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3SGM~三分間のスーパーガードマン~  作者: 絶対に斬れない刃
着任。新生活に燃ゆる警備員。
5/12

第四話 『首輪』がついてようがいまいが、人であることには変わりはないだろうが

『インズ・ガード』に就職して数日。のんびりとした雰囲気に平和を謳歌していた龍也と奏であったが、その二人に、柳原が仕事を持ってくる。

3SGM~三分間のスーパーガードマン~

第四話

『首輪』がついていようがいまいが、人であることに変わりないだろう



















「平和っすねー。」

「そうね。」

平和な日常を表すかのように日々降り注ぐ日差しが強く降り注ぐ路上の様子を見て、龍也はただぼやくように言ったのだが、その龍也の言葉に奏は独り言なのを分かっていながら、返事をする。

まだ一年、いや一か月も勤務していないうえに、共に行動を共にするバディになってから一週間も経っていないのだが、奏はなんとなくではあるが、鉄龍也という男がどのような人間であるのかを理解していた。

龍也がどういった思いでそう呟くのもおおまかにはあるが、理解できていたために、龍也が独り言を言ったときに、デスクから目を上げて、外に目を向けていた。

平和なのはいいことである。

だが、この平和を守るために戦っているのは、警察や自分たちのような警備員であるというのを忘れてはいけない。そして、この平和というものを崩そうとしているのは、龍也のような『首輪付き』の能力者ではなく、『首輪』に繋がれていない『首輪なし』と呼ばれている能力者だということも忘れてはならない。

奏は、能力者でも何でもない一般人である。

能力者である龍也がどう思っているのか、どのような思いで『首輪付き』となり職務に従事ているのか、奏には分からない。

だが。

奏は思考することを一時やめる。

どのように思い、どのように行動しようと考えていたとしても、今ここに、『インズ・ガード』に身を置いている以上は奏のバディ、相棒であることには変わりはない。

そのことに龍也がどう思っているのか、奏には分からないが。

「渚、鉄。暇か?」

「柳原チーフ、なんです?」

「見ての通りですけど。」

そこに柳原が通りかかる。

奏には何か嫌な予感めいたものが一瞬脳裏に駆け抜けるが、龍也は掛けられた声に普通に答える。

その龍也の声に、バカ、と渚は言う寸前で口を止め、言うのを思いとどまる。

「いやな。現金輸送に行くんで、もう一斑付けようって思ったんだが。・・・・・・・無理か?」

「別にいいですけど。予定ある、鉄?」

「特にはないですね。でも、加えなくても良いんじゃ?」

「最近の『首輪なし』、特に『ヘルズドッグ』の動きが活発になってるみたいでな。あちこちでドンパチ騒ぎするもんで、警察も動けねぇときたもんだ。うちの警備会社はそこそこ信頼されてるからこういう輸送の話は多くてな。仕方なくってわけだ。」

「安全のため、ですか。」

「あぁ、万が一ってこともある。念には念を入れといたほうがいいだろ?」

「それ言ったら、『首輪』も何もない一般人がここにいるんですけどね。」

「一般人?どこに?」

「・・・・・・・・・・・・・、了解です。」

柳原の反応を見て、龍也は奏の肩にポン、と手を置く。

何も能力を持たない一般人であるのにも関わらず、能力者を、『首輪』が付いていようがいまいが関わらず圧倒する奏を一般人と果たして呼べるであろうか。いや、ない。

奏の心境は、まぁ、分からなくもない。

だが、柳原は気づいた様子はない。

それもそれでどうかと龍也は思うのだが。

「それで、チーフ。メンバーは?」

「お前と渚のコンビ、篠原と工藤のコンビの四人だ。」

「運転は?」

「工藤がやるが・・・・・・、鉄、お前がやるか?」

「やれと言われれば、やりますが。」

「・・・・・・・・・・・・・大型か中型、乗れるか?」

「四人乗りの小型でしたら、マニュアル乗れますけど。」

「それじゃ、ダメだな。マニュアル乗れるってのはポイント高いが。次やる時までにせめて中型取っとけ、鉄。」

「了解です、チーフ。」

「それまでは先輩の後ろに隠れときな、後輩。私たち先輩がカバーするからさ。」

龍也の言葉を聞いて、奏は龍也の背中を叩く。

奏の言葉は龍也にとっては恩を感じる言葉だった。意識して言った言葉ではなくとも、龍也は救われた感じがした。

いつか。

いつかこの恩が返せればいいのだが、この思いが叶うことはないだろう。

彼女は龍也にとって近くはあるが遠い、そんな存在だと龍也は思っていたからだ。

「ま、渚が言わなくとも、無茶も無理もさせんさ。後輩に運転手させようとは思ってないしな。」

「柳原チーフ・・・・・・・・・。」

それ言うの、少し遅いです。

龍也はそう言おうとしたが、その言葉を言う前に口の中に押し込んだ。






「鉄龍也と言います。よろしくお願いします。」

「あぁ、よろしくな。」

「こちらこそよろしく、新入り。」

「よろしくです、先輩。」

龍也と奏の二人は、男女二人に挨拶をする。

どっちがどっちかは龍也には分からない。

男性の方は、背は中くらいで女性よりも高く、髪は短めに肩に当たらないくらいに短くしている。目は鋭くどのような変化も見落とさないようにと警戒している感じがオーラとして外に出ているように感じられる。

女性の方は、背は中くらいではあるが標準の女性の背丈よりかは高い印象が見受けられ、奏のように後ろで髪をまとめてはおらず、そのままの風の吹く流れに任せるようなさらさらと流れるような髪をしている。男性よりかは柔らかな印象が見受けられるが、周囲を警戒するように目はじっとするという言葉を知らないかのように早く動いている。

二人とも黒い塗装がされている防弾チョッキと防弾プレートを入れた防弾ベスト、プレートを入れて自由があまり効かない防弾性に優れたズボンとこれでもかと言わんばかりの防弾グッズに身を固めていた。

その二人に対すると、龍也は実費で揃えられる限界で買い揃えた防弾もので身を固めた姿にも関わらず、奏はある程度防弾性に優れた防弾ベストに防弾性がある黒目のズボンという二人に比べてラフな格好をしている。

その恰好をしているから、この前、能力者である柳原を圧倒していたのかもしれないと龍也は考えていた。

「運転は、俺がやる。篠原、新米と渚の二人としゃべってていいぞ。」

「そう言わないの、工藤くん。私が助手席に・・・・・・・。」

「いや、いい。後ろでカバーしてくれ。」

「ひっどーい。後ろだって。バディなんだから、頼ってもいいのに。」

「仲良いですね。」

「えっ、バディだから普通じゃない?」

「えっ。」

「えっ。」

「なんですか、それ。怖いです。」

「いや、あんたの方が怖いよ。」

「人のこと、言えた義理じゃないな、新入り。」

龍也と奏のやり取りを見てそう言う工藤の言葉に篠原はうんうんと頷くが、龍也としては仲が良いのかはよくは分からないし、奏にもよくは分からなかった。

「ま、今回は『ただの』現金輸送だ。大した問題は起こらないだろう。」

「そうだねぇ。起きないといいんだけどねぇ。」

「おい、篠原。不吉なことが起きるようなことを言うんじゃない。」

「だってさ。」

「それに起きても渚がいるんだ。なんとかなるだろ。」

「渚ちゃんだしねぇ。」

「先輩、すごいっすね。」

「そうだけどさぁ。でも、一般人ですよ、私?」

「誰がだ?」

「渚ちゃんが?そうだっけ?」

龍也は工藤と篠原の言葉にショックを受けて倒れそうな奏の背中をポンと手で優しく叩く。

でも、龍也もそう思うのは分からなくもなかったし、言ってしまえば、奏が倒れてしまいそうだったので言わなかったが。

「・・・・・・・・・・・・・・、ま、まぁ、良いですけどね。ありがとう、鉄。もう大丈夫。」

「無理は禁物ですよ、先輩。」

「言う様になっちゃって、まぁ。でも、大丈夫だから。」

「なら、良いですけど。」

「それじゃ、行くか。」

工藤の言葉で、龍也たちは輸送するための現金輸送車である『インズ・ガード』と大きく書かれた中型のバンに入っていく。

工藤の言葉を守るように、助手席には誰も乗らずに、後部座席に、龍也と奏、篠原は搭乗する。

バンの中には現金を入れるであろう大きめのバッグと身を守るための透明な強化プラスチックの強固な盾、ライオット・シールドに、奏や龍也が普段身に着けているベルトのポッシェットに入れている閃光手榴弾と発煙筒、煙で身を隠せるスモークグレネードの手榴弾系の類が入れられてあるアタッシュケースが置いてあった。

「シールドくらいは使いなよ、新人?」

「機会があれば。」

「能力に頼らなくても、身を守るってのも仕事のうちだよ、鉄。」

「そうそう、渚ちゃんの言う通り。」

「でも、動きにくくなりますし。」

「動きにくいから、命を捨てるってのは違うと思うけどな、鉄。」

「動きにくいってのと命を比べたら、動きにくいってのは安いと思うけどね。」

ねーと奏と篠原は女二人で頷き合う。

その様子を運転席で聞いていた工藤は龍也に言う。

「新入り。俺たちがしてる仕事は、警察や自衛隊とかの軍と比べて、安全か?」

「いえ。」

「そうだ、違うだろう?そうでなくとも使っとけ。先輩からの忠告だ。」

「良いこと言うね、工藤くん。」

「優しいですね、工藤さん。」

「ありがとうございます、工藤先輩。」

「今のはおまけだ。酒一杯で勘弁しといてやる。」

「おまけっすか。」

「ただにはせんぞ。」

そう言っていると、バンはゆっくりと動き出す。

「ま、でも、使うかどうかってのは分からないけどね。警察も動いてるみたいだし。」

「そうは言っても、安心できませんけどね。」

「まぁね。だったら、『うちら』がいる必要がないんだけどねぇ。」

「それはそうですけどね。」

「そう思うならどうして言った、篠原。」

動いていくバンの外の様子を龍也は三人の会話を耳で聞きながら、眺めていた。

能力者、『首輪なし』、『首輪付き』。

そう呼ばれる異能者が認知され、遠ざけるようにした一般人たち。

『首輪』が付いていようがいまいが、人であることには変わりはないはずだ。

なぜ、遠ざけるように差別をするのか。

龍也にはよく分からない。

よく分からなかった。

差別をしてまでも人ではないものとして、することであろうか。

龍也は能力者で、奏は一般人だ。

差別するのであっても、奏は龍也を避けたりはしない。

バディで相棒であるからであろうか。

龍也は奏をそっと見てみる。

「うん?どうしたの、鉄?」

「いえ、何でもないです。」

「何、二人して?」

「大したことでは。そう言えば、篠原先輩は能力者で?」

「そうだよ。工藤くんもね。」

「そうなると、・・・・・・・・・・。」

そう言うと、龍也は奏の方に視線を向ける。

「何さ。」

「いえ。」

「ハハハッ、新入りは分かりやすいなぁ。」

「何がです?」

「渚ちゃん。新入り君はね、確認してるだけだよ。ま、言いたいことは分かるけどね。」

「えっ、じゃあさっきのは?」

「さっき?何かやったっけ?」

素か、と龍也は納得した。

まぁ、能力者である『首輪なし』を相手に圧倒した戦いをし、『首輪付き』ではあるものの、演習という形で能力使用を制限された条件下で熟練者である柳原を倒せるだけの実力がある奏を能力が使えない弱者の立ち位置にいる一般人と呼べるかと言われれば、言いにくいのが妥当だろうと龍也は思う。

だとしても、盾などの装備は使わずに機動力だけで相手を翻弄する戦い方はどうなのだろう。

まぁ、能力を使われる前に無力化するには、理にかなってるように感じるのだが。

ウー、ウー。

遠くでサイレンが鳴ってるサイレン音が龍也たちの輸送車のところまで聞こえてくる。

「どんぱちかな?」

「こっちに来ないでくれるといいんだけどね。」

奏と篠原の二人は警察の動きを察し、能力者と警察のぶつかり合いがこちらの方まで届かないように祈るように声を出す。

「呑気にしてるところ、悪いがな。着いたぞ。」

工藤がそう言うのとバンが止まるのはほぼ同時だった。

「それじゃ、お仕事しますかね。」

「そうですね。鉄、待ってな。」

「うす。」

「早くしろよ。」

工藤は篠原と奏の二人に急いでくれと言い、龍也は待機してると伝える。

現金輸送と言っても、単なる付き添いでしかない。

下手に動かない方がいいと独自に判断してのことだった。






「・・・・・・・・・・・・ここを通りたいんだが。」

「出来れば、他をお願いします。今現在、通行止めでして、はい。」

運転席の工藤の声を後部座席で龍也、奏、篠原の三人は聞いていた。

「・・・・・・・・・・・だそうだが?」

「と言われてもね。迂回はちょいとね。」

「厳しいね。」

「迂回する分は良いんじゃ?」

「いいか、新入り。迂回路を回ろうが回らまいが、この道の銀行に行かんといかん。近くの銀行はこの道にあるとこだけだ。」

「そうそう。だから、迂回しようにも、ねぇ?」

「車置いて、行きます?」

「車上荒らしに遭いそうだがな。」

「でも、その方が良いかもよ?」

「だがな。」

「でしたら、見ていましょうか?・・・・・・・・・・・おい!!」

見ていようかと工藤に言った警官は工藤から目を放し、別の方向に声を出す。

何を、と龍也たちは思った。

他の警官を呼んだのかと思いきや、その予想は重々しい金属音が聞こえると共に裏切られる。

『なんでしょうか、巡査。』

「あぁ、この車を見ていてくれないか?」

『ja。私は構いませんが、警備に問題が出るかと。』

「その穴は他が補う。」

『ja。承知いたしました。』

「アンドロイド・・・・・・・・・だと・・・・?」

「まだ動かせるのが限界のレベルだったと思うけど、会話できるなんて。」

「警備用のは出来てないのに。・・・・・・・・・・素直にすごいわ。」

「二本足で動けてる・・・・・・・・すごいっすよ。」

龍也たち、『インズ・ガード』の面々は鋼の白く塗装されたボディで現れた身体を持つ機械のロボット、アンドロイドに驚愕し、それぞれの感想を口々にもらしていた。

奏が言った警備用のはまだ大きい胴体で動く円柱のようなロボットであって、目の前に現れたこの機体の様に二本足で歩行し、人とこのように会話できるモノではない。

アンドロイドは顔の向きをこちらに向かせると、

『ja。了解しました。では、この車両の安全は私めが責任を持ちまして警備いたしますので、ご安心を。』

「・・・・・・・・・・・・頼めるか?」

『ja。「ヘルズ・ドッグ」なる「首輪なし」と呼ばれる方々がこちらに来られまして戦闘となり、私が鉄屑となりましても、責務は果たします。』

「・・・・・・・・・・・・・・だそうだが?」

「車両の方は、まぁ、そこまで気にしなくても。・・・・・・・・・・ねぇ?」

「そうなったらなったで、連絡したら他の人来るし。」

「自分のもの位、自分でどうにか出来ます。」

「・・・・・・・・・・・・・・だそうだ。俺もこいつと同意見だ。なったらなったで、他を呼ぶ。あとで書く書類が怖いが、それとこれとじゃ、比較にならんな。」

『ja。では、そこそこ守ります。』

「・・・・・・・・・・・・・・・だそうだ。」

「それじゃ、お任せしますかね。」

「手持ちにライオット・シールドくらいは持ってくか。動きにくいけど。」

「俺が持ちますよ、渚先輩。」

「あー、だったら、一つ取って、新入り。」

やれやれ、といった具合に言う奏の希望通り、透明の強化プラスチックの分厚い盾を龍也は手に取るが、篠原は龍也が手に取ったのとは別にいるというので、龍也は篠原に別のライオット・シールドを渡す。

「別のですか?これじゃなく?」

「それ、渚ちゃんのでしょ?別の頂戴。」

「はぁ・・・・・・・・・、了解です。」

「新入り。篠原流の戦いには必要なんだ。気にするな。」

「先輩は?」

「これが二つあれば十分だ。」

そう言って、工藤は二つの青い物体を龍也に見やすいように示す。

奏と龍也が普段から持ち歩いている閃光と高音を発す非殺傷武器、閃光手榴弾である。

それが二つのみで十分と言う工藤に不安感を覚える龍也であったが、本人が十分と言う以上はどうしようもない。

「あー、大丈夫、大丈夫。工藤君、それが普通だから。」

「でも。」

「もしもの時は下がるから。」

「いつものことだ。心配はいらん。」

「・・・・・・・・了解です。」

本当に大丈夫か?と不審に思いながら、バンのドアを開く龍也であったが、そんな龍也の心境を悟った奏は先に降りる龍也の肩にポンと軽く手を置く。

「鉄。工藤の心配より自分の心配しな。あんたがこのメンツの中じゃ、新米なんだから。工藤は大丈夫。しのっちが付いてるから。」

「渚先輩・・・・・・・・・・。」

龍也を安心させるように言う奏の言葉に龍也は信じることにしようと思った。

奏の言う通り、龍也は工藤のバディでもなんでもない。

龍也の相棒、バディは奏である。心配すべきなのは、工藤でも篠原でもなく、相棒の奏である。

「了解です。・・・・・・・・・・先輩も無理は禁物ですよ?」

「私より無理も無茶する新入りがいるからなー。ちょっとくらいならいいでしょ?」

「ちょっともしなくても、無理も無茶もするって宣言にしか聞こえないんですが、それは。」

「あー、あー。聞こえなーい、聞こえなーい。」

ハハハッ、と軽く笑いながら奏は龍也に続いてバンから降りる。

「大丈夫さ、新入り。工藤君に無理させないから。」

バンから降りながら篠原は龍也に言う。

「心配はいらんぞ、新入り。篠原は『堅い』からな。」

「『堅い』?」

工藤の言葉を龍也はどういう意味かと聞き返すが、誰も返事をしなかった。





「しかし、『ヘルズドッグ』の連中も暇してるみたいだな。」

「そりゃ、ねぇ?」

バンを後にして龍也たち、『インズ・ガード』の四人は通行禁止とされた車が一台も走らない道路を現金が入った小さなボックスの金庫を荷台に乗せ、先にある銀行へと荷台を運びながら進んでいた。

「鉄は『ヘルズドッグ』の連中の理念とか知ってる?」

「たしか、『首輪なし』の能力者と『首輪付き』の能力者の差別化の排除と能力者こそが新人類で差別化がどうとか。」

「まぁ、よくある話だな。差別化することで浮かんでくる一般人と能力者の問題だ。」

「『首輪』があるなしで差別するってのもあれだけどね。どうだかね、ほんと。」

「あたしはどうでもいいけどね。人ってのは同じなんだし。」

「えっ。」

「えっ。」

奏の言葉に工藤と篠原は驚いた声を出す。

その言葉を聞いて、龍也は、

「渚先輩が言うと、アレですけどね。」

と言った。

「新入りが言うとアレだが、渚の言う通り、差別する必要はないと思うがな。」

「工藤君の言う通り。新入りが言うとアレだけど。」

「先輩たち、ひどくないっすか。」

「何のことやら。」

「わからないなー。」

龍也が言うと、工藤と篠原は知らん顔をする。

いい性格してるな、この人たちと龍也は内心で呟いた。

「まぁ、ともかくだ。『ヘルズドッグ』の連中にとっては警察や自衛隊、軍と俺たち、『インズ・ガード』の様な『首輪付き』は目の敵というわけだ。同じ能力者にも関わらず、だ。」

「『首輪』ってのが問題な気がするけど、誰も気にしないっていうね。それもどうなんだろって思うけど。」

「新人類、ねぇ。人種差別って問題でしょ。」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・『首輪』があるなしにしても、人であることには変わりないでしょう。最初にそう言った人が原因なわけで。」

「まぁな。」

「まぁねぇ。」

「その通りなのよねぇ。」

結局のところ、そういうことだ。

『首輪』がついているついていないにしても、人であるという事には変わりはない。

だが、人は差別している。

龍也たちにはよく分からないし、ここにいる『インズ・ガード』の面子には答えが出てこないことだ。

「だが、アンドロイドとはな。まだ、試作機も出来てない印象だったが。」

「そうだねぇ。世の中は早いもんだねぇ。」

「早いってものじゃないでしょうに。ねぇ、鉄?」

「そこで自分に振る理由が分かりませんが。そうっすね。確かに言う通りだとは感じますけど。」

「そうでなくとも、『首輪付き』と『首輪なし』がいるこの街での演習を兼ねて、かもしれんがな。」

「『首輪付き』、『首輪なし』関わらず能力者のデータ集めに最適ってわけ?それもどうかと思うけど。」

「でも、理にかなってると思うけど。ねぇ、しのっち?」

「まぁ、そうだけんどもさぁ。でも、どうかと思うね。」

「顧客でありながら、『モルモット』というわけか。確かに、どうかと思うのは分かる。だが・・・・・。」

「あー、うん。そうなんだけどねぇ・・・・・・・・。」

そう篠原が言い終わるか終わらないかというところで近くでドォン!と爆発が起こり、爆風が吹き荒れる。

「だが、目の前に来てるぞ、と言いたかったんだが。」

「分かりにくいし、来てるなら先に言え、バカ!!」

篠原は大声で工藤に文句を言うと、自身の持っていたライオット・シールドを地面に突き刺す。

突き刺すといっても所詮は強化プラスチック。

軽くて頑丈というのが売り文句のプラスチックの装甲の盾がコンクリートの地面に突き刺さるとは龍也には思えなかったが、龍也の予想を裏切る形でライオット・シールドは地面に突き刺さる。

「えぇ!?」

「しのっちの変化系だよ、鉄!」

「そう言う事だ、新入り!」

変化系・・・・・・・・・・・物体変化の能力だろうか。

確か希少価値がつくとかつかないとかで国が保護対象にしていなかったか?と龍也は考える。

そう考える龍也をよそに奏たちは篠原が作った即席の壁に身を隠す。

「工藤、見えた!?」

「いや・・・・・・・・・・・だが、どうにか。」

「新入り。カート、こっちに!!」

「あ、はい!!」

突然のことで呆然と立っていた龍也に篠原の声が掛かり、龍也は止まっていた脳と身体を動かし、壁の後ろに金庫が乗ったカートを押して行き、壁の内側に入る。

「大丈夫、鉄!?」

「はい、大丈夫です。」

「状況が状況だ。渚、煙を焚くから、攪乱しろ。」

「攪乱って。一般人に無茶言うね!」

「一般人なら一般人らしくしろ。」

「で?」

「渚が暴れてるうちに、篠原、新入りの盾使って前に出ろ。俺がフォローする。」

「了解。」

「俺は、俺はどうしたら?」

「金庫のカートをここで守れ。篠原の能力は折り紙付きだ。そう簡単には壊れん。」

そう言って、工藤は壁となっているライオット・シールドをとんとん、と軽く叩く。

見る限りだと、丈夫そうなのは理解はできるが、龍也は篠原の能力を知らないし、この盾は強化プラスチック、普通のプラスチックよりかははるかに強度は高いプラスチックではあるが、所詮はプラスチックで、安心できそうにはない。

だが、仕事は仕事だ。

それに死んでも守れなどの無茶極まりない指示は工藤は言ってはいない。

だったら、無理もしない範囲でやるだけのことだ。

幸い、龍也はまだ能力は使っていない。

龍也の能力。それは、おおまかしか分かってはいないが、だいたい三分間の短い時間ではあるが、その三分間、自身の身体が丈夫になる強化系の能力である。

頑丈にでも、無敵になるわけではなく、丈夫になるだけ。

脳天に銃弾を受けれ死ぬし、心臓に受けても同じく死ぬ。

試そうにも死ぬ可能性がある以上は試せることはできないので、本当にそうなのかは龍也には分からない。

だが、昨日の銀行の件で少なくとも傷は受けるのは分かった。

傷の治りが少し早いくらいか。

それだけでも分かることはある。

傷の治りが異常に早いなどの類であれば、不死に近い能力だと分かるが、傷の治りは何もしない時よりかは多少早い程度であるので、無敵になれるとか不死になれるなどの万能な能力ではない。

なので少し傷の治りが早くなる程度に自身の身体が強化される程度のよくある強化系の能力だ。

それだけわかれば龍也にとっては十分であった。

「そんじゃま、一暴れしますか。」

言っていることが一般人が言うセリフではないと断言できるセリフを奏は言うと、

「そう急かすな。今、焚いてやる。」

工藤はスモークグレネードのピンを抜いて、前方に投げ入れる。

ボン!

爆音とともに煙が前方を覆いつくす。

「鉄、留守番よろしく。」

「はい、先輩も気を付けて!」

龍也の返事に奏は強く頷くと、前方の煙に向かって駆け出していく。

その姿があっという間に見えなくなると、篠原は龍也に、

「まったく、気が早いんだから。盾ちょうだい、新入り。」

と言いながら腕を龍也に差し出す。

「どうぞ。」

その手に龍也は自身の盾を渡す。

その瞬間、ただの強化プラスチックの透明な軽い装甲の盾が光沢を得たという様に輝いた様に龍也の目には映った。

「工藤君、バックよろしく。」

「了解だ。新入り、無茶するなよ?」

「渚先輩じゃないんで、しませんよ。」

「よし分かった。篠原、行け。」

「アイアイサー、リーダー。」

工藤は篠原を盾にするように篠原の後ろに就くと、篠原の背中を叩く。

その合図を受けて、篠原は奏が突っ込んでいった煙幕の方に、警戒しながらゆっくりと歩を進める。

篠原と工藤の実力は不明だが、奏に軽口を交わせる上に、ニックネームで言われているのであれば、相当の腕の持ち主だということが分かる。

なので、心配はあまりしない方が彼ら、彼女ら二人にしない方が良いように龍也は思うが、心配になってしまう。

奏は何というか、心配にはなるのだが、変えって逆効果の気が龍也にはしなくもない。

それに、工藤も篠原も奏に対して心配をしていない。

一般人にも関わらず、だ。

「大丈夫かな。」

龍也の声に反応する龍也以外の人物は龍也をおいて他にはおらず、その言葉は自身の耳にしか聞こえてはこない。




『おや、お一人ですか?』

突然、背後からかけられた声に龍也は顔を向ける。

その声を発したのは人間の様に思ったが、人間の様に肌色をした肌ではなく、鋼鉄である証をしている光を反射する鋼の肌をしているアンドロイドであった。

先程のこともあって、龍也は対しては驚かなかった。

「まぁな。仕事か?」

『ja。「首輪なし」の「ヘルズドッグ」の方が暴れているとの通報を受けて、通行禁止としていたのですが。お仲間はどこに?』

「向こうの安全確保に行った。」

『ja。そうですか。納得しました。ですが、ここは危険です。お引き取りを願えます。』

「そうはいかないな。俺も仕事してるんだ。それに下がるなら、先輩たちが来てからじゃないと。連絡できないし。」

そう言って、アンドロイドに分かるように金庫が乗ったカートを指差し、携帯を取り出すと分かるように見せる。

電波が立つところには電波のマークが現れてはおらず、その代わりに圏外と赤く塗られた文字が出ていた。

『ja。「こちら」の通信妨害圏内ですからね。失礼を致しました。』

そう言うアンドロイドの表情は変わることはないので、龍也には謝罪の言葉をただ言ってるだけだと感じた。

「いや、それはいい。だけど、『お前ら』も『首輪』のこと、言うのな。」

『ja。そう「教育」を受けているので。』

「マジかよ。・・・・・・・・全く、良くはないだろ。」

龍也は『教育』と言うアンドロイドの言葉を聞いて、少し腹が立った。

「生まれた」ばかりのアンドロイドに『首輪』のことを教え、人を差別する様に教える。

「それ」は良くない様に龍也は感じた。

『ja。何か問題が?』

「いや、お前に対して怒ってるわけじゃないけどな。」

と言葉を切ると、

「『首輪』がついてようがいまいが、人であることには変わりはないだろうが。」

『ja。では、訊きますが貴方は「首輪」のことをどうお思いで?』

「単なる差別用語。それ以外は知らない。」

『ja。なるほど。』

「反対勢力と判断するか?」

『nine。「それ」を判断するのは私ではありません。ですが、記録しても?』

「別にいいけど、後で反社会的思考のテロリスト予備軍として捕まえるためにか?」

『nine。個人的興味と後学のため、ですね。』

「個人的興味と後学のために、ねぇ・・・・・?良く言うぜ。」

龍也はアンドロイドが言った言葉を繰り返す。

個人的興味とは良く言ったものだ。

個人的ということはこのアンドロイドには自我があり、独立した思考と行動ができるというのを言葉の裏で言っている。

ということはこのアンドロイドは「群れ」という集団での動きをするために作られたわけではなく、「個」という少数単位での行動ができる高度な知性を持っているということになる。

龍也には何か悪い冗談か悪い夢を見ている感じになる。

だが、悲しいかな、今は夢の中ではなく、現実である。

『おや?お仲間がお戻りになられた様で。』

アンドロイドが前方を見て、そう言う声に龍也は顔をアンドロイドから前方に戻す。

その言葉の通りに、奏たち『インズ・ガード』の面々が姿を現す。

彼ら、彼女らに引率される形で二、三人の姿が龍也の目に映る。

「先輩!!」

「お待たせ、鉄。暇に・・・・・・・・・させてはなってないようだね。」

「お話に夢中だったかな?」

「職務に忠実な様に見えるが違ったか、新入り?」

「ちゃんと守ってました!!」

『ja。私が証言します。彼は職務に忠実でした。』

「証人が証言するに賄賂を贈ったりは・・・・・・。」

「贈ってないですよ。」

『nine。受け取りはしておりませんし、そのような契約も皆無です。』

「私の相棒いじめるのやめてくれないかな?『飛ばす』よ?」

「すまん、俺が悪かった。」

奏の言葉に工藤は瞬時に謝罪の言葉を言う。

『飛ばす』って文字通りなんだろうな、と龍也は思い、奏に戦慄を覚えた。

「まぁまぁ。工藤君が『飛ばされる』のはどうでもいいとして。」

「おい。」

どうでもいいと言う相棒であるはずの篠原は、工藤の言葉を無視して龍也の方に視線を向ける。

「無事でよかったよ、新入り。渚ちゃんの『乱舞』見れなかったのはアレだけど。」

「ちょ、しのっち。『乱舞』はないでしょ。『ダンス』なら分かるとして。」

アリなんだ・・・・・・・、と龍也は奏の言葉に再び戦慄を覚え、引率されている『首輪なし』の連中は「ヒッ」と悲鳴に似た叫びをあげ、がたがたと身体を揺らしている。

その様子を見て、奏が何をどのようにしていたのかを簡単に想像することができた。

「それじゃ、『こいつら』頼んでもいいか?」

『ja。確かに任されました。』

工藤は『首輪なし』の連中を指差すと、アンドロイドが手錠を出し、『首輪なし』の腕に手錠を嵌めていく。

「能力封じの手錠だそうだ。知り合いの刑事が言っていた。」

「能力封じ?」

工藤は龍也に聞こえるように言うために龍也のそばに寄っていた。

「『アンチスキル』とか言ったか。中には能力返しの武器があるそうだが、見たことは・・・・・・ないな。」

「『アンチスキル』ねぇ・・・・・・・。渚ちゃんが使ったらエグイことになりそう。」

怖い怖い、といつの間にか龍也に寄っていた篠原が身を震わせて言う。

龍也にもその様子も分かるが、奏に聞こえるような声で言うのはどうかと龍也には思うわけだが。

「聞こえてるよ、しのっち。一緒に『飛ぶ』?今ならサービスして、ただだけどどう?」

「そのサービスは勘弁。」

「不安要素はなくなった。仕事を終わらせよう。鉄、行けるな?」

「はい、いけます、工藤先輩。」

「良い返事だ。」

工藤はやや笑顔で龍也に言う。龍也は工藤の言葉におや?と思ったが、気にしないようにする。早く仕事を終わらせたかったのが、分かったからだ。

金庫が乗ったカートを龍也は銀行に向けて押して行く。


というわけで、第四話になります。なんとか完結までの道がうっすらとではありますが見えてきました、絶対に斬れない刃と書いてブレイドと呼ぶ者です。なんとかとは言っても、薄っぺらいぺらぺらと飛んでいきそうなほど薄いもんなんですけどねっ!!ハハハッ、ゲイリー!!・・・・・・・・・泣けるぜ。まぁ、でも、なんとか終わらせれば、とは思ってはいるんですけどね。やれるかな?・・・・・・・・・いや、やるんだ。よっしゃ、やっちゃるぜ!!というわけで次回につづく!!

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