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6.復興――2

 果物は普通に買うとして、肉類は……手っ取り早い当てがある。

 調理にも手間が掛かりそうだし、先に確保しておくか。

 向かうのはスタグバール東部の森。

 目当ては災魔……魔界(エスルグム)の瘴気で元々地上界(カーキエス)にいた獣が凶悪な進化を遂げた存在。

 魔獣でも魔人でもなく、故に魔族というカテゴリにも入らない。それでいて四天王にも匹敵する実力を備えた怪物……ってのがゲームでの情報だ。


 そして、それは流石にゲーム情報が全て現実に当てはまるわけじゃないってことの証明でもある。

 そもそもゲームじゃ四天王のレベル自体おかしいし。

 俺の今のレベルは勇者共を倒して56だが、ゲームじゃ種類に関わらず最初に戦う四天王のレベルが35。

 次が45、その次は55……ってのは時間経過に伴うレベルアップの表現だろうが、それにしても35は低い。

 ちなみに勇者サマ御一行のレベルは30台後半。10以上の差があれば相手のレベルは確認できる。

 よほど先を急いだか、適正レベルにさえ達してなかった。

 そんなステータスで俺を第二形態に追い込んだってことは、奴らのポテンシャルは……なんて考えている内に目的地到着。


「「「グルル……」」」

「邪魔――いや、お前らも食糧か」


 さっそく出迎えてくれたのは無数の狼。

 空振る可能性も無かった訳じゃないが、どうやら当たりらしい。

 炎剣で狼たちの首を刎ね、加熱して消毒しながら先へ進む。

 近づいてくる強い気配――どうやら向こうから来てくれたらしいな。


「ゴアア――」

「おう、よく来たな」


 現れた大狼のレベルは32。

 ボスキャラだし、素材的な意味でも美味いかもな……ってことで首も回収。

 前世の記憶と比べてもあの人数には十分な肉が提供できるはずだ。

 それにしても便利なのは虚空に物をしまえる収納魔法だ。

 そういやゲーム設定じゃ勇者以外はレベル40以上で習得ってことだったが、魔獣や災魔はどうなんだろうな? イメージ湧かんが。

 前世だったら肩に担いで帰らないといけないところだったな。尤も、それなら食糧なんてネット通販で取り寄せれば済む話か。



「おや、早いお帰りですね」

「肉だけ狩ってきた。また果物買いに行ってくる」

「それは――うわっ!?」


 城の厨房に収穫(狼たち)をぶちまけ、今度こそ隣国を目指して俺は城を後にした。


 買い物するのに魔人(四天王)なのが丸分かりの姿って訳にもいかない。

 適当な街が見えてきたところで、常人の視界の外へ高度を上昇。

 人化して飛び下り――って!?


 予想外のことが一つ。

 化けたのは紛れも無く人間。

 誤算は、能力まで人間並みの制限を受けたこと。


「痛っ――!」


 咄嗟に受け身を取って転がるも、全ての衝撃は殺しきれず。

 常人レベルまでの弱体化だったら死んで(第二形態になって)たところだ。

 ……回復魔法の良い練習になったと思うことにしよう。


 幸い、それ以上のトラブルはなく無事に果物を買い集められた。

 ついでに野菜や米も購入。水は……眷属の中に一人くらい、適性ある奴がいるだろ。多分。

 怪しくないように色々回ったから時間は掛かったが、それでも夕食時ギリギリにはスタグバールに戻れた。

 今は一部の魔族に警備をさせつつ、例の更地に住民を集めて食事を振舞っている。

 千人に満たないな……俺の眷属共より少ないんじゃないか?

 難民キャンプのような光景を眺めていると、リフィスたち三人が近づいてきた。


「お疲れ様です」

「そっちもご苦労」

「いえ、主に料理の指揮を執ったのは宿屋のキリエラさんですよ」

「それで良い。出来る奴に仕事を押し付けるのが俺たちの仕事らしいからな」


 食糧なら十分調達できたし、この人数なら十日くらいは賄えるだろう。

 さて、そろそろ勇者サマ御一行を解放してやらないと。

 逃げられたらゲームメモが無駄になる。


「一つ聞いても宜しいでしょうか?」

「ああ、構わない」


 ……ラネルに呼び止められた。

 良いヒトやるなら断るわけにもいかないか。


「最初、『お前が優秀なのは知ってる』と言いましたよね。貴方は天職(ジョブ)を読めるのですか?」

「いや。ただ、お前の天職はなんか分かった(、、、、)んだよな」


 ゲームで知ってるからとは言えない。

 四天王の言うことだし、根拠は無くても説得力は多少あるだろ。


「他の奴らは知らんが、お前は多分[英雄]の天職を持ってる。鍛えれば伸びるだろうさ」

「流石に、俄かには信じ難いですね」

「別に信じろとは言わねぇよ」

「……天職?」


 ぽつりと呟いてリフィスが首を傾げた。

 そうか、これは地上界(カーキエス)の概念だからな。魔族にも適用されるが。


「天職には二つある。一つは今言った[英雄]みたいに先天的なもの……俺だと[修羅炎獄の王]とかな。[勇者][魔王]なんてのも多分コレだろ」

「後天的なものは行動によって身に付くものですね。剣を使えば[剣士]、魔法を学べば[魔道士]、盗みを頻繁に働けば[盗人]なんてものもあります」

「…………」

「待てリフィス、俺は説明取られたとか一切気にしてないから殺気を収めろ」

「…………」


 図らずしもラネルを庇う形になったな。

 リフィスは大人しく狐耳を萎れさせる。


「ついでに説明するなら、普通の人間は良くて20くらいでレベルが伸びなくなる。一般にその縛りが無いのが[英雄]ってわけだ」

「お詳しいですね」

「なんか知ってた。本来これを読めるのは大陸(セグリア)でも限られた一部の神官だけで、天職を知らずに一生を終える奴がほとんどだってな」

「……四天王ともなると、そこまで知っているものなのですか?」

「さあな。水将(アズルムイト)は分からんが、他は知らないんじゃないか? とにかく、疑問の答えにはなったろ」

「ええ。ありがとうございます」

「いや、礼はよせ。落ち着かない」


 今日一日だけで一生分礼を言われているようで、どうにもむず痒い。

 今度こそ勇者サマ御一行に会う為、俺はそそくさとその場を離れた。

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