に知ってるわよ貴方達みたいな人が入ってきたからね」
と言って腰のポーチから何が小さい玉を取り出した、そして地面に落とす、すると周囲が真っ白になって視界が奪われた。
「だからね、こんな戦い方も学んだわ、さて私を飽きさせないでね」
おいおい暗殺は専門外だぜこの野郎。
霧の中から短刀、手裏剣など様々な道具が出てくる、これが彼女の俺達に対する戦い方か、ちっ! 厄介だなこの霧とか本当に、前が見えないから戦うにしても相手が見えないから攻撃ができねえ、っとまた飛んできやがった。
ん? まてよこれ使えるぞ、よし、この作戦だ!
と思い俺は待つ、相手が攻撃してくるのを、数十秒してハンドナイフが左から飛んできた、
「ここだ!」
俺はそう思って飛んできた位置より少し行ったところに走り出す、相手の走りはだいたいどれ位かは予想がつく、だからそこに逆に俺が読んでやるよ
「っ!」
突如足になにか刺さったような痛みが出る、足を見ると
「っ! 撒菱か!」
俺の靴の底の厚さより少し長い撒菱が刺さっていた、取ると穴が空いた部分から少し血が出てくる。
「これも読まれてたってわけか」
「ご名答」
後ろから声がする、俺は振り向きざまに蹴りを繰り出すが避けられて左の脇腹に蹴りが炸裂する。
ひでぇ痛みだよこれは。
「これでもまだ私に勇気が無いって言えるの?」
「何か喋りなさいよ、それとも何? 認めるの?」
「いーや認めないよ」
「何で?!」
後ろから蹴りが来る、俺はそれを手で受け止めて
「お前は仲間を救う代わりに幾千もの人を殺せるか」
俺の質問に黙る、
「誰か、敵を切り捨てる、それが仲間を救うことだ、誰かが言ってたよ、傷つかずに全てを救う、はっ! 無理だな少なくともこの世界では! 誰かを救うなら誰かを殺す、それ以外に救う手立てはない、あんたに出来るか」
「迷いの正体を教えてやるよ、あどけないんだよまだ、手を血に染めてないそのあどけなさが迷いだ、何もわからない無知だからだから迷ってるんだ俺から言わせたら」
何もわからないのにどうやって人を救う? そんなのその道の玄人でも難しい、迷うどうやって救うか、これが迷いの正体だ、と俺は教えてやる。
「そ、そんなの⋯⋯」
「そんなのどうにでもなんないってか? 知るかよ俺からしたら」
今でも記憶にある、血にまみれた日々、血の雨を浴びて鉄の味を覚えて、それでも2人で前を見ていた日々、ずっと忘れない大切な記憶だ。
守るってのはそういう事だ守りたい人がいるなら、血にまみれて、血の雨を浴びてでも守る、これが守るってことだ。
「それでもあんたには守るって覚悟はあるか? 少しでも迷ったら全てを失う、それが守る怖さだ、それでも出来るのか?」
俺は問う、これ位の気持ち、精神力が無ければ守るなんて到底できない、そして俺は持っていた足を投げる、彼女の体は宙を舞い、そして地面に叩きつけられた。
そこに俺は
「ほら迷ってる」
「っ! 迷って────」
「なら答えを言えよ」
答えが返ってこない、だから
「だから駄目なんだよ」
誰にだって全てを救える力があればって思う、俺だって思う、それが無理だから俺は犠牲を払った、沢山の、犠牲を払って払って、屍の山を越えた、いつの間にか俺は死の骸の上に立っていた。
全てを救える力を持つやつは1人だけ知っている、でもその1人ですら自分の記憶をまだ救えていない、だから無理なんだよ、犠牲を払わなくては、無理なんだよ。
「────でも」
でもどうしたんだよ
「──それでも」
なんなんだよ
「それでも私は全てを救う、傲慢であれども救う、そう決めた」
反対の考えを導き出してきた、俺が諦めた答えを出してきた、
「無理だ」
「誰が決めたの?」
「俺が無理だったから」
「それは貴方だけでしょ」
「そうだ、でもお前は俺よりも力も場数も無い、無理だ」
「でも貴方より少しは正義の味方になりたい! そう思ってるのよ! 場数がなくても、力が無くてもいざという時に助けてくれるそんな味方になりたいのよ!」
思考の矛盾、俺とは逆、そうパラドックスだ、彼女と俺は逆の存在だ。
何もかもを経験をした、その上で救うべきを見極めた者。
まだ何もかも経験をしていない、だからこそ全てを救うそう決めた者。
全くを持って正反対だ、そこで俺は笑ってしまった
「何で笑ってるの?」
何でだろうな? 俺にも分からない、矛盾が起こったことか? 考えが違ったことか? わかんねぇな、でもただ一つ分かることがある
「いい目するようになったじゃないっすか」
まっすぐと迷いのないいい目をしている。
「そう? そうかしら、なら嬉しいわ」
「やっちまった感が半端ねーよこっちは敵に塩を送ってしまったようなもんだからな」
「悪くは無いと思うんだけど?」
「まあそれもそうか」
「んじゃ始める?」
「いいぜ」
そして戦いは再開した。
────────────────────────
決着は意外と早いものだった。
まず副会長がまた煙玉を使ってハルを撹乱していたがそれもつかの間、ハルはもうそれを読みきっており副会長のさらに先を読んでじわじわと追い詰めていった、そして副会長が取っておきの魔術を使ったがハルの「魔食い」によって食べられてもうほとんど魔力がないそして武器もハルに食べられてしまってもう無い、あと残っているのは体術だけだがもうそれも通用しなかった。
最後は喉に刀を当てられて降参した。
決勝の相手はハルに決まった、俺はそろそろアップをして体を暖め直す、美穂についてきてもらって少し練習相手になってもらう。
決勝、一番身近であり一番脅威に感じている剣豪桐太刀晴人、こいつを倒す、倒さなければならない、そう思って俺はアップに取りかかった。
────────────────────────
戦いが終わった後俺はヒーリングをかけてもらって傷や疲れを全て癒した、そして決勝までに少し時間があるので体を冷まさないようにする。
すると前からクランさんが来た。
「どーかしたんすか?」
「今日はありがとう」
「こちらこそですよ、と言うか感謝されるようなこと一切俺はしてないっすよ」
「いーや君は私に覚悟をくれた、それだけで感謝しなくてはならない、本当にありがとう」
あの4人以外に褒められるのは慣れていない、俺は少し顔が赤くなったのでちょっとそっぽを向いて頬を掻き
「その選択は間違ってないですよ」
「私もそう思う」
「でも本当に誰かを犠牲にしなくてはならない時がやって来る、そんな時はどうするんですか」
俺は聞く、この答えをずっと聞きたかった。
「それは無いよ」
? 意味がわからない、それが無いって? どういう事だ?
「だって全てを救う、取りこぼしはないように全てを救うから絶対それは無い」
彼女は少し笑いながら言う、元気な女の子のように少し大きな声で、俺はまた笑ってしまった。
いや何、たくさんのことを学ばせてもらった、この人には感謝しなくてはならないな。
「んじゃ、そろそろ俺は向こうでアップしてきますわ」
「もうなの?」
「ええ、体動かしておかないとあいつには勝てないんで」
全てを救える唯一の人間、勝てる確率なんて皆無に等しいだろう、でもそこにまだ残っている確率があるなら俺はそれを信じて努力しよう。
「ねえ最後に」
と言われてクランさんに思いっきり抱きつかれてそして頬にキスをされた。
「これはお姉さんとの内緒だよ」
あの人あんな性格なんだ、俺はそう思って顔を赤くしていた、うん控えめに言って神、でも見つかったらやば、やばば⋯⋯⋯⋯
「何なのですかー? さっきのは?」
やばいめっちゃやばい特にさっきのは? って所に殺気がこもっていた、さっきだけにってギャグ言ってる場合じゃねえよ!
「いや、これは⋯⋯ごか⋯⋯誤解だ」
「後ろめたさはあるようですね、覚悟くくれなのですよ」
万を超える武器を出してきた、あ、やばいこれ避けられない、だから俺は精一杯の声で
「ごめんなさーい!」
次回決勝戦 ────志龍対晴人────
絶対対最凶
さて次回からは志龍対晴人ということで絶対王者対狂刀という試合です、ほんとこれはどうなるか作者である私も楽しみです!
では今回も最後まで見て頂き感謝しております。
これからもよろしくお願いします。
では次回までドロン!




