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057[理想と現実の掛け違い]

ユーニに鎖で繋がれる事は無くなったが

最近ちょっと、私の意思を無視した周囲の動きに辟易している


そして私は・・・

私に対して、伏せられていた事柄を皆から聞いてから

ある意味で一人・・・

ユラユラ揺れる柔らかい山羊革張りのロッキングチェアの上で

途方に暮れている


現時点で、私は取敢えず、和やかな時間を過ごしているのだが

私の所為で、私の知らない所で

戦争と言うモノの為に、沢山の人が殺し合いをしている現実

私の居る場所には、その影響が無くて

戦争のそれを実感できる材料は本当に少ないが、

その事を確信する事は容易にできる境遇に溜息しか出ない。


そんなある日・・・

既に顔見知りだったグランツの親兄弟と久し振りに会い

カーリタースの法螺話の御蔭で

『海神ポセイドーンの力で、不死身の身体を持つ男に性転換して

ラピテース族の王になったカイネウスとは、豪い違いだな

女神に恥をかかせて女に性転換させられたんだって?』と、言う

昔、性別を偽って7年程、剣闘士をしていた為

「いえいえ、私は元から女ですよ」と、言うに言えない事情があり

返答に困る話に悩まされている今日この頃


私が祖国の国内だけで逃げ回っていれば

「国王様が暴君になりました」だけで済んだ話なのに

グランツの居る隣国に私が逃げて来た為に

御家騒動含みの「国家間の争い」に発展してしまった現在


「とんでもねぇ~事に巻き込まれちまったなぁ~」と

私は、隣国の王族であるグランツの家族に完全に溶け込んでいる

我が国の王子であるユーニを眺めながら、また大きく溜息を吐いた。


私は皆から齎された話、雑談の中に思いを馳せる


『あの人は、嘗て左頬に

「女神の所有物である烙印スティグマを持っていた」とか言う

「自分を守て殺されたセププライの亡骸」を礼拝堂に祭りながら

その女神の力で「死んでから短期間で転生する」らしい

そのセププライの転生体を捜し求め続けていたからな……。』

私はカーリタースの言葉に、こっそり苦笑いをし

最近では「自分自身ではない」と思うようになったセププライの

生きていた頃の記憶の名の元に

「ウーニは自分で、セププライの背中から胸を貫いて殺しておいて

自分を守って殺されたとか言っていたのか」と思う


『右の内腿に女神の刻印があるから

フロースの事を「そのセププライの転生体だ!」と

僕の父親である国王は、勝手にそう思い込んで

フロースの身柄を要求してきている』と言う

ユーニの言葉に対して、私は溜息を吐き

「転生体かもしれないけど、私はセププライ自身ではないのになぁ~

私を手に入れて、ウーニはどうするつもりなのだろう?」と

捜されている事を知ってから、気になっている疑問を抱え

質問して、真意を答えて返して貰える相手がいないので黙っていた。


私は静かに頭に中で、耳にした情報を精査し

『カース…

短期間で傷を治して、体力を回復させる事ができる方法とか

何かないかな?私の弱ってる体、何とか回復できないかな?』と

カーリタースへ話掛け

『今やってる治療以上の治療は無いぞ』と苦笑いされて

『あったとしたら、先にやってやっただろうけど、今のフーには

あったとしても教えられないし、そんな治療してやりたくないな

治ったら速攻で、ターゲットをピンポイントで狙って

一人で乗り込んで行って夜襲掛けるつもりだろ?』と

カーリタースに心を読まれる


私は開き直り

『何がイケナイ?下っ端の人間が殺し合っても無意味じゃん

無駄な殺し合いして、戦火を競って喜ぶのは戦争好きの輩だけだろ?

安全圏で胡坐掻いてる「そんな頭」を虱潰しに暗殺していけば

早い事、戦争が終わってくれて、腹黒い武器商人の商売潰しても

国交正常化後には

それなりに人々が幸せに生きる為の商売を繁盛させるだろうよ

国民が馬鹿ばっかりじゃなければ、だけどな』と不敵に言い


近くにいて話を聞いていたテッレストリスに

『戦争が終われば、戦争に参加してる傭兵達が失業者になるぞ

その手には馬鹿なの普通に多いから

理想通りにはならないんじゃないか?馬鹿ばっかだから』と言う

軽い突っ込みを入れられる


私は『確かにそうかもな』と言って

『国の偉いな人の「使い捨ての駒」として捨て石にされるくらいなら

失業者になった方が良くね?』と、意見を述べ

『言い出したら、誰の意見にも耳を貸さないんだもんな』と言わせ

カーリタースとテッレストリスと言う手駒を手に入れた。


そう、この時、私は・・・

怪我が完治した未来での「手駒」と言う名の協力者を手に入れた

そんなつもりだったのだが

世の中、私だけの都合だけで周囲が動いてくれる

便利で単純な世の中では、全くもってなかったのである


私が後日、それなりに都合良く人払いができた環境で

コクレアとクーラーティオーを手駒として手に入れようと

話の持って行き方を模索していると

意図的に計画から排除していた「ちょっとオバカな王子様コンビ」が

隠密的にしなければイケナイ計画案を大きく模造紙に書いて

その計画を二人で大きな声で話し合いながらやって来た。


私とコクレアは、無言で見つめ合い

互いに隠密的な仕事を互いに内緒でしてきた経験から

『コクレア……。

今から部屋に入ってくる馬鹿共を殴っても良いか?』

『そうねぇ~…アレが部下だったら、全裸にして荒縄で縛って

直々にお仕置きしている所だわ……。

でも、フーは後、最低でも1ヶ月半は安静にしてなさいな』と

静かに話して緩く笑い合う


そしてその話し合いの結果・・・

『フロース!手伝って欲しい事があるんだ』と

扉を開けて入って来たユーニとグランツ、2人の2つの国の王子に

コクレアがカラフルなロングスカートを翻し

飛び蹴りをお見舞いした。


コクレアは王子達を蹴り倒した後

アップにしていた髪から落ちた後れ毛を後ろに長し

『坊ちゃんもちょっとだけ、夢見がちな理想主義の部分は有るけど

お前等なんなの?揃って馬鹿なの?死にたいの?』と

前半、私的に反論したくなる様な気になる事を言ってから

王子達を軽く罵り

『忍び込む計画を歩きながら話して周囲に広めてどうするの!

スパイが居なくても、行動予定を公言してたら

成功する計画も、どうやったって失敗するに決まってるじゃない!

それとも何?失敗させて実行するメンツを殺したいの?』と

2人を怒鳴り付ける


更に、ユーニとグランツが所持していた

紙に大きく書かれた計画票を目にしたコクレアは

『隠密行動しなきゃイケナイ計画を紙に書いてどうするのよ!

大きな証拠を作成するなんて何考えてるの!』と

何で怒鳴られているかを理解していない2人に

追い打ちの鉄拳を食らわせ、大きく溜息を吐いた。


怒鳴りつけられたユーニとグランツは最初

分かっていない様子だったが

暫くして、理解してくれた様子で『『ごめん』』と言っていた。


私はユーニとグランツの様子を見て

「良かった!「何故に歩きながら計画を話しちゃ駄目なのか?」は

理解できる頭があって」と、胸を撫で下ろすが

コクレアは『馬鹿なのも休み休みにして欲しい』と嘆いている


因みに・・・

乙女が夢見る理想の王子様とは程遠い、ユーニとグランツに

私の怪我の治療の為に来ていたクーラーティオーは

『馬鹿さ加減に100年の恋も冷めそうだよね』と

私に同意を求め、求められた私は返答に困り果て

『そうだな…まぁ~そうなんだけど……。

曲りなりにも、書類上の私の兄になったグランツと

同じく書類上の私の夫になったユーニに対して

その事実を私が同意するのは、私の立場的に憚られるから

ティオは私の意を酌んで

2人の「馬鹿さ加減」を治療してくれないかな?』

『え?無理だよ!馬鹿は死んでも治らないって言うでしょ?』等

目の前の王子様が馬鹿である事を否定しない会話に花を咲かせた。


そんな、私とクーラーティオーの会話に気付いた

話の種であるユーニとグランツは、少し不服そうにして

『馬鹿言うな馬鹿!馬鹿って言った方も馬鹿なんだぞ』と

馬鹿を否定せず、ユーニに至っては

『フロースだって、馬鹿だろ?

僕は、フロースの大好きだった御祖母ちゃんを死に追いやって

罪人として屠った男の息子だぞ!

恨み言一つも言わないで、僕を受け入れ過ぎだろ?

それを馬鹿な事としないで、何を馬鹿とするんだ?』と

更に馬鹿な事を言ってくれる


私はそんなユーニを『本当に、紛れもなく馬鹿だな』と笑い

『祖母ちゃんの死には、私にも責任があるんだ

責任をユーニに押し付けて、私がユーニを恨んで何の得がある?

あったら教えてくれ、御望みとあらば恨んでやるから』と

何だか訳の分からない会話を紡ぎ始めた。


そこでコクレアが溜息を吐いて

『坊ちゃんがドゥルケさんの死に責任を感じていたなんて

今まで、気付いてあげられなかったわ…ごめんね……。』と

私を強く抱締める


私はコクレアに抱締められたまま少し焦り

私よりコクレアの方が今世の私の祖母ドゥルケを慕っていた事と

そのドゥルケを祖国から助け出し

連れ出せなかった事をコクレアが悔やんでいた事を思い出し

誰にも言うつもりもなかった筈の自分の迂闊な発言で

コクレアに精神的なダメージを与えてしまった事を悔やみ

私は自分の馬鹿さ加減に泣けて来た。

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