表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
60/71

060[越えられない壁]

アモルは、何があっても私の見方と言う認識があり

そのアモルの大切な恋人の「トニトゥルスを心配させない様に」と

一緒に呼び寄せて、今後の行動予定を話してしまったのは

私の痛恨のミスであろう

トニトゥルスは、何時の間にかカーリタース側に付いていたらしい


トニトゥルスから筒抜けになった情報は

カーリタースを通し皆に知らされた御様子だ


御蔭で、私が療養させられていた屋敷を抜け出し、降り立った先に

ビールジョッキを片手に持ったグランツが立ちはだかり

『俺は王子じゃないぞ!

今は、フロース!お前のお兄ちゃんだ!甘えて見せろ!』と

脱走してアモルと合流する直前の場に登場したのは、笑えない現実だった。


グランツが、何を言いたいのかが分かり辛いのだが、多分

「王子としてではなく、兄として隣国へ一緒に行ってやろう!」

とでも言っているのであろうか?

酔っ払いに今、訊ねても、ちゃんとした返事が返ってくる気がしない


そんなグランツの背後には、カーリタースは勿論

ユーニとコクレア、テッレストリスの姿がある

その中でもカーリタースからは

私に対して優越感を感じている様な態度と雰囲気が醸し出されている


迂闊な私は、トニトゥルスの御蔭で

私の考えが筒抜けで、バレバレな状態に陥っている事に気付けなくて

カーリタースの狡猾さに涙する結果を導き出していた。



私は大きく脱力感を感じ肩を落とす

『自分から「甘えろ」だとか、いやだよ、恥ずかしい……。』

『恥ずかしがるなよ、可愛いなぁ~』

『ん?いやいや、グランツ……。

私は、グランツのその発想が、恥ずかしいって言ってんだけど?』

『えぇ~?それは、妹って立場に慣れてないから

そんな風に思うんじゃないのか?俺の妹になったんだから慣れろよ!』

『は?無理だろ?慣れれねぇ~よ』


私は正直、アモルと合流していたら

脱兎の如く、コイツ等の前から逃げ去っていたと思う本当に……。


私がグランツで立ち往生していると、私の気持ちを知ってか?知らずにか?

ユーニが、待ち合わせ場所からアモルを連れて来てくれた

『フー!遅いよ!遅刻だよ!』と

駆け寄ってくるアモルの手には、何故かイカ焼き…割り箸に刺さったやつ

そして、焼き魚が棒に刺さったやつ

アモルが馬でなく、人型で待っていた事にも驚いたが

後ろから付いてきている人の姿のトニトゥルスの荷物も気になる所だった


『それ、何肉の串焼き?コップの中はもしかして、ビールか?』

私の問いにアモルを追って来たトニトゥルスは

『いや、リンゴの果実酒だ!

それと、肉は山羊だな、初めて食ったけど、美味いぞコレ!』と答え

カーリタースが私の肩をポンっと叩いた。


『フーは林檎、好きだろ?

トニーから出掛けたがってるって聞いて

皆で話してな、グランツがグランツの親父さんに許可貰って

臨時で屋台を招集して、屋台村を作ったんだ!お祭りとかも好きだろ?

ほら、グランツお兄ちゃんにお礼を言ってみなさい』と

林檎飴を強制的に手渡しされ

どうやら私は、カーリタースにグランツへのお礼を強制されるいらしい


グランツからの期待の眼差しが痛い

「グランツ……。この人も、憎めないタイプの人材なんだよなぁ」

私は渋々ながらもお礼を言うと、グランツは本当に嬉しそうな顔をして

私の手を引き、屋台村の中を連れまわし、色々奢ってくれた。


これも総て何もかも、絶対にカーリタースの策略でしかないであろう

私は固めた決意と一緒に出鼻を挫かれ、やる気を削がれ

グランツだけではなく、ユーニにまで翻弄され

盛沢山な屋台の数々に屋敷の者達だけでなく、周辺住民も集まり

お祭り騒ぎになっている中

「もっと北の国に行けば、

今の年齢でも、もっと強い酒が飲めるのに!」と自棄酒を呷り

グランツが飲んでいる度数の高い酒を横目で見て

この国の酒関連の法律が「コップを取り違えた」って言えば

許される程度の緩い法律である事を考慮し

「盗み飲み出来ないか?」と、様子を窺うが

大酒飲みが、空になる前にコップを置く事は無く、無駄に終わる


私は小さく舌打ちをし

「隣国へ行く足を奪われたし

見た感じ、行動を起こすなら明日の夕方以降かな……。」と

酔っ払い御一行様の中に参加しているアモルの様子を眺め

「アモル…100%明日は、二日酔いで死んでるんだろうな……。」って

予測できる範囲で、今後の予定を考えながら

コクレアが進めてくれる酒と肴を楽しんだ気がする。


此処で行き成り限定的でない過去形が入ったのには理由がある


気付けば、何時もと同じ様にユーニと同じ布団で目覚め

いつもとは違い、自分もユーニも全裸な格好である事に心底驚き

途中から昨日の記憶が吹っ飛んでしまってる事に私は動揺して

今、本当に混乱してしまっているからだ。


『えぇ~っとぉ~……。一体、何があって何でこんな事に?

あれ?え?嘘だろ?でも、これってやっぱり、やっちゃった的なアレ?』

私は急いで自分の体を見分し、シーツの汚れに驚きつつ

「あれ?変だよね…コレ……。」と、少し冷静さを取り戻し

自分検証の結果は、相手の「ブツ」を見て

「あ、大丈夫だわ…無いわ……。絶対に、ユーニとしてない」と

深呼吸して落ち着く


因みに此処は、突っ込み厳禁!

肉体は生娘でも、夢で見た「過去の人様の記憶」持ちで

娼館育ちの人間に、そういった知識は盛沢山


「今世の私は、まだ処女だし

コイツとヤッたら流石に、分かるな…多分、きっと……いや、絶対!」

私は溜息を吐きながら、ベットの横に散らばった2人分の服を見て

「いや、でも…この状態で何もなかったって逆に恥?

据え膳食わねばの逆の立場、食われる側として

これで食われてね~のは、それはそれで、女としてどうなんだ?」と

ユーニに毛布を掛けながら、全裸のまま、無駄に思い悩む

そんな私は、まだ、混乱しているのかもしれない


私は改めてベットから出て、自分用に用意されたクロゼットから

適当に着替えを出して着込み、深呼吸する

それから落ち着かないので

床に散乱した自分の衣類だけ拾い集めたのだが、やっぱり気になって

結局、2人分の衣類を拾い集め

ランドリーボックスに放り込んで部屋を出たのだった。


周辺の事は『気分転換に散歩しよう』と

昨日まで、ユーニに車椅子で連れまわされていたから知っている

「アモル……。大丈夫かな?二日酔いが酷くないと良いんだが」

私はアモルとトニトゥルスに割り当てられた部屋へと向かう


2人の部屋は元が海馬と言う馬と言う事を考慮して

1階で、庭に直ぐ出られる場所になっている

因みに私とユーニの部屋は、私が窓から逃げ出す事を考慮して3階

もっと上の階なら、風の加護を得て逃げられる可能性があるのに

風の加護を受けれても、大きく得られる可能性の低い3階にある

多分これだって、裏でカーリタースが糸を引いた結果なのであろう

と、推測される


私はカーリタースの父親の代から世話をして貰っている立場なので

カーリタースに逆らい辛いのもあるのだが

根本的に「色々な意味で、カースには、敵わないんだよなぁ~」と

心底思う事が度々ある。


そんな事を考えながら

目的地であるアモルとトニトゥルスの部屋の扉を軽くノックして開けると

『自分の血で染みを作るのは怖いから

ちゃんと破瓜に見立てて、赤い花の汁で染みをシーツに残してきたもの

大丈夫よ!ユーニは勝手に勘違いしてくれるだろうし

そうなってくると、フーも観念して受け入れられるようになるって!』

なぁ~んて言うクーラーティオーの言葉が聞こえて来た。


私は扉を開けた状態で硬直し、そんな私を見たカーリタースは

『おやおや、もう、フーにはバレたみたいだぞ

そもそも、そんな事したら、フーにはバレバレになるんだがな』と

肩を揺らし、本当に楽しげに笑う


クーラーティオーと話していたテッレストリスは

『ま、偽装工作すれば、フーにはバレるのって確実だったよな

でも、馬鹿王子にバレなきゃ半分は成功って事で良かったんじゃね?

勘違いした馬鹿は手強いぞ』と若干、面倒臭そうな態度でニヤニヤし

部屋の住人のアモルとトニトゥルスは

『人間は面倒くさいね』

『発情のタイミングが合ったら作るで良いだろうに』と

馬から見た目線でモノを言ってくれている


慌てて私に駆け寄ってくるクーラーティオーは

『フーを騙すつもりじゃなかったんだよ!

でも、手を出すに出せないって悩んでたユーニが何だか可哀そうで

自信をつけてあげたかったんだもん』と

「ちょっと待て、私の意思や意見は完全に無視ですか?」と

問い質したくなる事を間違っていないような雰囲気で言って来て

『そうだ、そうだ!

ユーニと夫婦になったんだから1回くらいヤラシテやれよ!

一度はキチンと夫婦の契りを交しとかないと、後々不味い事になるぞ

将来、夫持ちで処女拗らせるとか、笑えねぇ~ぞ』と

カーリタースが無責任な事を言ってくれた。


確かに、「処女を拗らせた年配女性の……。」を

修道院とかで目にし「辛いな」とは、思った事があるのだが・・・

『え?だからって

恋愛してない相手と、ヤル気が起きるかどうかって言ったら

それは、別の話しだろ?友達続けるなら

ヤッて後々、後悔する様な事はすべきじゃないだろ!』と

正直な本音を言うと、私の意見に皆が複雑そうな顔をする


『既に拗らせてたか……。』と、カーリタース

テッレストリスは残念な生き物を見る様に

『一緒のベットに寝ててソレってどうよ?

夫婦になったからには「ヤレ」とは言わないけど

相手の事をもうちょっと、異性として意識してやったらどうよ?』と

年下の癖に私の事を非難するのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ