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006[私の寄りたかった場所]

[私の寄りたかった場所]


走る馬の振動で起きる右手首の痛みと

ユーニへの苛立ち、私の体力と意識が限界に来た所で

行きには素通りした、街道近くにある宿場町付近に差し掛かる


私は私を支えるユーニの腕に触れ、背後のユーニに顔を向け

『悪い…宿場町に寄りたいから、ちょっと寄ってくれ』と願う


ユーニは怪訝そうにしながらも、願いを聞き入れ

『仕方が無いな』と言いながら

私の頭を子供扱いする様に撫でつつ、馬を向けてくれた。


歩調が緩み、振動が弱まって痛みが軽くなったが

ユーニに撫でられ、私の紅茶色の赤毛が乱れてしまっていた


私は「多分、当分は自分で髪を括り直せないのに…」と

ユーニに対して、少しばかり言いたい事はあったが

この時だけは「言う事を訊いて貰ってるし」と

ユーニが頭を撫でる事に関して、諦め半分で抵抗しない事にした。


街道から少しずれた小高い場所にある宿場町

馬を少し歩かせ辿り着いた場所には・・・


城下町で宿を取る事が出来なかった者、訳あって出来ない者

高い宿代を払えない者達が宿泊する

安っぽい宿屋と、それに見合った飲み屋以外何も無い


だが、その飲み屋でも多少の飲み食いが出来る

空腹で私の腹が鳴った。


ユーニは、音を耳にしてクスリと笑い

『花売りも居無いみたいだし、先を急ごう』と言う

が、しかし・・・

私はその「多少の飲み食いが出来る店」に

他の用事も少しだけあって、その店に寄りたかったので


ユーニが『もう少しで城下町に着くんだから我慢しろよ』と

寄りたがらず『ガラが悪そうだから駄目』と制止するのも聞かず


ユーニが馬を歩かせ始めた馬上で、ユーニの束縛から強引に逃れ

少し無様になってしまうのだが、馬から落ちる様に降り・・・

私は体調の悪さから、その場にへたり込んでしまった。


「格好悪ぅ~…通行人が少ないのが、マジで唯一の救いだな」

私は自分が情けなく感じてちょっぴり凹む


ユーニは「抵抗され、落としてしまった」と、顔を蒼白にし

私の名前を叫び、馬から降りてきて

地面にへたり込んだ私を抱き上げようとしたのだが…


騒ぎを聞き付け、私に気付いた飲み屋のオネエちゃんが

カラフルで細かい模様のロングスカートを翻し

漆黒の長い揺るふわな髪を靡かせて

『坊ちゃん!』と、大声を出しながら私の元に駆けつけ

ユーニに体当たりをして突き飛ばし、私を抱締めた。


馬達が、翻したり靡かせたりする

カラフルなスカートや髪に驚き、嘶き後退りをする


私も一瞬驚き、硬直した後に相手が誰だか気付いて

オネエちゃんとの久し振りの再会の挨拶に『お・ひ・さ!』と

背中に手を回して軽く抱締め返し


左手を伸ばして、オネエちゃんの頭にポンポンと触れ

『コクレアごめん、ちょっと店で休まして貰って良い?』と

腕を緩め、私の顔を見たオネエちゃんに対して緩く笑い掛けた。


コクレアは『はい!畏まりました。』と

髪と同じ漆黒の瞳を潤ませながら微笑を浮かべ


私の髪を纏める紐を解き、乱れた髪を軽く手櫛で直し

『ちょっと見ない間に、大人びて来ましたね』と

確か1ヶ月程度、そんなに長く会って無かった訳じゃないのに

目尻に涙を溜めて、私を再度抱締めた。


抱締めた暫くの後、店から誰かがコクレアを呼ぶ

コクレアは正気に返り、私を抱き起して立たせ

私を放してから改めて、私の顔を両手で包みじっと見詰め

『そう言えば、顔色が優れませんね』と、言ってくれる


私は顔を少し引き攣らせ、苦笑いを浮かべ

コクレアに突っ込みを入れたい気持ちを必死で抑えながら

『ん~だからね、店で休まして欲しんだけど』と

再度、同じ様な言葉を口にする事になった。


コクレアは相変わらずマイペースに

『そうだ!店で、ゆっくり休んで行って下さい。』と

私を御姫様抱っこで抱き上げて、店の中へと運んで行く


「うぅ~ん…ユーニと違う意味で面倒臭い」

私はコクレアの腕の中、こっそり溜息を吐いた。


突き飛ばされ、尻餅を突いた状態で無視され

放置され続け、呆然としていたユーニが正気を取り戻し


『ちょっと待て!』と叫んで、一瞬で連れ去られた私を追い

2頭の馬を店の入り口付近の金具に括り付けてから

遅れて店の中に入ってきた。


その時既に、私は・・・

髪を軽く逆立てオールバックにした

白シャツとクラシカルなウエストコートに身を包む

この店のバーテンダーな、コクレアの旦那さんのカーリタースに

カクテル用に仕入れられた筈の濃縮果汁を出して貰い


それを一口飲み、一息吐いて

『良ぃ~物、使ってますね!儲かってます?』

『いやいや、それ程でも』と、定番の会話を繰り広げていた。


ユーニが私を見て状況を理解し、金髪を掻き上げながら

『フロース!知り合いの店に寄りたいならそう言えよ!

黙ってたら分かんないし、酷い態度取っちゃったじゃないか!』と

店の入り口付近で激怒していらっしゃる


私はズズゥ~っと、硝子のコップの中のジュースを飲み乾し

『ユーニが頭ごなしに「先を急ごう」って言うからだろ?

理由を訊いてくれなきゃ話せないじゃないか』と

親しみを込めて微笑んでやった。


ユーニに対して微笑むと

何故か突然、何処からともなく殺気を感じた

私は一瞬、笑顔を強張らせて周囲を警戒したのだが


私の気を逸らす様に、カーリタースが

空になったグラスを私からそっと奪い『御代りは?』と

細い黒縁眼鏡の下で珍しく優しく微笑んだ為

意表を突かれて、集中力が途切れてしまい


殺気が誰からのモノか?誰に向かってのモノか?を

ちゃんと把握する事ができず

殺気を放った者すら、見付ける事ができなくて

ちょっと焦り平常心を保つ事までしか、できなかった。


私は殺気を放った者の事は置いておいて

序に、自分に近付いて来る

御怒りモードのユーニの事も、面倒なので放置しておいて


取敢えず・・・

『昨日の昼食べてから、何かしら慌しくて何にも食べてないんだ…

カース…何か美味しい軽食作ってよ』と、御任せ注文をする


カーリタースは呆れ顔で私を見て

『軽食で無く、しっかり食って行け』と、言い

ユーニに『御注文は?』と、声を掛け聴いてから

料理を始め『フー、規則正しい生活って知ってるか?』と

私に訊ねてきた。


私は、隣りでユーニが

『昨日、夕食誘った時「食べた」とか言わなかったか?

嘘吐いて断るなよ!』と、言っているのを無視し


『規則正しい生活?何それ?美味しいの?』と

カーリタースにだけ、返事を返した。


そこへ・・・

私の為に湿布薬の準備に行っていたコクレアが戻って来て

『右手を貸しなさいな』と、治療の為に私の右手を取り


『ちょっと信じ難いけど、その優男は連れなのね…』と

眉間に皺を寄せ、何んとも言えない嫌そうな顔でユーニを見てから

薬草のペーストを塗った布を私の右手首に貼り

添え木をして包帯を巻いてくれた。


虚を突かれたユーニは、自分が怒っていた事も忘れ

『えぇ~っと…

僕はお姉さんに、何か悪い事をしてしまいましたかね?』

オドオドしながら私の隣の席で、治療を受ける私の後ろに隠れ

私を挟んで無言なままのコクレアの様子や顔色を私の肩越しに窺う


和らぎそうに無い雰囲気にユーニは、私に助けを求め

『フロースの身近には美人が多いけど、僕の記憶違いじゃなきゃ

過去を遡っても、エスニック系の美女に会うのは

多分、今日が初めてだと思うんだ…

フロース、こっそり紹介して貰っても良いかな?』と

想定範囲を越えた言葉を小さく発した。


丁度その時、物音が静かであったが為にユーニの言葉が

その場に居る全員に届く


私と・・・

ニンニク、トウガラシ、ベーコンと玉ねぎとアスパラを炒め

パスタを湯がいていたカーリタースは

ユーニの言葉に少し驚き、コクレアの様子を窺う


『美女?エスニック系の美女?それ、私の事?』

ユーニの言葉に、コクレアが過剰反応を示しているのが見える

私とカーリタースは無言で視線を合わせ

苦笑いを浮かべ合うしか道は残されていなかった。


最初のコクレアに対する表記と、コクレアの行動で

御気付きの人も居るかもしれませんが・・・

コクレアは生物学的には男で、心は肉食系女子だったりする。


私とカーリタースが見守る中

コクレアはユーニの隣の席に移動し、身を擦り寄せ

『坊や…意外と見所があるのね、ヤオイに興味はある?』と

直接的な御誘いを掛け


『や…「やおい」ってなんですか?』と

頬を染めながら、ユーニはオドオドとしていた。


私はカーリタースから飲み物を追加で貰い、ユーニを指差し

『食われるのを見守ったら…罪に問われるかな?』

『罪って…何でまた、そんな発想に』

『いや、アレは一応…我が国の第一王子だからさ、不味いかな?と』

『うわぁ~マジデカ…

それはちょっと、御国的に不味いかもしれないな』と会話し


『でも、まぁ~…取敢えず、フーは気にせずメシを食え』と

カーリタースから出来たてのパスタを渡され、受け取って

『わぁ~い…ありがとぉ~』と

私はユーニの事は置いておいて、食事を取るのであった。

w本篇と関係が有る様で無い御話w

今回はベスト・ウエストコート等での余談


[001]で描いてたベストも好みなのですが

あのデザインの襟付きバージョンも割合好きだったりします

後、重ね着仕様のも好きw・・・だけど、それは余談の余談で


バーテンダーが身に付けるウエストコートは

腰上丈にするか…描かなかったけど、エプロン型のが良いですねw


バックスタイルとしては背中空きのでも普通のでも

どっちでもOKですが・・・

簡単に取り外せる物でも、固定されてるのでも良いから

背中にベルトは必須です!


後は・・・中に着用するシャツの襟と帯、もしくはスカーフ


描いてない詰襟も捨てがたいけど、立襟も普通の襟も好きだなw

クロスタイや蝶ネクタイが一般的だけど

金具付きの紐や、結び方いろいろのスカーフも捨てがたい!


因みに、寒い時は仕方が無いけど

バーテンに、ジャケットは着て欲しくないのが心情です。

挿絵(By みてみん)

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