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72.エルハリス――13

 予約投稿が不調らしく少々時間が不規則になっていますm(_ _)m

 これって自分だけなんでしょうか?

 日付を設定するカレンダーが表示されないのですが……

「さて、そうと決まれば――」

「今日はここらで切り上げて休むか」

「は?」


 言葉を遮られたユイがジロリと睨み付けてくるのを受け流し……またおちょくってやるという選択肢もあったが、今は話を進めるのを優先する事にする。


「まぁ聞けって。これまで急かす側だった俺が理由もなく手の平返すと思うか?」

「…………」

「……いや、まぁその可能性が低くないのは俺も認めるが。そういう事が言いたいんじゃなくてだな」


 あからさまな不信の籠った視線も、これまでコイツにしてきた言動を振り返れば妥当といえば妥当ではある。反省する気は無いが。


「これからの作業の重要性は理解してるだろ? その一つ一つが決戦の勝敗を直接左右すると言っても過言じゃない。ならば準備にも万全を期すべきだ」

「…………」

「ん、どうした? 何か言いたい事でもあるのか?」

「べ、別にっ」

「『そうやって諭すみたいな話し方になった時は大体そっちに分があるじゃないかっ。ズルいじゃないか!』なーんてね」

「なっ……!?」


 さっきとはまた違うニュアンスの沈黙を疑問に思っていると、キィリが声真似しながら割り込んできた。

 確か勇者には読心が効かないみたいな事言ってたから、今のは単純な洞察力と推理か。

 当のユイはというと鳩が豆鉄砲を食ったようになって言葉に詰まっている。

 ……図星って事でいいのか?

 というかキィリに声真似なんて芸があったとはな。


「……とにかく、だ」


 幾つかの驚きで固まった思考を復活させる。

 今回はからかって遊ぶような気分でもないし、義務的に話だけ済ませてやろう。


「俺は魔力が回復しきってないし、さっきまで模擬戦とはいえ戦ってたお前とエマも万全とは言い難いだろう。だから少なくとも俺は休むし、同様にお前とエマも今は身を休めるべきだ。分かったか?」

「そ、それくらいは少し考えれば分かる」

「なら問題は無いな。解散だ解散」


 シッシッと手で追い払う仕草をすると、ユイは不服そうな表情で足を止め食い下がってくる。


「待て、それなら今名前が挙がらなかった者たちはどうなる」

「どうもこうも無ぇよ。それぞれ決戦に備えてやるべき事をするだけだ」

「なら、ここに残って訓練を続ける者も居るんだろう? 私は残って参考にさせてもらう」

「それでいいんじゃねーの? お前らがE(エレメンタル)マガジンに魔法込める時も場所はここを使うんだ。魔力と身体を少しでも馴染ませておいた方がいい」

「お、お前という奴は……!」

「これくらい少し考えれば分かるんだろ?」


 ……はっ!?

 気づけば結局いつも通りにユイをおちょくってた自分に少し困惑する。

 いや、今のは少し油断しただけだ。

 その気になれば次こそは……そんな自分でもよく分からない言い訳を考えながら、リフィスと訓練を始めたジールを眺めて意識を逸らす。


 ジールが手にしているのは、魔力を拒む例のオリハルコンの剣。

 リフィスが放つ火球の弾幕を捌きながら、調子を確かめるように様々な動きを試していく。


「うーん。もう少し、弾幕の密度を上げてもらっていいかな」

「……分かりました」


 首を捻りつつそう呟いたジールの要求に応え、弾幕を構成する火球が数を増す。

 やがて完全には防ぎ切れなかった一部の火球がジールの身体を掠めだす。

 剣の扱いを試行錯誤しながらというのもあるだろうが、それでも以前の……このオリハルコンを手にする前のジールなら有り得ない状況だ。


「……人間は皆、無意識に魔力を発しているものだ」

「うおっ!?」


 いつの間にか接近してきていた闘神(シド)が独り言のように呟く。


「あの剣はその微細な魔力さえ斬り裂く。平常時でさえ違和感を覚える程の変化……その影響は文字通り死線を引き寄せる事となろう」


 シドの言葉を証明するように、ジールのかすり傷は次第に増えていく。

 そして遂に、一つの火球がその肩口を直撃した。

 片手間に張るような弾幕だ、その威力も精度もまさしく児戯に等しい。

 が……マトモに喰らって無傷で済む代物でもない。


「その剣……やはり、使いこなすなど不可能なのでは」

「もう少し……もう少しで、何かが掴めそうなんだ。だから……!」


 流石に眉を顰めるリフィスに向かい、無策にさえ見える動きで突っ込んでいくジール。


「あ……!」

「……っ!?」


 その瞬間、何かが噛み合ったのを傍観していた俺でも感じた。

 これまで定まらなかった剣閃が、宙にはっきりと軌跡を刻む。

 次の瞬間……火球の弾幕はその基盤となっていた魔法から纏めて断ち斬られていた。


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