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026[ちょっと訳有り、体調の悪い私]

[ちょっと訳有り、体調の悪い私]


全く憶えてはいないのだが・・・

私は、とても幸せな夢を見ていた気がする。


夢現の中、馬の足音と嘶きで意識を少しづつ覚醒させ

寝ぼけて「今、自分が何処に居るか?」

「誰の腕の中に居るのか?」を気にする事無く


馬上に有る人物、サラサラの亜麻色の髪を一つに纏め

プレートアーマーに身を包んだ人物の姿に対して

『アピス』と呼び掛け、幸せそうに微笑んだのだが・・・


私は次の瞬間『そんな顔も出来るんだな』と言う

ストゥディウムの言葉と声に度肝を抜かれ、完全に覚醒し

情けない事に、声にならない悲鳴を上げてしまっていた。


その時、私は・・・

「何が如何してこうなったのか?」が理解できていなかった。


私はユーニの胡坐を組んだ膝の上に座らされ

毛布に包まれて、ユーニの胸に全身で寄りかかり

ユーニの肩を枕にして寝ていたのだ…

覚醒して、現実を知った時の驚きは半端無い


正直、毛布に包まれて動けない様にされていなければ

ユーニの顎を真下から掌底で殴って、立ち上りざま

ストゥディウムにも、攻撃を仕掛けていた事であろう


私は取敢えず・・・

羞恥心の暴走を抑え込み、自制心を必死で取り戻した。


『フー!どうしたんだ!大丈夫か?

何処が悪いんだ?もしかして、怪我でもしているのか?』

気付けば、先程まで馬上に在った

アピスそっくりな、私より2つ年下のテッレストリスが

アピスの様な美少女顔を青褪めさせて、涙目になって

直ぐ近くで私の顔を覗き込んきている


私は身動ぎし、自分を包む毛布を緩めながら

『何か寝てたみたいだ…』と、テッレストリスに言い


『悪い…何か世話になったな…でも、それにしても…

何で、この状態になる事になったんだ?』と

私を抱く様に抱えているユーニの腕から脱出しながら質問する


ユーニは、私が動きやすい様に支え

私が立ち上るのを優しく手助けしてくれながら

『何か体温が凄く低くなってるみたいだったから

地面にそのまま横たわらせるのはどうかな?って思ってね』と

返答に困った様子で微笑んだのだった。


「あ、ヤバイな…午前中も無意味に寝たよな、私

これって、予定より数日程早いけど

もしかしたら、そろそろ毎月のモノが来るのか?

それとも…もう、始まっちゃってたりしないよな…」


私は少し顔を強張らせながら、自分を精神的に立て直し

『困ったな…体調の崩し始めかもしれない』と

小声でワザとらしくならない様に

それでも、ユーニとテッレストリスに聞こえる様に呟き

大きく伸びをした。


『所でユーニ…コクレアと子供達は?』

『建物の中には入らないで、壁の中で待機して貰ってる』

『そうか、ありがと…テレ、行こう』


私はテッレストリスと共に菜園の扉に向かって歩き出し

歩きながら、今後の事を確認する


テッレストリスは『了解している、安心しとけ』と言った後

自分が引連れて来た、馬に乗った者達と馬車の御者に

『一時、その場で待機だ』と命令した。


高い壁に囲まれた菜園に入ると

菜園の隅の芝生エリアにテーブルクロスを敷いて

連れてきた馬に乗せてきた「御菓子と御茶」を配りながら

憔悴したアルブムを寝かし付けるコクレアの姿がそこに在る


小さな子供の頃ではあるが・・・

ちゃんとした男の格好をしていた頃のコクレアを知る

テッレストリスは複雑そうに

『コクレア…立派な女性になったモノだな

つぅ~か…本当に女になったんだな』と感慨深そうに呟く


私は『明日は「我が身」かもしれないぞ』と軽く笑い

テッレストリスを苦笑いさせた。


私とテッレストリスが談笑していると

何時の間にか、何故か一緒に付いて来ていたユーニが

『アルブムは囮役、無理そうだな』と

何故か私の肩を抱く様に触れ、耳元で囁く


『ユーニ、近い!』

私は取敢えず、肩に置かれたユーニの手を払い除け

『この状態じゃ仕方ないだろ?

それと私は、子供等の事をコクレアに任せようと思ってる

囮役は私一人でやるから、大丈夫だ』と言って

ユーニとの距離を取ると『フロースに気安く触るな』と

その空けた距離の間にテッレストリスが割って入ってきた。


『それとフー!お前が囮役ってどう言う事だ!聞いてないぞ?

どうしてお前は、自ら危険な事ばかりに首を突っ込むんだ!

何時も何時も言っているが…罪悪感に囚われて

自己満足で危険に身を置くのは、もう止めてくれよ!

アピスを失ったのは、お前だけじゃない!俺もだし

親父もだし…当時から居るギルドのメンバー皆、同じなんだよ

特に、お前と「アピスを護る」って約束したのに

アピスを守れなかった奴等は

事ある毎に、お前がそんな事ばかりしてるから責任感じて

金持ちになっても、傭兵を引退する年齢になっても

傭兵を辞められなくなってしまっているんだぞ』と

ユーニに対して敵意むき出しになってしまった上に

私の対して怒っているテッレストリスに対し、溜息が零れる


『別にそう言う理由で仕事選んでんじゃねぇ~よ

報酬ペイが良い仕事を選んでたら、結果的に

そう言う仕事ばかりになってしまてるだけだしな』

『嘘吐け、お前が受けるのは基本

「訳有り」や「ギリギリ合法」な仕事だけだろ?

報酬ペイに拘るだけなら俺の所のギルドに入れ!

ちゃんとした普通の傭兵の仕事させてやるから』


私は内心、今でも「敵討ち進攻中」な為

「テレに、どう言う理由で仕事選んでるかバレたら

とってもウザイ事になりそうだ」と実感し


『嫌だね!私に命令すんな!

人に命令されたくないから、フリーランスに仕事してんだよ

仕事貰うより、仕事は自由気儘にやりたい時にする!

そのモットーを変える気はないんだ、邪魔するなよ』

何て事を言って拒絶した。


テッレストリスとユーニが、同時に同じ様に大きく溜息を吐く


『通りで、騎士団入りを断る筈だ…

我儘で子供みたいな思想だぞ、それ!

僕が更生させてやるから、騎士団に入団してみようか!』

ユーニが私の頭をポンポンと優しく叩き


テッレストリスが、ユーニの手を私の頭から払い除け

『フー!騎士団は安月給で固定給制度だから良くないぞ!

ギルドで歩合給で働いた方が儲かるから来い!』と牽制する


私が面倒臭くなって放置していると

何故だか、騎士団と傭兵ギルドのアピール合戦が加速して

気付けば2人で互いの職業の悪口合戦を始めてしまった。


私は私の方から注意が逸れた様子なのを喜び

菜園の中に設置された、トイレのある方向に歩き出す


『あら?坊ちゃん何処行くの?』

『ん?便所』

『喧嘩してるヤロー2人引き連れて行くなんて大変ね』

『えぇ?!』と驚いて振り返ると、コクレアの言う通り

テッレストリスとユーニが喧嘩しながら付いて来ていた。


私が2人に『付いて来るな』と言うと

『お前、顔色が悪いぞ!トイレで倒れたらどうする!』と

テッレストリスが言う


何でか、ユーニもテッレストリスに同意して

『そうだそうだ!倒れた時の為に近くに誰か居た方が良い

だから僕が、フロースの事を見てても良いだろ?』と

「きゃ~!いやぁ~!やめてぇ~!」と言いたくなる様な事を

真面目な表情で言ってくれた。


色々な意味でヤバイ気がする、私は若干取り乱し

『キモイ!来るな!寄るな!そもそも、倒れてたまるか!

プライドに掛けて、トイレでだけは絶対に倒れね~よ

安心して付いて来てくれるな!』と叫び


『コクレア頼む!この二人の足止めをしておいてくれ!』と

2人をコクレアに託して

2人がコクレアに捕まったのを確認すると


私は走って逃げ、トイレに逃げ込み

2人が入って来れない様に、トイレの入り口にバリケードをし

ちょっとした個人的な確認をした。


結果は最悪、バレない様に応急的な処置はしたが・・・

事は急を要する「始めの軽い内に仕事を終わらせたい」

「正直、生理で性別バレんのは嫌だな」と思った私は


少し作戦時刻には早いのだが・・・

この教会で管理していた墓地へ向かう為


トラップとして扉のバリケードを残し、トイレの窓から出て

窓が外から開かない様に細工して閉め

菜園の勝手口の扉の鍵を開けて一人で菜園を後にした。


途中、如何しても近くを通らないといけなかった為

菜園の正面入り口の方に居るストゥディウムに声を掛け

『墓地まで、偵察に行って来る』と告げると


『待てコラ!お前に何かあったら

カーリタースに顔向けできねぇ~だろうが…

まぁ~でも、中から聞こえてきた会話からして

コレ以上アイツ等に、勧誘され続けるのも嫌だよな?

まぁ~今は急場だから、今回は俺と組めよ』と言って

ストゥディウムは鎧を脱ぎ捨て、持っていた水筒の水で

自分的に作っていたであろう前髪を下ろした。


其処には、セププライの記憶にも無い

初めて見た、厳つさレベルの低いストゥディウムの姿があった。


「ホント、マジで誰だよお前…」

私の心の声を代弁する様に『別人みたいだ…』と

近くに居たテッレストリスの所の傭兵達が口々に呟く


ストゥディウムは私が呆気に取られている内に

菜園に入り馬に乗せていた花束を取って来て

『ほら、行くぞ!』と、私に花束を持たせ歩きだした。

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