034[私が新たに纏ってしまった嘘]
良きアドバイスを頂きましたので
今回より、サブタイトルを本文に置かない方向にします。
今、居る場所は…自然が多い場所に存在するのだろうか?
遠くから、近くから、小鳥の囀りが聞こえて来ている気がする
私は戻った意識持て余し、体も瞼も重たくて思う様に動かせず
人肌の温もりに包まれた、まどろみの中に居る事が
とても幸せに思えた…のだが、しかし・・・
「人肌の温もり?って、いったい誰の?」
私の頭に疑問符が大量に発生し、私は恐る恐る目を開け
ぼやけた視界の中、最初に視界に入った
男のモノであろう、がっしりした誰かの2本の腕を確認した。
続いて、自分の胸元辺りに見える藁色のパサ付いた髪から
クーラーティオーが私に抱き付いて寝てる事を知る
後、背中が温かく少し相手の重みを感じ
項辺りに、微妙に寝息らしい呼吸を感じる事から
後ろの相手も、クーラーティオー同様に寝ているみたいで
私はどうやら、誰かに腕枕をして貰ってしまっている上で
後ろから軽く抱締められ、前からも抱き付かれ
サンドイッチ状態で眠っていたらしいかった。
「後ろ…誰か分からないけど
別に嫌な感じはしないから、まぁ~いっか
それにしても、身動きが出来ないなぁ~寝返りが打ちたい」
私は軽く身動ぎして、現状を確認して
クーラーティオーが、ウエスト部分をしっかりホールドし
更に後ろからも捕まえられている状態なので、簡単には
前にも後ろにも、抜け出せそうにない事を理解した。
更に、私から見える範囲には
見覚えのある、シックな雰囲気の内装の部屋と
カーリタース自身が、その場に居いたので
此処がカーリタースの自室だと確信して、私は安心し
もう一度、眠りに付く…事をカーリタースに阻止される
一度、目が合い『大丈夫か?』と訊かれ
訳も分からず、取敢えず『大丈夫』と答えたから
「また、寝てしまっても大丈夫か」と、思ったのだが
駄目だったらしい
カーリタースは『寝るな!』と、私を小突き
『ちょっと待ってろ』と、カーリタースの手で
ユーニとクーラーティオーの束縛から開放してくれたが
カーリタースは、私を毛布に包み
緩く拘束して、ベットから引張り出した。
その時、私は後ろから私を抱締めていたのがユーニだったと知り
「あ~…ん~…まぁ~それはそれでいっか」と納得して
カーリタースに小さな子供の様に、御姫様の様に大切に扱われ
クッションを座り心地良い様にセッティングされた
ソファーに座らされた後、暫くしてから・・・
何時もよりシンプルな服装のコクレアが持って来た
カーリタースが作ってくれたらしい
ミルクとチーズのリゾットを強引に食べさせられ
何の説明もなく、カーリタースに『飲め』と言われ
投げ捨てたくなる様な、不味い薬を飲まされるのだった。
その間、コクレアは私に話しかけて来る事もなく
私の方を一度も、ちゃんと見てくれる事はなかった
私の事を男だと思っていたコクレアは、私が嘘吐きだと知り
「裏切られた」と、思っているのかもしれない
私が気落ちしながらも、薬を飲み干すと
カーリタースは、私が命令に逆らわなかったのを見届けて
嬉しそうに微笑を浮かべ
『フー、お前…剣闘士卒業してから
自分に対する防御やら、危機管理が甘すぎやしないか?』と
私の腕を取り脈を測り、熱を測り、顔色を確認して
『更に言わせて貰えば
最近全然、健康管理も出来てないだろ?』と、渋い顔をして
大きく溜息を吐きながら『駄目じゃないか』と言う
私的に、そんなつもりはなかったのだが
私は此処2年程の間に
心当たりを物凄く沢山、所有している事に気が付いた。
なので私が気不味くなって、目線を逸らすと
『コクレアの親父さんを死なせ、アピスを死に追いやった
闘技会の管理官の情報』と
私が逸らせないキーワードをカーリタースが口にし
『知りたかったら、ちゃんと
二刀闘士やってた時のコンディションに戻せ
万全でない御子様に、話してはやれんぞ』と言う
「御子様」と言う発言にイラッとしたけれども
一理あるなと私も思って
『そうだな、復讐しに行くのに
体調が万全でないのは、如何考えても駄目だよな』と言うと
『駄目です!もう、復讐とか辞めて下さい』と
此処でコクレアが、この部屋に入ってきて初めて口を開いた。
コクレアは真剣な顔で、最近まで私の手元に有った
コクレアが幼い時に父親から貰った剣と
アピスがナウマキアで使っていた物を
私が切れる様に打ち直して貰って使っていた剣を私に見せ
『フウちゃんは、女の子になっちゃんたんだから
復讐とか辞めるべきです!
これからは、僕が男に戻って復讐を引き継ぎます』と宣言する
私はコクレアの言った言葉に少し疑問を感じ、
「んん?あれぇ?ニュアンスがなんか変?かも?
女の子になっちゃんたんだから?って…どう言う事だ?」と
首を傾げる
私が不安気に椅子に座ったままコクレアを見上げていると
コクレアは、可愛そうな子を見る様な目で私を見て
『カーリタースから聞きました
コノ国を守護する女神様に中途半端に手を出して
「アピスに操を立ててるから最期までは、できない」とか
それまでに手を出して来た女の子達に言ってきた事を言って
女神様を拒絶した所為で、罰として性別を変えられたんでしょ?
何時かは天罰食らうか、女に報復されると思ってたけど
まさか、こんな形で結果が出るとは思いもしなかったわ』との事
もしかして、もしかしなくてもコクレアは・・・
カーリタースの法螺話に騙され
完全に担がれてしまっている御様子だった。
「え?マジで?そんな話を信じたの?」私は内心、焦る
「ね~だろ!そんな設定!オカシイだろ!
普通!其処まで法螺を吹けば、バレルだろう?
元から女だったって、男だと嘘吐いて生きて来たって方が
先に浮かぶだろうし、嘘臭くないだろ?普通そっちだろ?
怪しんでくれよ!そっち方面に!」何て事を思いながら
『カース!』と、私がカーリタースに声を掛けると
『あぁ~だから、女神の刻印が内腿にあったのね』と
つい最近も、私を診察した
カーリタースと仲の良い綺麗な女医が、部屋に入って来た。
女医はしみじみと私を見て
カーリタースが先にしていたのと同じ診察をしながら
『私ね、カーリタースと知り合う数年前に闘技会で見掛けた
この手の顔の、上半身裸で戦ってた少年のファンだったのよ
まさか本人だったとは驚きだわ…残念…無念だわ…』と言う
何でか其処でコクレアも
『そうなのよ…坊ちゃんてば
剣闘士の頃、すっごくいい感じでイケメン少年だったのよ』と
その会話に参加し
暫く、何処何処の興行師の何々君が彼是と
少年剣闘士談議に花を咲かせ、最終…
『あの男の子を見付けたら、薬漬けにしてでも
ツバメにしようと、一生懸命に捜してたのに…
呪いとやらで女の子になってるとか、悔しいわ』と
話を纏めて下さる
「ツバメって…」
隠語のツバメの意味を知る私は・・・
この女医に、即効で狙われる様な出会い方や再会の仕方をして
女だとバレル様な事が無かった事を心底、感謝したが…しかし
『ね?アタシが言った通りでしょ?
フーちゃんが男の子だった頃の事を知ってる人、居たじゃない!
疑った事、謝ってよね!』と
クーラーティオーが嬉しそうに笑い
『フロースは本当に、元は「男」だったんだ』と
ユーニが溜息を吐く
私は、その場でこっそり
「ユーニは今まで、私が女だと疑ってたのか?
でも、今回の事で嘘を信じてしまったんだ…別に良いけど
あ~でも…私の事を最初から女だったって
疑ってた人が1人、消えたって事なんだよな…
何かちょっと、切ないな」と
私的に残念な状況が追加された事に、寂しく涙するのだった。
カーリタースは、私の肩をポンポンっと叩き小声で
『御祖母ちゃんの秘密が守られる嘘を纏う事が出来て
良かったね、これからは纏った嘘で女の子に戻れるね』と言う
でも私は、自らを「面倒臭い性格だな…」と、思いながらも
「誤解を利用して騙すのは、幾らでも平気なんだけど…
ソノ手の嘘は…やっぱり苦手だな」と、心底思った。
嘘を信じてしまったユーニが楽しげに
『「女神様」本当に存在したんだ…あぁ~じゃぁ~
僕が出会った「女神様」も、本物だったのかもしれない』
何て事を唐突に語り出し
子供の頃、剣術の稽古名目で
ストゥディウムの家に遊びに行っていた御話から
御忍びで、ストゥディウムに連れて行って貰った
とある祭りの日にグループ模擬戦に参戦していたらしい
大人の中に金髪と黒髪と赤毛の女の子達グループの居る
「赤毛で緑色の瞳をした、初恋の女の子」の話
初恋の女の子に出会った次の日に、
ディスプレイとして飾られていた貯金箱の横に置いてあった
先約が有ると言われて売って貰えなかった
「ドラゴンが出て来る外国の英雄物語の綺麗な挿絵の絵本」を
プルウィアに買って貰った話
買って貰った絵本を読み終わったら「女神様」が出て来たとか
私的に興味の無い御話が繰り広げられていた。




