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3SGM~三分間のスーパーガードマン~  作者: 絶対に斬れない刃
着任。新生活に燃ゆる警備員。
6/12

第五話 警察ってなんか堅い感じがするのよ、わかる?

工藤や篠原と共に行った四人チームで行った仕事の功績が評価されたのだが、その仕事は警察の援護というものであり・・・・・・・。

3SGM~三分間のスーパーガードマン~

第五話

警察ってのは堅い感じがするのよ、分かる?






















「・・・・・・・ということだ、鉄。」

「つまり、どういうことですか、柳原チーフ?」

柳原に奏と共に呼ばれた龍也であったのだが、柳原の言っている言葉の意味を理解できずにもう一度、説明を乞う。

「渚が頑張りすぎたのがどうも警察の目に留まったみたいでな。『うち』との共同を願われたってことだ。」

「私が?どうしてです?私、一般人ですよ?」

柳原の言ってることを理解できない様に奏は柳原に問うのだが、柳原の言ってる言葉を龍也は理解した。

「渚先輩と一緒に手伝ってこい、と。」

「そういう事だ。工藤と篠原も一緒の四人の一チームを向こうは所望だ。・・・・・・・・何をしたんだ、お前ら。」

「工藤としのっちもですか?私と鉄の二人じゃなく?」

「そうだ。まぁ、『うち』としては文句はないんだがな。言っとくが、『うち』は単なる警備会社だぞ。SATでもSWATでもなく、だ。別にいいんだがな。名前が売れるし、警察にも恩を売れるし。」

「あー・・・・・・・・・・、すいません、チーフ。」

「気にするな。それに、どっちかというとそれを言うなら社長に、だろうが。」

「そうですね。」

「それが、私が指名されるのとどう関係が?」

奏は全く身に覚えがないと言い張る。

その奏の様子を柳原はため息をついて答える。

龍也は柳原の心情を心の中で察した。

前回、能力者が二人もいたが、一般人が一人というハンデをもった状態で『ヘルズドッグ』という『首輪なし』の二、三人の集団を無力化してみせた。

その様子を龍也は見たわけではないが、きっと奏が機動力に物言わせて無力化したに違いない。

工藤も篠原も特には言ってはいないが、たぶんそうなのだろう。

というよりもそうしたに違いない。

そうなると、龍也にとって奏はどうして警察とか『軍』ではなく、普通(?)の『首輪付き』の民間の警備会社にいるんだろう?と疑問にしか思えないのだが。

「今回は別に普通車でも大丈夫だ。装備も心配はするな。『向こう』が用意してくれるらしいからな。」

「閃光もスモークもです?」

「それは『うち』で買ったのがあるから、持ってけ。」

「ちぇ~。了解です。」

不満そうに奏は頬を膨らませる。

「だが、警棒なり盾なりは『向こう』が用意してくれる。使い潰しても書類を書かんでもいいぞ、良かったな?」

「使い潰していいんですか!?やった!!」

柳原の言葉に奏は喜びを露にする。

その様子を見て、龍也は嫌な予感を覚えて、柳原の顔を見る。

「使い潰せ、って。良いんですか、チーフ?」

「良いんじゃないか?『うち』の管轄じゃないし。それに、渚のヤツ、張り切ってるしな。」

ほら、と柳原は奏の方に首をしゃくる。

「よっしゃ、頑張るぞ!!」

奏がガッツポーズをして気合を入れている様子を見て、うわぁと龍也は自分の頬が引き攣るのを感じた。

「そういうことだ。よく見とけよ、鉄。」

「自分、渚先輩の調教師でも世話役でもないんですけど。」

「だが、渚のバディ、相棒だろ?それもお前の仕事だ。やったな。」

「よくないです。」

柳原の言葉に龍也は納得は出来なかった。

まぁ、仕事という事であれば納得は出来なくともしなくては給料にもならないのだが。

にしても、ひどくはないだろうかと龍也は思う。

会社に勤めるようになってまだ一年も勤めてはいないし、恐ろしいことに一週間も経っていないのだ。

なにこの会社、『首輪付き』の能力者が多く勤務してるし、それなりに良い会社だと聞いていたから、この『インズ・ガード』に履歴書を送り、面接で受かり、能力者を道具の様に使い潰すブラック会社からの魔の手を逃れて嬉しいと感じた瞬間に能力者をいとも簡単にあっという間に制圧し、無力化する一般人の先輩と新米を組ませようとか頭沸いてるんじゃないのかと龍也は思ったりした。

それが、今度は警察の手伝いをしろときた。

龍也にとっては正気を疑う内容であるが、残念ながら夢でも幻でもない現実のことであった。

今度の仕事もまた、一人留守番を任されるんだろうな、と龍也は工藤と篠原の二人に伝えに行った柳原の背を見ながらそう思っていた。

「渚先輩。正直に訊いていいですか?」

「ん?いいけど?」

龍也は訊こうと思っていた質問を奏に投げかけようと決意し、渚に問う。

「なんで、警察じゃないんですか?」

「えっ、『ここ』じゃいけないの?」

「いや、単なる興味です。別にいけないとは・・・・・・・・。」

「そう。ならいいけど。別に理由があるわけじゃないんだけどさ。」

ほら、と奏はいったん言葉を切って、

「警察ってのは堅い感じがするのよ、分かる?」

と龍也に訊いてくる。

「いや、分かりますけど。なら、他でもよかったんじゃ?」

警察は奏の言う通り、堅いイメージがある。だが、それを考慮して他を選んでも警備会社になるという答えにはすぐには行きつかない。

「他は他でさ、能力者じゃないといけないとか能力者優先で採ってるんだよね。私、能力者じゃなくて一般人じゃん?」

「そうですね。」

能力者以上の一般人なんて貴女以外にいないけどな。

「他当たったけど、全部ダメ、全滅でさ。そんなときに『ここ』受けたら、採ってくれて今に至るってわけ。分かる?」

「あー、了解です。分かります。」

今の日本は少し昔の就職氷河期とも言えるほどに就職難の状況となっている。

能力者が優遇されても、だ。

龍也は能力者だが、『インズ・ガード』を受ける前までには、それは多くの企業に面接したものだ。

龍也のような能力者ですら、就業に難を極めたのだ。

一般人の奏の場合であれば、尚のこと困難であったことであろうと想像するのは容易いことだ。

それにしても、奏の実力であれば早々に困ることにはならないと、龍也には思うのだが。

「先輩の場合だったら、そんなに困らなかったのでは?」

「今だったら、ね。でも採用にはならないんじゃないかな。一般人だし。」

奏の言葉を聞いて龍也はしまった、と自分の失言に気が付いた。

奏にこの話題は禁句であったと龍也は言ってから後悔したが、奏は気にすることなく龍也にあることを訊く。

「どうでもいいけど、鉄。私のこと、先輩、先輩って言ってるけど、歳、私よりも上でしょ?」

「えっ、先輩の方が上じゃ?」

「『ここ』にいるのはね。歳の方は、アタシよりも上か、同じかって思うんだけど。」

「えっと、23っす。」

「同じじゃん!!」

「マジっすか。」

「っつーわけで、敬語やめて。先輩からの命令ね。」

いや、命令とか言われても・・・・・、と龍也には思えてならない。

年齢が同じだと言われても奏と同じ年齢だとはにわかには信じられない。

冗談のようにしか龍也には思えてならないし、いくら年齢が同じだからという理由で敬語をやめろ等と言われても龍也は『ここ』、『インズ・ガード』では新入りなわけで先輩にあたる奏に敬語ではない感じで話すというのも気が引けるのだが。

「えっと、先輩。」

「工藤としのっちもかー。ってことは四人か。前回は地味だったけど、頑張りなよ、鉄。」

龍也の言葉を流して奏は自身の思考の渦に思考を溺れさせていく。

これは、少しというより、たぶん聞きはしないだろうと龍也は思った。

別に話す機会はいつでもあるわけだし、と龍也は自身を納得させる。

「どんな内容か分かりませんけど、善処はしますよ、渚せんぱ・・・・・渚さん。」

「うん?うーん。・・・・・・・ま、及第点か。これからに期待だねっと。」

龍也が言い直して奏を言う言葉を、奏は採点していたようで悩んだ様子を見せると納得したかのように、頷いた。

これからって、マジかよ・・・・・。

奏の言葉に龍也は戦慄と絶望を覚えた。




「『インズ・ガード』に仕事の依頼を警察がするというのも変な話だが、人を指定してくるとはな。」

「そうだねぇ、工藤君。確かに変な話だけど、お仕事とあったら、やるしかないでしょ?」

「そうそう。お仕事、お仕事。」

「・・・・・・・・・・・渚に任せるか。」

警察が指定してきた場所に龍也と奏、工藤と篠原の四人は着いたのだが。

目の前にあるのは大きなビルがあり、警察の車両も何台かあった。

襲撃でもあったのだろうか?

それであれば、警察で事足りるように思うのだが。

龍也たち『インズ・ガード』のような民間の警備会社の出番ではないように思えてしまう。

そんなことを考えていると、ガシャガシャという足音を鳴らしながら、一体のアンドロイドと一人の刑事が龍也たちの方に向けて歩いてくる。

「『インズ・ガード』の工藤さんと篠原さん、渚さんに鉄さんですね?」

「そうですが。」

「警視庁異能対策二課の斎藤と言います。この前はどうも。」

「この前?」

一体何のことだ?と思う『インズ・ガード』の面々を他所に斎藤と名乗った刑事は四人と握手を交わしていく。

『この前はこの前です。ミスター。』

そう言うアンドロイドの方を向いて龍也は驚いた。

「この前のか!?」

『ja。お話をしてくださり、感謝しております。』

「知ってるの、鉄?」

龍也の言葉に奏は疑問をぶつける。

「この前の・・・・・・・・・・『首輪なし』が暴れて通行止めになった時のですよ。」

「あぁ!!あの時の!!」

奏は合点がいったという様に手を叩くが、その奏の様子とは裏腹に工藤と篠原の二人は分からないといったように首を傾げる。

「ってことは、今回も?」

「そうなります。」

こちらに、と斎藤は龍也たち『インズ・ガード』の面々を手招きをする。

「『首輪なし』、いえ、『ヘルズドッグ』からの挑戦状と言いますか、襲撃予告を企業が受けまして。」

「であれば、『うち』に手伝いを要請するのはどうかと思うが?」

「そうそう、『首輪付き』とはいっても、民間の警備会社ですよ、『うち』。」

『ですが、信頼はできます。「上」も「貴方方」、「インズ・ガード」ならばというお墨付きを付けておりますし。』

斎藤の言葉に、工藤と篠原は意見をぶつけるが、アンドロイドに一蹴される。

「んで、信頼できるとこなら、信頼できる腕の連中に頼みたい、と。」

『そうなります。』

「それが今回、依頼した概要です。」

「概要ねぇ・・・・・・・・・・。」

「機動隊もおりますし、戦闘用のアンドロイドもいます。危ない時には助けますのでご安心ください。」

概要と言っても、能力者である『首輪なし』と『首輪付き』をぶつけ合って、弱ったところを取るという『ハイエナ』を警察はするので、頑張れというようにしか龍也たち『インズ・ガード』の四人には聞こえなかった。

機動隊がいるから、アンドロイドがいるからとは言え、こういう立ち回りはどうなのだろう。

「・・・・・・・・うん?戦闘用?」

『ja。戦闘用です。』

龍也はふと疑問に思い、独り言のように誰にも言うのではなく、ただ呟いたのだが、龍也の呟きにアンドロイドが反応する。

『能力者に対する・・・・・・・試験用と言いますか、一般人の盾となるように作られたのが、きっかけになります。』

「それが、『彼』のようなアンドロイドが現場にいる理由ですね。警察も能力者が多くいるわけではないので、はい。」

「たしかに、能力者が世界の全体にいるというわけではないからな。あくまでも一握りだ。」

「そうだねぇ。」

「だから、『ヘルズドッグ』とかの能力者は選ばれた特殊な人間やらどうとかそういう変な宗教じみた集団ができるわけだ。困ったね。」

「それもどうかと思うんですが。特殊な人間がどうとか考えても人は人です。それ以上でも以下でもない。」

「それができれば、戦争なんてないよ、鉄。」

「確かに、その通りです。残念ながら、一般人にも被害が出てます。」

『ja。そのための「私たち」、アンドロイドにライトが当たったわけです。』

「『うち』の様な民間の警備会社にもな。」

なるほど、と龍也は納得した。

人が人であることに選ばれた~なり、神の~なりと他人と区別する以上は戦争というものは起こるはずもないわけで。

そうした人たちから力を持たない一般人は異能を持っていない以上はどうにかして対抗手段を取らなければならないわけで。

それが、龍也たちと一緒になって歩いているこのアンドロイドの様な機械の塊という目に見える結果というわけだ。

それを良しと思わない人達は民間で警備会社を立ち上げて、警察の手の届かない人達を守っているというわけだ。

そう考えた龍也であったが、そうなると、と思考をやめ、能力者に交じって歩くバディ、相棒であり、先輩である奏を見てみる。

この渚奏という女性はどの様な心境でこの場にいるのだろうか。

そう思う龍也を置いて、『インズ・ガード』の面々は歩いていく。

警察関係の車両と大型の機械を後ろに載せているトラック、それらの周りを囲う様に立っている機動隊と思われる防弾チョッキを着て透明な強化プラスチックの大きな盾を持つ隊員数人と、刑事のように思われる防弾チョッキのみの男性が数名。

「異能対策としているのは、私だけでして。他は他所の応援に。」

苦虫を嚙み潰したように斎藤は言う。

「他所?他にも襲撃予告を?」

「はい。警察として民間人を巻き込む結果になったのが申し訳なく思いますが。」

「いや。むしろ、これだけの人材を用意できたのが上出来だと思うが。」

斎藤の言葉を工藤は良くやったと褒めるように言う。

龍也には良くは分からないことではあるが、機動隊員と他の課から人材を借りたうえで、龍也たち『インズ・ガード』からの人材を合わせてかなりの人数になる。

これだけの人数を確保できたというだけでもお手柄な様に思う。

「じゃ、話を詰めるか。鉄、お前はここで待ってろ。」

「了解です。」

話を聞いて人材をどこにどのように配置するかの話を詰めるのだろう。

青いボディの指揮車と思われる車両に龍也とアンドロイドの二人を外に残して、他の面子は入っていく。





『ところでミスター。お話でもよろしいでしょうか?』

「うん?あぁ、別にいいけど。」

龍也は外で待つ間どう暇を潰そうかと思っていたのだが、それは外で待たされたアンドロイドも同じだったらしい。

『ミスターはその・・・・・・・・・・非常に言いにくいのですが、同僚の方からよろしく思われておらっしゃらないないので?』

「いや、そうじゃないけど。訊いても?」

『ja。少し腫れ物を扱いように思いましたので。』

「腫れ物って。いや、そうかもしれないけどさ。」

『よろしかったら、聞きますよ?それくらいしかできませんが。』

龍也はアンドロイドの言葉を聞いて少し泣きたくなった。

愚痴を機械に話して慰めをもらうとは。

まぁ、このアンドロイドは仕事仲間でも何でもない外部の人間だから、『インズ・ガード』の内情を知らなくて当然なのだが。

「一応言うと、俺、最近入った新人であの人ら先輩。そういう風に思われても仕方ないとは思うけどさ。」

『なるほど。それは失礼をば。』

「いや、いいさ。お前は知らないから仕方ないわけだし。そう言えば名前あるのか、お前?」

『nine。識別の略称はありますが。』

「それは?」

『ja。アインと言います。』

「アイン・・・・・・・・アインね・・・・・・・・・。もしかして、ドイツ語?」

『ja。良くお分かりで。』

「そのjaとかnineとかも?」

『ja。その通り。』

「良い趣味してるな。」

『お褒めに預かり、恐悦至極。』

「褒めてねぇよ。」

嫌味で言ったつもりだったのだが、誉め言葉だと思われたらしい。

それに、この嫌味もアンドロイド、アインに対して言ったのではなく、設計者に向けて言っただけであり、アインに向けて言ったのではない。

「アイン・・・・・・・・一・・・・・・・・試作機か、お前?」

『ja。民間でも使えるように汎用型として作られました試作機です。』

「民間でもってことは・・・・・・・それ以外のはあるのか?」

『ja。自衛隊などの使用を考えて作られた特式が二機。「欠陥機」として封印されております。』

「なんだそりゃ。」

アインの言葉に龍也は呆れる。

特式ということは、汎用型のアインとはかなり性能も違うものであるはずなのに、それを封印とは。

『ja。一機は感情がなく、人を人ではない様に思考し、人とのコミュニュケーションに難があります。もう一機は感情の浮き沈みが激しく、人とのコミュニュケーションに問題があります。』

「そりゃひどいもんだ。」

『ja。両機の問題として人とのコミュニュケーションに問題がありますので、私の様な汎用機が出来た、というわけです。』

「それもそれでアレだが。だがま、お前みたいな汎用型の試作機が出来るってことは相当なレベルなんだろうな。」

『ja。それはもう。中々ご期待にお応えできるかと。』

「お前の言う通りなら、期待できるかね。会う機会はないだろうが。」

『ja。ですね。』

アインの言う通りなら、特式のその二機はかなりの高性能だろうと推測できる。

封印処理をされていて民間の警備会社にいる会社員である龍也が会うことはないだろう。

「鉄、待った?」

「渚・・・・・・・・・さん。いえ、それほどは。」

指揮車から奏が外に出てくる。

「渚さん、か。仲が良くなったみたいだな。」

「仲が良いことは良いことだよ、工藤君?」

工藤と篠原も外に出てくるが、先程の奏とのやり取りを聞いていたのか意地悪く龍也を弄ろうとする。

「工藤もしのっちも苛めるのやめてよ。鉄のバディはアタシなんだから。鉄を苛めるってことはアタシを苛めるのと同じよ?」

「それはすまん。そういうつもりはなかった。」

「あー、ごめん。バディ苛めるの、他人が手を出しちゃ駄目だよね。」

「オーケー、オーケー。許したげるよ。」

奏の言葉に龍也はおや?と疑問に思った。

だが、その疑問がなんであるのか龍也には分からなかった。

「それで、どうすれば?」

「あぁ。渚とアンドロイドとお前で向こうに着け。俺と篠原があちらに着く。」

龍也の質問に工藤は指で龍也から見て左手を指し示す。

そして、それとは逆を指で指す。

「向こうは誰もいないが、何かあればすぐに分かる。俺たちの方にも何かあって駆け付けるのが遅れるかもしれんが、その間位は持ってみせろ。」

「きついこと言うんだから、もう。ま、私もいるしどうにかなるでしょ。」

「渚・・・・・・さんには無理させませんよ。」

「言うね、鉄。」

『私もいます。少しとは言わずに、持たせますよ。』

「頼りにするぞ、アイン。」

『ja。ご期待にお応えしましょう。』

「仲がよろしいことで。」

龍也とアインの会話に奏は訝しげな視線で二人の様子を見るように細めた目で見ながら言う。

「・・・・・・・・・って、アインって言うの?」

『ja。自己紹介が遅れて申し訳ないですが。』

すまないという様に腰を折るように謝罪するアインに対して奏は手で制す。

「いやいや、気にしないで。自己紹介してないのは私たちも同じだから。私は渚奏。漢字とか分かる?」

『ja。分かりますとも。』

「俺は鉄龍也。さっき言ってた男性が工藤さんで、立って笑ってた女性が篠原さん。下の方は・・・・・分かります?」

龍也は奏に振るが、振られた奏は分からないと言う様に片手を振る。

「忘れた。苗字覚えてたら良いでしょ。」

「えっ、でも、渚・・・・・・・さん、同期じゃ?」

「そうだけど、そんなもんでしょ。」

「マジっすか。」

奏のいい加減な具合で言われた龍也は呆気にとられた。

それ、紹介になってない紹介です、と龍也は言えなかったが、そんな会話を気にしていないのか工藤は会話を続ける。

「あちらはあちらで警察連中が固めているが、持つかどうかまでは知らんし、実力も分からん。持てばいい方だろうとは思うが。その時は頼むぞ。」

工藤は機動隊などの警察の隊員たちがいる方に視線を向けて話す。

龍也たち『インズ・ガード』の四人はお互いの実力を把握はしているが、警察関係者とは初見であり、彼らもまたこちらの実力は把握していない。

お互いがお互いを理解も把握もしていない現場を『ヘルズドッグ』の『首輪なし』の襲撃を防げるかと訊かれれば、出来るかどうか怪しいところだと答えるだろう。

『ヘルズドッグ』の『首輪なし』連中の実力も把握してはいないのだ。

どれ位になるのかは不明だが、被害ゼロということにはならないだろう。

厳しいなと龍也は思う。

その龍也の顔を見て奏は龍也に自信を付けてもらうかのように笑ってみせる。

「大丈夫、大丈夫だよ、鉄。アンタは私の相棒なんだから、自信持ちな。」

「渚・・・・・・・・・・・さん。」

奏に自信を持てと言われても龍也から不安は除かれるわけではなかった。

一般人であり、能力者を圧倒できる強さを奏は持っている。

その人物から、自信を持てと言われると、複雑に思えてしまう龍也であったが、時は止まることを許さない。

「よし、じゃ、頼んだぞ。」

龍也の肩をポンと工藤は叩いて、担当場所に歩いていく。

工藤に続くように篠原も歩いていく。

ならば、やるしかない。

龍也は覚悟を決めた。





「気になったんだけどさ。汎用型ってことは、特別仕様のタイプとかあったり?」

『ja。えぇ、ありますとも。特機と呼ばれておりますが。』

龍也がアインに訊いたことを奏は再び訊いていた。

先程の場所から離れ、担当場所に着いた龍也と奏、アインの三人であった。

一応、ライオット・シールドを龍也は貰ってはきた。

この前は、『インズ・ガード』で使える代物で、篠原の能力付きの特殊仕様のモノであったが、今回は篠原の能力付きでも『インズ・ガード』で使えた代物でもない。

鉄などの金属出来ている頑丈なシールドではなく、強化プラスチックで多少頑丈であるというだけの代物だ。

どれほど安心できるかと訊かれれば、あるだけまだマシというモノでしかない。

心細いうえこの上ないのだが、どれほど耐えれるのか、その点は不安しか龍也には感じられなかった。

そんな龍也の心境を知ってか知らずか、二人とも龍也を気にした様子はなく、ただ話していた。

それはそれでどうかと思うのだが。

「その特機は?あるなら出せないの?」

『ja。「彼女ら」は今現在、封印処理にしていますので。』

「封印処理?『不良品』・・・・・・・・とか?」

『nine。優秀な機体ですよ。しかし、そういう意味では「欠陥品」、「不良品」かもしれません。』

「そうなの?」

『ja。人間のサポートの為に「我々」はいるのですが、どうも人間の方々を下に見ているらしくて、「我々」の考えに否定的に考えておられようで。』

「うっわ、それもどうなんだろうね。」

『ja。そのため、私の様な汎用型がこうして「ここ」にいるということになります。』

「なるほど。」

奏は龍也の方を向くと、

「で、そっちはどうなの、鉄?」

と龍也に訊く。

「特に変化はなし、です。平和なものです。」

「平和って言ってもねー。襲撃予告されてる以上は平和じゃないんだけど。」

『しかし、現状は平和としか言えない状況かと思われますが。』

「俺の目からはそう見えるだけで、アインからはそうは見えていないだけの話かもしれません。・・・・・・・どうだ?」

『nine。そうであれば、先ほどの発言は撤回しているかと。赤外線もサーモセンサーも反応なし。ステルスの様な変化系の能力ではないようですね。』

「目で見えてなくても、襲われてはないよ。しのっちたちの方も変化ないみたいだし。」

龍也の言葉にアインは否定な返事をし、そのアインの言葉を肯定する様に奏は工藤たちの方を見て言う。

向こうは龍也たちのいる位置よりかは人通りは多い正面玄関の場所を守っている。

龍也たちは正面玄関よりかは人通りは少ない入り口だが一般道路の車の通りが少ない。

だが、だからと言って警備を疎かには出来ない。

にも関らず、奏は龍也より慣れているのか、緊張した様子ではなくかなり気楽にしている。

能力者でもない一般人であり、龍也より動きやすいラフな格好であるにも関わらず、だ。

「今の時間帯じゃないんじゃ・・・・・・・・・・。」

「襲撃予告してくるだけまだ良心的なのかもね。予告してくるなら、今くらいに来るでしょ。間違ってなければ、だけど。」

『nine、とは言えないのが残念でありますが。時間指定する予告を警察にするという時点でミス渚の言う通り、まだ良心があるかと。』

「『ヘルズドッグ』の『首輪なし』も一般人は巻き込みたくはないっていう良心が働いてんのかね?奇妙な話だけど。」

「一般人ならここにいるけど?」

「渚先輩は例外っすよ。普通に『首輪付き』も『首輪なし』も圧倒できるって、一般人じゃないです。」

『nine。「アンチスキル」と呼ばれる装備であれば、一般人でも能力者を圧倒できます。』

「警棒とか使ってもか?」

『・・・・・・・・・・・・「アンチスキル」装備で?』

「たぶん、普通に売ってるのじゃないかな。」

『・・・・・・・・・なら、ミスターの言う通り、例外かと。』

「アインも冗談言うんだねぇ~。最新の技術は結構進んでるんだねぇ~。」

『ミスター鉄、笑うところでしょうが、その様な感情はありません。なので代わりに頼めますか?』

「そこは冗談でも笑うんだよ。」

『nine。ですから、感情が・・・・・・・・・。』

「なんで、冗談で返さないんだよ!」

冗談を言えるのに、冗談で笑い返せないと言うのか、コイツは、と龍也はアインに少し腹を立てる。

汎用型がこの調子だというのであれば、特機がどの様なモノなのか気にはなる。

だが、アインの言う通りならば、封印処理されているはずであり、科学者でもない龍也には関わることのないことであろうということは龍也にも分かる。

そのうち忘れるだろうな、と思う龍也に『なにか』がコロコロと転がってくる。

なんだ、と龍也は見る。

『それ』はどこにでも、というよりスポーツ量販店ならどこでも売っているサッカーボールの様に龍也には見えた。

なぜ、と思う龍也だったが、次の瞬間!

ドォン!!

そのサッカーボールは龍也の目の前で轟音を起こし、爆発する。

「鉄!?」

黒煙に龍也の姿が隠れ、奏は龍也の安否を心配する。

だが、その黒煙から出てきたのは龍也ではなく、黒目の色をしている上下の服に身を包んでいる男性であった。

「・・・・・・・・鉄っ?」

『nine。違いますと言っておきます。「首輪なし」、「ヘルズドッグ」の方だと拝見します。』

「よくも鉄をっ!」

奏は腰に差してあった警棒のグリップを引き抜き、警棒を伸ばす。

伸ばした勢いで走り出そうとした奏の目の前に龍也を襲ったサッカーボールを男が掴んでいるのが目に映る。

先程の光景を思い出し、奏は前に走り出す力を後ろに向けて、大きく後ろにバックステップをする。

その後退した奏に男はサッカーボールを投げる。

ボールを避けることは後ろに身体のベクトルを預けている奏は避けることができずに、そのまま当たるしかないと思われたが、奏は身体を捻るようにしてボールを避ける。

避けられ、奏の後方に行ったボールは地面に着いた瞬間。

ドォン!!

爆音を響かせ、熱風を吹き乱らせる。

『援護します、ミス渚。』

「援護するなら早くして!」

「今のを避けるか!!クソアマが!!」

奏が回避するのを見て男は暴言を吐くが、男の手元には何もない。

地面に着いた奏はタ、タンと靴で地面を叩き、姿勢を正す。

その間に、アインは腰部に手を持っていき、銃の様な銃口がないモノを取り出し、構え、トリガーを引く。

バシュ。

両側に巻かれた細いワイヤーの先端部が男に触れた瞬間。

バチィ!!

ワイヤーを伝って電流が男の身体に流されていく。

その電流が身体に到達し、男は。

「っぐ!!あぎぃ!!・・・・・・・あががが。」

身体を痙攣させ、ビクビクと身体の外に流せない電流を流したい一心で身体を動かそうとするが、動かせることもなく。

バタッ。

男の身体は地面に身体に倒れる。

『ご無事ですか、ミス渚。』

「アタシは無事、なんともない。けど・・・・・・・・・・。」

奏は龍也が立っていた方を見る。

単なる強化系の能力ならば、龍也はそう簡単にはくたばるはずはない。

だが。

龍也の無事を祈りつつ、黒煙が晴れるのを待つ。

そして、徐々に薄くなり、見える位に晴れると。

「・・・・・・・・・鉄っ!」

ヒビが入っているライオット・シールドを前方に構え、二本の足で地面に立っている龍也の姿が見える。

「・・・・・・・・っく~。結構きついな。だが、ちょいと火力不足だな。」

「火力不足、ね。なら、早く出てくればいいのに。」

「その前に、ちょいとが付いているんですが、それは。」

『ja。しかし、ご無事の様で何よりです。』

「全くだよ。」

龍也の姿を見て、奏たち二人は安堵の言葉を口々にする。

だが。

バチッ。

奏たちの言葉を聞いていた龍也の耳に違和感を覚えさせる電気が放電するような音が届く。

・・・・・・・・放電?

その結論が出た直後。

バチィ!!

龍也と奏の二人に空気が引き裂かれる様な衝撃が襲いかかる。

しかし、その感覚も一瞬のこと。

「鉄!!無事っ!?」

「俺はなんとか。アイン!」

奏が訊いてくる言葉も自身が発している言葉も理解はできるということに龍也は安堵し、アインに無事を問う。

バチ・・・・・・・・グィン・・・・・・・ギィ・・・・・。

だが、そこにいたのは先程まで立っていた金属の傷のない身体を持ったアンドロイドではなく、無残にも身体に穴を開けられた人型の屑鉄と化したスクラップがいた。

龍也の声に反応してか、首を曲げようとしているのか、動かそうとする首はほんの少ししか動くことはなく、身体の内部に張り巡らされたコードが内部電源を放出するかのようにバチバチと漏電しているのが、その開けられた穴から窺える。

「くそっ!!やられたかっ!!」

「穴・・・・・・衝撃・・・・・・・・電気・・・・・・・・まさかっ!」

アインの様子を見て奏はすぐにアインから目を外し、正面を見据える。

そこには大型の『なにか』を荷台に載せた軽トラックが。

荷台には大型のコンデンサーと思われる円柱があり、その円柱から伸びたコードを接続した一本のレールとそのレールに直接挿したように何本もの小さく細い円柱が・・・・・・。

そのレールに銃の様にトリガーを付けて、狙いを付ける様にスコープまで取り付けて、スコープからこちらを見ている男性がいる。

奏は瞬時に『それ』がなんであるのかをすぐに把握する。

「レールガン!?」

小さいモノであればあるほど火力を増し、どれほど厚い盾であろうが高速という速い速度をもって貫き通すという堅いモノであろうが、なんだろうが電気という人類が生み出した文明の利器で貫けるという超兵器がそこにはあった。

「それはないわー。いくら何でもなさすぎだわー。」

「どうします!?」

「リロードには時間がかかると思うからそこを押さえる!!」

「神頼みっすか!!神に祈るってのは自分はどうも!!」

「それはアタシも同じ!!」

一発撃てば、再び撃てるようになるまでの再チャージつまりは、リロードに要する時間は長いはず。

リロードが完了するまでの間に接近して取り押さえる。

そう奏は考えて、奏は走り出す。

奏が走り出すのに遅れ、龍也も走り出す。

二人が走り出す様子に慌てた男、スナイパーは軽トラックの天井をバンバンと激しく叩く。

運転手は激しく叩かれ、エンジンに火を入れ、軽トラックを動かそうと車両を前に動かそうとする。

その動きを予想した龍也は腰部のベルトに通してあるポシェットから黒い色をした物体を取り出し、ピンを抜いて、軽トラックの前方に投げる。

投げられた物体は放物線を描き、龍也がイメージした到達点に到達し、ブシュ、と音と共に煙を軽トラックの前で噴射する。

一般人が投げて届く距離でなくとも、龍也は能力者であり、三分という限定的な時間だけだが、その間は超人的な身体能力を発揮することができる。

今の能力使用状態の龍也であれば、一般人が投げても届かぬ距離に投げて届かせることなど容易である。

「もう一発ある!?」

「手持ちが一発だけっす!!」

「はい、もう一発!!」

煙は軽トラックの前で起きたが、いつまでも散布できるわけではない。

散布できる時間には限度がある。

それにまだ車両とは距離が離れているので、すぐに辿り着けわけではない。

だが、分からぬ奏と龍也ではないのもまた事実。

奏は龍也に腰部のポシェットから龍也が投げたのと同じ黒く塗装された物体を投げて寄越す。

「うわっと!!破裂したらどうするんですか!!」

「ピンは抜いてないから大丈夫!!」

「そういう話じゃないと思いますが・・・・・・・・・。」

仕方ないな、渚先輩だし。

口には出さず、心の中で苦言を言い、自身を納得させると渡された物体からピンを抜き、再び投擲する。

その投擲も先程描いた軌道に乗り、放物線を描いて、煙の中に消え、煙の中から煙を噴射する。

目の前で煙を焚かれたからか、その事に苛立ちを露わにした運転手は窓を開け、荷台のスナイパーに向けて怒鳴りつける。

スナイパーは渋々といった様子で、スコープを覗き込み、二人のどちらかに狙い定める。

それを好機と見た奏はポシェットから先程の黒い物体ではなく、青く塗られた物体を取り出し、龍也には投げ渡さず、前方に向けて投げ入れる。

「前方注意!!目の玉守りな!!」

そう言うと、奏は片腕で目を守るように、腕を上げて目に当てる。

龍也は、奏の言葉に疑問符を出しつつも、奏が投げた青い物体と奏のセリフと取った動作を見て瞬時に理解し、目を守る様に腕で目を塞ぐ。

瞬間。

カッ!!・・・・・・・キィィィィィィン。

眩い閃光が破裂すると、耳に甲高い高音が解き放たれ周囲に響く。

高音に身体のバランス神経が麻痺しながらも、龍也と奏は突き進んでいく。

スナイパーは奏の動作に気が付かずにスコープを覗き込んだままであったため、閃光で目を焼かれ、高温で身体のバランスが取れずに軽トラックの狭い荷台で身体を倒しのたうち回っていた。

運転手も同様に突然目の前が煙で覆われたかと思いきや、横から閃光と高音に襲われ、身体をハンドルに預け倒れていた。

「鉄、運転席!」

「きつい注文ですね!!」

奏は龍也に短い指示を出し、龍也は奏での指示を瞬時に理解し、返事をする。

走り出そうとする車両の運転席のドアに張り付き、運転手を外に出して、制圧する。

過酷のように思えてしまうが、能力を持たない一般人では到底できないことであることもまた事実。

その点、能力者である龍也には利が勝る。

だが、たとえ能力者と言えども出来ることと出来ぬことはある。

それを理解しての指示と受け取れば、嬉しいことはない。

無理や無茶などの出来ないことをしてくれという注文ではない。

出来ると思うからこその指示だ。

相棒として付き合ったのは短い。

だが、その短い間にそれを判断でき、それを分かった上での指示と受け取れば、これほど嬉しいことはないだろう。

届け・・・・・・・・・!

龍也は走りながら、そう願いつつ、まだ届く距離ではない運転席のドアに手を伸ばす。

と、龍也の動きに気が付いたのか、スナイパーが自身の腰部に手を持っていき、銃に似た『なにか』を取り出す。

形は刑事などの警察関係者が持ちそうな拳銃のように見える。

その左右に小型でありながらも突き刺さっているコイルの様な円柱を見なければ、だが。

スナイパーがコイルガンの引き金に手を掛け。

引き金を引く。

弾が撃ち出され、龍也の身体に当たるまではほんのわずか。

だが、そのわずかの間という時間はある。ゼロではない。

ならば、と龍也はまだ形を保っている盾、強化プラスチックのライオット・シールドで防ごうと身体を回転させる。

弾が自身に当たるか、当たらないか微妙なところだと龍也は感じる。

しかし、龍也の進んでいる方向に重なるように撃ち出されてしまった以上、弾丸は龍也に当たるのみ。

その弾は、しかし。

カキィン!!

わずかに形を保っていた強化プラスチックの装甲のライオット・シールドに当たる。

ヒビが入っていたから、強化プラスチックの装甲は無残にも砕け散る。

その衝撃は腕から龍也の身体全体に伝わり、龍也の身体の回転の速度を緩める。

別の方に加わったベクトルの力に逆に回りそうになるが、その力を踏み込む足に込めて殺す。

もう既に残骸となったライオット・シールドを龍也は邪魔だと言わんばかりに放り捨てる。

身体の動きを止めない龍也に対して、もう一発お見舞いせんとばかりに、スナイパーはコイルガンの銃口を龍也に向ける。

その時、ふとスナイパーは思った。

一人だけ・・・・・・・・・?二人ではなかったか・・・・・・・?もう一人は・・・・・・・?

その思考がスナイパーの動作を止める。

瞬間。

荷台に女性の手が置かれ、がっしりと荷台を手が掴む。

その手が腕を引き、女性の姿が現れ、足先が見え、靴の指先が目に映り・・・・・・。

スナイパーの顔面に奏が蹴りを突き入れ、顔面に突き刺さるのを見て、渚先輩えぐいなぁ、と思いながら、龍也は運転席のドアに手を伸ばし。

指がドアに触れ、掴む。

掴んだ勢いで、ドアを開けて、開けた勢いで腕で身体を引き抜く。

身体が引っ張られて、引かれた勢いに任せ、ドアのヘリをもう片方で掴み、身体を引き上げて、運転席に身体を引き入れる。

ハンドルに身体を預けている運転手の胴には目にも配らず、ハンドルの横のキーを見て。

自身の胴を運転席に捻じり込み、エンジンを切り、キーを抜く。

エンジンに送られるガソリンの流れが止まり、残っていたエンジンの火で少し前に四輪のタイヤをほんのわずかに前に車体を進ませ。

軽トラックはそのタイヤを停めた。




「爆発にレールガンか。どんなに守りを固めても突破する様にも受け取られるな。」

爆発音を聞きつけ、工藤と篠原、斎藤他の機動隊員が龍也たちのところに着いた時にはもうすでに事が済んだ後だった。

「それだけして、狙うものがあった。もしくは壊したかった?」

「それは分からないね。ただ、レールガンは予想外だったよ。機転でどうにかできたけど。」

「機転を利かすにしても、その機転の思い付きはどうなってる?」

「えっ?ネットかな?」

「渚ちゃん。いくら何でもないよ。」

三人の会話が遠くに聞こえる。

龍也は三人から離れた場所で、もう既に残骸になってしまったアインであったものに視線を落とす。

「アインは。・・・・・・・彼は何か?」

アインであった残骸を眺めて立つ龍也に斎藤はそばに立つ。

「アインは『首輪なし』も『首輪付き』も人ではない様に教育されたらしいとか。」

「なるほど。それに対してなんと答えたので?」

「『首輪』があろうがなかろうが人であることに変わりはないだろう、と。」

「なるほど。」

斎藤は龍也の言葉に理解の言葉を返す。

「貴方は正しい。『首輪』があろうがなかろうが、変わりはありません。それは確かです。」

斎藤の言葉に龍也は顔を上げる。

「ですが、異能を使って一般人を襲い、その一般人にケガをさせるなどという力の行使は間違っている。」

「・・・・・・・・・・・。」

「そのために、我々警察が異能対策に立ち上がり、彼の様な高性能アンドロイドが配備されました。民間の警備会社ではありません。」

「なにが、言いたいんですか?」

「一般人の為に立ち上がるのは我々警察の仕事であり、貴方方警備会社の仕事ではないということです。」

「・・・・・・・・・・・・ならっ!!」

斎藤の言葉に龍也は憤りを感じ、怒りを斎藤にぶつけようとする。

だが、それを斎藤は手で制す。

「ですが、警察で出来ることも伸ばせる手を掴むのに限度があります。ですから、我々が掴めぬ手を貴方方が掴んでください。」

「・・・・・・・・・・でも、限度がある。」

「分かってます。アインを造った企業からの依頼で貴方方『首輪付き』と呼ばれる能力者を多く雇っている企業の検査をしてほしいと言われまして。」

「・・・・・・・・・・・・・・実験かよ。」

「そう、捉われても仕方ありませんね。ですが、分かったこともあるのもまた事実です。」

「・・・・・・・・・・・・それは?」

「貴方方が信頼に足るに十分であるということです。」

「・・・・・・・・・・・・・。」

「と言っても、警察の仕事ではないんですけどね。・・・・・・・・・・一つ言うなら、アインの仇を取ってくださり、ありがとうございます。」

「・・・・・・・・・・・・・・別に。」

気にすることじゃないと龍也は言おうとした。

だが、その言葉を言う前に斎藤は手で制す。

「アインとは短い間ではありますが、共に同じ場所を共にした相棒です。」

「・・・・・・・・・・・難しいもんだな。」

「えぇ、まったく。」

アインの残骸から目を放し、龍也と斎藤は空を見上げる。

「・・・・・・・・・・・・憎らしいぜ。」

空には雲一つなく、太陽が大地を照らさんとこうこうと地面にその陽を当てていた。




というわけで、後書きだぜごらぁ!!

はい、五話です。

なんとかここまで来れました。

しかし、今のペースで年内に終わるかどうか怪しいところです。

これが終わっても新しいのが始まるというループが・・・・・・・・。

泣けるぜ・・・・・・・・。

とりあえず、年内を目処に頑張ります。

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