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020[ちょっと内緒な私の性別]

[ちょっと内緒な私の性別]


鏡の前・・・

テーピングを巻き、固定された手首を見て

使えるようになった右手の動きを確認してから


私の身長が伸び、小さくなってしまった剣を

ベストの上に巻いたベルトに装着して、私はクルリと回転し

「剣が目立たないか?」と、服装の確認をする


祖母のドゥルケは、その光景を優しく微笑みながら見て

『次は、化粧と髪型だよ!おいで』と手招きをした。


私は抵抗なく祖母のドゥルケの指示に従い

大きな鏡の前に置かれた、背凭れの無い丸椅子に座り

化粧をされ、付け毛を足したバレッタの似合う髪型にして貰う


して貰う間に

『右手…くれぐれも、無理するんじゃないよ?

後、固定するのに使った糊が駄目になるから濡らさない事

それと、この処置はずっと使えるものじゃない…

やる事が終わったらちゃんと2~3日冷やして

その後は、完治するまで暖めるんだよ!捻挫は癖になるからね』と

ドゥルケに注意事項を言われ

私は『はぁ~い、りょ~かい!』と、返事だけをしておいた。


正直そんな事は、約束して守れる気がしない

必要になれば、無理は絶対にするだろうし…

最日、冷やしても…途中で面倒になって

翌日からも、冷やし続けると言う自信が全く持って持てない

3日後、温めるとか…そんな先の事は、完全に忘れていそうだ


私の様子にドゥルケが苦笑いを浮かべる

そしてドゥルケは、私の出掛ける準備が総て整うと

『今から行動するって事は、暗くなってから行動するんだろ?

今夜が仕事なら、明日の朝には仕事が終わってるね?

じゃ、仕事が終わったら治療してあげるから戻っといで

明日の朝までにはちゃんと無事な姿を見せるんだよ』と

私に約束させたのだった。


『じゃぁ~行って来るね』と

私が出掛ける為に、ドゥルケの部屋の扉を開けようとすると

『フローリス!』と、ドゥルケが私を産んだ人と同じ

今世の私の本当の名前で、私を呼び止める


私が振り返ると

『これ…カーリタース君とコクレアに持って行きなさい』と

一升瓶を持たせてくれる


瓶の中身は何時も通り「酒」で

入れ物の瓶が割れたりしない様に藁で巻かれている

私は藁を少しずらし、瓶に貼られた紙に書かれた銘柄を確認する

それは、特定の店でしか出されていない地元の地酒だった。


『また、爺さん来てたんだ…』

私の呟きにドゥルケが頬を染め、嬉しそうに微笑み

『朝…フロースが出て行った後、直ぐくらいの早くに

本妻さんの目を盗んで、私に会いに来てくれたんだよ』と、言う


部屋の中を見渡すと、白い花を飾った花瓶が目に入る

総ては酒好きだったとか言う方の「フローリス」への

墓前へ飾る、御供え物であろう


私は静かに微笑み

爺さんとドゥルケの関係が疑われるリスクを避ける為

家の店では客に提供できない酒を

飲めない為に、酒を絶対に口にしない祖母から受け取り


内心・・・

「恋は盲目て言うけど…バアちゃん!あの人は

自分の子供に対する責任感だけで動いてるだけだよ

もう、爺さんに愛されてない事を自覚して

いい加減…爺さんの事を切り捨ててくれよ」と願いながら

再度『行ってきます』と言って、ドゥルケの部屋を後にした。


私は店の店員に預け、自宅の厩に預けて置いて貰った

騎士団からの借り物の馬を厩まで引き取りに行き

その馬の御蔭で、城門をフリーパスで通り城下町をで出て

城下の外へと出る


城下を出た後は・・・

「北・西・南」方向に伸びた三つ辻を南に馬を進ませ

南の街道から、カーリタースが統治する宿場町へと入る


昼頃、西の街道からユーニの馬に乗せて貰って入った時とは違い

私服らしき騎士団の御一行や、傭兵らしき人達がウロツイテ

宿場町は物々しい雰囲気に包まれていた。


城下内でそんな輩が集まると、市民の不安を煽るので

近所に宿場町に、こんな風な集まり方をするのは通常運転なのだが

『厳ついにも程があるなぁ~…おい!』

ゴツクてムサクルシイ、ヤローの集団と言うのは

見ていて正直、気持ちの良いモノではない


私は揉め事を起こさない様に男達を避けて馬を歩かせ

カーリタースの店へと向かう


辿り着いた先では、凄く御機嫌斜めな尾花栗毛の愛馬アモルが

自分の面倒を見てくれていた2人を引き摺り、御出迎えしてくれる

アモルの御機嫌が斜めなのは

この場のオッサン率が高いからであろう…が、しかし


何故かそんな中で、アモルに付いていたのは

昼間の女の子達では無く、2人共に男なユーニとアルブムであった。


私は驚きを隠さず、笑いまで浮かべ

『アモル?ソレ、女の子じゃないのに良いのか?』と声を掛ける

アモルは一際、静かに嘶きアルブムに顔を擦り付ける


『女の子じゃなくても、美人ならOKって言いたいんだな?』

私はアモルからの以心伝心を受け、納得し

騎士団からの借り物の馬から降りて、アモルに近付くと

ユーニとアルブムが『ちょっと待って!』と、私を止めた。


『君は誰?』『御前は誰だ?』とユーニとアルブムの声が重なる

『え?誰って…私が分からなかったりするのか?』

私は戸惑い、店から外の様子を見に出てきたであろう

カーリタースとコクレアに手を振る


『カース!コクレア!聴いてくれよ!コイツ等、酷いよ!

私に「誰?」って訊いて来るんだ!マジで酷くない?

特にユーニは、2年も私に付き纏って置いて

私が分からないとか!ありえなくないか?』と言うと・・・


カーリタースとコクレアが、何だか困ったような表情で

こちらを見て、苦笑いを浮かべていた。


斜め前から『フロース…なのか?』と、ユーニが私に訊いて来る

『それ以外の何に見える?』

『いや…あの…うん、女の子だったんだな…』

『え?あれ?えぇ~っとぉ~…何でそうなった?』

私は少し焦り、本当に女である事を誤魔化す為に

どうすれば良いか必死で考える


此処で「自分は男だ」と、素直に嘘を吐けば良いのかもしれないが

変に嘘を口にすると、嘘が発覚しやすくなるリスクを負う

嘘に敏感な者がいれば「証拠」を求めて来る場合があるからだ


私的に一番都合が良いのは・・・

「私が嘘を吐かず…相手が、私が男だと勘違いしてくれるのが

ベストなんだけどなぁ~」

私が困り果てていると、天の助けかの如く

『その胸って…どうなってんだ?お前、貧乳だったよな?』と

アルブムが話し掛けてきた。


アルブムもどうやら、私の事を女の子設定で見る事にしたらしい

「コレは誤魔化すチャンスかもしれない」

私はそっと、アルブムの手を取る


『貧乳って…それ、同性相手に言うなら大丈夫だけど

普通に女の子に向かって言ったらアウトだぞ…

因みに、誤解のない様に言っておくが…私のは勿論、上げ底だ!

そして、私は「オカマ」でもない事は憶えて置いてくれよ』と

アルブムの手を「胸隠しのコルセット」の上の

「付け胸」に押し当てた。


アルブムが微妙な表情をする

多分、付け胸である事を理解したのであろう

「これで、私の性別に対して

何かしら誤解や疑問を持ってくれると良いのだけど…」


私は意味深にニヤリと笑い

『この程度の「女の子に見える女装」がしたかったら

何時でも、私に相談してくれ

私の祖母のドゥルケが「女装」させるのが、マジで得意なんだ

因みに、私が「その作品の一例」って事でヨロシク!』と

微妙な言い回しで攻めてみる


だが、少し攻めが弱かったらしく

アルブムを悩ますくらいにしかならなかった様子だった。


ソレドコロカ…、私は溜息を吐く

私の「胸を触らせる行動」に問題があったみたいで

本当に、微妙な空気だけがソコに残っていた


ザワツキ囁き合う、男共の少しばかり卑猥な言葉

ユーニの「王子様な素性」の御蔭で、絡まれないが

男共の視線は、私の偽物の胸に注がれている


ちょっぴりウンザリした私は・・・

『此処で付け胸を外すと人混みが寄ってきそうだから

ちょっと、店の中に入って付け胸を取り外して来るよ』と

階段を上り、カーリタースの店に一歩入った

開け放たれたままの扉の前


誰かが店の横や奥の窓から覗き込まない内に

さっさと胸元のボタンを3つ外し、付け胸を外して腕に掛け

ボタンを直しながら振り返ると、又ザワツクのであった。


『早っ!って言うか、其処でする?

坊ちゃん!今さっき見せた羞恥心は何処に消えたの?』と

コクレアが凄く驚いてくれた


私はコクレアに近付き

『羞恥心って…別に羞恥心で外すのに此処に来た訳じゃないぞ

迫りくる男臭いヤロー共の存在が耐えられなかっただけだ!』と

吐き捨てるように言った後


『どうせ迫られるなら…

コクレアみたいに、花の香りや石鹸の香りがする美麗なメンツや

何処触っても柔らかい、腰が括れてる胸の大きな美女!

普通に可愛らしい御嬢さん達のが良かった』と

リップサービス織り込んだ8割の本音を公言した。


コレは余談になるが、迫って来るのが男であれ、女であれ…

自分より何となくでも、強そうな者に迫られるのは

気持ちの良いものではない!

コレは迫られる方が同じく、男であれ女であれ同じ事である。

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