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1.プロローグ

 新シリーズ3話投稿の一話目です。

「――ハッ、本当にテメェらみてぇな雑魚がジュラヌス(風将)ぶっ殺したのか!?」

「二人とも、来るぞっ」

「レミナ!」

「『聖盾光(ライトガード)』……くっ……!」


 嘲笑と共に爆炎を放ったのは、巨体に炎を纏った鬼のような外見の魔人。

 魔獣の突進さえ受け止める障壁を破り、決して狭くはない室内を炎が蹂躙する。

 炎が消えた時、満身創痍の様子で立っていたのは三人の人間だった。


 攻撃の直前に警告を放った隻腕の騎士、軽鎧を身に着けた剣士、そしてレミナと呼ばれた華奢な体躯の神官。

 この剣士の少女こそセグリア大陸を侵略してきた四天王とその配下を討ち、黒幕たる魔王を滅ぼすために召喚された勇者。

 三人は一カ月前に大陸東部に壊滅的な被害を与えていた四天王の一角、風将ジュラヌスを仕留めた勇者一行である。

 彼らは今、大陸南部の大国スタグバールを征服した炎将リファーヴァントと対峙していた。


「オラァ!」

「待てっ」


 リファーヴァントの劫火が(かた)()した禍々しい大剣を、乱入した影が受け止める。

 炎将とは対照的な青い装束を纏ったそれは、しかし人間ではなかった。

 その肌は薄い水色。背には炎将と唯一似通った漆黒の翼。

 敵であるはずの勇者たちの窮地を幾度となく救ってきた相手でもある。


「アズール!?」

「お前、魔人か? 俺は四天王で、そいつらは人間だぞ?」

「分かっている。彼らを……殺させはしない」

「どうでも良いがよ。俺に歯向かって命があると思うな!」

「ぐっ――」

「撃ち抜け、『氷矛(アイススパイク)』!」

「効くかよ!」


 防御の上から蹴りを叩き込み、アズール(乱入者)を吹き飛ばすリファーヴァント。

 レミナの放った氷矛は巨体に見合わぬ俊敏さで躱し、更に駆ける。

 後衛を狙う炎将の前に立ち塞がったのは騎士。

 その隣にアズールが並びフォローに入る。


「コイツはぼくとクロムが止めるっ。ユイとレミナは攻撃に専念しろ!」

「『氷矛(アイススパイク)』!」

「『凍刃(フリーズエッジ)』ッ」

「小賢しい!」


 クロム(騎士)とアズールに連撃を浴びせながら、リファーヴァントは巧みに魔法を避ける。

 僅かに拮抗した戦況は次第に傾き始めた。

 まだ傷口も新しい騎士の隻腕に巻いた包帯に血が滲み、動きも鈍りだす。


「おいおい、もう終いか!」

「黙れっ」

「――最期なら」


 リファーヴァントの挑発に、クロムが表情を消した。

 無策に大きく剣を振り被る。

 当然その隙を見逃すはずもない。炎将の大剣がアズールの援護より速くその身を斬り裂き――。


「ッ、なんだ?」

「見せつけてやるよ、俺の意地を!」

「クロム!?」

「コイツ――!」


 止まらない。

 断たれた身体から血を溢れさせながら、それでもクロムは剣を振り抜いた。

 生命そのものを込めたような一撃が、咄嗟にリファーヴァントが構えた左腕を斬り落とす。

 そのまま剣を手放したクロムは、倒れながらも体当たりするように炎将に組み付いた。身を焦がされながらも、万力のような力で身動きを封じる。


「――、クロムの覚悟を無駄にするな! 『水撃衝(クライシスアーク)』!」

「神よ、その御威光を此処に……『殲虹(アウローラ)』ッ」

「……『魔葬剣(ブレイブクロス)』!!」


 アズールの声に応じて、動けないリファーヴァントに魔法が殺到する。

 どれも全力を振り絞って放たれた、今の三人に放てる最大の一撃だった。

 爆風が吹き荒れ、巻き起こった砂塵が視界を殺す。魔法で強化されている床と壁も余波で砕け、城全体が畏れるように揺れた。


「やったか?」

「――そうさな、雑魚呼ばわりは訂正してやるよ」

「!?」


 膨れ上がる圧倒的な気配。熱風が砂埃を払い、それ(、、)の姿を露わにした。

 そこにいたのは血色の毛皮を纏った四翼二尾の龍。落とされたはずの腕も二つ揃っている。


「なっ――」

「まさか俺が一回殺られるとはな。ああ、ジュラヌスの奴がやられたのも納得だ」


 龍は後足で立ち上がり、立ち竦む三人を睥睨してくつくつと嗤った。


「絶望したか? 良い表情(カオ)するじゃねえか」

「…………」

「一思いに殺してやっても良いが、まだ楽しめそうだしな」


 吐き捨てた火炎弾で神官(レミナ)を吹き飛ばし、防御の上から勇者(ユイ)を殴りつける。

 二人に意識の逸れたアズールを尾で打ち据えると、もう起き上がってくる者はいなかった。

 ちなみに風将と地将はさる事情から常に無理して第二形態を維持してるので

 勇者たちが第二形態を目にするのは今回が初めてです。

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