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虹屑の戦鏡譚  作者: 山鴎 柊水
序章 出会いと再開の地、姫様御一行の旅は始まってない!?
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Concilio part 3 将の役割と資質


 兵の駐屯所に向かっている最中の馬車でアイリスはイツキたちに相談をする。

「ここまで大見得を切った以上。やるしかないけど、どうすれば?」

 アイリスは堂々と宣言したのだが、それ以後は考えていなかった。そこからの役目は、部下の役目だ。大将というものが兵を引き入るもので、作戦を考えるのは部下の役目である。ということに、一度も戦場に出ていないアイリスは、勝手に悟った。

「さすが、お姫様。まったくスズとティナは、大した人物の下についたな」

 イツキは笑いながら感心する。それを誇らしげな表情を向けるスズとヘスティナだった。

「そこからは、俺に任せてくれ。とにかく、野戦だ。早く兵たちに命令させて陣を敷かないと、そのために、まずは姫様の出番だ。お姫様が堂々と兵隊に命令しろ。そこからだ。お前の言葉が、すべての士気に関わる。作戦は、そのあとにしろ。まずは心を掴め。それが将たるものの最大の務めだ」

「それが指揮官としての役目ですか」

「そうだ。歴史上には、賢い指揮官もいて、そいつらが自分で作戦も考えたが、基本指揮官、将軍というものは、どれだけ兵の士気を維持できるか、高められるかが鍵だ。逆に、それだけが仕事だと思ってもらってもいい」

「わたしにできるでしょうか?」

「できるから、任せたんだ。大丈夫だ。俺以上に良い指揮官だ」

 断定をするイツキ。

「そりゃ、イツキなんかに比べたら、アイリス様のほうが頼りがいがあるのは当然よ」

「さいですか。ティナも騎士を率いてやってもらうぞ」

「そんなの当然よ。すべてはアイリス様のために」

 スズも無言ながら力強く頷く。


「アイリス。お前は指揮官の器量がある。それはさっきの言い方を聞けばわかるさ」

 イツキとアイリスが出会って、まだ数時間。それでもイツキは、断定できるだけの材料があった。これはもう、その人の性格と関係する部分もあるが、それ以上に育ち、環境の要因も大きい。将として率いるものは、将としての才能がある。それは疑うところがないのだ。

「まずは、アイリスが、どうにかしてくれたら。あとは俺たちに任せろ。万事うまくいく。これで歴史に名が残るぞ。アイリス」

「そうです。アイリス様、あとのことは任せてください」

「アイリス様は、いつものアイリス様のままで大丈夫です。自信を持ってください」



 3人の言葉を聞き、アイリスは指揮官として駐屯所に訪れた。

 駐屯所では、すでに伝令が言っていたのか、兵たちが戦支度をしている。銃から大砲、剣から槍など装備を整えていた。

 そこでアイリスと登場と共に、一種の静寂な空気が流れる。

 アイリスの足音のみが響き渡るかのよう。小隊長人以上が集まっていた。他の兵隊は準備に勤しんでいる。

「みなさん、わたしが、あなたたちを指揮することになったアイリス・ビフレストです。若輩者ですが、よろしくお願いします。アレンスに危機が迫っております。最初は安全な籠城策で行こうとしましたが、私が異議を唱え、野戦にしました。籠城では、アレンスの農作物が採れなくなります。野戦をするのは、兵にとって負担が大きくなるかもしれませんが、それでも、民のことを考えたら、野戦が最適なのです。私たち王国軍は、民を守るために存在します……」

 その後、10分ほどの演説を見事に成功させたアイリス。前のほうから歓声を上がり、後ろまで波のように伝播した。


 アイリスは確かな手ごたえを感じた。突然の軍を率いる身になってしまう。普通に考えれば、あり得ないことだ。たかだか姫という身分さらには、女性という身分は将になれるほどの地位はない。

 滞りなく戦のために、準備が整う。すぐにでも剣矢の音が聞こえてきそうだ。


 とある詰所の中に、アイリス、スズ、ヘスティナ、イツキだけが集まる。机の上には、地図とチェスが置いてある。

「戦をする場所だけどな。敵の位置がもうそろそろ……」

 イツキが話を始めると、4人だけしかいない詰所に足音が3つ近づいてきて、扉があく。

「はぁ~い。イツキ。何か欲しい情報ある~?」

「金があれば何でも」

「死にたくなかったら」

 そして、エリザラ、ローレイア、ヴィアーナの三姉妹が入ってきた。

 顔を知らないスズは、入ってきた人物を警戒して剣を構える。アイリスは誰が入ってきたのかわからなかった。ヘスティナはもちろん知っているために落ち着き払っている。


「ようやく来たか、ちょうど作戦会議しようとしてたんだ」

 イツキは歓迎の意をしめしたために、スズは剣を下す。それでも、アイリスとは一定の距離を保つように細心の注意を払った。

「無茶なこというからでしょ~。朝ごろに私を置いて、食べられちゃうかと思った♪」

 長女エリザラはウィンクと共に投げキスを送る。

「馬代が高かったんだから、請求はしっかりと」

 次女ローレイアはため息がてら、手には請求書を持っていた。

「こ、こわかったです。殺されるかと思いました」

 思い出したかのように、ぶるぶると震えている三女ヴィアーナ。

「イツキ、この三姉妹に何を頼んでいたの?」

 唯一、事情を知るヘスティナが聞く。ちょうど反乱軍の近くを通りかかる所で、密偵として長女エリザラと三女ヴィアーナを残していて言ったのだ。

 昼ごろにアレンスに着いたら、次女ローレイアは急ぎ馬を新しく入手して彼女らの元へと駆けつけ、今夕方となり、日が沈みかける頃合いに戻ってくることが出来た。

 日数を考えると強行軍的な偵察をしたのだ。

「かんたんにいうと、おそらくだけど、敵はこの位置で陣を張るはず。だから、明日の行軍速度と考えると、このあたりね」

 黒のキングを地図上に置く。ボーンをキングの周りに全部で10個配置する。

「この位置だと、アレンスまで一日半ぐらいか。だから、俺たちは明朝に、移動を開始、昼までに、ここに陣を張る」

 イツキが白のキングとクィーンとルークを置く。

 通常考えるなら、クィーンがアイリスになるだろうが、この場合は違う。キングがチェスにおいて最大の駒であり要である。

 そのために、アイリスとイツキがキング。ヘスティナがクィーン。スズがルークの役割を持つ。地図にチェスを置くのはイツキの趣味である。

「この位置は、荒野と丘ばかりで、森林が生い茂ってないからちょうどいいな」

 地図を見ると、東側には川があり、そこには木々が生い茂っている森林地帯がある。森林と荒野の境目に街道が通っている。西側には荒野と丘が広がっていて見渡しのいい場所である。



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