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056[ある意味、上手(うわて)]

私は「間違ってたら自惚れ華々しいな」と、思いながら

『もしかして、私の存在の所為で戦争なんて起きてないよな?』と

毛布ごと私を抱く、ユーニの目を見て話掛ける


ユーニは私が質問してから私と目を合わせる事は無く、横を向いて

否定する事無く、態度で私の質問の答えを示す事無く肯定してくれた。


私は溜息を吐く、ウーニは、そんな事をまでしてまで

自分で殺したセププライの事が欲しいらしい・・・

けれども私は、セププライの記憶を夢で見て知ってはいるけど

「多分、私が、そのセププライ自身ではないのだけど……。

それをどうやったら

ウーニウェルスム国王陛下に理解して貰えるのだろうか?」と

私は思い悩み、ウーニに直接対決を仕掛けてみる事を思いつく

「その為には、この安全な場所から出して貰わなくては」と

利用できる者を見詰め、その方法を思案し

まずは、自分の体の情報の収集をする事にした。


私は、私の体の状態を知る為、全身の力を抜き

ゆっくり深呼吸をする

大きく息を吸い込むと、途中で痛くはなるが、咳は出ない

完全ではないが、私の肺は治ってきている様子で

気の所為かもしれないが

ある程度までは、普通に大きく息を吸っても大丈夫そうな気がする


風に切り刻まれた傷の方は、最初に傷ができてから3か月は経過し

落馬の時に開いた傷口とかを無視すれば完治している

今現在、体を上手く動かせないのは

風に切り刻まれた怪我と、落馬した時に追加でしてしまった怪我

それぞれの怪我をを治す為に寝てばかりいて

筋力が極端に低下してしまっている所為であろう

実質、この怪我の状況で「無理して動いても死ぬ事は無い」と

私は判断した。


取敢えず、何かしらを行動をする為に必要なのは情報である

『ユーニ、戦況を教えてくれ』

私は断られる事を知りながら訪ねる


思った通り『駄目だ』と、ユーニは答えた

『そうか……。じゃぁ、風に訊くから良い』

私は目を守る為に目を閉じ、風を呼び寄せる

体力のない現在、毛布に包まれた私に風が触れられる場所は少なく

風が頬を撫で、その風が私の頬を浅く切り裂いてくれる


鮮血が飛ぶ、ユーニが、私の頬から流れる血を見て血相を変え

私を抱き上げ、ベットのシーツを引っぺがし、それで私を更に頭から包む

ユーニは、私の思惑通り以上の態度で

『やめてくれ!何でも話せる事は話すから』と

悲鳴交じりな声を上げて、私を再度、抱締めてくれた。


因みに・・・

頬を浅く切り裂かれたのは、体力も無いのに風を呼んだからである

更に追加情報として・・・

戦況の基本情報さえあれば、風を使って

今後の戦況の変化を予測する事は、出来ない事も無いが

根本的な戦況を知る事なんて、出来る訳が無い事を此処に記そう


後、ユーニが私に対して恋愛感情を抱いてなくても

「私の事を本当に大切に思ってくれている」と判断できたので

ユーニの事を私の都合の良い様に使う為に

ハッタリを噛まさせて貰っただけなのは、今、此処だけの秘密です。


私は包まれた毛布とシーツの中でほくそ笑み、自分を人質に

『嘘を吐かれるのは好きじゃない、言えない事は黙っててくれ

教えて貰えない事は、風に訊ねるから私的に問題無い

さぁ~ユーニは、何処まで話してくれるのかな?』と、ユーニに言う


ユーニはシーツと毛布から私を開放し『フロースは卑怯だ』と呟き

私の頬の真新しい傷に触れながら

『傷が残ったら大変だから、手当を先にさせて欲しい

手当をしている間に、フロースに話す言葉を纏めるから

大人しく待っててくれる?』と言った

私が了承すると『救急箱を取りに行く序に、皆を呼んでくるよ』と

部屋から出て行った。


暫くすると・・・

前より明るい雰囲気になったクーラーティオーがやって来て

『あ~!駄目じゃん!また傷を作ってるし!』と私の頬を見て騒ぎ

『私、忙しいんだから!簡単に怪我する様な事は止めてよね!』と

私の頬の治療を済ませ、颯爽と入ってきた扉から帰って行く


それから更に暫くして・・・

グランツ、カーリタースとコクレア、テッレストリスが

ユーニに連れられやって来て、その反対側のテラスから

トニトゥルスに付き添われた馬の姿のままのアモルがやって来ていた。


私は『少し、外は寒くなってきているから』と、また毛布で包まれ

鎖は繋がったままだが、まるで御姫様の様に抱き上げられ

テラスへの扉の手前に置かれた一人掛けのソファーの前まで

ユーニの手で大切に慎重に運ばれ、そっと優しくその椅子に座らされる


『何処から話せば良いか分からないな』と

普段、軽そうな雰囲気のグランツが何時もと違う雰囲気で呟く

その場にいる皆が皆、凄く真面目そうな顔をしている

私はその場に緊張感に感化され、身を固くした。


そんな緊張感が漂う中、カーリタースが溜息を吐き

『そうだな、色々端折って、まずは謝罪すべきかな?

一ヶ月前、ユーニウェルシタースとの婚姻が正式に成立した。

お前には事後承諾になって申し訳無いと思っている。』と言い出す


私は謝罪の意味が分からず、放心し

何故か、失恋でもしたかのような胸の痛みを感じて

一瞬、動揺してしまい

ユーニの結婚相手が誰なのか?凄く気になりながら

『え?ユーニ…結婚したんだ……。

あ~…何て言うか…うぅ~んと、おめでとう?』と

訳も分からずに、祝福の言葉を疑問形で口にしてみる


私の言葉に対してであろうか?微妙な空気が流れる

今度はコクレアが溜息を吐いた

『フー?もしかして……。

ユーニの結婚相手が誰だか分かってなかったりするのかしら?』

『え?分かんないけど、それって駄目な事なのか?で、誰?

私の知っている人物かな?グランツの妹さんとか?』と

内心何と無くドキドキしながら質問すると

『お前だよ』と、全員の人差し指が私に向けられた。


そう言えば・・・

私が落馬して肺を痛め、普通に呼吸するのにも苦しんでいた頃

ユーニが、ほぼ裸な私に添い寝する理由に

『え?あぁ~、この格好で一緒に寝てたらさ

誰が見ても、僕とフロースが、恋人同士みたいに見えるだろ?』と

可笑しな事を口走っていた様な気がする


「あの台詞は、そんな理由からだったのか?」と

私は少しだけ理解を示しながら

「そんな事を経て私が、ユーニの妻になっただと?!」と

それなりに、私だけを動揺させてしまう事実に混乱し

ユーニを見て、改めて変なドキドキ感に苛まれ

不意に違和感を感じ、私が生きてきた人生を考え

『ん?ちょっと待てよ!お前等!!』と叫び

一瞬で冷静さを取り戻した。


『私は今までずっと、本当に最近まで「男」として生きて来たんだぞ!

そんな私が男と婚姻結べる訳がないだろ?

そもそも、私には王侯貴族の血は流れてないぞ』と

私は皆に現実へと目を向ける様に促す


カーリタースが『あぁ~、その辺は大丈夫だ』と笑う

『スラム出身なのに出生証明書が持ちで

フロースのは「男」でも

フローリスの出生証明書は「女」になってるだろ?

更に運の良い事に、父親の名前が無記名の出生証明書だぞ!

父親の名前を自由に書き込めるだろうが』

私はその言葉に嫌な予感しかしない


今度はグランツが笑う

『俺の親父が最年少で筆頭剣闘士プリームス・パールスになった

二刀闘士ディマカリエの父親になるのは吝かでもないって言ってる

その双子の妹と隣国の王子ユーニとの婚姻を利用すれば

「隣国の御家騒動に手を出す権利が手に入る」からって

ウチの親父も乗り気で、もう、書き込んで使っちゃった』と

既にグランツの父親の名前が

元からそこに存在していたかの様に加筆されている

フロースとフローリスの2通の出生証明書を見せられた。


私はカーリタースとグランツの話を総合して

「うわぁ~…何故か何時の間にか私、双子設定にされてるぞ……。

しかも、血の繋がって無いだろう偽物の実の父親ができたみたいだ

1つの嘘が新たな嘘を呼ぶって、こう言う事を言うんだろうな」と

嘘に塗り固められていく人生をしみじみと実感してから

『あれ?じゃぁ~私って、女であるフローリスとして

本当にユーニと結婚した事になるのか?え?でも……。

何か王族のそう言うのって、儀式的なもんあったんじゃ?』と

半信半疑状態で狼狽える


『あ、それなら』とユーニが微笑を浮かべ

『フロースが寝てる間に済ませたよ、フロースは男色家ではないだろ?

意識があったら「男とキスなんてできるか」って、抵抗しそうだから

グランツが司祭様を呼んでくれて、正式な形でやっといた』との事だ

私はもう、何も言えず放心する他なかった。


「私、普通に身の丈に合った恋愛をして

普通の結婚をして、普通の家庭生活を送るのが夢だったんだけどなぁ~

少なくとも、恋愛関係皆無で

私が元男って設定で、友愛はあっても男女の恋愛の無い結婚って

お求めではなかったわぁ~……。

ホント無いわぁ~、無いわぁ~本当にマジで!

しかも、設定だけ見たら、普通にBLじゃねぇ~か」と

心の内をぶちまける事もできず、私は溜息を吐く


溜息の意味を知ってか?知らずか?私の隣でユーニが

『結婚を本物に近付ける為に、寝てるフロースにキスはしたけど

僕も男色家ではないから安心して良いよ

跡継ぎが必要になったら、追加で妻を娶って作るから大丈夫』と笑い

更に私の心に複雑な形態の黒い影を落としてくれる


「そんなユーニの言葉に虚しさを感じてる私っていったい……。」

私は一件落着感を醸し出す皆を他所にもう一度溜息を吐いた。

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