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012[ちょっとした決闘と私]

[ちょっとした決闘と私]


『まぁ~まぁ~良いじゃないか!

王子さん、皆の楽しみを奪う事無いとは思わないか?

御前の連れも、楽しそうだろ?』と声を掛けられ

ユーニは少し離れた場所で、騎士仲間に捕まりながら


『でも、だからって僕は了承できない!

駄目だフロース!喧嘩すんなってばぁ~!』と

私に向かって大声を張り上げ、訴えている。


そんなユーニを放置してはいるが・・・

ユーニ同様、ユーニの友達のアルブムにとっても

友達の友達は、友達なのか?


態度が少し、王族であるユーニよりも横柄であったりしながらも

『決闘を否定するユーニの分も、俺が御前を応援してやる』とか

『頑張れよ、俺が後ろから見守ってやるから』とかと


私的に言われ慣れなくて

気恥かしさから、頬を染めてしまう様な御優しい言葉を

アルブムは平気で私に掛けて来てくれていた。


「やり辛いな…」と言うか・・・

「カーリタースが、ユーニに似た様な心配の仕方をしたり

カーリタースが、アルブムみたいな事を言っても平気なのに

この2人からのは、ちょっと何か何処か耐え難い」


私は初めて、ユーニやアルブムみたいな異性が苦手だと

実感するのであった。


仕方無しに私は2人の事を視界から外し、頭から追い出して

痛めた右手首に左手で強く触れ、痛みで冷静さを呼び起こし

緩んでしまった包帯を左手で巻き直して、戦いに備える


暫くして、騎士達の1口幾らの賭け金の収拾が終わり

楽しげな歓声の上がる中、審判が騎士らしい格式ばった口上を述べ

『決闘開始』の号令を口にした。


号令と共に『先手必勝!』と

叫びながら突っ込んで来る若そうな騎士


「え?それ…ホント、マジですか?」

私は戸惑いながら軽く、その攻撃を避けた…と、言うか

若そうな騎士からの攻撃を剣で受ける気が、どうしてもしなくて


「己は先手必勝って意味を本当に知ってるのか?」と

若そうな騎士の胸倉掴んで問質したくなる衝動を

必死に自分の中に抑える為に

「現実逃避」序に、その場所から飛び退く事を選んだ。


重たい鎧を着込んだ騎士の動きは案の定、とっても遅かった

但し、若そうな騎士の「先手必勝とやら」は

私が想定していたモノよりも、すんごく遅かったのである


私は力任せに振り回される剣を軽々と避け、間合いを測る

此処で怪我したら、後で何を言っても言い訳にしかならない

「さて、どうしようかな?」


実戦経験が少ないのであろう、若そうな騎士の動きは単調で

私の戦いへの意欲を普通に、半減させ続けてくれている


私のコノ戦いへの意欲が尽きる前に・・・

飽きてヤル気が起きなくなって、自ら逃亡してしまう前に

決着を付ける必要があった。


観客は『逃げるばかりじゃ勝てないぞ!』『頑張れ!』

『さっきまでの威勢はどうした!』『腰ぬけめ!』

『さっさとやられちまいな!』とまで、言ってくれている


「此処で、期待に副わなきゃ女が廃る

人によっては逆行でも、ちゃんと期待に添ってあげなくてはな」


私は気を取り直し直して、若そうな騎士をしっかり観察し

「命の取り合いをするレベルに達してないな…本当に面白くない

仕方ないから、ちょっと赤っ恥かいて貰いましょうか!」と

私は借りた抜身の細い剣で、鎧の解体作業をする事に決めた。


私は呼吸を整え、集中力を高めて

観客の「期待に添う為の行動」を開始する


若そうな騎士の鎧は、鎧の外側で革製の留めを使い

パーツを固定するタイプの鎧だったので

切っ先で、留め具になってる皮をチョイチョイッと切り付けながら

若そうな騎士の周囲を一周した


それだけで、簡単に腰の部分を護るパーツが脱落し

若そうな騎士を簡単に転倒させる事が出来た。


「この作戦、ユーニに見せてしまったの今日2度目だな

1日で2度も同じ作戦を使うだなんて

芸が無いなぁ~私…後で、今朝の騎士の階段の落ちの事も

ユーニに突っ込み入れられてしまいそうで怖いな」

私は新しい作戦が思い付かなかった事を悔みながら

「転倒した若そうな騎士」の様子を遠目に眺める


転倒し、慌てた騎士が

みっともなく、バタバタと地面で這いずり起き上がり


騎士である筈なのに、驚き動揺して

自分の防具を管理する小姓、ペイジをやってる幼い男の子に対し

私との決闘中にも拘わらず


『おい!お前の所為で恥を掻いたではないか!

俺が見てない所で、仕事をサボっていやりやがったな!

防具の管理も出来ないとは嘆かわしい!使えないのにも程が有る

お前は今から下働きに降格だ!』と、悪態を吐いてくれた。


私は・・・

「あの男の子には悪い事したな…

ユーニにペイジとしての再就職先を男の子に斡旋できないか

相談してみて、有っても無くても後で菓子折り準備して

立場を悪くした事について、詫びを入れに行って来ようかな」と

ひっそり心に決める


若そうな騎士の現状を見て、盛り上がっていた会場が

何時の間にか、水を打った様に静まり返っていた。


私は、鎧の留め具の革の部品を切る序に

腰の部分を隠す布地も複数回切り付けていて

若そうな騎士「御本人様」はまだ、御気付きではあられませんが


腰を守る防具と共に落とす事はせずに

大事な場所を隠すスカート部分を蛇腹切りにして

ミニスカートから穴開きのロングスカートに変化させていたのである


更に言えば、若そうな騎士が鎖帷子を中に着込んでたから

マシな状態ではあるが、切り刻まれたスカートの下

鎖帷子から白いパンツが透けて見え

パンツの下の方のブツが有る場所は半分丸見えで・・・

ちょっと、笑える部類の格好悪い状態になってしまっていた。


そこでやっと・・・

審判から「勝者は私」って事で「試合終了の御知らせ」があり

私に対し、ボス猿団長から

『流石、カーリタースの所の傭兵だな』と、声が掛けられる


若そうな騎士が『俺は負けてなんかいない』と審判に詰め寄る中


ボス猿団長の口から、カーリタースの名前が出たので

私がボス猿団長を警戒し、不機嫌にボス猿団長を睨み付けていると

私の背後で、耳馴染んだ澄んだ笛の音が鳴った。


私は驚き、振り返って確認すると・・・

カーリタースが愛用している筈の笛を鳴らしたのは「ユーニ」で


ユーニは、私の目の前にカーリタースの笛を吊るして見せ

私の手から、私が審判からレンタルした剣を取り上げて

『ありがとう』と言って、若そうな騎士に詰め寄られ中の

審判に返却し


『ホント、フロースってば困った奴だよ…

そうだ!咽喉が乾かない?御茶と茶菓子が有るからオイデヨ』と

私の手を取り、腰も取り

私をテラスのある方向に案内して行ってくれるのであった。


私達が立ち去る、騎士団の詰め所内の中央広場は・・・

試合終了と共に、辛気臭いムードに包まれていく


騎士団の皆様達にはどうやら、私が決闘に勝つとは

本気で誰にも思われていなかったらしく

「一体、何がどうしてこうなったの?」と訊きたくなる様な

男達の嘆きの声があちこちで上がり、その場に満たされ


賭けに参加した人、それぞれが

その暗い雰囲気に染まっていっているみたいだった。


『可哀相だから、友達記念として御前に賭けてやろう』と言って

何時の間にか私に賭けていたと言う、ユーニの友達のアルブムも

『しまった!何であの時、俺は一口しか賭けなかったんだ』と

何か、呻いて床を叩いている


「何かちょっと、コレはコレで面白いな…」

私は初めて見た変な光景に、クスリと笑いを洩らし

ユーニに導かれるまま、その場を後にして

決闘をした場所から少し離れた場所にあるテラスの外へと

ユーニによって連れ出された。


建物の所々が朽ちていた敷地の中に一か所、元のままの景色

17年近く前の元の姿を残す一角が、ひっそりと存在していた


私がユーニに連れられ出たテラスからは

セププライが知る、懐かしい庭園の姿が広がり

テラスには曲りなりにも、花の香り漂う喫茶店が併設されていた。


『いらっしゃいませ!』

私は声を掛けられ、「曲りなりにも」の理由に放心状態に陥る


「えっと…コノ人は、ドッチなのだろうか?」

私は目の前の存在するピンク色のショートドレス姿の人に対して

どう言う反応をして良いか?どう対応を取って良いか?に困り

黙ったまま、ユーニに視線で説明を求めた。


ユーニは私の視線に気付く事無く

『フロースは、苺ので良かったよね?』と

私の返事を待たずに「ケーキと紅茶」を注文し


景色が一番綺麗に見える座席へと、私を連れて行く


席には、何処から来たのか?どうやって此処に来たのか分からない

正門の前で別れた際、馬車の上に居た筈のコクレアが

セクシーを意識した座り方で、先に座席に座っており

ピンク色のドレスを着用した店員達と楽しげに笑い合っていた。


私は深呼吸をし・・・

冷静に店員達を観察して、コクレアとの違いを見付け

「あ…此処の店員さんって

オカマじゃなくって、凄く体格の良い女の人達なんだ」と

ちょっぴり申し訳なかった様な、微妙な気分になって立ち止まる


コクレアは、私の心境を知る事は無く

私とユーニを見付けると手を振り、私達を招き寄せ

店員達に御茶の準備を急がせる


そして・・・

『何か不思議です。

本当に坊ちゃんも、私と同業者だったなんて…ね』と

残念そうに微笑んだのだった。


「毎度の事ながらコクレアとは、意思の疎通が取り難くて

本当にどうして良いか分かんないな」

私はコクレアの言葉の意味が分からず、首を傾げ

再び、ユーニに目で助けを求めるのだった。

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