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第1章 第1話「サボり魔がここに1人でぽつんといます。」

 ベルの音がこの市街に大きく響く、まるでそれは誰かを祝福しているようにも聞こえる。

 だがこの音は誰も祝福していない、聞く人にとっては逆にとてつもない気だるさを感じるものだろう。

 なぜなら、ちょうど4講義目が始まるチャイムなのだ。


  俺はいつもどうり学校の屋上で何も考えずにただぼーっと寝ている。

 なにか考える事があるのではないかと、ふと思うこともあるのだが、やっぱり何も考える事がないという結論に至る。


(なーにやってんだ俺は)


 いつもそうなので最近はあまりその事も考えないようにしている。

 屋上で何をするのかと問が来たとしよう、答えは三つある。

 一に本を読む。二に寝る。三に食べる。これだけだ。

 なぜかこれも単純だ、それ以外することがないからだ。()()()()()()()()()()()()()()()()()


 「ガチャ! バン!」


 屋上の扉がなにかに蹴飛ばされたかのようにけたましい音を響かせて開いた。

 まあいつものことながら()()()が来るのだろう。


「やっぱりここに居た! ったく、おーいいつまでサボってんのよこのサボり魔!」


 酷い呼び名だ、ポニーテールで身長は160cm弱だが、すらっとした顔立ちでこのような暴言を吐くとは思えない清楚系のこの少女の名は菜月美穂(なつきみほ)と言う。


 「何サラッと私のプロフィール明かしてんのよ」


 おっと、それは失敬。あ、もう一つ情報としたら、美穂は幼なじみで、今ある理由で居候させて貰っている。


 言い忘れていた俺の名前は光希志龍(みつきしりゅう)と言う。

 はぁとため息をつく。


「サボってるんじゃないよ、こーやって色々考え事をしていたんだよ」


 「へぇ」


 「⋯⋯」


 美穂はほうと見透かしたように一言いい少し笑う。

 何も考えていなかった苦しい言い訳を見抜くなんて何年も寄り添っている彼女からしたら簡単なこと、今すぐ逃げ出したかった。


「じゃあ何を考えていたのか説明して貰えるよねえ」


「⋯⋯」


 無論答えられない。だって何も考えて無かったのだから、だから偉そうにふんずり返ってみせる。


「すんません何も考えてませんでした」


 「はぁ、大バカ志龍」


 答えを聞いて案の定だと思ったのであろう一つため息をついてから後ろを向いてゴソゴソし始めた。

 学校指定の黒い革のカバンの中からレポート用紙なるものが顔の前に出されてた。

 嫌な予感しかしない。


「美穂さん美穂さんそれはなんだい?」


「なんだと思う?」


「それは難題?」


「難しくねーよ」


 軽くツッコミを入れてくれるあたり何を言っても優しい子なんだなと親のような目で彼女を見ると何故かよく分からないが蹴りが飛んできた。

 理由を聞くとふんずり返って──なんかウザかった。

 お前は思春期の娘か、──いやそうだったな。

 話が脱線してしまったかは元に戻そう。


「我が校における魔法と魔術的防衛の内容をレポート用紙3枚にまとめて来週、魔術協会に提出しろとの事です。志隆、やる事ないならお願い」


「⋯⋯」


 笑顔で言われた。

 嫌だと答えたかったが拳が飛んできそうなので止めておいた。

 渋々やらされることになった。いいか渋々だぞ分かったな、決して暇だったからする事ないしやってあげるんだからとかそーいう気持ちじゃないぞ。

 ちょっと美穂さんの目線が痛いです。



 さて1つ、魔法とはなにか、それはずっと昔、まだ人類が文字を書くなどの事ができない時から存在しており、人類のこの世の全ての活動源とも言われている。


 魔法とは、体内にある魔力を体内で術式にし、体外に放出したものである。

 世界には魔力というものが存在している。魔力は魔法を使う媒体でこれ無くして魔法は成立しない神秘のものだ。

 ただ、魔力単体には質量と呼ばれるものは凡そ存在しない。そして世界中何処にでも空気のように存在している。

 一説によると魔力を消費した際、世界によって体内に補われているらしい。信憑性は定かだがそれなりに信用は出来ると根拠もなく思っている。


 魔法は自然と調和してきた、そして自然現象と呼べるものを人類は魔道的に起こせるようになった、それを「系統」と呼ぶ。

 そして人は必ずその魔力の系統と呼ばれるものを一つ以上持つ。

 系統は、火、風、氷、雷、地、闇、光の7系統がある。中には例外も稀にいる。


 魔法と人類の歴史は深く結びついており、魔法による革命で人々は自由を掴んだり、ある一人の大魔術使いが枯渇した一つの土地を緑溢れる大自然の森にしたという記録もある。

 だが魔法による戦争や虐殺、このような歴史もある。

 魔法はこの世界を豊かにするものであると同時に、全てを終わらせることも出来る。


 魔術は似たようなものだが根本的な部分から違う。

 あれは系統を属なさい無の系統とも呼ばれている。

 曰く、それはどの魔法にも等しく干渉し平等である。

 曰く、魔術には位置づけもある。

 曰く、真の魔法使いは魔術を制すものである。

 昔から学校で口酸っぱく言われ続けた。


 一つ思う事がある。SF地味た話だが、もし世界に魔法が無く突発的に今そんな現象が起こったらそれは超常現象と呼ばれるだろう。でもそれも百年も経てば日常となりうるそんなものだ。

 魔法は日常と化した、当たり前のように存在し、当たり前のように便利な道具として自分達を支えてきている。



 そうこうあまり考え事をしたくもないのに考えるようなことをやらされるのにため息を付くと(やりたくないからここ重要)美穂は付け足したかのように、こちらを振り向く。


「あ、あと最近なんか学園周辺に不審者が出没しているらしくて、エルフの友達が困ってるのよ、そこん所の学園の警備の方法を変えて欲しいと言う意見があったからまた草案作っておいて欲しいの」


「⋯⋯やだと言ったら?」


「ぶん殴る」


「頑張らさせていただきます」


 笑顔でこう返されたので震え声で対応させて頂き美穂様の寛大な心によりこの件もやらさせて頂くことになった⋯⋯嫌だよ。



 ──エルフ、きっと少し前までは皆聞き慣れない単語であったのだろう、だがそれが現実に現れるのであればどうだろう。


 ──十一年前、原因不明、何故こうなったのか未だに解明されていない。ある一つの都市に、ある不可解なゲートが開かれた。

 そして時を有す事にその数は増えていった。

 1人の探検家というか馬鹿というか無法者がそのゲートの中に入った、するとそこには目を疑うような光景が広がっていた。


  ゲートに入るとそこにはいつぞかみたファンタジー小説に出てくる様なエルフと呼ばれる妖精や、それらと共存する人間たちがいて、そこは異世界と呼べるような世界が広がっていた。

 つまりゲートは魔法陣であり、魔法陣の中に入れば誰でももう一つの世界に行き着く、ファンタジーが手に入った。


 すると皆はどうなると思う?

 当然焦り困り果てる、我が国の政府も焦った。

 向こうの世界の国王らしき人物と急遽連絡などを取り合い、生憎言語は日本語と全く同じで通用したので話はスムーズにまとまり、我々と向こうの世界の住民は共存するしていく形になった。


  これによる反乱は起きず、向こうの世界の住民と我々の世界の住民は仲良く今も暮らしている。表面上は。


  向こうの世界の住民とは言語は通じるものの、文字の文明が違うためその点では我々と向こうの世界まあ第2の世界と言おう第2の世界の住民の文字による意思の疎通は難しかった。

 だが11年も経てば皆文字や文法が分かり我々の公用語である日本語と同様に公用語として今は使われている。

 だが違う部分もある、その代表は金銭だ、向こうで使われているような硬貨の相場とこちらの相場を知り、ドルなどのように合わせるとこうなった。


 金貨…1枚辺りで行くとこちらの一万円と同等。

 銀貨…1枚辺りで行くとこちらの千円と同等。

 銅貨…1枚辺りで行くとこちらの百円と同等。

 準銅貨…1枚辺りで行くとこちらの十円と同等。

 石銭…1枚辺りで行くとこちらの一円と同等。

 このような価値になる。

 注意する点は相場が定まっても使えるのは円はこちらの世界、金貨などは第2の世界でしか使えないということだ。

 これによる外資と呼ばれるものも行われているらしいがまあ知ったこっちゃない。



 美穂が出ていった後どんなレポート作ればあのじじいどもに納得してもらえるかなーと考えながら校舎内に戻った。

 ──校舎内はやけに静かだった、何故か考えて隣のクラスを見たら眼鏡をかけた中年の男が30人あまりいる教室で熱心に教鞭をとっていた、そうだ授業中だった。

 そうださっきチャイムがなっていたもの、そう思い手を叩いて納得した。そしてコンピュータルームへと足を運んだ。



 ここ数百年、人類は魔法の発展と共に科学と呼ばれるものが急激に発展していった。それにより人類は暮らしやすい文化を手に入れた。

 科学は技術を発展させ人々の暮らしを楽に快適にさせた。

 それによる対立もある。科学を重んじる科学派の人々と魔法を重んじる魔法派で何故かよくわからないが対立をしている。

 宗教みたいな問題だろう。

 魔法派ではあるが正直どうでもいい。



  コンピュータルームに着くと美穂が別のレポートの作成なのだろ1人でコンピュータの画面とにらめっこしていた。


「なんのレポートなんだ?」


  と聞くと「うわぁ」と驚いた顔をして少し頬を赤く染めた、少し落ち着いたらしく肩をすくめながら


「びっくりしたー、脅かさないでよね、このサボり魔」


 と罵られ舌を出しながら「べーだ」とまで言われた(可愛い)失礼なサボってなどいな⋯⋯いるな。と思いながらさっきの質問に答えてもらってなかったから答えてと頼むと、半ギレ状態でにこりと笑みを浮かべた。美穂ちゃんまじこえーよ。


「あぁ、魔術協会に私達の魔道騎士団としての活動報告をレポートにまとめて提出しろとの事なのよクソッタレ、何でしないといけないのあいつら暇なの?」


「まあまあ落ち着け飴ちゃんやるから。しっかしあいつらもまあ暇だなー肩書きだけで何でも俺らに押し付けてくるし」


「ほんっっとによ! 志龍! 今度ぶっ飛ばしに行くわよ! 飴ちゃんちょーだい」


「それしたら俺らお縄にかかってしまうよ」


「何言ってんの志龍を身代わりにして私は逃げるわ」


「俺一人に罪を擦り付けようってか!」


「レディーファーストって言葉知ってる?」


「知っているけどそんな使い方するとは聞いてないね!」


 コロコロと舌で飴を転がしながら半笑いでからかいながら愚痴を言ってくる。

 まぁ言いたくなる気持ちも分からんではない。

 俺も席につきレポートを書き始めた。




 今いる学校は『私立ルーベル学園』生徒数二万人、世界最高の土地面積と設備が揃えられている学園である。

 創設1200年を超えてるって入学式の時言っていたなそう考えると凄いと思う部分もある。


 そしてこの学園は世界最高の魔法学校とも呼ばれている。

 世界で名だたる魔法騎士、勇者、魔法研究家はほぼ全員この学園の卒業生だ。

 だからこそ世界中から第2の世界からもこの学園に入るべくやって来る。


  学園内では分校が五校あり内一校は中学校である。

 入ったばっかの時はよく分校と間違えたものだ。


 学園全体がもう都市とも言える、警備は最高峰であり、遠方から来ている人はホテルとしか思えないほどの寮で暮らしている。学園内にスーパーまでもあるのでもう一つの街が出来上がってるてもんだ。

 娯楽施設も整っており休日はよく子供たちも学園内で見る。


 近頃ある事件がありこの国で義務化されているものがある。

 それは学園内魔道騎士団というものだ。

 学園内の成績上位者でなおかつ実践戦闘で、実力を示せた者だけが入れる特別なものだ。

 今この称号を学園内で持っているのは4人だけ、しかも全員1年という異例の事態だ。

 そして俺は高校一年生にしてこの学園の魔道騎士団団長だ、あの美穂も副団長だ。


  魔道騎士団団員には特別な、権限がある。


 一つ目は、この学園の魔道騎士団団員である限りは授業に参加しなくてもよい。だがテストにはでろ。


 二つ目はどこか遠方に行く場合は、遠方届けを出せば自由に行ける。

 この権限だ、この権限をフルに生かしたいと思っているのだが、レポートなどに阻まれている。それに学園内の警備の様なものと言っているからそう簡単に遠出ができない。



 二時間くらい画面とにらめっこをしているともう目が真っ赤に充血してきたので少し休み隣を見ると、既に疲れ果てて目の錯覚か知らないが白く灰になってる様に見える。

 回復魔術を掛けてやり少し休ませていると入口の扉の方から「ガチャ」と言う扉の開く音がした。

「おや」っと言う声と共に身長二メートルをゆうに超える長身の男が入ってきた。


「誰かと思えば君たちだったーのかー」


 すらりとした体格でいつも手品師が被ってるような黒い帽子をかぶってるこの男は


「なにしに来たんですかー学園長先生」


 そうこの男こそがこの学園の学園長だ、名は、ロバンヌ・ザ・メトリアル、皆からはロバン学園長と呼ばれている。喋り方が少し独特なのと話しやすさからとても人気がある。

 生まれはこちらだが、年齢不詳で見た目は20代後半みたいだが何もわからない。


「志龍くん、何しに来たといわれてーもねー、たまたま校舎内を散歩していたらコンピュータルームが開いていてねー興味持ったーんだよ」


 どんだけ暇人なんだよ。


「何も無いですよただレポートの作成をしていただけですよ」


 笑う気力すら残っていなかったので真顔で答えると学園長は少したじろおって苦笑いを浮かべた。


「ああーそーだったのかーいやーいーつもごめんねーそれじゃ私はここでお暇させてもらーうよ」


 出ていこうと扉に向かって歩いていたが扉の前でふと何かを思い出したらしくこっちを向く。


「あぁ志隆くん、放課後ら大図書堂のリペアさんがこいとのことだーよなにか新しい本が見つかったそーだーよ」


 その言葉に俺も反応する。

 学園長にお辞儀をして。


「ありがとうございます、放課後すぐ行くって言っといてください」


 と言うと「あぁわかったーよ」と少し笑みを浮かべながら返事を返して出ていった。

 しばらくレポートを書いていると美穂が眠ったままだけれど口を開く。


「あんたまた大図書堂に行くの?」


 美穂がため息をつきながら言った、さっきまでの死にそうな面はどうしたんだい。


「なんかわりーか、こっちも探しもんがあるんだよ」


 こちらは依然として少し機嫌が悪い。


「なんなのよその捜し物って? 長い付き合いの私にも教えてくれないじゃない? いい加減教えてよ」


 向こうからも機嫌の悪い返事が帰ってきた。


「すまねーがこれは教える事は出来ない、これは本当に教えられない」


 俺は少しばかり真剣な口調で返す。

 本当だ、これだけは彼女であっても教えられない。

 誰に言っても絶対に嘘だと思われるし自分自身言いたくない。


「はーぁ、まあそーならあんまり追求はしないけど、あ、帰りにルミネ寄ってセイクリッドウォーター15本買ってきて今切らしてたからさ、これが行く条件ね」


 諦めてくれたらしく、なんかよくわからないウインクをされて言われたので。


「あぁ、分かった買ってくるよ」


 苦笑いと一緒にそう返した。















 大図書堂は第2の世界にある、第2の世界に行くにはゲートによる通行が一般的だが銀貨二枚とちと金がかかるまあそれは往復の分が含まれているので片道は銀貨一枚だ…それでも高い。


 「どうぞー」


 俺は金を払いゲートの中に入って第2の世界の一つの王国シフレル王国に着いた。



『シフレル王国』活気溢れる王国で街の至るところに食べ物の屋台があってつい買ってしまう。

 今日はシーフ鳥の焼き鳥を5本ほど買った。

 ジューシーだが鶏肉だけあってそこまでくどくないさっぱりとしたもも肉に、秘伝のタレと呼ばれるこちらで言う山椒に似た香辛料などの七味でピリ辛いがリンゴのようなフルーツの甘みが少しあるとても絶品だ。

 買ってよかったと思いながら歩き、少し時間が無いことに気づいて王国を出た。


 王国を出てすぐ、西にある森を5キロほど走ると大図書堂に着いた、外観は塔に近く、天にも届くくらいの高さを誇っている。

 噴水や花などが埋め尽くしている庭を少し歩いていると入口の扉に着いた。


 扉の前まで行くと、人を感知したのかゆっくりと古い扉特有のギィーとした音が今さっき通ってきた森にまで響き渡る。

 音が鳴りやむと何年も使われているような鼻に馴染む木の香りと数千万を超える大量の本が塔の最上部まできちんと整理され本棚にしまってある。



 大図書堂、それは人類の叡智、全ての著書がある図書館の様なものだ。賢者の記録、数あまたの英雄を記した本、そしてこの世界の生い立ちをも記録した本があると言われている。

 ここに入れるのは限られた人だけだ、なぜなら──


「しーちゃーん!」


 俺にロリっ子が抱きついてきた。そうここの主であるリペアである。

 見た目は金髪で髪型はロングのストレートで超ロリっ子のエルフ。年齢聞くとブチギレられるのでそこはほっておく。


 何故人をそう簡単に入れないかそれはこのロリっ子に懐かれるか懐かれないかの問題らしい。

 今まで何万人の賢者達がこの図書堂に足を運びこの図書堂を使わせて欲しいと頼んだが、全員空間転移魔術で知らない地に飛ばされ行方が分からなくなったそうだ。


 今、リペアが図書堂に入れるのは俺を含め3人だけらしい、俺、美穂そして何故か知らないがロバンヌ学園長だけだ。

 何故かよくわからないが俺にとても懐いてるらしく昔この図書堂に入れてくれないかと頼むと、1発OKだった。


 美穂が入れたのは俺が頼んだのと、やっぱりリペアが懐いたからだ。

 リペアが懐かなければたとえ俺の頼みでも入れてはくれない。


  俺はいつもどうり手を繋いでその本がある所まで行った。


「しーちゃんが探しているような本があったけど多分今回も空回りだよ」


 少し落ち込んだような顔をして言った。

 俺は頭を撫でてやる。


「リペアが落ち込む必要は無いよ、もとより俺は無いものにすがってる思いで来てるんだから、一生懸命探してくれているのは感謝してるよ」


 リペアは少し頬を赤らめて



「そ、そう、ならまた頑張って探しちゃうよ!」


 元気を取り戻してくれたので一安心した。

 そしてその本がある場所に着いて本を小一時間ほど読んだがやはり空回りだった。


「やっぱりちがった?」


 ああ違ったなと思い本を閉じた。



「そのロベンって所の情報と?」



 そう……俺が今欲しい情報は俺が生まれたロベンと言う場所の情報だ。


 ──今から十一年前ロベンという場所は何かの拍子で消滅したと考えてる。


 理由は今俺は高一で十六歳なのだが五歳ままでの記憶が全くと言っていいほど無い、だがロベンという場所の名は知っており、俺はそこで育ったことも知っている。

 知っているだけで風景や記憶はない。


 恐らく五歳の時何らかの形でその場所が消滅し、俺の中に残るその世界の記憶までもが消滅したと考えてるが、全くと言っていいほどその記憶が無い。

 それに不可解なのが何故その時俺が消滅しなかったのか、そして何故その場所の名だけ覚えているのかそれは分からない。


 ────っ!

 突然頭が痛くなった。ロベンのことを考えていると頻繁にこうなる。

 少しよろめいて近くの壁に手を当て寄りかかった。

 すると気がついたらしくリペアが慌てて


「しーちゃん?!大丈夫?!」


 大きな声で言って俺を近くにあったソファーに座らせてくれた。

 少し頭痛が収まった


「あぁ、もう大丈夫だ心配かけたな」


 笑顔で言うとほっとして


「あまり無茶しないでね、しーちゃんよく無茶しちゃうから、めっ!」


 怒られた、心配してくれているのはありがたいが、めっ!は無いだろうと思っていた。


 今回も空回りと考えてふとそういえばやる事があったんだと思い出しリペアに帰ると伝えると悲しそうな顔で



「ええ、もう帰っちゃうのもうちょいゆっくりしていってよできればお泊まりしていってよ」


 泣き顔で言われると辛いがそろそろ帰らないとゲートが通行出来なくなる時間になってしまうし、あと明日明日学校あるから泊まりは無理と伝え帰ることにした。

 そういえばセイクリッドウォーター買わないと行けないのか⋯⋯間に合う、かな?



 案の定、間に合わなかった、とりあえず俺はセイクリッドウォーター片手に宿を探したが運悪く明日祭りということで観光客で宿がいっぱいで泊まる場所が無かった。

 美穂にその事を伝えると大笑いされたのでセイクリッドウォーター捨ててやろうかと考えた。

 とりあえず泊まる場所が無いのはやばいのでリペアの所にやっぱ泊めてもらおうと考えた、また森に出た。



 森はとても静かであった。まじでお化けが出そうだなと思っているとガサガサと言う草の擦れる音がした、音のなる方を見ると少し大きめのカエルがいてどこかに飛んで行った。

 美穂がいたら反応面白いのになーと思いながら少し歩いていた。

 ──? 微量だが魔力を感じた、この魔力は人だな。五人、いや六人といったところか恐らくは盗賊だろう闇討ちされるのも面白そうだが六対一だ面白そうだから正面戦闘をしようと考えた。


「そこにいるお前ら出てこい」


 チンピラみたいな奴らが6人俺を囲むような形で出てきた、チンピラの一人、チンピラAが


「兄ちゃん、ここを通りたかったら金と金目のものを置いてけよ」


 いかにも盗賊が言いそうな言葉第一位の台詞を頂き感心していると違うチンピラ、チンピラBが半笑いで。


「僕、抵抗せずに置いていった方が身のためだよさもないとこれで心臓ぐちゃっと潰しちゃうよ」


 サイコパスかよと思った。


「おいおい どう打ち負かすかは知らないけどやれるもんならやってみろよ」


 俺が笑いながら言うと、チンピラAがしびれを切らしたのだろ。


「んだテメェ武器も持ってねーくせに、今なら泣いて謝ったら許してやるよ!」


 怒鳴った、おおこわ。


「武器ならあるよ」


 少し笑いながら答え腰に携えてある黒い撥を取り出した、するとチンピラ達は笑い出してチンピラAが



「なんだよその武器、ただの二本の黒い棒切れじゃねーか、俺達を舐めてかかりやがって、おい!お前らこの僕に現実見せてやれ」


 チンピラ五人が一斉に襲いかかってきた。


 俺は撥を持ち右手にある一本の撥で太鼓を叩くかのように五回空気を叩いた、すると空気は「トーン」と音を鳴らし五人のチンピラは進行方向と逆に吹っ飛ばされて近くにあった木にそれぞれ叩きつけられ二人ほど気絶した。


「こ、こいつ加護持ちかよ部が悪い逃げるぞ」


 気絶した二人を担いで逃げていった、まあ俺自身も殺す気は無かったし逃げたらもう襲ってこないだろうと考え逃がした。

 それにさっさと寝たいのですぐ終わらせたかったのもあった。



『加護』それは魔術と同等に人類に与えられた神からの祝福とされている。


 加護はどんな不可能も可能にすると言われている。だが加護とは眠れる力と同じだ。

 自由に使える者とそうでない者で分かれている。

 使えるものは様々だ、子供でも使えるやつは使える。だがどんな達人や魔導師であれども使えないやつは使えない、こんなものだ。

 奇跡であり、奇術とも言われている。然し禁忌という扱いも受けている。強力な加護は魔法をも凌ぎ街も破壊することが出来る。

 武器も使い方次第、どんなものも使い方を間違えれば取り返しのつかないことになるという事だ。


 話を戻そう。俺は二本の撥を眺める。

 太古から受け継がれてきた加護には真名と言う名がついている。だが俺の加護は本などで研究してみたが事例はなく真名も無い。だから勝手に名付けた、

『真名 音鳴りの加護』と。この加護の特徴は音を自由に操ることができ、それで攻撃や魔術に匹敵する治癒なんかも出来る。


 弱点もある、弱点は音を鳴らせなければ意味がないという事だかそれも大丈夫、この撥、空気で音が鳴らせると言う妙な特性を持っている、本当にこの加護のために作られたような品物だ。


 ──十一年前のあの日なぜか片手にこの二本の撥を俺は持っていた。

 この撥をなぜ俺が持っていたのかは分からない、だがあの日からずっと俺はこの撥を肌身離さず持っている、そう決めたから。




  少し歩くと大図書堂に着き泊まらせてもらうことにした、俺は風呂に入り、ちょっとした夕ご飯を食べまた後、調べ物をした。


  ロベン、俺が生まれ育った場所だだが記憶にない、そう誰の記憶にもだいくら本を探っても出てこないだろうだって誰の記憶にもなくそして消滅した場所だからだ、疲れて成果は無くベットにうつ伏せになり寝た。



 ──夢を見た、白い世界何もなく宇宙の果てに居るような気分だった。その世界に俺と少し影がかかった俺がいた。

 すると影のかかった俺が薄気味悪い笑みを浮かべながら俺の肩を叩いた。


「もういいじゃないか諦めようよ てかそんな場所本当にあったのかな?」


 ──あったんだろだから俺は今調べている。


「でも調べても出てこないじゃないか」


 ──ああそうだな、今は出てこないな。


「なら何で調べているの?」


 ──何でだろうなただ故郷を知りたいだけかもな。


「それでこんな場所まで使い調べているの?」


 ──ああそうだな


「⋯⋯強欲過ぎるよ」


 ──そうかもな、それもそうだでも悪いかな?


「⋯⋯⋯⋯悪くはないと思う⋯⋯」


 ──だろ、必ず見つけ出してやるよ俺が生まれた場所そしてお前が生まれた場所を必ず探し出してやる。それまで俺は諦めない、強欲でもいいだって欲しいからな。


「⋯⋯⋯⋯なら、」


「なら頼んだよ、記憶とその場所を取り戻してくれ僕がそれを願おう、そして頼もう取り戻してほしいと」


「任せたよ」


 ──ああ任せろ


 俺は決意を固めたどれだけ苦しく辛くなろうとも決して諦めない俺と同じくらい欲しいという意思が強いものがいるのだから、必ず見つけ出すその日まで俺は諦めない。

 そう心に決めると寝ているはずなのに意識が途絶えた。

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