39.ギレムス遺跡――4
「ゴ……ギギ……」
「っ……?」
探し当てた隠し通路。
その先に立ち塞がっていたのは、これまで現れたメカメカしいものとは異なるデザインの人造ゴーレムだった。
これまでの奴らの素材を石材とするなら、今現れた奴の素材は泥……いや、コンクリートと言った方が正しいか。
ぶっちゃけ不細工というか雑な見た目だが、曲がりなりにも小ボス。その力は十分警戒に値する。
「退けっ!」
先手を取ってジールが発砲。
魔力を元に生み出された弾丸が宙を駆け……軽い音と共に弾かれた。
「く……!」
「ふむ、魔法への耐性が高いらしいな。つーかジール、銃が強いのは分かるがそれ一辺倒じゃ状況次第で詰むぞ。今回に限らず、避けて通れない敵が硬い時とかな」
「余計なお世話だ」
「まぁそう言うなって。見た感じそれなりの才能はありそうだし、剣の扱いくらいなら教えてやれるぜ?」
「セグリア・サガ」におけるジールの最大の特徴は銃、そしてその武器を扱うと得られるジョブ[銃士]なわけだが、何もそれしか芸が無いわけじゃない。
……ま、無数のキャラクターが存在する以上、銃を取ったジールは普通にその中に埋もれるのは間違いないが。それでも一応戦えるってのもまた事実。
具体的には剣士、槍士、他にも斧、短剣、体術と幅広い範囲のスキルを中級まで覚えられる。
火力で言えば狭い範囲で上級、最上級までいくキャラにこそ劣るが、サポートとしては中々優秀な部類に入る。
何より今は現実だ。ゲームじゃない。手数の多さが戦力に反映される度合いは更に大きい。
……最終的にはエマがほぼ上位互換として君臨するが、それはほぼ誰でも同じだから仕方ない。むしろここは、そんな守備範囲の広い二人を組ませた時の戦を楽しみにするべきところだろう。
「……『閃爪』」
「グゴ――」
「『剛撃』!」
「『連爪』ッ」
リフィスの一撃にも怯まず反撃しようとする人造ゴーレムの初動を、威力に補正を受けるエマのスキルが潰す。
生まれた隙をついてリフィスの連撃が決まり、敵は大きくよろめいたが……まだ倒れない。
あまり待つのも面倒だ。少し手を貸してやろう。
炎を結晶化させて生成したナイフに爆発の勢いも加えて放つ。
「エマ、今刺したナイフを打ち込んでみろ。リフィスはそれの援護だ」
「分かりましたっ」
「仰せの通りに」
それなりの魔力を込めた甲斐あって、ナイフは人造ゴーレムの防御を突破した。
内側の魔力抵抗は大したことないのか、おまけ程度の行動阻害が思いのほか効いているように見える。
「行きます――『爆連砕打』!」
「ギ……」
「させん!」
身体を無理矢理に動かして逃れようとする人造ゴーレムにリフィスが強烈な一撃を見舞う。
硬直したゴーレムの身体に、スキルの効果で打撃属性を持った剣が連続して振り下ろされた。それは敵に突き立った無数のナイフを正確に打ち込み……その身体は一度大きく震え、爆発した。
ジールと遭遇してから数日。
俺たちはジールの探し物……今は亡き弟に回収してくると約束したままになっているという短剣を求め、遺跡の中層を回っていた。
ある隠し通路で強敵から逃れる際に落としたというそれは、設定じゃ確か決して壊れないという特殊効果を持つ秘宝の一つだったはず。
再び見つけられるかどうかも分からないというジールを、隠し通路を探すのは趣味だとか特技だとか適当に言いくるめ、遺跡を探りまわることしばらく。
場所の大体の見当はついていたんだが、その辺だけ特に集中して探す理由も思いつかなかったせいで割と時間を取られた。だがそれも直に報われる。
それから幾つかの分かれ道を過ぎ、微妙に道が知識と異なったり覚えていなかったりしたせいで少し引き返す事もあったが、どうにか目的の部屋まで辿りつく。
「オオオォォオ…………」
「あ、アイツは……!」
「人造ゴーレム、じゃねぇな。その残骸に憑りついた悪霊の類か」
さしずめ、怨骸とでも呼ぶべきか。
素体も他のものとは別だったのか、残骸に残っている面影はこれまで見たどれとも異なる。身に纏った怨念も目に見えるほど濃密だ。
だが、コイツがこのイベントのボス。ジールの反応を見てもそれは間違いなさそうだ。
……うん、良い感じの強敵なんじゃねぇか?
一人頷いた俺は、援護のため両手に生み出した炎のナイフを構えた。




