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046[問答無用]

取敢えず・・・

私が非正規ルートで入国している為に

此処で私が行方を眩ますと、グランツに迷惑が掛かるので

騎士団所属の我が国の王子様ユーニに、自分の身柄が預けられ

問答無用で、私は母国に帰される事となった。


『グランツゥ~…

王子様権限で、そこん所、ちょっと何んとかならねぇ~の?

私が追って来た奴等を連れて帰る日まで

滞在を許してくれる程度で良いんだけど』と言うと

私の台詞に対し、グランツの後ろから誰かが私を睨んで来る。

彼等は、隣国の王子ユーニの依頼で、私を探して発見し

私を密入国の現行犯と言う事で、力任せに逮捕しようとして、

私に返り撃ちにあってしまった

可哀相なグランツの国の騎士団人の人達だった。


グランツは、「自分の国の騎士団」が私を警戒している

その事に、気付いているのか?いないのか?

『ならねぇ~よ!事前の根回し無しに何でもできる程

王族ルールは甘くねぇ~んだよ!

次ん時は、事前に連絡してから来い!便宜してやるから』と

何時も通りの明るい笑顔を私に向けてくれる


私はグランツの返答に対し『あぁ、うん、了解!』と言いつつ

「意外と、それなりに甘いじゃねぇ~か」と

「でも、グランツ…後で、騎士団の偉い人に叱られんじゃね?」と

心の中で、そっと突っ込みを入れていた。


暫くすると

この国でユーニにスカウトされた、この国での指名手配犯達が、

ユーニとグランツの盟約の名の元に、移住承認手続きを終え

隣国へ引っ越しする為の旅支度を整えて

ユーニが自国から呼び寄せた、

彼等と似た境遇の傭兵達が乗車して来た馬車に乗り込んで行く

ちょっと不思議な光景が視界の端を支配する。


それを何んとなく眺めていたらば、私の周囲は、

指名手配犯を隣国に移す手続きに借り出され、仕事を終えた

この国の騎士団員達に囲まれていた。


自分の国の騎士団の行動に、やっと気付いたグランツは

『おい、団長!フロースは多勢に無勢で如何にか出来る

可愛い生き物じゃないぞ?コイツは、一騎当千の猛獣だ!

大勢で囲んだりしたら

大勢である事を利用して同士打ちさせられるぞ』と

周囲に顔を向けて、苦笑する


ユーニは、手をポンっと一つ打ち

『あ…そう言えば

僕の所の騎士団の詰め所でも、同士打ちさせてたな……。

フロースってば、そう言うのが得意なのか?』と

私に小声で訊いて来る


ユーニの依頼でユーニの私設傭兵団を引率してきたコクレアは

私とユーニの間に割って入り、私に向けられたユーニの問いに

『奇襲特化の傭兵なら、誰にでもできる事ですよ?』と

私が答える前に声高に答えてくれた。


この国の、グランツの国の騎士団員の視線が私達の方に集中する

「これは、この国での地位を確立するチャンスかもしれない」

私はグランツに近寄り

『あはは、グランツ!皆、半信半疑だぞ』と言いながら

グランツの背中をバンッと大きく一度叩き

『こう言う場合は、論より証拠だろ?

出発時間まで暇だから、私が直々に遊んでやるよ、

私の力量を図る為の腕試しの為に、数人生贄に出せよ』と

笑顔で言ってみた。


私を逮捕しようとして、

私に返り撃ちにされてしまった方の騎士団員達は身を引き

その時、その場に居なかった

騎士団員の中の血気盛んそうなのが数人、此方を睨み

私の挑発に乗ってくれそうな雰囲気だ

「此処で格好良く実力を示せば

多少、反感持たれたとしても、力量で黙らせられる」

私は周囲の風を従わせ、臨戦態勢に入ったのだが、しかし・・・


私は、グランツに軽々と

腰を抱く様に片腕で捕まえられ、持ち上げられ

『ざけんな!そんな事をお前にされたら、死人出るだろ?

団員減らされたら俺が親父とかに怒られるじゃないか!』と

グランツの手によって、ユーニに引き渡された。


ユーニは正面から、私の両脇に手を差し入れ、

持ち上げたまま受け取り、私を地面に降ろす事無く

『はい!コクレア!フロースが逃げない様に預かってて』と

何時の間にか馬車に乗り込んでいたコクレアに私を引き渡し


コクレアは私の背中側から、

コルセットで平らにした私の胸を抱き、馬車の上に引き上げて

私を座席に座らせた。


見事な連係プレイと、グランツは兎も角

私と体格の変わらないユーニ

綺麗に女装が決まっている私より細身なコクレアに

私の体重は、明らかに軽くはない筈なのに

軽々と持ち上げられてしまった事に対して、本気で驚き

「2人は油断できない相手だった」と、私は自覚し

今まで気付けなかった事に対して言葉を失った。


グランツの国の騎士団員達は

『なんだ?大した事無いんじゃないか?』と口々に言い

私の力量を軽んじてくれ始める、それはだんだん声高になって

壁が無く、屋根が付いているだけ馬車の座席に話しは筒抜けだった。


正直、過小評価はそれはそれで

相手を倒さなければイケナイ時にそれなりに役に立つ条件

ではあるのだが・・・

『こんな扱いされて言うのも何だが

今のを観てた奴等に馬鹿にされるのは、正直、気分悪いぞ』と

私はコクレアに愚痴る


コクレアは『何を言い出すのかと思えば…』と、優しく微笑んで

『坊ちゃんが、アタシより強いのは、

カーリタースが何時でも保証してくれるし、誰よりもアタシが!

一番良く知ってるわよ?』と周囲に聞こえる様に言いつつ

頭を撫で、子供扱いであやしてくれた。


ユーニがクスクス笑い

グランツは『こんなんなのに』と、私とコクレアを見て笑って

『剣術で俺と互角に張り合えるとか、詐欺だよな』と

大きく溜息を吐いた。


グランツの言葉で、周囲がシィ~ンと静まりかえる

序に私は、馬鹿にされてる様な気がして黙りこむ


因みにグランツの強さは、この国で年4回開催される

剣闘士大会の御蔭で、誰もが知る事実だった

そしてこれは、私的に一番美味しくないパターンだった。


「油断してくれなくなる上に

見せ付けられてない力量は、笠に着る事が出来ないじゃないか!」

ガッカリな現状に私は不貞腐れ、この後は

借りて来た猫の様に、馬車で大人しくしている事に決めた。


その後、グランツの国の領土を出て、自国に戻り

ユーニがスカウトして来た者達を自分が所属する騎士団の

団長の副官プルウィアに預けるまで

私はグランツの国の国民と元国民に、静かに観察され続けた。


居心地はすこぶる悪いけど、長く大人しくしていると眠たくなる

ユーニが示した目的地に到着後

私はコクレアを含めた皆が馬車から下りるのを待ち

欠伸をしながら立ち上る


コクレアは、騎士団長のストゥディウムの依頼と

カーリタースの命令で、これから暫くの間

ユーニが連れ帰った者達の職業訓練の教官として

仕事する事になっているらしい


「一人で町を散策しながら徒歩で帰るか…」と

私が面倒臭そうにしながら馬車から下りようとすると

ユーニに捕獲され、元いた座席に連れ戻された。


『ごめん!ちょっとだけ、僕の家まで付き合って』と

ユーニ言われ、後からやって来たストゥディウムに

『お前の婆さん、今、城に居んだ…来てくれるよな?』と

耳打ちされてしまえば、逃げ出す事もできない

「今の…明らかな脅迫だよな?」

私は見るからに嫌そうな表情を正面に座ったストゥディウムと

隣りに座るユーニに見せて座り直し、目を閉じて俯いた。


馬車が動き出した。

今回のはちょっと、腹立たしかったので

声を掛けて来るユーニの話しを暫くの間、無視していると

ユーニに肩を掴まれ、反対側の腕をも掴まれ

ユーニの方へ正面を向かされて軽く揺さ振られる


その頃には、私は完全に睡魔に襲われていて

ちょいちょい意識を途切れさせていた深く寝てでの

寝起き過ぎて頭痛がする中、寝ぼけ眼でユーニを見る事になる

不機嫌そうに見える態度にユーニが困惑した様子で

『僕の家に行くの、そんなに嫌なのか?』と訊いて来る


私は睡魔の為にだるくて頭が働かなくて額を押さえながら

『祖母ちゃん人質に取っといて、連行しときながら

嫌じゃない訳が無いだろ?』と、ユーニに伝えた。


馬車に乗ってからのストゥディウムの行動で

思い当たる節があったのであろう

ユーニが、今まで私に見せた事無い形相でストゥディウムを見て

ストゥディウムが私に言った言葉を吐かせ、愕然とする


ユーニは、ストゥディウムが私に耳打ちした話の内容を

聞かされていなかったらしく、私に必死で謝罪をして

ストゥディウムに詰め寄って『謝れ!謝罪しろ』と捲し立て始めた。


でかくてゴツイ男が、

ユーニの様な中肉中背タイプの若者に詰め寄られ

困り果てている姿は、滑稽で面白く

「最近泊った宿屋で出会った婦女子の皆様が見たら

飛んで跳ねて小躍りするレベルで大喜びするんだろうな…」と

私の脳裏に一瞬、腐った設定を浮かび上がらせ

「こんな事を考えてるとかバレタラ、絶対に怒られるな」と

そっち方面の考えを止める為、気分転換に立ち上って伸びをした。


どんなに嫌でも、気に入らなくても

人質を取られている以上、どの道、従うしかない

但し、城の入口まで行くには遠くて時間が掛かる

私はユーニが移動して広くなった座席に寝そべり

少しでも、仮眠を取る事にした。

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