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033[私達の隠れ家の末路]

[私達の隠れ家の末路]


扉を開けると木屑がふわりと舞い、建物がギシシと音を立てる

開いた扉は、バキッ!ガコン!と音を立てて

もう2度と閉まらない角度に傾き

開いた状態で完全に固定されてしまって、動かなくなる


家の中では、私の格好を見てクーラーティオーが

『うっそ!フーちゃん本当に女の子みたいだよ!』と言い

ユーニは、私の服装を凝視し

『ワンピースの下にズボンを穿くのは変だと思う』と

持論を展開していた。


私は、2人の存在を無視して

2人の言葉を聞かなかった事にし、家の中を見回して

「室内の壁や柱の数が、何故だか足りない気がするのは

私の気の所為だろうか?」と、廃材だらけの床を見下ろす


私は「嫌な予感」の想定よりも、酷い惨状の部屋に対し

現実を逃避したくなって、一時的に目を閉じ

まぁ~そこは、取敢えず置いておけはしないのだが

置いておいたとして…と、気持ちを切り替え

「家が壊れているのは、確かな事だ」と、気を持ち直した。


廃材の下に有る床が、どう言う訳か?抜け落ちてしまって

穴の開いた床の数センチ下に存在する

足場の悪い洞窟の岩肌を削った平らな面を

確認する事が出来る事を知る


外観からは気付けなかったのだが・・・

壁にも小さな穴が開いている場所が、何箇所かあって

外から見た、割れたガラス窓以外からも風が入り込み

木屑を巻き込んだ風塵が舞い踊っている


家の中は『駄目だ、ヤバイ逃げるぞ…』と

カーリタースが緊張し、擦れた声を発する様な

本当に、入っちゃイケナイ種類の危険な場所になっていた。


『フー!ティオを連れ出せ!』

『じゃ!ユーニを頼んだ!アモル!家から離れてろ!』

カーリタースと私は手分けをし

『え?何で?アタシ此処にいちゃ駄目なの?』

『ちょっ…どうしたの?慌てて』と言い

少し抵抗する2人を抱えて連れ出し


家から少し離れた、洞窟内の小高い安全な場所・・・

連れ出した先で『『どうしてこうなった!』』と

私はクーラーティオーに

カーリタースはユーニに対して、同時に同じ事を叫んでいた。


『え?アタシ達…

カーリタースさんに言われた通り、掃除してただけだけど?』

『そうそう!掃除をするのに、多少の失敗を幾つか

ちょっと多くしてしまったかもしれないけどさ…

掃除初心者にしては、僕等それなりに

頑張ったと思うんだよね…うん、頑張った!』と


何をしでかしてくれたか?

家がどんな状態になっていたか?

どれ程までに、危険な状況に自分達が陥っていたか?を

理解して、くれてはいない御様子だった。


私は引き攣った笑いを浮かべ、カーリタースに声を掛ける

カーリタースは何時も通り

私が何も説明しなくても、私の訊きたい事を理解してくれ

『放置して怪我人出すのは美味しくないな

ゴキブリと船虫くらいしかいないから、大丈夫だ』と

私が求める答えを答えてくれる


私は深呼吸して、家の中に誰も居ない事を確信し

これからする事に意識を集中する


私が「風使いで、何を対価に風を使っているか?」を知る

カーリタースは、私に対し優しい笑顔で

『後の事は気にするな

でもヤバくなったら、周囲を気にせず自分の身だけを護れよ』と

気を効かせた言葉をくれた。


私は安心して風上、洞窟ので入り口方面の家の壁の前に立ち

腕を伸ばし、人差し指一本で家の壁に触れる


何も理解していないクーラーティオーが

『何してんのぉ~?』と、安全な場所から言ってきたが

もう、風を操り始めていて


集中力を途切れさせて力を無駄にするには

今ある体力では危険過ぎて答える事が出来ず、答える言葉も

どうせ見付からないので、無視をする


そして私は、洞窟の奥に避難している海馬達に

潮風に伝言を乗せ『暫く奥で待機していてくれ』と願い

海馬達に危険や迷惑が掛からない様に

壊れかけの家を風で包んでから、家の壁を指で押した。


壁を軽く押された家はバランスを崩して

風に包囲され風に支えられながら、洞窟の奥に向けて

ゆっくり傾いて行く


ギギギミシミシメキッバキバキバキと、大きな音を立てて

風で支えきれなかった木材が砕け

木片を飛び散らせ倒壊してゆく家から、私に向けて

粉塵と木屑、木片が私に正面から覆い被さって来る


私が本調子の時ならばならない現象に焦ったカーリタースが

何かに何かを命令したのと

クーラーティオーの悲鳴が、同時に聞こえて来た。


クーラーティオーの悲鳴の為に・・・

洞窟の奥から海馬達が嘶く声、私を心配する言葉も聞えて来る


途中『フロース!』と、ユーニも叫んだ様な気がしたけれど

私は返事もしないで、風に危険から守って貰いながら

その場で周囲の風塵が収まるのを待った…と、言うか

風に体を動かす為の体力と気力を対価として支払ってしまって

動けなかった。


私を守護してくれていた風の名残で

風塵が普通より早く、迅速に下に降り治まって行き

地面にへたり込み、両手で顔を覆うクーラーティオーと

カーリタースに取り押さえられたユーニが、ポロポロ涙を零し

此方を見ている姿が、治まって行く風塵の向こうに現れる


私が無事なのと、安全を確認したカーリタースが

ユーニを解放すると、ユーニは私の元へ駆け寄り

『大丈夫か?怪我は無いか?』と言って、体当たりして来て

私をきつく抱締めた。


私は最初、ユーニの行動に驚き過ぎて抵抗できず

頭から顔、首、肩、背中から腕、肘を通り手まで行って

そして手から腕を伝って腰、行き成り下がって足首から膝

太股に上がって行き、片手は尻、もう一方は内腿と言う場所に

ユーニの手が掛かった時点で我に帰って


『何処まで触る気だ!この変態!』と

裏返る声で叫んで羞恥心から暴れ、ユーニを蹴倒し


『ちょ…ちょっと落ち着いて!触りまくってごめん!

どうしても、本当に女の子なのか気になって…』と

本音らしき言葉を零したユーニに平手打ちを食らわせ


『いや、あの…謝るから、許してくれよ!』と

私を捕まえようとする私に伸ばされたユーニの手を掴み

全力で倒壊した家の方向へと投げ飛ばしたのだった。


激情で残りの体力を使い切ってしまった私はその場で座り込み

勢いでユーニを投げ込んだ倒壊した家の状態を見て

鳥肌を立て、恐怖で言葉を失う


クーラーティオーも・・・

家の倒壊の事なのか?今の家の状態に付いての事でなのか?

ユーニの行動か?私の対応なのか?

はたまた、全部の事に対してなのかは分からないが

事の結果に驚き、硬直して動かなくなっている


ユーニは、私に投げ飛ばされた事に驚いてなのか?

投げ飛ばされた場所の異様さになのか?言葉を失っていた。


でも、カーリタースだけは肩を震わせ

『移動する為の馬車か

「簡易テントと寝袋」を幾つか調達に行かなきゃだな』と

笑いを堪えながらも、明らかに完全に笑い、私に手を差し伸べ

私が動けなくなってしまっている事に気が付くと

私が怖がっているモノから遠ざける様に抱き起し

私のプライドを護る為に支える様にして立たせてくれた。


私は倒壊した家の状態をカーリタース越しに再度見て

自分が今、無事なのは…風の加護の力だけでは無く

密かにカーリタースが命令し、犠牲にした

「虫」の御蔭なのだと理解した…理解はしたのだが


そのテカッと黒光りし、ガサゴソ動く「虫」に対する

恐怖感と嫌悪感から、声無き悲鳴を上げて涙目になりながら

カーリタースにしがみ付いてしまう


更に、気付かなかったとは言え

自分でそんな場所に、ユーニを投げ込んでおきながら

そこから戻ってきたユーニに対して

『来るな!寄るな!近付くなぁ~!』と、私は本気で叫び


潰れた虫の体液と…まだ、ピクピクモゾモゾ動く

リカバリー不能な虫の体の一部を体に付けたユーニは

『何!その態度の違い!僕に対してのと違い過ぎないか?』と

私に向かって抗議の声を上げていた。


『それにしても、俺は一度、様子見に戻った時…

「食器洗いで、泡と割れた食器だらけになった部屋」を

「水を使って泡を流しながら、箒で掃き出せ」と

言った気がするんだが、気の所為かな?

ユーニ、どんな掃除をすればアンナ事になるんだ?』

私は、近くに居る大量の虫にビクビクしながら

カーリタースの言葉の中に、凄く疑問を抱く


そもそも食器洗いで、何故に部屋が

水を使って泡を流しながら、箒で掃き出さなきゃいけない程

泡と割れた食器だらけに成るのだろうか?


私の疑問を知らず、カーリタースの問いにユーニは

『掃除する時はまず、高い場所の埃を落としてから

床を拭くって聞いて、「ハタキ」で掃除してたら失敗して

窓硝子が何故か分からないけど、割れてしまったり

棚の上の花瓶が割れたりしたんだ』と、可笑しな事を言う


まぁ~取敢えず、話しの繋がりは分からないが

ユーニとクーラーティオーは、力の加減が分からず

割れ物をハタキで、叩き割りやがったのかもしれない


カーリタースも私と同じ様に同じ事を考えた様子で

『ハタキで掃除する時

バシバシ音を立ててる奴は、ハタキの使い方を間違ってるから

絶対に、そう言う奴の真似をしてはイケナイぞって…

それくらいの事、ユーニは王子なんだし知ってるよな?

何でそんな事になったんだろうな』と

私の記憶違いで無ければ、言っていたと思う


私の意識は・・・

『壁や床に傷が出来たから、城で掃除婦達がやってる様に

削って綺麗にしようと思った』と言う

ユーニの問題発言が出た辺りから


時々、途絶え始め・・・

何時だったか何処かに座らされ

気付いた時には、ベットの中に入れられて朝を迎えていた。

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