91.魔界――5
「次ハ――」
「させるかっ……!」
「お前ダァぁあアアアアアアアアアアア!!」
グナルゴスが狙いを定めたのはジール。
魔王からすれば焔銃の残弾がどれだけあるか分からないし、実際あと二発のストックがある事を踏まえても正しい判断だ。
そこに割り込みレイピアを弾いたユイの身体には聖なる光と魔界の瘴気。
勇者の力に「混沌の祝福」の効果も合わさり二人は真っ向から打ち合うも、魔王の馬鹿力の前にユイは少しずつ押されていく。
……だが、上出来だ。
「調子に、乗ってんじゃねぇぞ魔王ッ!」
「チぃィッ!」
全身が実体化する間も惜しみ、虚空から突き出した龍腕で魔王に襲いかかる。
迎え撃つ軌道で振るわれたレイピアにはタイミングをずらして爪を合わせる事で寸断されるのを防ぎ、更に現れた残る腕と尾で追撃をかけ相手の攻勢を押し返す。
「――『即』」
「『閃爪』!」
「ガァアア!?」
更にその隙を突いてシドとエマがそれぞれ一撃を加えると、魔王はその身体を大きく揺らがせた。
そのステータスの高さはこちらの予測を超えていたが、それでも今のグナルゴスはEマガジンに込められた魔法の直撃を受けた死に体だ。
限界は着実に近づいている。それこそ、あと一撃でもEマガジンの魔法を直撃させられれば消滅させられる程に。
「『連爪』『終爪』」
「調子ニ――」
「『余爪』!」
「乗ルなぁア!!」
「っ……!」
ダメージを優先したか、「閃爪」に始まるコンボを巻き気味に叩き込むエマ。
グナルゴスが全方位に向けて放った魔力に吹き飛ばされるも、レミナの支援もあってほとんど傷は無いようだ。
「キサマ――ッ!?」
「足元が命取りね」
ターゲットをエマに移した魔王が、駆けだそうとしてつんのめる。
その足は局所的に軟化した地面へと沈み込んでいた。
……キィリの仕業か。
この状況でよくもまぁここまで初歩的な罠を決めるものだが、実際それで致命的な隙が生まれたのは確かだ。
咄嗟にジールの方向を確認するグナルゴス。
だが、焔銃の魔法は別の方向から放たれた。
「馬鹿ナッ!?」
「……馬鹿はお前だ」
驚愕するグナルゴスの前でジールの姿にノイズが走り、瞬間的に化けていたリフィスの姿に戻る。
奇しくも放たれた魔法は俺の焔とリフィスの雷を合成したもの。
さしずめ「災禍の審判」とでもいったところか。
圧倒的なエネルギーを孕んだ雷撃と爆焔が押し寄せる。
それに対し、魔王は――。
「フざ、けルナァァァアアアアッ!!」
咆哮と共にレイピアに宿ったのは、魔界の瘴気よりなお禍々しい暗血色のオーラ。
刺突を繰り出す腕を崩壊させながら撃ちだされた一撃は「災禍の審判」と拮抗し、あろうことか押し返そうとし始める。
「させるかよ――」
「「「『爆炎波』!!」」」
「!?」
魔王の背後から熔岩の波濤で挟撃しようとすると、左右からリフィスとエマが同じ魔法を合わせてきた。
……お前ら、いつの間に習得してたんだ。
予想だにしない事態に内心突っ込む俺の前で魔法は重なり、グナルゴスがよろめいて均衡が崩れる。
更に向こう側ではジールが最後の弾丸を駄目押しに放ったらしい。
「光輝と紅煉の覇剣」の光と魔力が魔王の抵抗を一気呵成に打ち破る。
「って、コイツは――!」
魔王がいなくなれば、その攻撃は背後にいた俺たちに直撃するわけで。
咄嗟にリフィスとエマを引っ掴んでその場を離脱する。
直後、それまで俺たちがいた空間を破壊の権化が薙ぎ払った。




