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11.旅立ち

 狼群を撃退してから数日後。


「ファリスさん、一つ良いですか?」

「なんだ」

「訓練なら街に残る眷属の方々ともお願いします」

「お、おう」


 見透かすようなラネルの視線を、平然と受け流そうとして失敗する。

 俺が人化した状態でも満足いく動きが出来るように訓練してるのは、これからの旅に備えてのことだ。

 その時間を捻出するために仕事だって幾つかサボっている。

 そこに深く突っ込まれないのも、もしかしたら俺の目論みがバレてるからって可能性だってある。

 妙な居心地の悪さから逃れるように、俺は城の窓から飛び下りた。


 それから更に数日後、メーゼの時間が空いたタイミングを確認。

 リフィスと二人で予め打ち合わせた後、政務担当とメーゼを召集する。


「――揃ったな」

「それで、今日は何でしょうか?」

「いや、狼共に邪魔されてた話の続きなんだが……」


 ラネルもラナもメーゼも、その様子は普段と至って変わらない。

 だが……何故か言い出しにくい。

 なんとなくリフィスに視線を送る。

 いつもの如く視線が合う。ただ、それだけで状況が動く訳もなく――


「……私とファリス様は、旅に…………ッ」

「リフィスさん!?」

「おっと、そんナ時はこノ薬――」

「要らん! 『炎癒(ヒートヒール)』」


 言葉の途中で急に顔を抑えたリフィスの手の間から、赤い雫が滴る。

 鼻血噴く要素なんてどこにあった?

 メーゼが涙目なのは知ったこっちゃない。


「というかリフィス、鼻血噴くナンて――」

「忠義」

「……そ、そうナノか」


 ……忠義ってなんなんだ?

 と、いつまでもこんな調子じゃ話が進まない。

 手を叩いて注目を集め仕切り直す。


「あー、まあ、リフィスが言った通りだ。使える配下を増やしに旅立つ」

「分かりました。――入ってください」


 ラネルが合図をすると、ドアを開けて眷属が数体現れた。

 それぞれ手には武器等を持っている。


「どういう事だ?」

「貴方の目論見は前から察せられていたので……旅支度です。人化している時は僕たちとあまり変わらないそうですから」

「う……」

…………(感謝する)


 眷属から荷物と武器をそれぞれ受け取るリフィス。

 その剣には見覚えがあった。宝物庫にあった一つで、特に強い魔力を帯びていた逸品だ。

 なんというか……上手く隠せていたつもりも無かったが、こうも備えられていると気まずいなんてものじゃない。

 人化を解いた俺はリフィスを担ぐと窓を開けて飛び出した。


「お、俺を誰だと思ってる! 武器は弱いんだからお前らが使え! じゃあなっ!」

「ファリスさん――!?」


 ラネルの声を背に、翼を羽ばたかせて加速。

 俺は全速力で街を飛び出した。



「リフィス、荷物を確認するぞ」

…………(仰せの通りに)


 ……とはいえ、一人分の荷物で二人旅が無謀なことくらい分かる訳で。

 一度人目のない荒地に降りて色々と確認する。

 衣類や食料なんかは適当に買うとして――と、なんか手紙っぽいものが出てきた。


「代わりに読んでくれ」

「…………」


 リフィスによると、手紙の内容は冒険者手続きに関することだとか。

 セグリア大陸を巡るなら冒険者の肩書は何かと都合が良いものらしい。ゲームでも主人公(勇者)は冒険者として依頼とか受けてたしな。

 今マトモに機能してるギルドはスタグバールでも端の方、比較的被害の小さい街の幾つか。


「よし、登録も買い物もそこで済ますか」

………………(自分で飛びます)……」

「俺が担いだ方が速いだろ?」

……(ま、待っ)――!」


 控えめにじたばたするリフィスの毛皮を堪能しつつ、俺はスタグバール北端、セグリア中央部に向けて飛び立った。

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