032[世の中、私が思う程に私が思う様にはならない]
[世の中、私が思う程に私が思う様にはならない]
何だかんだで、毎月の「生理痛の辛い時期」を越え
あと数日の「不快な時期」を残しつつ
曲りなりにでも、通常運転に近い状態になった私は
何故か、申し訳なさそうにするカーリタースに導かれ
隠れ家に戻って・・・
「底だと私が思った位置は、何十と折り重なった
上げ底の上だったのかもしれないなぁ~」と言う具合に
絶望感やどん底には「底」と言うモノが無いのではないか?
と、言う想定に辿り着く事が出来た。
『俺も、まだまだだよな…自分の無知さ加減を思い知ったよ
本当に無知は罪だ!マジでゴメン!
まさかこんな事に為るとは、思いもしなかったんだ』と
カーリタースは、暗い表情に薄い笑みを浮かべ
自分が不用意にプロデュースしてしまった・・・
掃除と言うモノが苦手なクーラーティオーと
そもそも、掃除をした事が無い王子様なユーニの
素敵に天下無敵なコラボレーションによる結果を眺めながら
私の肩にポンっと手を置き
『金は全額、俺が出すからさ…
お前も知ってる、口の硬そうな連中を数人連れて来て
普通に家、建て直してしまっても良いだろうかね?』と
本当に申し訳なさそうな顔で、私に訊いて来た。
私がアモルとトニトゥルスの方を見て
『此処は、海馬達とのシュアだから
そっちに確認取ってOKなら、私に異存はない』と答えると
カーリタースは『じゃ決まりだな』と言い
人の姿で一緒に歩いていたトニトゥルスの肩に触れ
『ストゥディウムを連れて来い』と言う
私が「行き成り命令形?!」と、驚いていると
トニトゥルスは「ソレ」が嫌そうでは無さそうで
『了解した』と言ってから、少し悩んで
『ストゥディウム?えっと確か…
「ティオ一人を連れて行く事だけは許さない」とか言って
ごねてた男だよな?攫ってきたら良いのか?』と返し
『多分、それだが…攫うのは無理だと思うぞ
「王子が人様の家を壊したから至急、家を建てに来い」って
内容の手紙を送っとくから
ストゥディウムを迎えに行ってくれ』と、カーリタース主導で
話が勧められていった。
トニトゥルスは、カーリタースの指示で
馬に変身してから、そのまま駆け出し
アモルは、トニトゥルスと一緒に行きたそうだったが
カーリタースに『お前は残れ』と言われて残る
それからカーリタースは、事前に準備を済ませていたのか?
洞窟の近くに配備していたであろう鷹を呼び
手紙と言う名の紙切れを鷹の足の筒に入れて飛び立たせる
私は、少し心細そうにしているアモルと一緒に
トニトゥルスが崖を掛け上がって行くのを見送りながら
基本的に男嫌いなアモルも、カーリタースの命令に
逆らわなくなっている事に気付いたのだった。
『カース…相変わらずに、主従関係完璧だな
もしかしてもう、海馬達全員に手を出したのか?』
『フー…お前は、何時もながらに失礼な奴だな
俺は、手なんて出して無いぞ?
俺が手を出さなくても、動物は基本的に俺の事が好きで
俺がちょっと頼んだら、どの子も好意的に
俺の言う事を聞き入れてくれているってだけだろ?』
『なんつぅ~か…モノは言い様だな』
私は大きく溜息を吐きながら、此処に来るまでに説明された
今回の「トラブル&カーリタースの法螺話」に頭を悩ます。
それは・・・
私が数日前、久し振りに此処へ来て
体力の限界と生理と夕食を取らなかった事が重なり
酷い貧血で、私の意識が戻らなくなっていた時の事
御食事に出掛けて戻ってきたアモル達は
私の顔色の悪さを見て「死んでしまうのではないか?」と
怖くなってしまい
海馬の存在が発覚するのを恐れ
海馬の子達が、クーラーティオーに近付かない様にと
クーラーティオーが「癒し手」である事を
私が話題にした事があった事が、ある意味とっても
今回「仇」となってしまった。
私を仲間と認め、受け入れてくれた海馬達は
仲間である「私」を死なせない為
そのクーラーティオーに「助けを求める」為
海馬の中で「クーラーティオーが誰なのか?」を知る
アモルが、クーラーティオーの匂いを辿り
アハ・イシュケと馬のハーフであるが為に
潮風の吹かない場所では、馬寄りで話も出来なくなる
アモルに変わり、クーラーティオーに説明する役として
潮風が吹かずとも、人の姿に変身できるトニトゥルスが
同行したと言うコノ不運・・・
正直、もうちょっと年配で…人間の常識を判断できる
常識を持った大人なアハ・イシュケが同行してたら
こんな事には、成らなかったであろう運の無さ
辿り着いた先は、カーリタースの宿場町
逃がしてしまった人攫いの残党狩り作戦中で
騎士団とテッレストリスの統括する傭兵団の居る場と言う
ちょっとばかり、緊迫した現場へ乱入して
クーラーティオーを発見し、テンション上がり過ぎて
大勢の人の前で、馬から人になる姿を大公開すると言う
愚かしい行為をトニトゥルスがやらかしてくれた。
ソレを見た者達が『魔物が出た!』と口々に叫び
「大惨事」となったと言う、色々悲しい御話
そうなってしまうと、カーリタースの宿場町が危険に晒される
ソレを良しとしないカーリタースは、人に向けて
動物使いとしての能力を行使し、混乱を鎮めてから
『オカシイとは、思わないのか?本当に魔物なら…
危険を冒して、こんな時にお願しには来ないだろ!』と説き
『そもそも…神話や伝承中には、海の神のに強姦されて
その詫びとして、その神に男にして貰った女がいたり
豪い神様が人間の美人を手籠めにして、その神様の本妻が
手籠めにされた人間側を殺して
他の神の御加護で、人間が植物になったり
本妻様に殺されなくても
罰として人間以外のモノに変身させられるなんて事
普通にあるだろ?聞いた事とかないか?
北の方じゃ、魔女が夫の前妻の子供達を引き取って
全員動物にしてしまう、なんて話だってあるじゃないか!』と
前置きして
『取敢えず、美人はそう言う目に遭いがちだ
コイツを見て、魔物か…動物に変えられた被害者か
どちらが正しい答えかって考えてみれば
簡単に判別できると思わないか?』等と言って、翻弄し
『ソレに、色合いを薄くしたコノ顔立ちを見た事はないか?
コノ綺麗な顔、死んだ筈の他国の王子様の肖像画に
そっくりだったり…いや、此処は
「似ていたりしてないか?」と言う事にして置こう』と
意味有り気に中途半端に言葉を切り
『まぁ~今回は気を効かせてくれ!
コイツを見た事は、絶対に誰にも言わないで貰いたい
コノ国を他国の御家騒動に巻き込むのは頂けないからな!』と
最終的に、こっそり大法螺吹いていた。
更に、カーリタースは
自分の統率力に感動したトニトゥリスから用件を訊き出し
その場のノリで、クーラーティオーを中心とする数人に
私が『呪われて「女」になっている』と言う嘘を
私の嘘が発覚する前に、吹き込んでくれたそうな…
私は廃墟にしか見えない状態の隠れ家を遠目に眺め
『あのさ…もしかして、ユーニとストゥディウムも
「私が呪われて…の下り」を信じてたりするのか?』と
今までの「男だと偽って来た嘘から解放される」事が
出来なくなったのではないか?と、不満に思い
カーリタースに質問する
するとカーリタースは・・・
『俺を誰だと思ってる?
自分で言うのは恥ずかしいが、俺は「動物使いのカース」だ!
俺の言葉が「嘘だ」と言う確証がない限り
俺の言葉を全く信じれない奴は、殆ど存在しない筈だぞ
俺の言葉で、海馬を「呪いを掛けられた被害者」だと
信じた以上「女になる呪い」は、本物以上に本物だ』と言い
『そうそう、俺の言葉を半信半疑でいたとしても
ストゥディウムが俺の言葉を信じてしまった以上
体育会系のノリで命令されるのに慣れた奴は
ストゥディウムの言葉を信じて疑わないぞ』と言って
私の背中を軽く叩いて
『ストゥディウムは俺のと、似て非なる力を
自分で気付かないで持ってるからな』と私に新情報を提示した。
これからも嘘を重ねて行かなければイケナイ事に
少しばかり重みと嫌な思いを感じながら
『何それ?どう言う事だ?』と
私がカーリタースの話に食い付き質問すると
カーリタースは私の頭をポンポンっと叩き
『どんな奴でも、何かを統率してる奴は
自分で理解してなくても、俺のと近い力を持ってるもんだし
何か特技を持ってる奴ってのは、誰も気付いてなくても
何かしらの能力者だったりするんだよ』と笑い
『だからきっと…
ユーニとティオが、あの家を廃墟にしてしまったのも
何かしらの未知なる能力の成せる業なんじゃないかな?』と
責任転嫁混じりに、目の前の壊れた家の話しに戻してくれた。
家に視線を戻すと・・・
家の中から、クーラーティオーとユーニが
こちらに向かって手を振っている
『ごめ~ん!何か色々壊しちゃった!』とクーラーティオー
『僕が全部、弁償するから!許してくれ~!』と
ユーニが交互に叫んでいる
私は大きく溜息を吐き
『何か…中を直視するのが怖いな』と呟いていた。




