Ⅳ章:勇者の休日
「ただいま」
「ただいま~」
「お帰り。ご飯にします?お風呂にします?それとも、オ・レ?」
「キモイ」
「いやぁ、定番だと思ってぇ」
「思っても、実戦すんな」
あの会談から二日が過ぎ、すっかりここの暮らしにも慣れつつある。
「それにしても大変そうだな?」
「あぁ、イーリスか。まぁな。まさか、国の頭首になるなんて思わなかったからな」
会談の正式な国王選定式典が行われ、真架は真相で敵将を討ったこと、勇者たちをまとめる立場だということでその国王・シャロームから国の頭首に任命されたのだ。
主な頭首の仕事は軍事資産全般の管理、軍隊の指揮権、および戦時中の大将。他にも細かな仕事があるが、大きく上げるのはこの三つである。そのことは早い段階で理解した。
唯一、疑念を抱いたことがあるとすれば――――――
(俺が頭首になることに、あの六人がよく反発しなかったな……)
まぁいいか、と真架は気を持ち直した。
「さっきも姫様や大臣たちと会議してたんですもんね」
真架の後ろから顔を覗くのは頭首の補佐官に任命されたシャミームだ。
「おい、光希。補佐官、コイツと変わってくれ」
「何でなの!?」
「シャミが使えないわけじゃないんだ。ただ、補佐官として会議に連れて行けるのが一人だから、こういうのに得意そうな光希の方が百倍使えると思っただけだ」
「それ、私のことを使えないって言ってるのと一緒だよ!」
真架の言い分に憤慨するシャミーム。
余談ではあるが、仲間内で『シャミームと呼ぶのは長いから短くしよう』となり、全員がシャミと呼ぶようになった。
「無茶言わないでよ。オレがそんな会議に入っちゃったらすごく反感買っちゃうよ。主に頭の出来の違いで」
「お前、ホントそう言うのいいから」
ドヤ顔の光希に真架は呆れ顔でため息を吐いた。
「そう言えばイーリス。お前、なんだかんだ言ってその格好気に入ってるんだろ?」
「そ、そんな訳あるか!」
イーリスの格好は光希から渡され強制的に着せられることになったメイド服を着用している。
「でもここ二日間、文句も言わずによく着てるだろ?」
「こんな丈の短いスカート穿かされて気分がいいわけないだろ!」
「それがいいんです!オレはもう着てくれただけで大満足です。しかも、イーリスちゃん、思ったよりお胸があって、ワタクシ、興奮いたしました!」
「「「黙れ、変態」」」
「ん?彩羽、居たのか?」
「心外です。ワタシはずっとここに居たというのに」
感情表現が希薄なためか、気配を感じにくいのだ。
「随分と流暢に話せるようになったな」
「今もイーリスに、話し方教わった」
「何だか話しずらそうだったから、少しね」
「出生が特殊だしね。それに、あまり人とも話したことがないから、感情も希薄になるわけだよ。コミュ障乙ってやつ?」
「本当に心外です」
「お前だけには絶対言われたくない」
光希の腹の立つような主張にツッコミを入れ、真架は彩羽の頭を優しく撫でる。
「あの無感動な話し方からよく成長したよ。素直に偉いと思う」
「ん……♪」
撫でられた彩羽は静かに高揚した。
「オレも撫でようか?」
「必要ありません」
「拒否られた!?」
「「当たり前だ」」
「シャミちゃん、皆がイジメる!」
「自業自得ですよ」
光希は全員から爪弾きに会い隅で体育座りをした。
「それよりも、お前ら仲良いよな」
「うん。ワタシとイーリス、仲良し。この中でも一番」
「まぁ、そうかもしれない……かな」
「イーリス、照れてるのか?」
「ば、バカ言うな!」
「でも、こうしてみると姉妹みたいだな。イーリスがお姉ちゃんだな」
「な、何を言うか!」
「ワタシも家族、憧れてた。イーリスお姉ちゃん?」
「――――――!お、お茶入れて来る!」
そう言うと、イーリスは顔を真っ赤にして足早に去って行った。
「イーリスは照れ屋だな。そう言えば他の奴は?」
「ジャックさんとカグヤさんはイーリスに頼まれて買い出しに行ってる」
「一番頼んじゃいけないチョイスだろ、それ」
「晴代ちゃんとローさんは立ち合い稽古するって言ってたよぉ」
「そうか。で?お前は何してるんだ?」
「オレは稽古用木刀・木剣・木槍および弓を作ってたんだよ」
真架は光希の傍に立て掛けられている木で作られた作品を見て納得する。
「器用だな」
「そんなことないよ。オレとしてはこの『千手千眼観自在菩薩』1/3サイズの方が神経使ってすごく大変だったよ」
「何作ってんだよ」
光希の掌には作ったとは思えないほど精密な出来栄えの千手観音が乗っていた。
「凄いな。でも、何でそんなもの作ったんだよ?」
「暇だったから♪」
光希の顔に真架の五本の指がめり込む。
「よく俺を目の前にしてそんなことが言えたな。褒めてやるよ。だから死ね!」
「ちょっと痛いって!ホント、めり込んでるから!穴開くって!ストップ!ちょっと、ストップ!」
仕方ないので、と真架はアイアンクローを解除してやる。
「すごい痛かった……って、ちょっと血がにじんでるよ、コレッ!ホントに遣る気だったでしょ!」
「こんなにムカついたの本当に久しぶりだよ」
真架が光希を見下していると、シャミームが真架の傍に寄ってきた。
「だったら、私と今からどこか出かけようよ。この後は何もないから。ね?」
「ん?まぁ、別にいいけど」
「え?何、デート!いつの間にそこまで進展してたの!?」
「この木刀。お前を撲殺するには十分だよな?」
「冗談が過ぎました」
土下座をする光希に真架は頼みごとをすることにした。
「なら、少し頼み事したいんだけど、暇だからいいよな?」
「別にいいよ、暇だから」
「この書類に今のエルレランの行ってる政策がまとめてあるんだ。これは必要ないとか、これはした方がいいとか、新しい案を出したりとか、お前得意だろ?してくれないか?」
「いいよ。貸してぇ」
真架は光希に書類を渡すと、光希はそれをパラパラと流し読みする。
「なにこれ、オレから言ったらこれ全部いらねぇ。無駄が多いよ。ここの大臣は何やってるんだよ。オレの知識と過去の偉大な賢人たちの知恵をフル活動してあげるよ。『生きるウィキ』の二つ名、舐めるなぁ!」
「ほどほどしろよ。暴走しだしたら止めてくれよ」
「分かった」
燃え出した光希の手綱を彩羽に任せる。
「で?どこ行くんだ?」
「街の方に行きませんか?」
「いいけど、案内しろよ」
「任せてよ」
真架とシャミームは二人で城下の街に繰り出すことになった。
*
「結構、賑やかだな」
真架が街の様子を見て最初の感想だ。
「でしょ。いろんなお店があって賑やかなんだよ」
「あぁ、最近戦争があった国とは思えないな」
皮肉めいたことをシャミームに言う。
「うん。確かに戦争はあったけど、敵の進行は街に入る前に皆が何とかしてくれたし、それにお店をそう何日も休ませるわけにはいかないよ」
「だな。どこか行きたい店でもあるのか?」
見渡してみるが、店の種類は豊富だ。
ここまでいろいろあるのし、街に行こうと誘ったのだ、シャミームは何か目的があったのだろうと真架は推理を立てた。
「ううん。見るだけだよ。でも、いいものがあったら買おうかな、って思ってるよ」
「そうか」
真架とシャミームは街の中を並んで歩いて行く。
話は変わるが、勇者である七人のエルレラン王国の発展度に対して様々な意見を持っている。
真架は『建物作りや政治的な面でみると中世的だが、道具発展で見ると自分の世界に近い』と言う見解。
光希は『全体的な発展は明治維新に毛が生えた程度』と言った。
迦具夜と晴代は『自分の世界よりも発展している』としていたが『戦の有無』では意見が分かれていた。
ジャックは『政治の方向性は違うけど、自分の世界にいるみたいな雰囲気がある』と称した。
ローランは『建物の作りや政治は自分の世界のものとほぼ同じ。だが、道具に関しては自分の世界よりも大分先を行く』とした。
そして彩羽は一言に『自分の世界からしたら、他の時代はすべて原始的』と柄に似合わない意見を持っていた。
それでも七人とも最後は『魔法と言う異分子は面白い』と言う見解を示した。
この世界には様々な魔法が存在するため飽きないし、戦いも楽しむことが出来る。
だが『戦いを楽しむ』の見解は半々に分かれたが。
真架は彼らの人間性に面白味を覚えながら歩いていた。
すると目の前から真架とシャミームにとってとても見知った者がやってきた。
「あれ?真架とシャミじゃないですか」
「こないところで何をしておるのじゃ?」
ジャックと迦具夜は牛車の荷台から声を掛けてきた。
「そう言うお前らは…………あぁ、イーリスに買い出し頼まれたんだっけ?」
「そうなんですよ。暇なら買い出し行ってきてくれ、って言われまして」
「あの女中は人使いが荒いのじゃ」
「そんなこと言わずに」
迦具夜が愚痴を溢し、ジャックはそれを宥めていた。
「それで、二人は?」
「他行かえ?」
「悪いけど、今は光希も彩羽もいないんだ。お前の時代の単語なんて知らねぇぞ」
「散歩、って聞きたかったんじゃないですか?」
「そうか。まぁ、そんなところだ。すぐ帰ると思うから」
「分かりました」
真架とジャックが業務的な話をしていると、牛車―――もとい牛の周り子供が集まっていることに気付いた。
「わ~。すごいおおき~い!」
「かっこいい~!」
「おウシさ~ん!」
「乗ってみるかえ?」
「「「いいの~!」」」
「うむ。妾は一度言うたことは破らぬのじゃ!ほれ、じゃっく!子供たちを乗せてやるのじゃ!」
子供と戯れていた迦具夜はジャックにあたかも当然のように頼んだ。
「大変だね」
「かれこれ五回目なんですよね、このやり取り」
ジャックは荷台から降りて、子供を一人抱き上げて牛の背に乗せた。
「落ちないようにしっかり捕まってくださいね」
「わ~、たかい、たかい!」
優しく微笑んでいるジャックを見ていると、彼がサイコキラーであることを忘れてしまう。
そのぐらい豹変ぶりが激しいのだ。
「じゃあ、俺らは行くから」
「はい」
「気を付けるのじゃぞ」
「バイバイ!」
シャミームは二人に手を振ってから、先に行く真架の横に駆けて行った。
「意外だったね」
「何がだ?」
「あの二人が子供にやさしいなんて……意外な一面を見ました」
「確かに意外っちゃ意外だったな。でも、子供にやさしいのは普通だと思うぞ」
「あっ、そうだ」
シャミが思い出したようにつぶやいた。
「ねぇ、真架。私、行きたいところが出来たんだけど、ついて来てくれる?」
「ん?別にいいけど……」
案内する、と先を歩き出したシャミームのあとを真架は大人しく付いて行った。
*
「何だ?学校か?」
シャミームに連れられてやってきたのは修道院のような背の低い建物。
真架が学校と判断したのは、狭い土のグラウンドに子供たちが元気に走り回っていたからだ。
今の時間は昼頃だから昼休みだろう、と考えたのだ。
「ううん。ここは孤児院だよ」
真架の問いにシャミームは寂しげに答えた。
「孤児院?」
「うん。……あっ、先生!」
シャミームは子供たちの中に居た高齢の女性を見つけて、彼女のもとに駆け寄って行った。真架はゆっくりとその後を追う。
「あら、シャミームじゃないの」
振り返る先生は苦労が祟ってかかなり老けている。けど、優しそうな老け方だ。
先生は左手の甲を擦りながら返事した。
「来るなら連絡をくれたらよかったのに」
「ううん。ただ近くに来たから、立ち寄ったんだよ」
「そう。……で?そちらは……彼氏さんかい?」
「ち、違うよ!」
唐突な先生の冗句にシャミームは顔を真っ赤にして否定した。
「この人は『勇者』さまで、新しい軍の頭首なんだよ」
「そうでしたか。初めまして、ここの院長のフィリム・ラスカです。シャミームがお世話になっております」
「百鬼真架です。本当にシャミには世話を焼かされます」
「真架ぁっ!」
「本当の事だろ?」
「違うもん!私だって役に立ってるもん!」
「ヘぇ~?いつ役に立ったのか、教えてほしいものだな?」
「み…………」
「道案内は当然だろ?俺らはこの世界の住人じゃないんだ。右左も解らない奴に道を教えるのは義務だ。それを棚には上げたくないな」
「え、ええと……………」
「ほら、ないじゃん」
「ぐぬぅ…………」
挑発的な真架にぐうの音をならせて、さっきとは違う意味で顔を真っ赤にさせた。
「もういいよ!先生、私も子供たちと遊ぶ!」
「子供に八つ当たりするなよ」
「しないよ!」
そう言ってシャミームは小走りで子供たちの中に入って行った。
フィリムは愉快そうに微笑んでいた。
「あの子はね、まだ赤子のときに門の前に置かれていたのよ」
フィリムは懐かしそうな眼差しでシャミームを見つめている。
「あの子にとってここは実家でもあるのよ。でも、経営難でね、本当は去年には潰れているはずだったのよ」
「でも潰れてない。それって、アイツが王宮で働いているからか?」
シャミームは自分の給料をこの孤児院の経営に充てているのだろう。
真架は孤児院を見渡す。
建物は年期が入っているがしっかりとした立派なものだ。グラウンドの端に置いてある数々の遊具はペンキが剥げ、それでも大事にされている。元気に遊んでいる子供たちは皆健康そうである。
「これも、アイツのおかげ、ってわけか」
「もういい、って言ってるのね。月末になると食費だと言って大金を渡してくるの。子供たちに送りもしてくれて、私も感謝しているけど、なんだか悪くて……」
「それがアイツなりの恩返しなんだろうな」
真架は子供たちと戯れるシャミームを見つめた。
「さっきは厭味なことを言ったけどさ、実際、すごく助かってる。シャミがいろいろ教えてくれるから出来ることもあるんだ」
「そうですか………」
フィリムは真架の方を振り向くと深く頭を下げた。
「どうか、あの子、シャミームのことを守ってあげてください」
「………それは約束できない」
真架はそれに厳しく言い放った。
「こういう時代なんだ、殺られるときは殺られる」
「そうですね……………………」
「第一、俺は頭首なんだ。誰か特定の人物を守ることはしない。全部守るんだよ。それが頭首ってものなんじゃないか?」
真架はフィリムにそう告げる。
フィリムは微笑みながら「えぇ」と答えた。
そして、もう一度、真架はシャミームを見つめた。
無邪気に戯れるシャミームの笑顔を。
*
「それじゃあ、先生。バイバイ、みんな!」
『バイバイ、シャミおねえちゃん!』
「元気でね、身体には気を付けるのよ」
「分かってるよ~!じゃあね、先生!」
シャミームは笑顔で手を振って、孤児院を後にした。
そして、真架もフィリムに近づいた。
そして、小さく耳打ちした。
「アンタも歳だし………無理はするなよ。傷つくのはアイツなんだ」
「…………!……そうね。ありがとう。気を付けるわ」
真架は先の方で待っているシャミームのところに寄った。
「何を話してたの?」
「シャミはまだまだガキだな、って」
「何を話してるの!」
シャミームは気付いてなかったみたいだが、真架は気付いていた。いや、シャミームも本当は気付いていたのかもしれない。
フィリムは真架やシャミームと喋っているときもずっと左手を擦ったり・揉んだりしていた。
おそらく、手がむくんでいたのだろう。
詳しくはわからないが、手のむくみから来る症状には肝臓や腎臓に病気がある可能性がある。さらには心臓病の恐れもある。
この世界にはしっかりとした医療がない。直すのも困難だろう。
「ねぇ、私に付き合ってくれてありがとうね」
「いいよ。どうせ最初からあそこに行く気だったんだろ?」
「さぁ?」
とぼけた返事を返すシャミームに真架は微笑んだ。
「あそこに居るのはね、みんな親に捨てられた子なの。だからね、みんなが家族なの。私の大切なものなの」
そして、シャミームは真架の顔を覗き込んだ。
「本当によかったの?元の世界に帰らなくても?」
「別にいいよ。それに、俺にも家族なんていないんだからな」
「え?真架も孤児なの?」
「いや、兄弟が居たし、それに………いや、取りあえず孤児ではない」
「そうなんだ。でも、それならなおさら帰った方がよかったんじゃないの?他の皆みたいに待っている人がいないわけじゃないんだから」
シャミームが言ったことは本当である。
光希はすでに独り立ちしており、両親も放任主義らしく気にしないと言っていた。
ジャックは人殺しで追われている身であり、表には出なかったが両親も手に掛けていたらしい。
晴代は親から嫌われていたため、旅に出させ事実上捨てられている。
迦具夜はすでに別れを告げており、今更帰れないと言っていた。
ローランは既に戦死したことになっているため帰ることは出来ないらしい。
彩羽は言わずもがな周りに人間がいないため孤独になりたくないからと言った。
そして、真架は――――――
「居ないさ」
「え?」
「俺は殺したんだよ…………実の弟をな」
「ッ!?」
真架の言葉にシャミームは驚愕の色を浮かべる。
「何で?」
「関係ないよ、お前には」
真架は寂しげな表情で告げた。
「だから、あの世界にもう俺の居場所はない………待ってる奴もいない」
真架はシャミームから目を逸らした。
「それ、ウソだよ」
「お前に何が分かるんだよ」
「分からないよ。分からないけど、待っている人がいない、って言うのはウソだって誰でもわかるよ!」
シャミームは真架に迫り真架の手を両手にしっかりと握りしめた。
「人は一人じゃない。きっと向こうにも真架を待ってる人はいるよ」
真架は覗き込んでいるシャミームの目を避ける。
「それに居場所はあるよ」
「どこにだよ」
「ここだよ。この国が、あの勇者部隊が真架の居場所だよ」
「ッ!?」
シャミームにとっては当たり前のことを言ったのだろうが、真架にとってその言葉は心を撃たれる一言だった。
基本的に真架は他人を信じない。
それはある事件が切っ掛けなのだが。
その為、初めての相手には極力自分の本当のことを話さない。
それは数日たった今でも同じだ。
他の勇者たちとも親しげには話しているが、心の奥底には『疑い』がこびりつき、まだ彼らには自分の力を見せていない。
元の世界にも本当の事を話した人なんていない。
だからか。そのような言葉を掛けられたのは真架には初めての事なのだ。
「信じていいのか?」
「え?」
「俺は他人を百パーセント信用なんてしない。それでもいいのか?」
「いいよ。私たちは裏切らないよ。だから、一緒に居よ」
シャミームは手を差し伸べた。
「………はぁ。お前は俺たちに元の世界に帰ってほしいのか、ここに残ってほしいのかはっきりしろ」
「何言ってるの。私は皆に残ってほしいに決まってるよ」
「なら頻りに聞くな。俺らは戻らねぇよ。少なくとも、俺の役目を置いてはな」
真架は差し伸べられた手を握った。
「帰るぞ。光希に政策の事を全部任せたら、大変なことになりそうだ」
「だね。じゃあ、帰ろっか。こっちだよ」
「ちょ!引っ張るな!」
和かな表情で真架はシャミームを見つめていた。
(手を引かれるのも、悪くないかもな)
真架はシャミームに手を引かれながら、王宮に帰ったのだった。
*
「ただいま」
「ただいま~」
「お帰り。ご飯にします?お風呂にします?それとも………」
何だかこのやり取り数時間前にも聞いたな。
真架は光希の行動に呆れ顔になる。が――――――。
「たった今入った最新の情報を聞きます?」
「「――――――」」
真架は気を引き締める。
「他の奴らは?」
「先に会議室に行ってるよ」
「よし。俺らも行くぞ」
真架は踵を返し部屋を出ようとする。
「そんなことより、デートどうだった?」
「その口は会議室ついてから開け」
真架たちはそのまま会議室に向かった。




