表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
48/92

48.ウベ荒地

「――あ゛? 今なんつったテメェ」

「……統合があのような形になったせいか、ぼくは水将アズルムイトとしての力を全て得られたわけではない」

「はぁ!? それじゃ()開けねぇじゃねーか!」

「いや、全く得られなかったわけではない。鍵の魔力くらいはある……おそらく」

「ったく、そういう事なら最初から分かるように言えよ」


 アズールの馬鹿を助けてから数日後。

 俺たちは地将ベザンドゥーグを狩るため、奴が侵攻している大陸西部へ向かっていた。

 四天王の経験値を目当てに、エマとジールも合流している。同行するのが勇者一行だと聞かされた時は流石に驚いているようだったが……ああ、俺の正体についてはバラしていない。勇者たちにも伏せておくよう釘を刺してある。

 アズールに関しちゃ奴が人間側に寝返った水将ってバラしたけどな。


 にしてもゲームじゃイベントを経て水将仕様になったアズールは、仲間にするのが面倒極まりない代わりにアズルムイトと同等の戦力でバランスブレイカーとして活躍してたもんだが……。

 まぁいい、端からそこまで期待してたわけでもない。

 ……地上界(カーキエス)魔界(エスルグム)を繋ぐゲートがきちんと開けるか微妙に不安になる語尾については、敢えて気にしない事にする。


 ゆっくり進んでいるわけではないが、徒歩の移動ともなると急いでも時間はかかる。

 もう少し少人数なら俺やアズールが魔法で疑似的な龍なり鳥なり生み出して飛んでいけるんだが、この数だと流石に厳しい。俺なんて特に正体隠す必要もあるしな。

 一応強行軍だ、街に寄る回数も抑えて速度を優先してるんだが……野営の準備を終え一息ついていると、キィリが声を上げた。


「昼間はああ言ってたけど、アズールが今発揮できる力ってのも把握しておきたいわね。自分でも一回どれくらいの力が出せるか試しておいた方が良いんじゃないの?」

「む……」

「ああ、ちなみに相手ならウチからだったらファリスかリフィスが適任よ。魔族の血を引いてるとかで一時的に魔人化できるらしいから、水将って言っても万全じゃないなら張り合えるんじゃない? そっちからだったら……勇者様、闘神様あたりかしら」

「…………」


 キィリは水将との戦いの場にいたから、俺の正体知ってる事を勇者たちも把握している。

 その前でよくもまぁ平然と……ユイも呆れ顔だ。

 ちなみに勇者たちにはキィリの読心能力は伏せてある。謎の加護が働いてるユイ、悟ってるシドの爺さんには無力だが、アズールとレミナの思考が読めるだけでもそれなりのアドバンテージにはなる。


「分かった……では、ファリス。相手を頼めるか」

「お? 構わねぇよ、断る理由もない。リフィス、周りの防御は任せるぞ」

「承知致しました」


 まさか向こうから俺をご指名とはな。もう少し敬遠されるもんかと思ってたが……食後の運動くらいにはなるか。

 野営地から適当に距離を取り、一瞬で詰められる程度の間隔でアズールと向かい合う。


「じゃ、合図はアタシが出すよ」

「おう」


 十分に離れたところで、ジールが出会った時から使っている銃――数度の改造と調整を経た専用装備――を構える。

 空砲の乾いた音が響くと同時に俺は動いた。


「へッ――行くぜオラァ!」

「なっ……!」


 魔人化……要するに人化を解き、生み出した愛用の大剣で遠慮なく斬りかかる。

 いきなり飛ばしてくるとは思っていなかったのか、目を見開いて飛び退るアズールに追撃をかける。


「まどろっこしいのは嫌いなんだよ! テメェもさっさとギア上げてきな!」

「く――言われずとも!」


 小さく唸ってアズールもまた人化を解く。

 その姿は以前勇者たちと共に俺に挑んできた時と変わらない。

 だが、感じ取れる魔力からして既にあの時とは段違いだった。

 これは……今の俺より、少し多いか?


「――おおッ!」

「っと……!」


 俺の斬撃を短く吼えたアズールの拳が迎え撃つ。

 素手とは舐められたもんだ、そう思うのとほとんど同時に更に蹴りが重ねられる。ダメ押しのように生み出された水球が破裂する。

 そこまでされれば押し負けるのも仕方ない。

 勢いに逆らわず飛び退った俺は、改めて剣を構え直した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ