007[私とカーリタースの関係]
[私とカーリタースの関係]
耳まで真っ赤に染め
『僕は、未成年者の不純異性交遊を認めていません!』と
コクレアを拒絶するユーニを生温かぁ~く見守りながら
私が利き手ではない左手で、少し不器用にパスタを食べる
カーリタースが、ユーニにも何かしら注文された物を出し
洗い物を終え、黒いカフェエプロンを外して
何時もの様に、カウンターから出て来て
『髪、邪魔だろ?纏めるぞ』と
背後から私の紅茶色の髪に触れ、手櫛で髪を梳かした。
私はカーリタースが時々、副業でしている
「髪結いの練習台にするつもりだな」と思いつつ
『ありがとぉ~、よろしくぅ~』と、そのまま
カーリタースの練習の邪魔にならない様にパスタを食べ続ける
私が無抵抗なのを良い事に・・・
カーリタースは、私の髪にヘアクリームを擦り込み
扱い易くなった私のサイドの髪をすくい上げ
私の髪を編み込んで括り、逆側も同じ様にしてから
左右の編み込んだ髪を合わせ、残った髪を掻き上げ
括った紐を外し、器用に綺麗にアップにして
綺麗な花を模したバレッタで、髪を纏め上げてくれた。
『あら可愛い…坊ちゃんてば、女モノの髪型が似合いますね
女の子みたいですよ!「陰間茶屋」で「男の娘」として
「高額売り出し」イケマスね!』と
コクレアが笑うに笑えない発言をしてくれる
「男の娘として…なのかよ!」
私は嫌そうな顔をして、半眼でコクレアを見た。
『いやいや、フーなら「男相手」じゃ無くて「女相手」でも
「男の娘」で「高額指名」イケルだろ?』
なぁ~んて。遅れ毛をヘアピンで留めながら
カーリタースまでもが真面目に、笑えない事を言ってくれている
「何故に男の娘で女の相手を?」と、疑問に思いつつ
私は「女の子みたい」まで、な自分を称する表現に
心の中で胸を撫で下ろしつつ、乾いた空虚な笑い漏らす
それにしてもだ・・・
「あのぉ~…もしもし?それは、御世辞ですか?マジですか?
更に言えば、男の娘をそこまで強引に強調しなくても
良くは無いのですか?そんなに私は女には見えませんかね?」と
女とバレ無い事は良い事なのだが、私的にちょっと悲しくなった。
会話に出てきた「陰間茶屋」も「男の娘」も
単語的に馴染みが、全くと言って良い程に無かったユーニは
『陰間茶屋?高額売り出しって…何?それ?何の話?』
無智さ故に首を傾げて、悩みに悩み
『男相手?に、女相手?男の子?高額指名だって?!』
時間を掛けて大凡の答えに辿り着いて
『フロースに身売りさせる気かよ!僕は、そんな事は許さないぞ!
第一、フロース未成年者だろ!
未成年者の不純異性交遊と、不純同性交友も禁止だ!
何処の誰が許しても、僕の正義がそんな事は許さないからな!』と
色々、空回りながら叫んでくれるのだった。
「冗談、通じねぇ~なぁ~…王子様は」
私は勿論、カーリタースとコクレアも
ユーニに対して、生温い目を向け緩い微笑を浮かべる事になる
『あっついなぁ~おい!
フー…コイツってば、こんなに真直ぐで大丈夫なのか?』と
カーリタースが私の肩を抱き、囁く様な真似をして
私の隣で普通に話し『依頼だ』と囁き、私の手にメモを握らせる
私もカーリタースの耳元に近付き、隠れてメモを確認し
『了解』と囁き、カーリタースの真似をして
『真直ぐなのは美徳だけど
トップに据える事を考えたら、ちょっとアウトだよね?』と
ユーニに気付かれない為に、普通に会話を続けた。
コクレアは…と、言うと
『坊ちゃんは確か15ですよね?まだ、先は長いなぁ~…
少年は幾つなの?』と、ユーニの年齢を訊ねている
私は「今日で16なんだけどな…」と思いながらも
言うタイミングを逃し、訂正するのも面倒なので放置し
ユーニは『僕、16ですよ』と答えていた。
カーリタースが腕を組み、次に顎に右手を当て何かを考え込み
卓上カレンダーを手にして、納得した様子で
『訂正しろよ、フー…お前も、今日から16だろ?』
私の頭を優しくポンポンっと叩いて訂正してくれ
可愛らしく纏め上げた髪が、乱れてしまわない様に優しく撫で
『悪い悪い、今年は花を持っていなかったから気付かなかった
怪我して今回は断念したのか?良い事だ…』と
カーリタースは今、私が
怪我をしながらも無事に、此処に居る事を喜んで小さく笑った。
『今日からって…命日がフロースの誕生日って』
ユーニが狼狽し、表情を曇らせ私をじっと見ていた
私的に、ちょっとした不都合が起きていた
「あぁ!カース…
今回は、訂正してくれなかった方が良かったかも!
今日は本当に運が悪いなぁ~、知らなくて良い子が知っちゃったよ…
ユーニがイラナイ気を使ってくれて、更にウザくなるぞぉ~」
私の気持ちがちょっと重たくなった。
そんな私の気持ちを重たくしたユーニの呟きに
私を良く知るカーリタースが目を見開き
『そっかぁ~…フーはやっと
自分の事を話せる相手を見付けられたんだな』と
親が子供の成長を見守る様な目で私を見て、喜んでくれている
「いやいや、そう言う訳ではないんだけど…」と
最初、私は「否定しようか?」とも思ったのだが
今までの事、前世での事を思い出して躊躇する。
実の所、カーリタースは知らないのだが
前世、私がセププライだった時代・・・
「仕事を受けてくれる傭兵を斡旋する業者」であった
今は亡きカーリタースの父上に、私が息子と同世代と言う事で
色々大変御世話になっていた事があり
現世、カーリタースと再会した時には・・・
当時、祖母に雇われ「掃除婦?」をしていたコクレアの片恋の相手
ストーキングを繰り返していた相手がカーリタースである事を知り
フロースとしては「面識無しの状態」で「飛び込み営業」を掛け
コクレア共々付き纏い、オカマと子供で散々迷惑を掛け
受け入れて貰い、この10年間・・・
コクレアを「押し掛け妻」として、側に置いて貰った上で
私への「仕事の斡旋」と
「仕事上の信頼を得る為の管理者・保護者」的な
仕事をする上で、必要な役割を担って貰ってしまい続けていた。
つまり前世でも、今世でも・・・
私は継続的に、カーリタースに迷惑を掛けまくっているのだ
そんな私が・・・
「態々、カーリタースの気分を害する事も無いよなぁ~…」
私は今度の事も、自分から発言して訂正する事を諦め
いや、どっちかと言うと…サボリ
「お父さんモード」に切り替わってしまった
カーリタースの表情を見て
「もう面倒臭過ぎて、どうでも良くなってきた」と
話を聞き流す事にした。
私がカーリタースの言葉に反論するか思案していた時
事前に「私を産んでくれた人の墓に供える花が欲しい」と
私から聞いていたユーニは、カーリタースに・・・
『フロースが、自分のお母さんの墓前に飾る花を持ってなくて
何でどうして、それが良い事なんですか?』と質問し
祖母の下で働いていた事のあるコクレアは
私を産んだ人と面識は無かった筈だが、沈んだ表情で黙り込み
静かになっていた。
突然、沈着冷静で大きく感情を表に出す事の無いカーリタースが
『フー、良さ気なの見付けたなぁ~
ちゃんと色々、心配とかして貰ってるんだ!良かった良かった』と
腹を抱えて大きな声で笑い出し
私が肯定も否定もしないので
「照れている」と判断した御様子で、カーリタースは私から離れ
ユーニに近付き・・・
『凄いな、お前!王族としての人徳ってヤツか?
フロースは寂しがり屋の割に、豪く過激な人見知りで
狼並みに滅多な事では、懐かないんだぞ!
どうやって、友達になったんだ?懐かせるのも大変だっただろ?』と
私的に余計な事を言って、ユーニの背中をバンっと大きく叩いた。
叩かれて、噎せて咳き込みながらユーニは
『友達?そっか、もう…僕とフロースは友達だったんだ!』と
私に対し、若草色に輝く期待の眼差しを向けてくれた。
何がどうしてそうなったかは分からないが・・・
「あぁ~あ…何かユーニに友達と認定されてしまった様だ」
私は目の前の皿に残っていたパスタを平らげ
溜息を吐いて自嘲気味に笑う
ユーニは、それを肯定と受け取り大喜びし
カーリタースは、何時も私にして来たのと同じ様に
ユーニの金髪をワッシワッシと撫でて
『フーの友達は、俺の友達だ
何時でも気軽に遊びに来て良いからな』と言っていた。
「うわぁ~…もう私にゃ、対処しきれねぇ~ぞぉ~
放って置くしかねぇ~な、コレは…」
私は、一時的にユーニにカーリタースの気持ちを奪われ
御機嫌斜めになって行くコクレアの様子を眺めながら移動し
食べ終わった皿やコップをカウンター内の流しに入れ
右手が使えなかったので、そのまま置いて
満腹で眠たくなったので・・・
カーリタースが自分用に購入し、店に置いている
柔らかく昼寝をするのに適した、大きな1人掛けソファーで
仮眠を取る事にした。
w本篇と関係が有る様で無い御話w
今回は珍しく、ちゃんと関係有りそうな御話w
肩までの長さの髪を普通に括るよりも
編み込みした方が女子っぽく見える気がしませんか?
まぁ~編み込みする場合、長さによって組み方を考えないと
編み込めないんですけどね…
そして、髪留めバレッタの設定・・・
「綺麗な花を模したバレッタ」では無く
「植物を描いた絵の入ったバレッタ」が良かったかも!
なぁ~んて後悔中です!
「綺麗な花を模したバレッタ」では選択肢が、蓮か彼岸花か…
紫陽花も行けるか?程度なのですが
「植物を描いた絵の入ったバレッタ」にすると桑とかパセリとかも
入れる事が出来るのです!って・・・
此処までの話では、その設定の意味が訳分からんですなw