041[翌朝の再会]
『それにしても、御前は…嘘を直接口しないのに嘘吐きだな
お前のその「嘘吐き道」って本当に、尊敬するに値するよ』と
グランツが楽しそうに笑い
誕生日に年齢加算する、「満年齢」ではなく
「零、又は0」の概念の無い
産まれた時点で「1歳」、暦年が変わると1年を年齢に加算する
「数え年」で年を数えて、ある意味でフライングして
飲酒していた私の狡さを称賛してくれる
私は『そりゃどうも』と返し
グランツに訊ねられる質問を一定の範囲ではぐらかしながら
グランツから情報を引き出した。
グランツが、それに「気付いているか?・いないのか?」は
判別できないが、取敢えず・・・
そんな一定の理解あるグランツと、私は飲み明かし
一眠りして、起き出した翌朝
私は私が借りている客室に眠る2人、グランツとユーニを残し
男の恰好で一人、部屋を出た。
「一緒に来られたら面倒だから、グランツを酒で潰したけど
グランツが相手だと、ちょっと、私自身へのダメージが
大き過ぎるんだよな…」
私は、廊下の窓から入る日光に目を眩ませながら一人
小さく呟き、溜息を吐きながら階段を降りる
宿屋の1階に降りると
『おはよう!シジミの御味噌汁を飲む?』と
腐女子な御姉様達の1人が、腐の伝道冊子を選別しながら
明るく声を掛けてくれた。
私は『ありがとう』と言って、汁物を受け取り
朝っぱらから、勧められるがままに強制的に
とっても濃厚な御腐れ本を読みながら、朝食を取る事になり
『観光に行くなら…
「血の地所」と言う名の「旅人の墓」が、ユダが死んだ場所で
ユダがイエスを陥れる報酬として、神殿から得て
イエスへの愛故を証明する為に神殿に投げつけた
その銀貨で購入された、ちょっと曰く付きの土地だから
BLの聖地巡礼の一つとして、行く事を勧めるわ』と
腐女子の主観を色濃く織り込んだ
「イスカリテオのユダ、イエスへの恋慕の記録」と言う
謎の冊子を受け取らされ
想定以上の時間を朝食の時間として取られ
何時の間にか、腐女子様達を手中に収めていたらしい
腐女子に起こされて出て来たユーニに付き纏われる事になった。
と、言う事で…どうやら私は、ユーニの為に
腐女子の御姉様方に足止めをされていたらしい
『ユーニ…お前さ、どうやって彼女等を手玉に取ったんだ?』
『手玉って…酷いなぁ~フロース!僕は普通に…
「フロースと一緒に出掛けたいから、僕が起きて
僕の支度が出来るまで、フロースを何処にも行かせないで」
って、ちょっとお願いしただけだよ?』
私は腐女子様方の様子を見て
「彼女等は、私の事を男だと思ってるから
私とユーニを腐女子の思考で見た結果、こうなったのか」
と、理解した。
で、結局・・・
ユーニと「他国の王子に何かあっては困る」グランツと私の
悪目立ちしかしない3人で、治安のヨロシクナイ界隈を
散策する事になる
そして行動を供にすると、私の目的を黙っているのは難しく
会話術を真面目に学んだ、学べる地位にあるユーニの
度重なる、誘導尋問に翻弄され、グランツが音を上げ
私が『黙れ!喋るな!教えるな!』と言うのに
「私に依頼された内容」と「その答え」を洗い浚い
正直に包み隠さず説明してくれたのだった。
『グランツ!お前は、昨晩
私の事情を理解して、協力する定で、私に話して無かったか?』
『ん?あぁ~…そのつもりだったんだがなぁ~
フレンドリーに、人懐っこく子供みたいに来られると
ど~も、拒否できなくてなぁ~』と
グランツは、腐女子達が知ったら
「押し切られキャラ」として、「美味しく頂かれる」
そんな一面を、惜しげもなく晒し
腐にちょっぴり汚染された私の思考に
腐に汚染されてない人にバレたらヤバイ、本当に余計な
要らない思想を過ぎらせてくれた。
『フロース?黙りこんでどうしたの?』
『何でもないよ…』と、私がユーニに溜息を吐き笑うと
『嘘臭いな』と、グランツに笑われ
私は再度、ユーニに誤魔化しの笑顔を向ける
取敢えず「正直、本当の事は話せない…」ので
『そうだな…
そう言えばユーニは、何で私を追って来たんだ?』と
話題の変更を試みた。
試みは成功したらしく
『カーリタースが、フロースの事を心配してて
「最近、フロースの体調が悪そうだから
僕に陰ながら見守って欲しい」って言って来たんだ』と
ユーニは、真面目な顔して言う
『陰ながら?』
私はユーニの言葉に疑問を感じ、グランツが変な顔をする
『陰ながらって…何処がだよ?思いっきり表立ってるだろ』
私は誤魔化せた事を喜び
ユーニの言葉に呆れを通り越して、面白味を感じたので
普通に笑った。
『フロース?お前、体調悪かったのか?』
「要らない方向に食い付いてくれるなぁ~もう!」
私は苦笑しながら、私の顔を覗き込んで来るグランツに
『女の体ってヤツには、色々あるんだよ!って、説明さすなよ
私も私でまだ、女の体の事、分かってねぇ~んだから
ホント、マジで訊かんでくれ』と
若さから、自分の事ながら、理解できていないと言う真実と
誤解させやすい言葉を混ぜて言葉を濁して
誤解をカーリタースの嘘をそのままにさせる為に
『そうだ!このネタは、くれぐれも「内密」にしてくれよ』
と、強く言い
会話をそこで強制終了させる為、話の主導権を握る為
『人攫いが連れ去って、売り飛ばした娼館の娘等がいる店って
この辺りの店だよな?』と言って
娼館通りにある店の窓から中を一軒一軒、覗きながら歩く
そんな、朝の娼館通りは・・・
何処でも大体一緒で、泊り客と泊り客を迎えに来た馬車
それを御見送りする娘達が囁く
次の営業に向けての先行サービスで、静かに賑わっていた。
そんな場所を歩いていると
仕事が終わった、顔馴染みの女の子達が私に声を掛けて来る
私が丁寧にリップサービスをしていると
『お前…最近は、遊んでないよな…
何時から、何時の時期まで遊んでたんだ?』と
グランツが渋い顔で聞いて来る
ユーニもソレが気になったらしく
『ソレって明らかに、年齢誤魔化して遊んでたよね?』
何て言って、詰め寄って来た。
娼婦の御姐さん達は、2人を獲物に見定めて艶やかに笑う
「御姐さん達と、カードで賭け事して遊んだだけなのだがな…
きっと2人は明らかに勘違いしてるんだろうな」と、思いつつ
私的に、その誤解を解く必要性を感じなかったので
『悪い事はしてないぞ?御好意で遊ばして貰ったんであって
御姐さん買った上での
大人の遊びってヤツをしてないからセーフだろ?』と
全部嘘ではないが、真実の総てでは無い事を口にする
そして『見ての通り、遊びたくても遊べないんだゴメンネ』と
娼婦の御姐さん達に謝り
『今回、人捜しの仕事で来たんだけど…知らないか?』と
一般人が遊ぶ、ポーカー1回分の掛け金程度の金を渡し
攫われた私の地元の娼館の娘等が「この辺りに居ないか?」と
詳細を話さずに訊ねた。
収穫は上々・・・
私達は、御姐さん達の働く店に立ち寄り
グランツの顔パスの元、その場の勢いで捜し人の一人と再会する
彼女は、その娼館の元締めと共に、私達の前に姿を見せ
凄く困惑した表情で私達を迎えてくれた。
そう、彼女は「自分が店に売られた値段」と言う名の
「新しくできた追加の借金」の為に必死で働いていて
前の店に残した「自分が、その店に売られた時の値段」である
「借金」がある事を思い出し
「前の店のソレ」を回収する為に、私達がやって来たと思い
恐怖した御様子だったが、しかし・・・
私は「そんな依頼を、受けていない」し
ユーニに至っては、娼館で働く人間の雇われる仕組みなど
多分、知らないであろう
心の狭い人間である私は
私を信じずに、自分からこうなる道を選んだ彼女の事を
故意にワザと気遣う事無く
先に、その娼館の元締めのおばさんに挨拶をし
『その娼婦を売りに来た連中を追っているんだけど
情報をくれないか?
そいつ等さ、店への借金返済済みでない娘を
店に黙って連れ出し、勝手に転売して
各地の娼館に損害を与えて回ってるんだけど…どうする?』と
元締めのおばさんに選択肢を与えた。
『どうするって…
アタシはその言葉をどう受け取ればいいのかしら?』
『そうだね、世間の柵もあるだろうから
それなりの覚悟を決めて、知らぬ存ぜぬで通しても良いですよ
でも、私的には今此処で、被害者として情報を提供して貰えると
嬉しいな…って、御話かな?』
私は『それなりの覚悟を決めて』と、言いながら
グランツを盗み見る様な仕草を元締めのおばさんにして見せ
グランツの存在を利用して脅しを掛け
グランツの力を直接、借りる前に借りてる振りして騙し
元締めのおばさんから、情報を得る事に成功したのだった。