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028[不調な私と敵の戦力]

[不調な私と敵の戦力]


私が女の子達を無事に逃がす算段を考え倦ねていると・・・

号令の代わりに手旗でも使っているのか?布が風を切る音の後

左右と正面奥の林から、6本の矢が打ち上げられ、

同時に同じ3方向から、5本の矢が垂直に飛ぶ


私は自分を狙って放たれたであろう矢をひょいっと除け

『無駄に軍事訓練を積んだ素人軍人か…』と

思った事をそのまま口に出していた。


女の子達の方は…矢に驚き、金切り声を上げ

司祭の服を着用したおっさんと修道士の服を来た若そうな男が

自分達に刃物を向けていたと気付かず

自分達が人質になってしまっている事を知らないで

おっさんと若そうな男に従順に従い、簡単に連れ去られていく


私の近くに居たストゥディウムは、と言うと

私より、女の子達の近くに居たにも拘わらず

そちらの事を完全に放置し、不思議そうに私を見て

『素人軍人て何ぞや?』と私に直接、訊いてきた。


私はストゥディウムが女の子達を護りに行かなかった事を…

取敢えず、こう言う事態が起こった場合の為に

カーリタースに周辺情報の監視を要請済ではあるし

「護れる人数でも無いからなぁ」と、それなりに評価し

『分かんないかなぁ~』と言いながら

ユーニとテッレストリスが無事そうなのを確認する


ユーニは危なっかしい感じはするが、ユーニより2歳若い

テッレストリスが他者を護れるレベルで頼りになるので

大丈夫そうだった。


私は上着で隠していた、6歳の頃から愛用する

私の身長が伸び、私に対して短くなってしまった

愛用し大切にしている2本の剣を両手に持ち、矢を払い除け


『矢同士の軌道を邪魔せず、合図に合わせて射るのは

軍人さんの専売特許だろ?違うか?』と

避け切れない矢を弾きながら、大きめな声で確認した後


『でも、幾ら頑張って訓練して習得した技術でも

使い方が駄目じゃ無駄じゃね?第一に…

人数バレちゃ駄目な、まだ明るい時間

15人程度の少なめな編成での奇襲攻撃で使っちゃアウトだろ?

それをするのは、実戦経験の少ない奴か

愚かな脳筋馬鹿のする事だと、アンタは思わないか?』と

矢を打ち返しながら、敵さんにはっきりと聞こえる様に

更に大きな声で言ってやった。


私が打ち返した矢は・・・

「自分達に矢が飛んでくる事は無い」と油断していた敵さんに

避けられる事も無く、命中したらしい

遅れて、驚きの声と矢が刺さった痛みで叫ぶ声が聞えて来る


私は大きく息を吸いニヤリと笑う

私が狙ったのは、攻撃の指示を出していた奴

大きな部隊では、下っ端の仕事だが

小さな部隊では、豪い奴が兼任している事が多いからだ


因みに、15人程度と言う敵の数は

先に、ストゥディウムと私で推定していた数そのままで

分類上、小さな部隊と呼べる


今回、一斉に射られた矢の数で、弓を持っている奴の数が知れ

それに、矢が飛ぶ直前から動き続けている数プラス2で

全体の戦力の把握が出来た。


此処まできたら、実践で戦い慣れた奴なら

私が敵の注意を引き付け囮となった意味が分かるだろう


今回のストゥディウムは、昔の実戦経験から

私の意図を察してくれたらしく

『そうだな、そっちはお前に任せる』と囁き

私の近くから離れ、ユーニとテッレストリスの居る方へと

さっさと移動してくれる


テッレストリスの方は、舌打ちし

「又、お前は…

そう言う役どころに率先して立候補しやがってからに!」等の

悪態を吐きながらも、林の中の敵の物色に入った様子だった。


が、しかし・・・

「ユーニはどうだろう?

私のやりたい事を邪魔しに来たりしないだろうな?」と

私を狙う矢の数が増え、ちょっとばかり余裕が無いの状態で

ユーニの様子を見てみた…ら


我が国の第一王子様

ユーニウェルシタースと言う名の不安要素様は・・・

「あ…ストゥディウムが捕獲してくれてる」

猿轡をかまされ、紐で縛られ俵抱きで運ばれて行く所だった。


私はコレと似た光景を

セププライの記憶の中で幾度となく、見た事があった

「そう言えば、ユーニの父親のウーニも

私が囮をやる度に、私を助けようと邪魔しに来て

ストゥディウムに拉致られて運ばれて行ってたなぁ」と

何となく「親子だなぁ~」と、感慨深いものを感じてしまう


そんな、私の気持ち的な余裕が出てきた中で

敵の動きが大きく変わった

林にテッレストリスが入り込んで、攻撃に転じたのであろう

奥を正面にして左側の矢が止み断末魔が聞えて来る


続いて、右側の林の中から

『ユーニを頼んだ!』と、ストゥディウムの声と

ドスン!と言う、モノが落ちる音と呻き声


右側からの矢も、墓地の奥の方から飛んでくる矢も止み

悲鳴が木霊し始め


私は敵さんの逃げる方向を確認しながら

ユーニが放置された場所まで行き、しゃがんで

ストゥディウムがユーニに巻いた紐を解きユーニを解放した。


ユーニは『隊長は時々、僕に対して扱いが酷い』と零す

私は失笑しながら空を見て、カーリタースの鷹を確認し

カーリタースの鷹用に音域を調節した笛を吹く


鷹は、とある方向にゆっくりと飛び出す

多分その方向に人質が連れて行かれているのだろう

私は笛の音域を調節し直し

別働隊へ、警告とメッセージを送った。


返事があった、別働隊もカーリタースの鷹を追うだろう

私は一息ついて、そのまま地面に座り込んだ


風を立て続けに使い過ぎると、凄く疲れてしまうのだ

私は私を狙う矢のスピードを横風で弱め軌道をもずらし

矢を羽根突きの要領で打ち返した時は、風で矢に加速を加え

今、連絡用にまで風の力を借りて…

実はもう、体力&精神力の限界に近かったりする


正直な所、月経が始り…体力&精神力の消費が嵩み

その上で回復力が落ちてしまっている

通常運転ではなくなった今の私が

風の恩恵を受け続ける為には、少し休まないと無理で


ユーニは、その事を知ってか知らずか…私を立ち上がらせ

『背負われるのと抱き抱えられるの…どっちが良い?』と

訊いて来た。


『どっちも御断りだ』

逸早く、敵の動きを察知する為に使っていた風を手放し

私は意地を張り、プライド掛けて平静を装う事に専念する


「裏切られても、殺されてしまっても…

セププライは、ウーニの事を嫌いにはならなかった。

その影響で、私はユーニの事…ウザくても嫌いじゃないし

チョイチョイ、普通に気を許してしまってる

如何考えても、ウーニは勿論、ウーニに似たユーニは

この人生、最大の鬼門だよ…絶対!

コレ以上、ユーニに弱味を見せて距離感が縮まったら…

また、同じ失敗を繰り返してしまいそうだ」何て事を思う


気配は精神を研ぎ澄ませば、読めなくもない…

音を手掛りに、周囲の様子を警戒出来ない事はない…

集中力が何処まで持つか分からないけれど・・・と

私の中で、不安要素が膨らんで行くのを

私は見て見ぬ振りして、受けた仕事を完遂する為に

カーリタースの鷹の後を徒歩で追った。


墓地の奥に進み、人工林から更に奥にある森を進むと

其処は城から見て、南西の方角に聳える山である


その山を越えると・・・

城から西に延び、途中から南西方向へ伸びる「谷間の道」

その山に囲まれた道を進むと、山沿いの平地があり

その先は、海道となっていて漁港や港が点在していた。


山の上の方へ飛んで行く鷹の動きから

私は相手方が山間部に強い事と、連れ去られた者達が

海からの物流ルートで売り飛ばされている事を把握する


攫われたその足で即、売り飛ばされる「南ルート」よりは

奴隷にされる前に助け出せる可能性は高いのだが


『暫くは無事だろうけど

船に積み込まれるまでに追つかないと捜せなくなるな』

私の知る限り、そっちのルートはそっちのルートで

完全に消息が掴めなくなってしまうので、笑えない


孤児院で死んでなくて、何処にも居なかった子供達はもう

礼拝堂に放置された遺体の状態から考えて

完全に積み込まれ済で、既に子供等を積んだ船も

出航している可能性が高いと、推測されるが・・・


今、連れて行かれ中の娘達が

孤児院の子等と同じ船に積まれる事を祈って

『娼館の娘等、船に積み込まれるまで見守って

そこから助け出したいんだけど…駄目かな?』と、ユーニに

人攫い達との最短ルートを探し歩きながら、提案してみた。


私の案内で、人攫い達を追うユーニは苦笑いをし

『駄目だよ絶対!遊びじゃないんだから!

正義の味方じゃあるまいし、ピンチの時狙いで登場して

女の子達を格好良く助けるとかをしたいんだろうけど

仕事なんだからそう言うのは、許されないよ』と

私の思いも知らずに却下してくれる


「別に女の子達にモテたくて言った訳じゃないんだけどな…」

私はウーニの事を思い出し

事情を話して説得して…自分の本当の性別の事を言えば

もしかしたら、ウーニに似た性格のユーニも

理解してくれるかもしれない…とは、思ったのだが


「そんな事をさせたら、ユーニの立場的に

後々、他からの理解を得られなくてウーニの時みたいに

困った事になるかもしれないんだよな…」と

辛かった時のセププライの過去の記憶に不用意に触れてしまい

私の気力が途切れ、脱力して目眩を覚えた。

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