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幕間

お久しぶりです。幕間でございます。

今回は短め。

「ただいまぁ」

「ただいま」


 日が傾き、すっかり薄暗くなった穂高家の玄関が開く。戸を開けて入ってきたのは理人と榛名だった。家に誰もいないのは分かっていたが、なんとなく挨拶をしてしまう。


「ん?」


 しかし、理人が足元を見ると状況が違う事に気付く。そこには、綺麗にそろえられた雪駄。理人がふと、一瞬息を殺して家の中を探すと居間に見知った気配を感じ取った。


「やれやれ、だな」

「相手してくるといい、ご主人。僕は先に休ませてもらう」


 そういうと榛名は解けるように人から狐の姿へ変化し、音を立てずに玄関から2階へ上って行った。

 玄関に一人残された理人は、リュックサックを玄関に降ろすと、靴の紐を解く。くたびれた靴を並べて足で押して端に寄せると、理人は居間に向かった。静かな家の中に床が軋む音のみが微かに響く。

 居間の扉の前に来る。理人はノブを回してゆっくり扉を開いた。電気の消えた、薄暗い居間には沈んだ太陽に微かに照らされた空の赤色が窓から差し込んでいる。その居間の中央にあるテーブル。其処に突っ伏している人影。紅、白、黒が照らされて、その光景の中でそこだけが浮かんでいるように見えた。


「ツツジ」


 理人がそっと呟く。彼女は動かない。

 理人がそっと近づくと、躑躅の背中が規則正しく上下しているのが目に映った。顔にかかった髪をそっとどけてやると、真新しい涙の跡が目に入った。


「ツツジ」


 理人はもう一度言う。今度は彼女の肩を軽く叩いた。躑躅のゆっくりとした呼吸が止まり、ゆっくりと瞳が開いていく。


「……理人、お兄ちゃん?」


 躑躅が呟く。合っていなかった目の焦点がゆっくりと理人に合っていった。


「ああ。ツツジ、ただいま」


 そう理人が言うと、躑躅はゆっくりと椅子から立ち上がり、そっと、しかしどこか縋る様に理人の背中に手を回し、理人を抱きしめる。


「……お兄ちゃん」

「悪かったな、遅くなって。ただいま」


 そう理人が言うと、躑躅の腕の力が、ほんの少しだけ強くなったのだった。


「……うん、おかえり」


 そう呟く躑躅の目から最後の涙の雫が零れて、床に落ちて砕けた。


はい、と言う訳で幕間でした。理人君は帰るべき場所に帰って、これでようやく物語が次の章に進むことができます。

因みにエピローグから4日位後と考えて頂けると。

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