011[私と、ユーニが所属する騎士団]
[私と、ユーニが所属する騎士団]
ざわめく、騎士団の詰め所にて・・・
私の前世である、セププライの記憶の中から名前を検索しても
どうしても名前だけが思い出せない「ボス猿|(仮)」に向けて
満面の笑みを浮かべたユーニが
『隊長が「年の近い友達を作った方が良い」って言ってたから
2年掛りで年齢の近い友達Getしてきましたよ!』と、言って
「私の事」をユーニ自身が所属している「隊の隊長」に
紹介してくれた。
私はそこで少し考える・・・
ユーニの台詞から推測するに、どう考えても
他にも沢山、ユーニと同じ年代の人間が存在した場合
年齢が近ければ友達になるのは、私でなくても
「誰であっても良かったのではないだろうか?」と言う事を
「そう言えば、私等の年代って…
疫病の流行で、生まれて来た子供の数が少なかったんだよな
他に選択肢が無かったから、私に付き纏ってたのか」
私は自分の中から導き出された答えに、独りでウンウンと頷き
今まで疑問に思っていた
「平民なのに、自分がユーニに付き纏われていた理由」に付いて
今やっと、納得する事が出来た様な気がした。
それにしても・・・
「ボス猿が隊長?時の流れってヤツは、凄いな…
適任者がいなくて、年功序列ってので出世したのか?」と
騎士団に対する私の認識が
セププライの頃の認識より、ちょっぴり軽いモノに変化した。
続いて『コイツは「アルブム」僕の友達だ!』と
ユーニは、ボス猿隊長の隣に控えた
ピンクゴールドの髪に薄紫の瞳の男装の美人さんを私に紹介し
『で、コイツが前に話した時に話題にした「フロース」だよ
今日やっと、友達になってくれたんだ!
アルブムもフロースと友達になって、仲良くしてやってくれよ』と
その美人さんにも、私を紹介してくれた。
「友達になるなんて私、言ったっけ?」って、なぁ~んて
意地悪な事を言いたい衝動に駆られもしたが、そこは我慢し
ユーニが発した「前に話した時に話題にした」の話の内容も
ちょっぴり気になる所だが、しかし
私が注目した所は、もっと他の言葉で
「アルブムもフロースと友達になって、仲良くしてやってくれよ」
って「どうしてそうなるの?」と言う問題
「友達の友達は、友達にならなきゃ駄目なのか?
もしかしてソレって強制なのか?」と
私が個人的に、黙ってウンザリして密かに「面倒だな」と思う
そんな中、ボス猿隊長が連れていた美人が
男装した女性ではなく、女性より綺麗な「男性」であると言う事を
私は驚きながら知る事となった。
色白で華奢な体付きのアルブムは、平らな胸を張り
『俺並みに、女顔のヤロー見たのは久し振りだ
もしかして、女顔を強調する為に女みたいな髪型にしてるのか?
そんな事したって、俺の美しさには敵わないけどな!』と
真っ向から偉そうに笑ってくれたのだ
「うっわ、何?コイツ…失礼な、いや…変な奴だな」
私は「女」として、その美貌に嫉妬する隙を与えられず
アルブムの顔立ちと、表情の余りのギャップに呆然とし
「それにしても、勿体ねぇ~なぁ~おい…
その顔を上手く利用すれば、幾らでも稼げるだろうに」と
余所様の顔立ちで、捕らぬ狸の皮算用をしてから
「でも、この性格じゃぁ~なぁ~」と
アルブムを唆し、近所の娼館で売り出し稼ぐ事は諦め
アルブムの価値と傲慢さに、目を逸らす事しかしなかった。
「来るんじゃなかったな…もうマジ、本気で帰りたい」
騎士団は、私がセププライだった頃と違い
私にとって、軽いだけでなく価値の無いモノに成り代わっている
私は溜息を吐き、私を束縛するユーニに対して
『ユーニ…そろそろ解放してくれよ』と
振り返り睨み、恨めしそうにしてみせた。
ユーニが『放したら、走って逃げるとか無しだぞ』と確認する中
不意に誰かの手が、私の紅茶色の髪へと伸び
カーリタースが纏め留めてくれた、髪留めをパチンと外す・・・
纏められる力を失った肩までしか無い私の髪は
支えを無くし、ゆっくり解けていく
手を出された方向にゆっくり首だけを向き直すと
私がユーニに振り向いた方向とは逆の方向に、ボス猿がいた
そしてその手には、私の髪を纏めていた髪留めが存在していた。
正直、ちょっとイラっとした
現時点、右手の痛みで髪を括れない事もあるのだが
「仕事で必要だから、カースがやってくれてたのに!」と
ちょっとした思い入れの為に、私はユーニを強引に振り解き
ボス猿隊長に対して、戦闘態勢に入り掛けたのだが
再び即効で、ユーニに背後から抱締められる様に捕獲されてしまう
「ちょっと何なんだよ!腹立つなぁ~もう!」
私は腹に据えかね
「スキンシップ多過ぎんだよ!
私を捕まえてくれるな!そもそも私に触ってんじゃねぇ~よ!」と
ユーニに対して言おうと思ったのだが
そのユーニの手に、口まで塞がれてしまい何も言えなかった。
「油断してたとは言え、こんなに簡単に私が拘束されるなんて
ユーニって、私が思っていたよりも強い子なのかもしれない」
私は今後の事も考えて取敢えず、抵抗するのを停止した。
『僕が物凄く頑張って手に入れた僕の友人を
好き勝手に虐めないでやって下さいよ』と
ユーニが楽しげな表情で、ボス猿隊長に意見する
「あ、ちょっと…その言い方ムカツク」
そして更に・・・
『フロースは野良猫気質だから、直ぐ人間が嫌いになるんですよ!
訊きたい事があるなら、餌付けしてからにしてやって下さい』と
ボス猿隊長に正面から対峙した私をグイッと横にずらし
身を挺して変な風に庇われてしまう
「解せぬ!つぅ~か…おいおい野良猫気質って何だ?
餌付けしてからって…ユーニ、己は私を何だと思っているんだ?」
口を塞がれたまま小さく悪態を吐き、私が不貞腐れていると
ユーニが今度は私に対して
『フロース、駄目じゃないか…
ウチの隊長は、騎士団の団長でも有るんだから!
喧嘩売ったら、騎士団全体を敵に回す事になるんだよ』と言う
私が茫然とすると、どんな意味で茫然としているかはさて置いて
ユーニは私を一時的に解放して、自分の方に私を向かせ
『今回の事は、僕の顔を立てて水に流しておくれよ』と
無邪気に笑うのだった。
「来るんじゃなかった…何だか、とてつもなく面倒臭くなった…
それに、何か悔しい…
全部、ユーニの都合の良い様になっている気がして腹立たしい」
私は脱力して溜息を吐き『帰る』と一言だけ言って
踵を返し、来た道を戻ろうとするが…何故だか妨害されてしまった。
私が先程倒した・・・
国王ウーニウェルスムの取り巻きの息子である騎士の
同僚か先輩、若しくは見た感じ後輩ぽい見ず知らずの若そうな騎士
でも多分、今世の今の私よりは年上であろう一人の男が
『ちょっと待て!騎士を一人ノックアウトしておいて
そのまま何もなしで帰れると思ってるのか?』と
私に立塞がり、話し掛けてきた。
『ごめん、フロースは僕の友達なんだ
今回だけは見逃してやって貰えないかな?』と
ユーニがそっと近付き、友好的な雰囲気で相手に話し掛けるが
効果は全く無く
ボス猿隊長…又は、ボス猿団長は黙ったままで
若そうな騎士は、それを自分の意見への後押しだと思ったのか?
『ユーニウェルシタース!
国王の息子だからって、何でも優遇されると思うなよ』と
ユーニを突き飛ばす
それが良い事だったかの様に、歓声が湧き起こった
「集団で個人を責めるやり方は、私の流儀に反するなぁ~…」
私は騎士団の偉い人、団長のボス猿に
口を出されなさそうな雰囲気に乗じて御遊びに興じる事にした。
私は、私と若そうな騎士の間に割り込んだユーニと
若そうな騎士の間に割り込み
『私に喧嘩を売ってるのか?
命を賭けて惜しくないと言うなら、相手をしてあげりけど?』と
此処に来て溜まりに堪った憂さ晴らす序に
コノ喧嘩を買う事にしてみたのだった。
『面白い!やれ!やっちまえ!』
『決闘か?良いねぇ~、どっちに賭ける?
1.1倍と、ユーニの連れが5倍の配当でどうだ?』
無責任な騎士団員御一行様達は、無遠慮に盛り上がる
更に『俺、審判するよ!』と、名乗り出た騎士の一人が中心となり
『こんなの駄目だ!』と、制止しようとするユーニを預かってくれ
何時の間にか剣や防具まで、無料で貸し出してくれる事になって
戦える場所までも、開け与えてくれた。
私は折角なので、比較的軽そうな剣を借り
勧められた楯は『今、左しか使えないからイラナイ』と断り
その他の防具も『命懸けじゃないとスリル味わえないから』と
本音は「重くて臭い防具を着るのは嫌だ」と言うモノなのだが
丁重に御断りさせて貰う
そんな様子を見て、私に喧嘩を売ってきた若そうな騎士は
騎士的な標準装備の鎧姿で対峙し、剣のみで相手をする私に対し
『大怪我して死んでも、恨むなよ?』と言ってくれる
私は趣味の真剣勝負に心浮かれ
『そっちも、命懸けでよろしくね?』と返した。




