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3SGM~三分間のスーパーガードマン~  作者: 絶対に斬れない刃
着任。新生活に燃ゆる警備員。
4/12

第三話 私なんて大したことないよ、鉄。

前日の柳原との演習を思い返しながら、龍也は奏と共に業務に勤しんでいたが、この前の奢りがまだであることを龍也は気づき、折角だからと思い、奏を誘うのだが・・・・・・・。

三分間のメタルウルフ(仮)

第三話

私なんて大したことないよ、鉄。








「渚先輩。先輩って強いっすね。」

「大したことないよ。『首輪付き』とかと比べたら尚更、ね。」

翌日、昨日と同じようにデスクワークで机に載せられた書類の山と格闘していると龍也は思い出したように奏に言う。

その言葉にどれだけの思いが含まれているのかは龍也には分からない。

だが。

「そうは言いますけど先輩。昨日の柳原チーフやったのだって。」

「あれはチーフが手加減したからね。」

「でも。」

「私なんて大したことないよ、鉄。」

ふっ、と自嘲気味に笑いながら言う奏の表情から『なにか』を鉄は感じたのだが、『それ』がなんであるのかは理解はできなかった。

だが、『これ』だけは言える。

少なくとも、渚奏が積み重ねたものは、大したことなどなくはない、と。

奏を笑うことなどできない、と。

彼女が積み重ねた努力はたとえ手加減をしていたと言えど、笑うことなどではない、と。

だが、いくら龍也がそう思っていたとしても奏には届かないだろう。

下手をすれば、バカにしているなどと奏は思うかもしれない。

そのため、龍也は自嘲気味に言う奏に大したことなどではないと言うことは言えなかった。

なにが『首輪付き』だ。

『首輪』も何もついていない一般人が強くなろうと努力を積み重ねているというのに、偉そうにふんぞり返り、バカにすることなどできるものか。

「ところで、飯どうします?」

「うん?どういうこと?」

「いえ、この前、うまいラーメン屋見つけたんで。」

「ラーメンか。・・・・・・・・ラーメンねぇ・・・・・・・。」

「先輩がよければ、一杯奢りますよ?」

「お酒じゃなくてラーメンで、ってわけ?そうなると、鉄。ラーメンとお酒は別だよ?いいの?」

「一緒じゃダメですか。」

「そりゃそうでしょ。」

「それじゃ、割り勘は・・・・・・・。」

「はい、言い出しっぺの法則で却下です。」

「そんなぁ~・・・・・・・・・・・・・・。」

「でも、まだ時間あるか。」

奏は自身の腕時計に目を向けて、時間を把握する。

「遠いの?」

「結構近いですよ?」

「そっか。」

そう言うと、奏は椅子に寄り掛かる。

「それじゃ、一杯貰おうかしら。」

「きっと気に入りますよ。」

「そう?ま、バディが自信もって言うならそうなのかしらね。期待しとくわ。」

「そりゃどうも。」

やや嫌味のように龍也には聞こえたのだが、気にしない方がいいだろう。

ここからそこまではそれほど離れてはいない。

移動時間を留意しても時間を考慮する必要はないように感じる。

「ちょいと先良いですか?金が・・・・・・・・・。」

「奢るって言ったのに?まぁ、いいわよ?何かあったら、電話して。」

「了解です。」

奏に断りを入れると龍也は席を立つ。

なにか起こると確証はないわけだが、連絡用に電話番号は交換してある。

大丈夫だろう、そう思って、龍也は『インズ・ガード』を先に後にするために立ち上がった。




「しかし、目立つよなぁ、うちの会社。仕方ないって言ったら仕方ないけど。」

そう言えば、なんで防弾チョッキなり防弾ベストなりが社員の服装なんだ?と一人、疑問符を頭に浮かべながら会社からほど近い銀行に立ち寄り、預金の残金を下すためにカードを取り出す。

「早く詰めろ!!時間稼いでるんじゃねぇぞ!!」

「待ってください!今してるんで!」

「そう言ってまだ詰めてんじゃねぇか!!」

そう言っている声が龍也の耳に届いて、強盗でもいるのか?と疑問符を浮かべて、中の様子を見てみる。

すると、そこには銀行員が大きなバッグに金を入れており、その銀行員の首元に手を当てて立っている男の奇妙な取り合わせの二人がいた。

その様子を見るに、どうやら銀行強盗らしい。

うわっ、強盗だよ。

見たくはないものを見てしまったことで龍也は警察に電話するべきか否かを悩んでしまった。

それが隙を生んでしまうことになる。

「おい、何見てんだてめぇ!!」

「えっ?」

「てめぇ、警察か!!」

「は?」

はて?と龍也は一瞬悩み、自身の格好を思い出して納得する。

普通、防弾服の格好をして通勤なりする会社はないはずで。

そんな恰好をしているとなれば軍関係の人間かあるいは、といった具合だろう。

「いや、俺は・・・・・・・・・・・。」

「おい、バッグ返せ!!」

「待っ・・・・・・・・・・、待って・・・・・・・・・・!」

強盗は焦った様子で銀行員にバッグを返すように言うが、銀行員は龍也の姿を見ると、強盗に待てと言いながら、龍也の方に目を向けてくる。

龍也としては警察ではないので、どうすることもできないわけで、見ていることしかできないのだが、その時に強盗の銀行員の首元を掴んでいる手が熱を帯びたように赤くなる。

その様子から、龍也はおいバカやめろと言いそうになる。

「おい、ポリ公!!こっち来るなよ!?こいつの首が焼き切れてもいいなら別だがな!!」

「やめっ・・・・・・・・!やめてっ・・・・・・・!」

銀行員の悲痛な声が龍也の耳に届くが、人質にされている以上は龍也は動くことができない。

手には何もないわけだし・・・・・・・・・・何も・・・・・・?

そう疑問に思い、手の感触を確かめて、その手を見てみる。

先程、貯金を下ろそうと手に持った銀行カードがそこにはあった。

そして、自分の服装と今している最低限度の装備を再確認する。

今現在、警備員がする防弾チョッキと防弾用の防弾フレームが外付けできる防弾用ズボンを履いており、自分のバディであり先輩の奏の真似をして装備する様にした閃光手榴弾といらないのでは?と思いつつも持つようにしたスモークグレネードがそれぞれ一つずつの計二つ。

自身と強盗たちとの距離は開いているが、自身の能力を使えば距離が開いていようと大した問題ではない。

三分間までという時間制限付きの異能ではあるが、三分以上はかからない。

三分以内にケリはつく距離だ、問題はない。

あるとすれば、接近するまでに強盗が銀行員の首を焼き切ることだが、それまでには決着がつくと見たので問題はないだろう。

「おい、ポリ公!!動くんじゃ・・・・・・・・!!」

ねぇぞ!!と言い終わる前に、龍也は手を横に鋭く切るように振るう。

ヒュヒュヒュと龍也の銀行カードは強盗に向かっていく。

強盗の視線は一瞬ではあるが、龍也から逸れる。その一瞬の隙を突き、龍也は腰部にあるポシェットから青色の閃光手榴弾を取り出して、握った手で安全ピンを抜き、強盗に向けて投げつける。

投げられたものが銀行カードだと理解するや否や、龍也の方に視線を戻すが、その時には時すでに遅し。

「瞑ってろ!」

銀行員に対して龍也は声を出す。

その声を瞬時に理解し、銀行員は目を瞑り、なんのことか分からない強盗は自身の方に向かってくる青い物体がなんであるのかを理解しようと頭を動かすために、身体の動きが止まっており、龍也は起こるであろう眩しい閃光から目を守るために腕で目を守りながら、突き進んでいく。

瞬間。

バン、と眩い閃光が周囲を支配するのと同時にキィィィィィィンと耳を刺激する甲高い音が周囲に響く。

「っが!!くそがっ!!目がっ!!耳がっ!!」

防ぐこともできなかった強盗は強い閃光と甲高い高音に麻痺したように目と耳を塞ぎ、身体を揺れ動かす。

対する龍也もほぼ似た状況に襲われていたが、閃光から目を守ることはできていた。

高音に耳を刺激されてはいたが、龍也の能力は身体能力の強化である強化系の能力だ。ほんのすぐに良くなる、ほんの少しだけだと龍也は自身を引き締めた。

以前、奏が強盗と相対する時に使用した状況に似ていなくはないわけで。

その時、自身の能力で自身を強化した際に、それほど時間をかけずによくはなったので龍也は大したことではないと、だが油断はするものかと自身を引き締めて強盗に向かっていく。

目を守っていた両腕を振り、腰部のポシェットから警棒を取り出し、伸ばすように振り抜く。

シャッ、と勢い良く伸びた警棒で、強盗の頭部を振り被る。

「がっ!!」

警棒が当たり、体勢を崩し、銀行員から離れる。

離れた瞬間に、机を飛び越えるようにして、銀行員と強盗の間に身体を割り込までせる。

「くそがっ!!」

割り込んだ形で入った龍也の身体を斬るように赤く発熱した腕を強盗は振るう。

「っ!」

防弾チョッキを斬り、服の下にある自身の肉を焼き切られる痛さに龍也は顔をしかめる。

だが、動きが止まるほどの痛さではない。

この程度、どうというものではない!と自身を鼓舞して、警棒を持った腕とは逆の左の腕を拳から胴に突き入れる。

「ふんっ!」

接近できた距離をそのままに龍也は強盗の顔面を殴る。

「ぐっ!!」

「どりゃ!」

「ぐはっ!!」

数回、強盗の顔面を殴っていた龍也の耳に甲高い警戒音が聞こえる。

背後を見れば、銀行員がぎこになく笑っている顔が見える。

どうやら、銀行にある警察に通報できる通報ブザーを押したらしい。

「くそがっ!!くそったれがっ!!てめぇも能力者だろうっ!!『首輪なし』だろうっ!!」

「違うな。悪いが、『首輪付き』だ。お前さんと違ってな。」

強盗は龍也に向けて大声を喚き散らす。

確かに、龍也は能力者だ。だが、『首輪なし』ではなく、『首輪付き』である。

『首輪』が付いているかいないか、それだけでもかなり違う。

そのことを知ってるからか、強盗は表情に怒りを露わにする。

「『首輪付き』・・・・・・・だとぉ!?『飼い犬』かっ!!」

「『飼い犬』か。仕方ないって言えば仕方ないが、もうちょっと言いようってものをだな。」

「知ったことか!!ビビりの臆病者がっ!!」

その一言で、龍也の顔に変化が訪れる。

「ビビり・・・・・・・・って、ひでぇ言われようだな、おいっ!」

警棒をたたみ、龍也は警棒を握った拳で思いっきり強盗の顔面を殴り、強盗の身体をカウンターからはじき出す。

能力者の大半は政府公認のお墨付きを得た企業に勤めている『首輪付き』ではなく、政府の認定がされていない企業で勤めている『首輪なし』である。龍也のような『首輪付き』は少数派である。

人という生き物は未知のもの、例えば、自身が普通の一般人で隣人が異能を使える能力者だったとする。

仲良くしようとはせず、遠ざけようと差別するだろう。

対して能力者は一般人との違いを『神に選ばれた特殊な者』だからだのと言い、宗教まがいの団体ができるまでに区別しようとしている。同じ人間であるはずなのに、だ。

その差別問題を解決しようとしたのが政府公認の、後に『首輪なし』と『首輪付き』と言われる『首輪』の有無の問題である。

『首輪』の有無など大した問題ではないはずなのに、能力者たちは『首輪』の有無で対立している。

先ほど言われたように、『飼い犬』、一般人の従順となった能力者の蔑称なり、一般人に差別されるからということに臆病になってのビビりなど臆病者などの蔑称などがそうだ。

能力者はそうした世の中を一般人の影の中を隠れて生きている。

パンパンと軽く埃を払い、龍也は姿勢を正す。

『首輪なし』と『首輪付き』。

別に大した問題ではなさそうではあるが、根はかなり深い。

「大丈夫か?」

背後にいるはずの銀行員に龍也は振り返りながら、言う。

「え、えぇ。」

銀行員は振り返った龍也の服装を見ると、おずおずと返事を龍也に返す。

防弾チョッキの防弾装備を斬られ、服の中の胴の肉を焼かれたのだ。無事であろうはずがない。

そう思うのが普通だ。

だが、龍也は何もケガもしていない銀行員を気遣うように大丈夫かと銀行員に尋ねる。

斬られて血が服から滲んでいるにも関わらず、だ。

何も知らない外野の人間が見たら、龍也の異常に気付くのだが、銀行員はそれには気づいた様子はない。

と、呑気に思っていると、パトカーのサイレンが聞こえてくる。

そういえば、先ほどブザーを押してたなと龍也は思い、カウンターから外に出て服を正す。

あとは警察に任そう、うん、そうしよう。

そう思い、

「あとはよろしく。」

と銀行員が何か言う前に、龍也は銀行から外に出る。

そして、銀行から外に出た後で気が付いた。

「カード、忘れてた。」




「遅いよ、鉄。鉄っ!?どうしたのっ!?」

あれから、一旦カードを取り戻しに銀行に戻り、奏を案内するために『インズ・ガード』まで来たのだが、そこで奏に大声を出され、龍也は何のことか疑問に思って数舜止まった。

「どう?なにがです?」

「服だよっ、服っ!そんなに・・・・・・・・・・・・。」

何かと尋ねると奏は分からないのかと言うように龍也に走り寄ってくる。

そして、龍也の服の斬られた箇所を手で触る。

奏が寄って来たため、龍也に女性固有の香りが襲う。その香りから逃げようと龍也は顔を背ける。

「別に動けるんで。」

「そうは言っても、あんたこれ、肉斬れてっ・・・・・あれ?」

肉が斬れているように奏には見えたが肉は繋がっており、龍也の肉体にはどこも斬られた箇所は見受けられない。

だが、着ている防弾チョッキ等の警備任務に必要な厚い布地の服は斬られたように破れており、その部分は血が滲んだように黒ずんだ色をしている。

「何があったの、鉄?」

「金を下ろしに銀行に行ったら、少し『じゃれ合いまして』。」

「じゃれ合う?」

「えぇ。中々暴れてまして、抑えるのにちょいと手間取りましたが。」

「強盗?」

「はい。」

素直に肯定した龍也に奏は怒りを覚えた。

「なんでっ!!バディでしょ!?」

「そうですが、時間がなかったので。」

「死んだらどうするの!?」

「代わりがいます。」

「あんたはあんたでしょ!?代わりだなんて・・・・・・・・・。」

「俺は新米ですから。それに、俺のほかにも。」

「そりゃ、そうだけど、あんたはあんたしかいないわけだし。」

「そうですが、『首輪付き』の能力者は他にもいます。さっきの続きになりますが、渚先輩が大したことないってなら、俺も大したことありませんし、先輩ほど経験もありません。俺の代わりの『首輪付き』はたくさんいます。俺はその多くの『首輪付き』の一人でしかないんです。」

「鉄・・・・・・・・・・・。」

「だから、大したことないとか言わんでください。惨めになるんで。」

龍也は言いたかったことを奏に伝えたと思い、そこで言葉を切る。

龍也の言葉を自分が理解できる範囲に嚙み砕いているのか、奏は少し唸ったような声を出しながら、考えていた。

そういえば、と龍也はふとなぜ銀行に行ったのかを思い出した。

「渚先輩、腹減りません?」

「えっ?うん、そうだね。行く?」

「行けます?」

「うん、大丈夫。」

「それじゃ、行きますか。」

「『授業』してくれたから、奢るよ。」

「『授業』?」

はて?と龍也は首を傾げるが、奏はなぜか頬を赤くして笑う。

「後輩から説教されたから、そのお礼させてって言ってるの。」

「説教ですか?俺が?」

「さっきしてたじゃん。」

「説教って・・・・・・・・。」

説教というほどでもないと思うのだが、と龍也は思うのだが、そう捉えたらしかった。

奏は龍也に笑いながら手招きする。

「さぁ、鉄。早くいかないと、昼休憩終わっちゃうぞ。」

「はいはい、了解ですよ、渚先輩。」

やれやれだ、と肩をすくめながら龍也は先に行く奏を追う。

『首輪付き』の一日はこうして終わっていく。

はい、というわけで第三話になります。なんとか形にはできてはいるので、なんとか終わりに行けるか?と疑問に思いながらではありますが、頑張って終わらせたいなとは思っています。全然先が見えてはおりませんが、よろしく頼みます。

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