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虹屑の戦鏡譚  作者: 山鴎 柊水
序章 出会いと再開の地、姫様御一行の旅は始まってない!?
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Proelium part 1 アレンスの戦場で騎士は舞う


 明朝から全軍率いて出発するビフトレス王国軍。アレンスにはわずかな兵が残るのみで、ほぼ全軍を、この会戦に投入した。

 まだ芽すら出ていない農耕地を横目に重苦しい音が鳴り響く。

 先行するのは、ヘスティナを隊長とする近衛騎士隊。

 全員が騎乗し各々の手には、長い槍か、マスケット銃を装備している。

 それに対しヘスティナは、剣を2本腰に掛けているだけだ。

 優美に近衛騎士が行くところを後ろから志願兵中心のアレンス守備隊が付き従う。



 この時代、軍隊制度は徴兵制ではなく志願制である。それに加えて、大きな戦があると、傭兵が軍団の大半を占めることもある。それほど、近世にはいり軍事に莫大な費用が掛かるようになった。これにより、財政負担が重くなり、常備軍は縮小、志願制による狭き門となってしまった。

 ビフレスト王国も、それの例外ではない。王国軍は縮小の一途をたどっていた。皮肉にも、それが戦争拡大の要因となり、余計に戦費が増えることになるとは、この時は誰も考えないのだ。

 ビフレスト王国軍の常備軍は、各地方都市に配備された守備隊含め、各国境線に配備された国境警備隊。精鋭部隊でもあり王都と王家を守護する近衛騎士隊に分類されている。

 戦が起こるたびに、その3つの部隊から再編し、王国軍が組織される。

 今回の王国軍も、守備隊と姫を警護するためについてきた近衛騎士隊によって組織された軍団である。そうと言っても数は少なく400だ。

 アレンス守備隊の主力はマスケット銃の部隊である。アレンスという場所において、ここは最終防衛拠点であり、防衛に重きを置いた部隊である。そのために、アレンス守備隊は銃の訓練を中心に、防衛戦術を得意とする。ベストパルチッカ卿の籠城策も、このアレンスという土地柄ならではの策であろう。

 銃の扱いは、弓矢の扱いより容易であり、ただ火薬を詰めて引き金を引くだけの動作で、発砲が可能なため、技量が重視されてない点においても扱いやすい武器である。

 この当時の戦列歩兵は、銃を持ちながら行進、有効射程距離である100メートル以内に達したら、発砲を繰り返す。そして、両者どちらかが撤退するまで撃ち続ける。逃げも隠れもできないので死傷率が高く、この戦術が世界標準になっていた点においても、いかに近世は中途半端な時代であったか。

 さらにマスケット銃の命中率は恐ろしく低い。銃の反動に耐えられないという点も大きいが、たいてい射線がずれる。そのために猟銃は、また違う方式で銃が使用される。共に利点、欠点があるため、軍隊において使用するのはマスケット銃のほうが使いやすいため広く軍隊で使われているのだ。

 マスケット銃を装備したアレンス守備隊は、一人一丁持ちながら行進する。その後ろには馬に荷台をひかせ、銃弾や火薬、食料などを持ち運ぶ輜重隊が付き従う。

 これだけの重装備でも、兵力はわずか400程度しかいない。



 明朝出発し、行軍速度を維持しながら戦場になる予定の地へと赴く。理想的な場所を見つけるために、早くいかなければならない。


 本陣を置く地形を決めるために、イツキとヘスティナが馬に乗り先行する。

「見つかった?」

 走らせてばかりだと馬が疲れてしまうために、ゆっくりと歩かせている。

「今回は大砲持ってきてないから、なるべく地形で有利になるところを選ばないと、被害が大きくからな」

「あの作戦を聞く限りでは、多少なりにも高低差が必要ね」

 あの後、作戦は決定し、4人には教えている。部隊長には、内通者がいた場合も想定して、戦の直前に教える手はずとなっていた。

 地図でわかるのは、このあたり一面が荒野と丘があるという情報だけである。

 さらに、地図から詳しい地形を割り出す。そこから有利な場所を見つけ出すのだ。

 軍が出立する前にイツキは商人たちの話から、道筋の風景を聞き出して、ある程度は頭に入っているが、やはり見ないとわからない部分も多い。


 土地を念入りに見た結果、最適な場所が見つかった。400メートルほどの平たい面が続く。アレンス側には小高い丘が波のごとく横たわっている。街道沿いに木々が乱立し川が流れている。

「この場所で待ちかまえば完璧だな。あとは、ティナの近衛次第だ」

「近衛を舐めないでよ」


 ヘスティナは意気揚々と笑って見せた。

 そこから数時間ほど経過したところで、アイリスとスズ率いる全軍が到着した。アレンス守備隊、近衛騎士隊は丘の上に陣を築き始める。


 敵が来るまでの間、陣を築き準備が整った状況となった。


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