第1章 第11話 1日とは非常に長いものだ
さて、度々で申し訳ないが質問をしよう、魔導騎士団の職務とは何でしょう?
警備とかそこら辺だろう、あっている、でも違うんだよ、
「ほーらさっさと草むしり終わらせろ!」
⋯⋯分かっただろ、今俺達は草むしりという職務をこなしているんだよ。
なぜ草をむしってるかって?元来魔導騎士団のポリシーにこのような言葉がある
『正義の執行、雑務、雑用』
何故後ろの二つが着いてきた! いやまあ草むしりとかそう言うことをしなくてはならないのは分かっている、でもポリシーに雑務って、雑用って、なんだ俺達のヒエラルキーは1番下なのか? 1番頑張ってるの俺たちだよ? もう少し疎まれるとか無いのかな? 例えば女子に「すごーい志龍君ってこんなにカッコいいんだ私好きになっちゃいそう」とか無いのかな? そう思うと俺は落胆する。
「ぶべらっ!」
背中に蹴りが入った、振り向くと美穂が
「なーに変な顔してサボってんのよ、夜ご飯抜かれたいの?」
「いやそれだけは勘弁してくれ、ごめん何でもするから」
「ふっふーんいいこと聞いちゃった」
「あ、」
「帰りにスターミュウ奢ってね」
最近巷で女子高生を筆頭に若い世代に流行っているコーヒーショップだ、前に行った時俺は一言キャラメルプラペチーノというのを頼んだが美穂が永遠と呪文のようなものを唱えていたのでもう2度と行くまいと考えていたがことタイミングで行く羽目になるとは思いもしなかった、もちろん学園内にスターミュウはあるよ! 女子しかいないけどね!
小1時間ほど草をむしって、むしってむしってむしってむしってむしって⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯
「はい終わりー!」
どっと疲れが押し寄せる、肩と腰がとてつもなく痛い、
「疲れたー」
「おう志龍お疲れ!」
「お疲れなのですよー」
「お前ら全然疲れてなさそうだな」
ハルはスタミナの筋肉馬鹿だから疲れることもまあ無いかなとは思っていたが予想以上に疲れてなさそうだ、でもプレアはなぜ疲れてないのだろう?
「昔一人でいた時はずーっと草をむしって遊んでいたからなのですよー御茶の子さいさいってやつなのですよー」
本人は笑っているが聞いてる身にもなってくれ、少し悲しくなってきたぞ。
「さーて次は校内の見回りか」
「校舎内にはもうあんま人残ってないだろうからなー」
「残っているとすれば」
「奴らだろう」
奴らとは、校内とかでいつも放課後に愛を確かめあっているそう! リア充共だ!
「さて先週は何人片付けたっけ?」
「志龍、16組だ」
「計32人か、足りんな、まだまだいるはずだ、魔導騎士団の権限を使って校内でいちゃつかせるのを辞めさせろ!」
「分かりやした!」
俺達が盛り上がってるのを女子は尻目に
「アホだ」
「馬鹿なのですよー」
放課後の校舎内、誰もいない少し不思議な感覚と幽霊などの噂による不気味さが漂っている、なぜこんな場所にカップル共は集まるのか俺には理解ができない、せめて校内から離れてスターミュウとかにでも集まれという話だ。
あ、後
「ねえ早く終わらせようよ、まだなの?」
「まだまだなのですよー、というか始まったばかりなのですよー」
小刻みに震えて俺の後ろに隠れている、そう美穂は怖いものが大嫌いなのだ、1度遊園地でお化け屋敷に行ったその日の夜、寝れなくてずっと震えていた、もちろん俺はその光景に笑いをこらえるしかなかった。
ちょっとイタズラしよ
いきなり振り向いて階段を指差し
「あ、あそこに人体模型が動いている!」
「ひぎぁぁぁぁぁぁ!!!」
このとーり冗談をいうと、前に一直線に走って逃げていった、めっちゃ面白い、駄目だ笑いをこらえきれない、ハルとプレアも笑いをこらえるので必死でさっきから少し笑い声が漏れている。
「冗談だ、冗談」
と言うと睨みを聞かせて、
「冗談だと?」
一瞬寒気に襲われた、あ、これ駄目なやつだ
「おい、何とか言ってみたらどうだ?」
「あ、はいすいませんでした」
「志龍、知ってる?」
殺気のこもった笑顔で
「世の中には誠意を持って謝って許されるものと許されないものがあるんだよ」
「今回はどちらで⋯⋯」
「決まってるよね」
「⋯⋯」
「今日夜会議でもしようか」
会議という名の説教だ、美穂は普段は優しいけどこう言う会議になるととても怖い、それはそれはいつでも冗談を言えるハルですら何も言えないくらいだ。
「志龍、死相が見えるぜ」
本当に死ぬかもしれないしな、ならここは
「分かった謝るから、好きなもん奢ってやるよ」
「じゃあ新しい服!」
「わーったよ」
「やったー!」
単純だが美穂や女子にはこれが一番有効な手だと自負している、ちなみにお金はいっぱいあるから問題は特には無い。
それからの校内の見回りはとても上機嫌だった、これなら会議は無さそうだ、よかった。
会話はあまり無い、時より校内にいる人達を追い払う時に少し喋るくらいだ。
「なあ志龍」
この静かな場を破ったのはハルだった。
「何だ?」
「この前言っていた俺達に『話があるって』何なんだ?」
⋯⋯そろそろか、以前その事には覚悟を決めなければならないと思っていた、これが時期か、逃すわけには行かないな。
「ああ、それは部屋に帰ってからだ、ほらあまりお前達以外には聞かせたくない、でもこの場だと『壁に耳あり障子に目あり』とよく言うだろ」
穏やかにそれでも重要さを教えるように俺は言った、
「おっけー」
向こうもそれなりの返事を返してくれた。
小1時間後、本館の見回りを終え部屋に戻った。
さてここで話すべきなのだろうが少し確認しておくべきことがある
「美穂、これからのレポートには影響はなさそうか?」
「? 大丈夫よ、もう後5分あれば終わるしね」
「分かった、ハルは?」
「問題ねーよ」
「プレアは?」
「大丈夫なのですよー」
「おーけーなら話そう、少し前の俺の真実の欠片を」
「美穂は俺が来た日のことを覚えてるか?」
「⋯⋯まあそれなりにはね」
「その時俺はおじさんとおばさんに何を聞かれた?」
「うーんと、まず名前だったよねそれから生年月日お父さんとお母さんの名前、そしてどこから来たのかだったよね」
「前者2つは俺は答えた、そして後者は『分からない』と言った」
「そうだったわ、どこから来たのか分からないと言われてお父さんとお母さんとても困ってたもの」
「さあここからが話の本題だ、一つ言おう、この世界に俺はとても馴染み深い故郷のように感じているでも正確にはどうかは分からないが『俺はこの世界では生まれていない』」
3人の顔に驚きの表情が出る、今まで隠していた真実は11年の短いようだが俺にとっては長い時だ、まだ動く歯車さえ揃っていない俺の時計だ。
「どういう事だよ志龍、じゃ、じゃあお前は第二の世界で生まれたとでも言うのか?」
「正確にはそうかもしれないが、そうでないかもしれない、なんせ俺の生まれ故郷は完全に『消滅』したのだからな」
「?! どういう事なの志龍?」
「そうですよーどういう事なのですか?」
「無理もない、俺がお前達に隠していた真実の欠片をこれから言うんだ、多少分からない部分もある、それはそれも分からない、それに全てが真実であると俺は考えているがそう出ないかもしれない、だって人々の記憶から『消滅』している、かろうじて何故かは分からないけど俺には少し、ほんの少しだけ残っている、それを話すだけだ」
静まり返る、絶句、驚き、疑心暗鬼、色々な感情がこの空間を埋めいていて居るだけで異様な感覚がする
「さて前置きが長くなったな」
話そう真実を、11年の時をかけ話す真実であるはずの物語を
「俺が生まれた故郷の名は『ロベン』だ────」
真実を話した、あるはずの真実である話を。
真を話した、あってほしいと願う真を。
嘘を話した、あってほしいと願う嘘である話を。
2つの話だ、それは双方が矛盾しあい、それは五分五分で取っ組みあっているように、まさに表裏一体と言えるものだった。
話終わり皆を見るとやはり複雑であった、そうだろう、双方の確率が五分五分である話誰が信じる?誰がこれをどう疑う?
疑い方も、信じ方もわからない話を一つと決めつけるそれは不条理だ。
その上で、俺は聞きたい、みんなの意見を
「さて、ハルはどう思う?」
「どう思うって言われてもな⋯⋯一概にそうなのかとは言いきれないし⋯⋯あーなんて言ったらいいんだろクソ!」
「すまんな」
「いーや言葉が出てこない俺が悪い」
悩み込んだ表情を見せるハル、そして
「つまりはハルは第1の世界の住人でもあるかもしれないが第2の世界の住人でもあるかもしれないってこと」
「そうなるな、もっもと俺は第2の世界ではないかと睨んでいるがな」
「でも最初に志龍はこっちの言語を話してたんだよ」
「確かにな────っ!」
美穂の意見を肯定した刹那、酷くだが慣れしたんだ頭痛が襲ってきた、痛く重たくまるで何か逃げさせるような痛みだ。
「志龍?!」
椅子から少しよろめいて倒れたので美穂が駆け寄ってきてくれた。
「すまねえな」
「それよりも自分の心配をしてよ」
「ああ、大丈夫だ慣れてるからな」
「慣れてるってそんな」
「悪い少しだけ休ませてくれ、それからまた話を続けよう」
少し深呼吸しながら自分を落ち着かせる、深く深く眠りにつくようにゆっくりと息を整えるように体の整理をするように────────収まった。
最後にもう一回深呼吸をして
「おーけー大丈夫だ続けようか」
始めるやいなや
「少し質問してもいいか」
ハルからの質問だった
「悪い、俺はあんま人の過去とかどうでもいいけど一つ聞き捨てならない事があったんだよ」
「志龍があった老人だ、あいつのセリフがどうも気になる」
「『全ての果てる場所』か?」
「それだよ、『全ての果てる場所』俺が知っている中では一つだけそれに似たようなのはある」
「と言うと?」
「あれだよ、お伽話の一つの⋯⋯題名何だっけなー?」
「『ソロモン王と七人の魔女』でしょ」
「そう、それだ」
「確かに一文だけあるわね、『ソロモンは七人の魔女と一人の勇者によって倒され世界の果てに封印されました』って所よね」
「それだよそれ!」
「聞いてみるの?」
「嫉妬だったら少しは話してくれるだろ」
「んじゃ呼ぶぜ」
そう言うと目を閉じた、眠るように深く目を閉じた。
人が深層心理まで入り込むには寝るのが1番と言われている、なぜなら体がリラックスしており脳の活動が中心となる、深層心理に俺が入り込む時は深い海の底に沈んでいくイメージがある。
ハルはどのようなイメージがあるのか興味がある。
数十秒後に目を開けた、目は紫のアメジストの色に変わっていた
「さて物語でも語ろうかな」
「さて、何を語ろうかな」
彼女は笑う、ハルとは違う笑い方をする、でもそれはハルの顔でありハルである存在だ。
「さて、アメジストだっけな」
「いきなり僕を呼び捨てするとは志龍君は凄いね」
「いきなりって程でもないだろ、前にあったのが少し前であってそれをいきなりと言うのは些か良くないと思うよ」
「おっとこれは失礼したね、私としたことがついついミスを犯したよ」
「話がこれ以上それては俺も困る、早速だけど本題にいこうか」
「それもそうだね、さてソロモンとの戦いか、それは実話だよ」
皆に緊張が走る、お伽話であったはずの物語が本当の話であったのだからな、これがどういう事か例を挙げるなら竜宮城に行った話が本当だったというレベルだ。
「ほ、本当にそうなの?」
「本当も何もさっき言ったよ、ハルには何度も伝えてるのに一向に信じてくれないしね」
「信じるわけねーだろそんな話」
ハルも意識が覚醒したようだ、見ているこっちは二重人格が2人とも出ている感覚だ。
「おっと、このままだと逸れてしまうからね、さて最初に何から話そうかな」
「ソロモン王については?」
「それからいこうか、イスラエル3代目国王であったソロモンは72の魔神柱を封印した、歴史神話ではこれは書かれておりそして、その力を自分のものにしようとしたとまで書かれている」
「先に大前提として話しておこう、何故ソロモンがそれをしようとしたのかそれは謎だ、私にもそれは知りえなかったよ」
では何故力を手に入れる必要があったのか、謎が深まる。
「では話そう、どうやって魔神柱の力を得たのかは分からないが、その力を使い『コズモストラゴーイディア』を起こそうとした、正確には起こそうという間接的ではなく自分の力を使うと言う直接的なものだよ」
「それほどまでの力があったのか?」
「あったよ、当時であれば君と同格とはいかないけど相性は最悪だっただろうね」
「最悪?」
彼女は目を細め笑うように
「そう最悪だ、結論を言おう、彼ソロモン王の力は『異常』だ」
「異常?」
異常とは、また聞き慣れない単語が出た、本来の意味は正常ではない、相対的な存在だ、普通、平均よりも能力などが圧倒的に高い時などに使う言葉だ
「彼に対する異常とは?」
「難しいね、彼の異常は一言でしか表すことが出来ないだろう、何故か? 彼そのものが異常だったからだよ」
「彼という概念、彼という個体、彼という存在、その全てが彼は異常だった」
「だからといって何で俺達が勝てないんだよ?」
ハルが素朴な質問をアメジストにぶつける、
「人は『異』を受け付けない存在だ、我々にとっての『異』は彼にとっての『正』だ、逆を言えば我々にとっての『正』は彼にとっての『異』だ、そして『異』は受け付けない」
「でも少し違うところがあるんだよ、異常は正常の攻撃を受け付けない、でも正常は異常の攻撃を受け付ける、これが少し違うところだよ」
「⋯⋯理不尽過ぎないか?」
簡単に言えばソロモンは俺達の攻撃を受けない、無敵のような存在だ、でもソロモンの攻撃は俺達は受けてしまう、一方的にも程があるという感じだ。
「そう理不尽極まりないよ、でもそれもまた『異常』ってものさ」
いつに無く真剣に彼女は語る、静かに思いを語る人のように長いようで短い世界を語る。
「それにしてもよくお前らは勝てたよな」
ハルが関心そうに言うと
「そ、そうかい、それならよかったよ」
「? どう良かったのかは分からないけどまあいいや」
「でも骨は折れたよ心身共にね、私達七人の権限
『愛、盗み、怠け、食欲、見下し、情欲、怒り』全て使ってやっと戦えた、それ位だったからね」
一つの権限ですら彼女らは最強だ、それが七人もいるのであれば最強という一つの正常の枠から外れて異常の枠に片足を入れるくらいは出来るだろう。
「さて、ここからが志龍君にとっては本題となりうるね」
「ああ、そうだな」
「『全ての果てる場所』の事だよね、大方『最果ての地』だよ、というか正解だね」
「最果ての地とは?」
「ふむ、これも難しいね、私には答えがあまり分からないよ、ただの場所とでしか認識してなかったしね」
「じゃあどうするんだ?」
「ここは根暗糞ビッチ馬鹿の『強欲』にでも頼もうか」
「⋯⋯⋯⋯今なんて?」
死より恐ろしい一言が聞こえたように思えた、俺はそれを全否定したい、今聞こえたのは間違いだと全否定したい。
「ああ、『強欲』名はゼオライトだよ」
⋯⋯⋯⋯に、逃げよう。
恐ろしい、怖いもの知らずの俺だけどあいつだけは、あいつだけは!
その場を去ろうとするように俺は一歩下がると。
「駄目だよ、それは私が『嫉妬』するよ」
逃げられないように何かに拘束された
「は、離してくれ、あいつだけは嫌だよ」
「気持ちは分かるでも耐えろよ」
「嫌だ! やばい、来るよ!」
結構テンパってるつーが助けて! もう1度ハルが目を閉じて開けると今度は目の色が白銀に変わった。
⋯⋯⋯⋯来ちゃったよ
「ふふふ、ついに来ましたよこの時が、あーん志龍様♡ちょっとお茶でもしません」
と言い肌を擦り付ける、だがゼオライトよ、てめえは今は男だ!
「だーれがさせるかこの糞ビッチ!」
ハルの頭に拳骨が下る、美穂が顔を赤くしながら鬼のような表情で殴っていた
「いったいなーいきなり何するんですかこの僕に」
「今のご時世僕っ子はあまり流行りませんよ、むしろ僕っ子よりも男の娘の方が需要があるんだよねー」
美穂がニヤニヤと笑いながらそう言った。
「んだと糞尼が!」
「やんのか糞ビッチ!」
やばいこのままでは喧嘩になる、一つため息をついて
「話の方向性がズレる、やるなら後にしろ」
「志龍がそう言うなら⋯⋯」
「志龍様がそう仰られるのなら⋯⋯」
やっと黙ったさて本題に戻ろう
「さて『最果ての地』とは一体なんなんだ?」
「ふーむ、一言に果てといえばどのようか事だと思いますか?」
「うーんスタートからゴールまで?」
「そう正解です、果てとは全ての終わり、ゴールのようなものなのです」
「この世界の果て、それは靴一足分下がったそこなのですよ、世界1周4万kmと捉えるならゴールはその後ろにあるそこなのですよ、そして終わりこそが果てとなるのですよ」
「世界の果てとはある一点の場所が始まりの地であるのです、そしてその終わりが最果ての地、という事なのですよ」
「そして円であるこの世界ではどこにでも『最果ての地』は存在している」
驚きが走る、最果ての地はここにでも誕生する、むしろ無いはずが無いと言われた、これほどまで答えに近づいたことは無いだが、
「でもそれは『概念』として存在しているだけで本当に存在している訳では無いよ」
訳がわからない、皆がそのような顔をしている、
「時に志龍様、神とはどのような存在でしょうか?」
理解出来た、なんだそういうことか
「神と同じ、人々に語られてはいるが物語と同じ存在、本当に存在していないまさに人の思想、『概念』という訳か」
「流石です志龍様、その通り、神とは殆どが人がこうである存在が欲しい、このような存在がいたら等の思いによって生み出されます、そしてそれが物語となり神話となります、そして終わりなどがないこの世界に終わりを求める人もいるでしょう、そしてその想いが『最果ての地』という概念だけの存在を生み出したという訳なのですよ」
そうであるなら一つだけ問題が発生する、
「なら概念だけの存在である所に何故お前達は行けたんだ?」
「簡単ですよ、それこそがソロモンが求めていたからなのですよ、最果てとは全ての終わり、この世界の終わりの存在、彼は求めていた終わりを、この終わりなき苦痛の世界に、彼は言っていました『我は全てが回るこの世界に飽きが指した、そして絶望した』と、そして彼は求めた『最果ての地』を、異常はそれを可能にし生み出したのですよ」
「それが世界の終わりとはあまり私自身関連付けられないのだけど」
「全くこれだからゆとりは」
「あん?」
「ハイハイどぅどぅ」
「ともかく、生み出した概念が存在した時にその元からあった存在と新たに生み出された存在には時空のズレが生じてそこに莫大なエネルギーが生み出されるのですよ、そしてそれを自分の魔法と一緒に元あったこの世界をドーン、いっちょ上がりと言うわけなのですよ」
驚きはあるが納得はする、
「という事でこれで私の話はおしまいです、ではまた志龍様会いましょう」
と言い彼女は帰っていった。
そしてアメジストが戻ってきた
「さて君達はこれを知った、その上で聞こう」
「最果ての地とは君達が、いや君が求める世界なのかい?」
確かに、そこに俺が求めるものがあるとは限らない、求めても手に入らないものかもしれない、確率論、一般的なものであれば虚空の彼方それ以下に等しい確率、でもあるか無いかで考えれば五分五分となる、イカサマかもしれないが一つの真理。
考える、無いかもしれないものを、考えるあるかもしれないものを、それに皆を巻き込んでいいのか、
「おい志龍」
不意にハルが声をかけてきた、そして笑いながら
「俺達を巻き込みたくないなんて考えんなよ、むしろ連れてけよ、お前には返しても返しきれない恩があるんだからな」
「私はハルに着いていくだけなのですよー、でも助けられたのは事実なのですよー」
そして美穂は呆れ顔で
「本当に呆れるわね、志龍」
そう言うと少し俯いていつもの弱々しい美穂になった、そして笑った、その笑顔はいつもの弱々しいものでは無い、信頼している笑顔だ。
「君について行きます、それが君と私が交わした約束でしょ」
馬鹿だった、俺は馬鹿だった、俺達は俺達に救われた、そして俺達に何かが起こったらそれは俺達が救わなくてはならない、それは俺だけであっても一緒だと教えられた、何を俺はしてたんだ、こいつらを救う、そしてすべてを取り戻す、これにはみんなが必要だって事を。
「本当に馬鹿だな」
みんなで笑った、心からこのみんなで良かったと思った、
「死んでも化けて出んなよ」
「その時はお前も死んでるだろ」
信頼している、心の底からそう思う、いつの間にか嫉妬も居なくなってっていた、みんなで笑いあった。
いつの間にか俺は忘れていたものがあったのかもしれない、独りでなんとでもできる、英雄でもないただのちっぽけな人間が考えていたこと、全否定してやろう、みんなで何とかする、これに変えてやる、誓い合ったあの日から俺達5人の命は一つだった。
「んじゃ一つ、待とう、時期が来るまで、勝算を、そして故郷を、まだ今じゃない、むしろまだまだだろう、そして敵も誰か分からないけどまあ俺達なら何とかなるだろ」
「なんとかなるってなー」
ハルが微妙な顔をした、
「そうだよねー何とかってねー」
美穂も、プレアもそんな顔をした
「おい、泣くぞ」
「嘘だよ嘘、お前が言うんだから絶対勝てるって、信頼してるぜ志龍」
再確認した、そしてこいつらでいいと本気で思った、敵はまだ分かっていないが恐らく黒魔道教団だろ、奴らを倒す、そして俺はロベンを見つける、そう決めた。
「ところで」
美穂が横槍を入れた、美穂を見ると視界にもっもと俺が嫌いなものがあった
「レポート山ほど残ってるのはどうしようかな」
ハッハッハー、ここでそんなオチとは考えたなレポート作成者よ、俺は美穂に笑顔で、心の底からの笑顔で
「美穂! 後は任せたぜ!」
「嫉妬!逃がすな!」
いつの間にか嫉妬が出てきたらしく笑いながら告げる
「逃げたら『嫉妬』してしまうよ」
また何かに囚われた、
「くっそー! 離せー!」
じたばたする様にまたみんなが笑った、今日は何かあった日ではない、でも1番笑い合った日だ。
1番長い一日が終わった。




