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21.ルートゥ――5

 読心の能力、そしてこの村に紛れ込んでいる異質な何か。

 今キィリから得られる情報はこれで十分だろう。


 ……この思考も含め、読まれてるってことを意識しなきゃならないのは面倒だな。

 読まれまいと意識すること自体が、考えたことを差し出す行為となる。

 幸いな事と言えば、今更になって意識的に隠したい情報なんてものが俺の中に存在しないことくらいか。


「……それで? 例の二人について、思い当たることがあるんじゃないの?」

「まあな。実物を見るまで……いや、見たところで確証を得られるかは分からねぇが」


 キィリから得られた情報からその二人の状態を、元は普通の人間だが意識を持たないものに乗っ取られ操られていると解釈すれば、心当たりはある。


 セグリア・サガでは……そして俺たち実際の四天王も、勇者に倒されるまでは独自に動いている。

 例えば炎将()は抵抗勢力の殲滅、風将は土地の浸食、水将は人間の観察。

 そんな中、本人は地に根を張り自らを強化するだけで動かないのが地将ベザンドゥーグだ。


 ゲーム中での大きなサブイベントはほとんど四天王か災魔に絡むもの。

 その中で登場する地将の手駒……確か「種隷(スレイブ)」と呼ばれていたはずだ。

 適当な人間に魔力で生成した種を寄生させて強化し、遠隔で操る存在。

 イベントによって黒幕だったり実行犯だったり、様々な役割を果たしていた。


 ただ、この町(ルートゥ)に奴らが絡むイベントは無かった。

 ……いや、実際に種隷らしき奴が確認されているんだ。

 何が狙いかは分からないが、消しておけば済む話か。


「へえ……なんとも心強いものね」

「ふん」


 一々説明の必要が無いのは楽だが、どこか慣れないな。

 今やっておくべきことは終わった。

 そうなると……ずっと放置しておくわけにもいかないのが、布団の中で震えている俺の腹心だ。

 耳を澄ませば今も嗚咽が聞こえてくる。

 キィリの読心能力が確定してからずっとこの調子だが……どうすれば良いんだ?

 原因が不明なせいで手の施しようが無い。

 布団を剥いで喝を入れるくらいは容易いが、そんな間に合わせじゃ意味は薄いだろうし……。


「…………はぁ。仕方ない、リディスは私に任せて」

「頼んだ。今こそその力(読心)をフル活用する時だぞ」

「驚くほど心が籠ってないわね」


 確かに適当に言ったが、カウンセリングにしろ心理戦にしろ読心ってのはとんでもない武器だよな。

 キィリが元凶と言えなくもない状況だし、責任くらいはとってもらおうか。

 俺は自室に戻ると、改めて眠りに就いた。



 ――その翌日。

 俺たちは宿の一階で朝食とも昼食ともつかない食事をとっていた。

 昨夜のことを考えれば寝坊も当然か。


「ん?」

「――っ!」

「やれやれ……」


 ふと視線を感じて顔を上げると、耳まで真っ赤になったリディスが凄まじい勢いで顔を背けた。

 ……昨日の惨状と比べれば、だいぶ回復した方か。

 今の反応といい一瞬見えた腫れの引かない目元といい、万全とは程遠いが。


 さて……今日やる事といえば、またエマが虐められてるのを見た後に勧誘するくらいか。

 あと種隷|(仮)の処理だな。

 支払いを澄ませて宿を出る。

 先に遭遇するのはエマか、それとも種隷か――。

 そう考えながら町を探索していた俺の目に留まったのは、自分でも予想外なものだった。


「へへ、これでどうだっ」

「おいおい、何やってんだよ!」

「……ククッ」


 そこに居たのは、昨日もエマにちょっかいをかけていた三人の子供。

 そいつらが囲んで好き放題していたボロ切れには見覚えがあった。

 ……俺がアイツに押し付けた上着だ。


 無意識に殺気を漏らしていたらしい。

 ビクリと動きを止めたガキ共と距離を詰め、リーダー格の一人の胸ぐらを掴み上げる。


「――何処だ?」

「な、なんっ……」

「俺がコレを渡した奴は、何処だっつってんだよ」


 バタバタと暴れるのが煩わしく、手の力を強める。

 質問の返事は無い。

 ……面倒だな。

 ちょうど三人いるんだ、コイツは見せしめに殺すか?


「ストップ。ちょっと落ち着きなさい」

「あ?」


 そのまま首を捩じ切ろうとしたところで、キィリが俺の腕を抑えた。

 手に込めた力はそのままに視線だけ移す。


「首が思いっきり締まってるわ。それじゃ喋りたくても声が出ないじゃない」

「…………」


 言われて気付いたが、そのガキは白目を剥いて失神していた。

 使えない奴だ。

 無造作に投げ捨てると、残る二人は更に震え上がった。


「……ふぅん」


 そんな二人を冷めた目で一瞥すると、キィリはその至近に剣を突き立てた。


「「ひっ……!」」

「あまりくだらない事してると、また報いを受ける事になるわよ?」


 侮蔑と嫌悪の滲む声でそう告げる。

 キィリは剣を鞘に収めると、身を翻して足早に歩き出した。

 ……読心か。何が分かったんだ?

 リディスと共にその後を追う。


「たぶん、魔の森に行ってるわ」

「なん、だと……!?」


 よくもまあ、あんなクソガキがそんな事態を引き起こせたもんだ。

 思わず嘆きたくなるほど状況は最悪だった。

 遅ればせながら、前話の投稿ミスをお詫びしますm(_ _)m

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