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016[私と御茶会]

[私と御茶会]


私がストゥディウムに突き付けたナイフは

その場で、怒りを露わにしたユーニの手で取り上げられ


『冗談だったんだけどなぁ~

最近の御子様は冗談が通じなくて困るよ』と

ストゥディウムが、苦笑いを浮かべて溜息を吐く


私とユーニは、ストゥディウムの冗談とやらを発端に

ちょっとした、言い合いをした。


『フロース!どうして君は、何時もそうも乱暴者なんだ!』

『煩いなぁ~敵に遭遇したら攻撃を仕掛けるのがセオリーだろ?』

『そんなセオリー聞いた事無いよ!攻撃的にも程が有るぞ!

どうしてフロースは、もっと平和的に生きられないんだ!

『ウッザイなぁ~もう!

私がどうしようが、お前には関係なくないか?』

『関係無くない!友達だろ!』

『あぁ~面倒臭い…友達なら、ちっさい事は気にすんなよ』

『フロースの言う「ちっさい事」は、小さくないんだよ!』


私は何となく、現状と・・・

ユーニの必死さを面白く感じ、笑えて来て

少しニヤニヤしながら、ユーニに適当な言い返しをしていると


コクレアが見兼ねて

『坊ちゃん…もう、良いでしょ?御止めなさい!

時間の無駄だから、椅子に座んなさいな

さっさとケーキ食べて、買い物に行きましょうよ!

新しいナイフ、買いに行くんでしょ?』と

大人な態度で窘められてしまった。


私はコクレアに宥められて、溜息を吐いてから椅子に座り

「何だかんだで自分の中で有耶無耶にしてたんだけど

コレはどうやって手を付けたら良いのだろうか?」と

苺が山積みになったケーキをじ~っと眺める


右から、まだ私に何か言いたそうに私を見ている

ユーニの視線を強く感じた。


私は思い切って、ユーニと視線を合わし

『あのさ、コレってどうやって食べんだよ

もしかして、切り分けないでそのまま

置いてあるフォークで直接、食べてしまって良いのか?』と

訊ねてみると、コクレアも

『あ、ソレ!私も思った!どうなの?』と同意してくれる


ソレがコノ騎士団のルールでは、想定外な事であったらしく

ユーニは勿論、ストゥディウムとアルブムも驚き

そして笑い、3人は豪快にも私とコクレアの目の前で

ケーキをフォークで直接、『普通にそのまま食べたら良いだろ』と

食べて見せてくれた。


私は自分に割り当てられたケーキを眺める

「その食べ方をするとしたら…

積み上げられた頂点の苺から食べるべきであろうか?」


余談だが・・・

「私が好きな苺」は「木の実」である、木に実る「木苺」で

「地面に生えた草に生る苺」では無い


「こっちの苺も、森に生えてるのは見た事あるけど

森には必ず馬で行くし、苺は地面に生えてるから…

私より先に馬のアモルが見付けて全部食べてしまうし

そうならなくても、踏んでしまう事が多いし

土付いてるし、虫も居て食べる勇気が出ないし

私自身、市場で売ってるジャムになってるのは食べた事有るけど

生の苺を食べた事は無いんだよな…」


私が色々考えてしまって、やっぱりどうしても手を出せずにいると

あっと言う間にストゥディウムが、私が見詰めていたその苺を

指で摘まんで食べてしまった。


『あ!隊長!盗っちゃ駄目でしょ!』と、ユーニが怒る


『ん?いや、だって…コイツが食べないのは、もしかしたら

出された物に毒が入ってると警戒しての事かも知れないだろ?

そう言う場合は、食べて見せてやるのが定番だと思わないか?』と

ストゥディウムが言い返す


『隊長、警戒して手を出して無い可能性は無いっしょ

コイツ…しっかり出された飲み物は飲んでるよ』と

アルブムが突っ込みを入れていた。


私がストゥディウムの行動も、3人の会話をも無視し

ケーキを更にじ~っと見詰めていると

『所で坊ちゃん…何でケーキ食べないんですか?』と

コクレアが首を傾げながら訊いて来る


私は素直に

『木苺は好きなんだが…

草の苺は森で見掛けても、食べる事が無くってさ…

私的に、アブラムシ集ってるイメージ強くて食べる勇気が

ちょっと出ないんだ…コレ、美味いの?』と言ってみた。


聞き耳を立てていたのであろう外野を含む、全員に驚かれ

周囲をしぃ~んと静まり返らせてしまった・・・


『おいおい…森で生えてる野生の苺は兎も角

農家さんが育てる苺や、店や屋台で売ってる苺とかに

アブラムシ何かが付いてたりする訳がないだろ』と

アルブムが最初に笑い出す


私はちょっと、アルブムの事が嫌いになった


『金持ちの基準を私に適応してくれるなよ…

一般市民は慎ましく、B級品買うのが普通だし

それ以下は、訳有り品しか買えないっての!』と

私が不貞腐れてそっぽ向くと


『城下で大きな部類に入る宿屋の女将さんの孫なのに

慎ましい生活してるのか?』

と、ユーニが凄く驚いていた。


『あら?知らないの?下町では、割と有名な御話よ!

坊ちゃんは私と同じ、城の南側のスラムの出身だから』と

コクレアは笑いながら、自分用の紅茶を

紅茶を飲み切って、手持無沙汰な私のカップに分け与えてくれ

『貧乏市民暮らしが板に付いているのよ』と言う


正にその通りだ!

前世、セププライの人生最期の2~3年間は

生まれて初めて体験する家事&狩りを生活の基盤とする貧乏生活で

苦労に苦労を重ね、それを教訓に今世では・・・

如何に上手にリッチな気分を味わいながら

「金を掛けずに生活する」かを追求し、その腕を磨き

今の私は、ガチで貧乏生活のプロである。


『成程、武闘派スラム出身の御子様だったのか…』

ストゥディウムがコクレアの話しに耳を傾け

感嘆の声を上げながら呟き

自分用に用意されたチョコレートのケーキを私の方へ押し出して

『遠慮するな!コレは確実に美味いぞ!食ってみろ』と言う


「ちょっと待て…それは貧乏生活してる私に対する同情か?」

私は微妙に哀れまれてしまった様な気がして

セププライであった気持ちの部分が、ショックを受ける


結果、私がストゥディウムに対し

警戒している様にも見える、引き気味な態度を取っていると


コクレアが、自分用の色々なフルーツが盛り付けられたケーキから

私が好きな木苺を生クリームと一緒にフォークですくい

私の口元へ持って来た。


『はい、坊ちゃん!御裾分け』

コクレアの顔を見ると無言だが「食べろ」と、言っている様子

断る理由も無いので、私はそれを素直に食べると

木苺はシロップ漬けだったので、濃い甘さが口の中に広がる


「甘っ!でも、美味い!」

美味しさから、私がどんなに無表情を装うとしても私の顔が綻ぶ


偶然、真正面で私の顔を見る事になったアルブムが

『以外と可愛い生き物だな、御前…チーズケーキ食うか?』と

フォークに大きい塊を刺して『ほら、食べろよ』と、渡して来る


「可愛い生き物とは何ぞや?でも、チーズケーキも好物だ!」

私は「食べさせて貰うのか?」と一瞬、自問自答しつつも食べた。


「チーズケーキも美味かった」

そして、背後から視線を感じ振り向くと

ユーニが期待に満ちた目で、栗のケーキをスタンバイしている


「此処で食べなかったらユーニは、怒るのだろうか?」

私は『食べてあげなよ』と、コクレアに言われ

結局、皆のケーキを8分の1くらいづつ食べたのであった。


そんな中で・・・

食べながら、御茶の御代りを貰い

「花売りをする女、子供達の失踪事件」の話を聞く


狙われた子供達の共通点は・・・

花を売っていた事と

必ず、同じ花の髪飾りを付けた女の子が1人以上存在した事

との事だった。


私はカーリタースに髪を留めて貰った髪留めの事と

コクレアが・・・

『今日のターゲットは…

「綺麗な花を模したバレッタ」を付けて女装した坊ちゃん』

『母上様の御墓参りの序に、コノ依頼はこなせますよ』

『その周辺の森で発見されています』と言った

幾つかの言葉を思い出し


『コクレア…これから向かうのって

街道挟んだ教会の向かいにある御墓のある方の森?

それとも、東南の高い山がある方の森の方?』と質問した。


コクレアは、テーブルの上に使い古された地図を開き

『御墓の方よ』と

溜息混じりに言って、墓の奥に広がる森を指した。


『教会と墓の間の街道をそのまま南へ…の最悪なパターンの

可能性は残っているけど…

教会の孤児院の子等も被害者になってて

この教会の神父が「不審な馬車は見てない」って言うし

後、今回は女の子中心だからね

西の山脈方向にある低い山を越えて街道沿いに南…の可能性が

私的には捨てきれないの』と

コクレアは地図に無い、山越えルートを指でなぞる


私はちょっと嫌な予感がして

『取敢えず準備整えて、教会に話を訊きに行かないか?

子供等に為に菓子折り持って行けば、何か子供等からも

話が聞けるかもしれないだろ』と立ち上った。


私は準備をする為・・・

ストゥディウムに「綺麗な花を模したバレッタ」を返して貰い

騎士団で1頭の馬を借り


『右腕は大丈夫なのか?』と心配するユーニを振り解き

『後程、カーリタースの作った宿場町で』と言い残し

ちょっと無理して、騎士団の詰め所を後にした。


余談・・・

結局、自分用に用意された苺のケーキは

飾りの苺を1個だけ食べ、残りは皆に食べて貰った


苺が美味くても、こびり付た嫌なイメージと言うモノは

中々、払拭できないモノなのである。

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