表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3SGM~三分間のスーパーガードマン~  作者: 絶対に斬れない刃
着任。新生活に燃ゆる警備員。
2/12

第一話 何ができるのか、それが問題だ

20XX年。異能を扱う超能力者が多くなった「世界」で、一般人の平和のために戦う企業があった。「これ」は、その企業で働き、日常の平和のために戦う戦士の戦いの物語。

三分間のメタルウルフ(仮)

第一話

何ができるのか、それが問題だ。








「・・・・・・・・これで、面接は終わりです。なにかありますでしょうか?」

「では、一つだけ。通知などの連絡はありますか?」

「・・・・・・・・・・・そうですね。それでしたら、今すぐでもよろしいですか?」

「・・・・・・・・・・はい?」

鉄龍也は目の前にいる少女、紅茜と言ったか、若い女社長が何を言ったのか理解するのに少しの時間を要した。

20XX年。

人類の多くが何も異能に目覚めていない一般人と異能に目覚めた能力者の二種類の人間になったそんな『世界』。

そんな『世界』で仕事に、就職するといっても就職するにはかなり低い確率になり、絶対に仕事に、職に就けるとは断言できないのだ。

そのために、こうして面接を受けに来て、面接を受けているわけだが。

普通、面接を受けてから一、二週間以内には結果が出るものだと思うのだが、それをすぐに結果が出せるとこの少女は言う。

そうであれば嬉しいことこの上ないのだが、なにかの冗談のように聞こえてしまう。

『インズ・ガード』というこの会社の面接を受けてみようと思ったのは、条件が良さそうに見えたからというそれだけの理由でしかない。それだけの理由で応募した龍也も龍也なのだが、それで結果をすぐに出せると言う。

ということは、もう・・・・・・。

「では・・・・・。」

「そう、ですね。確か、二階が着替え室ですので、着替えをお願いしますか?予備の装備があったと思いますので。」

「えっ。」

「えっ。」

龍也はてっきり落とされたものだとばかり思っていたのだが、この少女と言えそうな外見の女社長は採用だと言う。

そんなバカな。

自分で言うのもなんだが、よくもまぁ雇おうと思うものだ。

いや、それほど切羽詰まっているのかも知れない。

「では・・・・・・・。」

「はい。お願いしますね?」

マジかよ、と言いそうになるのをグッと堪え、喉から声が出そうになるのを堪える。

着替えるために、椅子から腰をあげて立ち上がると、回れ右をして、社長室を後にする。

確か、二階だったな。

四階から階段を降りて、二階に着く。

着いたのだが、そこで困ったことに気付く。

着替え室があるというのは聞いたが、二階のどこにあるのかということを訊くのを忘れていた。

参ったな。

適当に当てずっぽうに扉を開けるわけにはいかないし、どうするか。

そうして龍也が悩んでいると、一人の女性が扉を開けて出てくる。

良かった、と龍也は安堵し、その女性に近付く。

「すまない、着替えをしたいんだが着替え室の場所を教えてもらえないか?」

「えっ、着替え?」

龍也の声に女性は振り返って、龍也を見る。

龍也も女性の顔を見る。

強気な印象を与えそうなキッとつり上げられた瞳。後ろに纏められた一房の髪。動きやすくするためだろうか、半袖の上に着るタイプの防弾ベストを着て、厚手のように見え、ポケットの数が多いズボンを履いているその服装を見るに、先程の若い女社長のようにデスクワークをするためにその服装をしているのではなく、『仕事』のために、その様な服装をしていると予想できる。

「ってことは、あんたが・・・・。」

「そうだとは、まぁ思うがね。服装が服装だ。出来れば、装備を貸してもらえると嬉しいんだが?」

「オーケー、オーケー。装備ね。」

女性はそう言うと、龍也に着いてくるように手招きをし、そこを後にする。

「そっかー。雇ったんだー、新人。一応言っとくけど、警備会社って言ってるけど、他と違って大変よ?」

「あぁ、知ってる。いや、知ってます。」

「敬語?いーっていーって。こういう仕事でしょ?敬語とかいちいち気にしてたらやってけないよ?」

「そうか。悪いな。」

「気にしなーい、気にしなーいって。」

龍也はこの女性の名前を知らない上に、恐らくはというより先輩なはずなので、その先輩に敬語を使わないのはどうかと思い、言い直したのだが彼女は気にするなと言う。

だからといっても敬語を使わないのはどうかと思うのだが、改めて敬語で言うと嫌みに聞こえてしまう。なので、使わないで言うことにする。

思えば、自己紹介をしていない。

「新入りの鉄龍也だ。よろしく頼む。」

「渚奏。よろしくね、新人。」

互いに向き合い、手を交わし合う。

「ん?鉄って能力者?」

「そうだが?それがどうした?」

「うん?あー、なんでもない、こっちの話。」

ははっ、となにか気まずそうに苦笑いをする奏。その理由は龍也には分からなかった。

それから、少し歩き、倉庫らしき場所に入ると、渚は装備を探し、装備一式を龍也に渡す。

「はい、装備ね。」

「ありがとう。」

「着替え室はさっきのとこから二部屋隣ね。一応言っとくと、これから出社するときはその装備着て出社した方が良いと思うよ?というか、着て。」

「スーツは?」

「あー、大丈夫。『それ』着て来る人、いないから。」

「いない?」

「それに、スーツって言ったら、『パワード・スーツ』のこと言ってるって思われるから。」

「分かった。」

奏から装備一式と助言を受け、龍也は装備一式を受け取る。着替え室の場所は奏から聞いた。

回れ右をして、奏に会った場所に歩いていく。

ずしりと重い感触がする装備だ。

これから、この装備を着て警備の仕事をする。そう思うと、この『インズ・ガード』という警備会社の警備の仕事がどれだけ危険か、微かにしか思えないが、危険な仕事であるということが分かるというものだ。

下手をすれば、命を落とす危険があるということだ。

着替え室に到着すると、着替え室の空きロッカーを確認して、スーツの上着を脱ぎ、シャツのボタンを外す。ボタンを外し終え、シャツを脱ぎ、ズボンのベルトの固定を外し、ズボンを脱ぎ、下着姿になると、装備の上着に腕を通し、装備のズボンに足を通す。さっきまで着ていた一般人の姿ではなく、頑丈な警備員の姿に変わる。

その姿に変わると、大きな鏡の方に歩き、自身の格好を見る。これから、危険な仕事に就くんだと龍也は再確認する。気を引き締めねば。

そう気を引き締めると先程まで着ていたスーツを畳み、ロッカーの中に入れ、廊下に出る。

廊下には奏が待っており、龍也の姿を見るや否や、ヒューと口笛を吹く。

「さっきより格好いいじゃん。」

「誉めるな。」

「嫌みより良くない?」

「まぁな。」

一種の恒例行事なのか奏はそう言うと、手を龍也に伸ばす。

「ようこそ、新入り。歓迎する。」

「歓迎感謝します、先輩。これから、よろしく。」

先程までの調子はどこへやら、キッと気を引き締めた表情で言う奏の手を握り、感謝の意を伝え、握手を交わし合うと、手を放す。

龍也より小さい奏の手からは強い意思が感じられた。その感触を忘れまいと龍也は指で手を擦った。

「そう言われると、肩が重いね。」

「死にたくないのは、御互い様だろう?」

「まぁね。」

警備会社と言っても軍隊や警察よりかは命の危険はないと言える。だが、この世には異能が使える異能者が多く存在する。その様な異能者の政府公認の企業に勤めてはいない「首輪なし」の連中から異能者でもない一般人が勤めている企業を警備する、政府公認の警備会社、「首輪つき」の社員が「首輪なし」の連中と戦う可能性がある。危険と言えば、危険の仕事なのだ。

龍也は「普通」の、一般人からの視線から逃げるために、『インズ・ガード』に応募したのだ。

別に戦いたいとかそういう立派な理由ではない。

「そう言えば、渚。お前、異能は?」

「えっ?」

「いや、なに。さっき俺に聞いたろ?お前も持ってるのか気になってな。」

「あー。・・・・・・・・あー、そうだったっけ?」

「おい。」

「言いたくない・・・・・ってのは。」

「それでもいいが、情報交換ってのは当たり前、だろ?」

「ですよねー。」

そこまで言いたくないのか、と龍也は思い、もしやと疑問を持つ。

「・・・・・・・・・ないのか?」

「うん。」

「そうか。」

奏の答えを聞いて、龍也は成る程と納得する。

先輩であろう奏が敬語を使うなど別に気にする必要はないと龍也に言うのはつまり、そういうことだ。

異能者は異能を持たない一般人と比べると地位が高い様に世間では思われている。どれだけ地位が高く権力を持っていようと異能者一人いれば崩壊する。

だが、職にも就いていない無法者の異能者を自由にさせておくわけにもいかない。

そのために、政府の安全であるとお墨付きが付いた企業に就いていない者を「首輪なし」、就いている者を「首輪つき」と言うようになった。

龍也としては、そうして差別化を計るのはどうかと思うのだが、奏は気にしているようだ。

「あー、その、なんだ。悪かった。」

「な、なに言ってるのさ。」

「知らなかったとは言え、な。すまない。」

「べ、別に。」

「一応言っとくと、異能が使える超能力者って言ってもなんでもできる『スーパーマン』じゃない。だから、気にする必要はないぞ。」

「ありがと。」

「気にするな、先輩。」

そう言うと、龍也は手を保護する頑丈そうなグローブを手に付けると、ギュと力強く握る。

「此処にいたか、渚。新人もか。」

「柳原チーフ!」

奏や龍也の防弾姿をした男が二人を見つけ、話し掛けてくる。チーフということは偉い人らしいと瞬時に龍也は把握する。

「丁度良い。渚、新人とバディ組んでみろ。新人、渚は凄いぞ、この前の時にな。」

「チーフ!」

「バディ・・・・・・・・ですか?」

バディ・・・・・ということは、奏と龍也をタッグを組ませて、二人でやれということだろうか。

「渚は日が長い熟練者。そんで、お前はまだ日が浅い。組ませるには丁度良いだろ。」

「でも。」

「でもとか言うな。全員伸したお前がそんなこと言ってたら、泣けてくるわ。あと、新人、手出せ。」

「あっはい。」

柳原に言われて龍也は手を出す。

出した手にぽとっと手帳らしきものを落とす。

「これは?」

「社員証。こいつはスゴいぞ。耐弾耐刃耐熱耐撃の耐久尽くしだ。左の胸ポケットに入れとけ。『何があってもいいように』、な。」

「はぁ・・・・・・。」

柳原に言われたように社員証を左の胸ポケットに入れる。それが事実であれば、『万が一』が起きたとしても大丈夫な気がする。起きてはほしくはないことだが。

「よし、入れたな。あと、ついでだ。仕事行ってこい。二丁目の吉田さん家。どうも『ネズミ』が入ったらしくてな。」

「『ネズミ』・・・・盗み・・・・強盗ですか?」

「分からん。他のやつらに回そうにもいなくてな。」

「確認せよ、と。了解です、チーフ。」

「渚、無茶だけはすんなよ。相手は『首輪』が付いてない可能性が高い。」

「無茶はしませんよ。無理はしますけど。」

「新入り、渚はこういうバカだから、前に出すな。手綱しっかり持っとけ。」

「了解です。」

「よし、行ってこい。」

「「了解!!」」

シュっと、敬礼する様に二人は右手をあげる。





「初日からって、大変だね。」

「良いんじゃないか?これくらい忙しいのがらしいけど。」

「そう?」

呑気に口笛を吹きながら奏は歩き、神妙な表情で歩く龍也。二人の様子は正反対のように見える。それもそうだろう。奏はかなりの手慣れで、龍也は今日が初の仕事の初心者なのだ。

「それじゃ、ちょいと先輩からのアドバイス。」

奏は何を言うかと思いきやそう切り出した。

「『首輪つき』と『首輪なし』。同じ様に聞こえるけど、同じじゃない。それは何故か?はい、鉄。言ってみて。」

「単に職に就いてるか就いてないかの違いだろ?」

「ブッブー。はい、不正解。」

「違うのか?いや、待て。政府が安全だと保証した企業に就いているのが『首輪つき』で、それ以外が『首輪なし』か。」

「はい、正解。正解者には拍手と先輩に一杯奢る券が送られます。わーい、パチパチ。」

「奢られるんじゃなくて、奢るのかよ!!」

「ま、だいたいそう言われてるわね。うちの会社、『インズ・ガード』は政府がOKって公認してる会社だから、鉄とかは『首輪つき』って言うんだろうけど。」

奏の言葉に龍也は反論するが、奏は龍也の言葉を受けることなく流して言葉を紡ぐ。

決まりっぽいな、と龍也は思い、奏の言葉に耳を傾ける。

「となると、『首輪なし』ってのはどんなのを指すかって話になるわけだけど。」

「政府が認めてない企業に勤めてる連中ってか。」

「そういうことね。」

龍也は頭のなかで奏の言葉を反芻する。奏はそんな龍也の姿を見て、うんうんと頷く。

「うちは警備会社。異能者が強盗やってるケースもあるし、異能者に襲われるケースだってある。」

「そこで、俺みたいな『首輪つき』の出番ってか。」

「そう。その時は頼むわね。」

「なにが?」

「だって、私異能者じゃないただの一般人よ?一般人が異能者に勝てるわけないじゃない。だから言ってるの。その時はよろしく、って。」

その一般人が『首輪つき』と呼ばれる異能者連中がいる警備会社にいるのがおかしいと龍也はツッコミを入れそうになったが、入れたら負ける気がしたのでツッコミは入れなかった。

そんな話をしながら、住宅街を歩いていると一件の住宅に着く。

「吉田、吉田・・・・・吉田宏明。ここね。」

「どうする?」

「私が頭につく。鉄、後ろお願い。」

「了解だ、先輩。カッコいいとこ、頼みます。」

「か弱い女の子になに言ってるの。」

か弱い・・・・・?と疑問に思いながら、龍也は前に行く奏の後ろにつく。

奏は龍也が後ろについたことを横目で確認すると、玄関の扉に手をかける。

ギィ、と音をたて玄関扉が開くと、奏は警戒して家の中に入る。

その奏の背中を守るようにして龍也も中に入っていく。

中に入ったときにガタガタッと一階と二階から音が聞こえる。

龍也は奏の合図を待つが、奏は一階の方から潰す気なのかそのまま歩いていく。

おいおい、と龍也は心の中で呟く。声に出してしまえば、相手にバレてしまうと思ったからだ。

ゆっくりと歩きながら、奏は腰のポシェットに付いている警棒と小型のトゲがない平たいパイナップルに似たものを両手にそれぞれ握る。

玄関を開けてすぐ横の扉に手をかけ、音をたてないように静かに開ける。

その部屋はなにかの作業をする作業部屋のように見え、特に荒らされた形跡もなにかを動かした形跡もない。

この部屋にはいない。

次の部屋の扉に手をかけ、扉を開ける。

その部屋はダイニングのようで、いろいろなものが鎮座していたが、それらは荒らされたように整理された場所から崩されていた。

ここか。

そう判断すると、奏は踏み込んでいく。背後から襲われる場合を考え、龍也は背後を警戒する。

「食らえ!!」

踏み込んだ瞬間、奏に向かって大きい氷塊が飛んで来る。奏は瞬時に、前方に飛び、着地はせず、勢いを殺さずに、前方に回っていく。龍也は奏に氷塊が飛んで来たのに気付くのが遅れ、ギリギリのところで避ける。

回っていった奏は片手で握った警棒を振り伸ばし、片手に握ったパイナップルからピンを抜き、氷塊が飛んで来た方にパイナップルを投げる。

瞬間。

パンッと高い音と共に眩い閃光が炸裂する。

「目がっ。くそがっ。」

目を覆いながら強盗は唸るところに体勢を低くして奏は跳ぶ。そして、相手に接すると下から上に警棒を振り抜く。

「グアッ!!」

アッパーの要領で身体を後ろに反らした強盗におまけとばかりに飛び蹴りを懐に決め、強盗は吹き飛ぶ。

「はい、これで決まりっと。どう、新人?分かった?」

ふぃと額の汗を拭い払うと、後ろにいるはずの龍也を確認するために背後を振り返る。

だが、そこには龍也の姿はなく、廊下からドゴォ、と破壊音が聞こえる。

入ってきた扉から廊下を覗いて見る。

「おいおい、強化系かよ。ボクサーとかレスラーやれよ。」

そこには腕が一般男性(奏から見て)二倍近くの太さがある腕を壁に突き刺した強盗のもう片方と龍也が対峙しており、龍也に向けて放ったであろう右腕を避けるために咄嗟にその場にしゃがんで危険を避けていた龍也の姿があった。

「あちゃー、強化系か。分が悪いな。」

「先輩、ヘルプ!!」

「援護したいけど無理。」

「そりゃないぜ!!」

「宮田がやられた!?くそがっ!!」

奏が溢した声に龍也は奏に助けを求むが、奏はそれを拒否する。

奏の姿に、もう一人がやられたことに強盗は悟り、暴言を吐く。

「これも先輩からの愛情ってか!!愛が重いぜ、ったくよぉ!!」

そう文句を吐きながら、龍也は拳を握りしめ、立ち上がると同時に相手の顎に向けて、拳を打ち出す。

ドゴォ!!と力強い音が響きながら打ち出された拳は相手の顎に当たる。ぐらぁと体勢を崩すが、それも一瞬のこと。お返しとばかりに龍也の胴に向けて、拳が打ち出される。避ける間もなく、龍也の胴に打ち出された拳が向かっていき、ドォン!!と思いきり入った音が響く。

「鉄っ!!」

「はっ、くそが。あとは女だけだな。」

その音が奏の耳に届く。

強盗は龍也が死んだと思い、龍也に突き入れた拳を抜いて奏の方を向こうとし、そこで違和感を覚える。

なぜ抜けない?

ゆっくりと、龍也に打ち出した拳を行方を目で追う。

そこには、龍也の両手にがっしりと掴まれた腕が。

「強化系ってのは、お前だけの専売特許じゃねー。他にもいるっての忘れてるんじゃねーよ。」

首を垂らした龍也は強盗に聞こえる程度の小さな声で言うと、掴まれた腕からミシミシッとヒビが入っていく音が聞こえる。

「ッグ!!グァァァァァァ!!腕が!!腕がぁぁぁぁ!!」

ダンッ!と弾くように強盗の腕を龍也は放し、そのまま勢いを殺さずに自身の拳を打ち出す。

ゴォン!と強盗の顔に拳が入ると、強盗の身体は吹き飛び、壁に当たる。

「ナイスホームラン。サヨナラかな。」

「スリーベース、いや、満塁ホームランだと最高ですけどね。」

援護せずに見ていただけだった奏は龍也によくやったと言うように軽く冗談を言う。その冗談に龍也は冗談を返す。




「出来れば、通報してほしいものだがね。毎度のことながら。」

「『うち』としては、とは言えないので、社長に言ってください。」

「全く困るよ。警察として『君達』を評価しようにも出来なくなる。」

「善処します。」

「どこをだ。」

全く、と言って刑事はパトカーの中に乗り込んでいく。

そのやり取りを少し遠くで見ていた龍也は奏に寄っていく。

奏はやれやれと言わんばかりに乱暴に頭を掻く。

「民間の警備会社の仕事じゃないってさ。だったら、あんたらがやれっての。」

「警察も警察でやる仕事がありますから。」

「そうは言ってもさ。」

「でも、先輩。一人で能力者相手するってスゴいっすね。」

「慣れよ。慣れれば赤ちゃん相手にするのよりかは楽。」

「だったら、助けに入ってくれても・・・・。」

「強化系なら、話は別。無理なものは無理。」

「慣れってさっき・・・・・・・。」

「あー、あー、聞こえないー、聞こえないー。」

「ひでぇ。」

「ってか、強化系だったんだ。」

「聞かれてはなかったっす。」

「聞いてはなかったけど、言っても良かったのに。情報共有はバディの基本よ?」

「あー、あー、聞こえないー、聞こえないー。」

「っこの。」

「先にやったのは先輩ですよ?」

「そうは言ってもやる?」

「そうですけど。」

「奢りはなし、ってしてたけど、どうしもらおうかな?」

「お金ないんで。」

「一杯くらいは大丈夫でしょ?」

「マジっすか。」

頑張れ、頑張れと言うように奏は龍也の肩をぽんぽんと軽く叩いて帰り道を歩き出す。

これは高くつきそうだ、と龍也は頭のなかで残高を計算する。


というわけで、後書きでございます。今回、アインスとツヴァイの二人は出ておらず、新キャラが出ています。この段階で「だいたいわかった」と言う人が多くいるとは思いますが、それは言わないでもらえるとありがたいです。方針としてはそうなんですけど、出来るか不安でなりません。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ