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遺跡侵入作戦(2)

 よし、目が覚めたぞ。

 俺の目の前には、奥深い森が広がっていた。こここそが、今回のターゲット──『ヒムカの祭壇』の眠る遺跡である。


 巫女(みこ)ちゃんによると、『ヒムカの祭壇』は、アマテラスが統治していた時代の重要拠点だったらしい。この遺跡を攻略することで、今まで以上に精度の良い遺跡攻略が可能になるという。

 しかし、それだけに待ち構えている敵も強大な訳で、これまで以上の心構えが必要なのだ。


 さて、まずは巫女ちゃんに、遺跡のレクチャーをしてもらおう。


「皆様、この『ヒムカの祭壇』について、わたくしが知っていることをお伝えします。まず、覚えていただきたいことは、この祭壇は地上だけでなく、地下構造を持つことです。祭壇のコアのあるのは、地下三階より下なのです」

 え~、地下かぁ。何か、面倒臭そうだな。

「地下ということは、ダンジョンか何かになっているのでござるか?」

 まず意見を出したのは、剣士サユリさんである。

「はい。関係者以外のモノ(・・)を遠ざけ、祭壇を清浄に保つためです。ここの地下には清涼な地下水の水源が眠っているのです」

 巫女ちゃんが付け加えてくれた。

「巫女ちゃん、地下って言うことは、そんなに広い場所じゃないっすよね。地下階で戦うことになると、身体の大きなサンダーやブレイブ・ローダーは使えないっす。ましてや、巨大ロボのブレイブ・サンダーなんて、地下に入ることさえ出来ないってことっすよね」

 俺は、少し慌てて、そう訊いた。

「はい、勇者様。地下は狭いダンジョンになっていますので、サンダーが入り込んで戦うのは難しいと思いますわ」

 う~ん、やっぱりダメか。俺は腕を組んで黙りこくった。今まで、大事なところは、サンダーやブレイブ・サンダーに頼りっきりだったからなぁ。俺が考えていた戦略から、大型メカが消えた。

「大丈夫ですよ、勇者様。ダンジョンの構造は覚えていませんが、わたくしの探知魔法で、勇者様達を祭壇までお導きします。勇者様なら、きっと祭壇を浄化して下さると信じていますわ」

 巫女ちゃんは、にっこりと微笑んでそう言った。


(ううう、巫女ちゃんの純粋な瞳が眩しい)


 俺は、焼けつく太陽にさらされた吸血鬼の気持ちが分かるような気がした。

「巫女殿、もしかして、通路も狭いのでござるか? それがしの剣が振るえないかも知れないでござるか」

 サユリさんも、重ねてそう訊いた。

「そういう通路もあるかも知れません。でも、敵にも長物を使う戦士がいるかも知れませんでしょう。サユリ様は、その時に頑張って下されば良いのではないでしょうか」

 サユリさんは、巫女ちゃんがそう言うと、胸をなでおろした。我チームではルーキーだが、異世界の元勇者達の中でもトップクラスの実力者だ。彼女の働きを封じられるのは、正直言って辛い。

 俺も、手持ちの『勇者の木刀』が使いづらい場所があると、戦うのに困るよね。

「あははは。狭くて戦えへんのなら、壁を崩して広げりゃぁええんちゃうか。うちが、なんぼでもやったるで」

 また、くノ一のシノブちゃんが、乱暴なことを言い始めた。

「くの一クンは、いつも乱暴だな。それより心配なのは、幻術系(・・・)の魔法だな。ダンジョンとなると、迷わされると厄介だね。それから、ガスや窒息にも注意しないとならない。灯りだって要るし」

 さすがはミドリちゃん。よく分かっている。魔導師の肩書きは伊達じゃない。

「そんな時の事を考えて、拙者は地上からサポートするでござる。そのために、地中探査レーダーを新たにインストールしたでござる」

 彼こそが、可変ビークルロボのサンダーだ。今回は地上戦を主に戦ってもらうつもりだが、電子センサーでサポートしてもらえるのなら心強い。

「巫女ちゃん、アマテラスの祭壇のコネクトプラグは地上にも出ているの?」

 俺は、サンダーの支援が期待できそうなので、巫女ちゃんに訊いてみた。

「ええ。多分あると思います。しかし、そう安々とは接続できないかも知れません。大丈夫ですか、サンダー」

「拙者なら大丈夫。地上の敵は、地下には通さないでござる。ここは、拙者にお任せあれ」


(やっぱりサンダーは頼もしいな。地上はなるべくサンダーに任せて、俺達は急いで地下の祭壇に行かなけりゃ。ここは囮作戦かな?)


 俺がそう考えていると、

「なら簡単やね。正面突破で建物に突撃や。なんも問題あらへんがな」

 と、シノブちゃんが、また物騒なことを言い始めた。

「俺は、サンダーを囮にして、なるべく無傷で本隊をダンジョンに潜入させたいんだ。荒っぽい方法は、今回に限っては、なしだよ」

 俺は、きっぱりとそう言った。それでだろう、シノブちゃんは、物足りなさそうに、

「ええ~、そんなんつまらんわぁ」

 とゴネた。相変わらず、この人は……。

「シノブちゃんまで地上に残したら、戦力が大幅減だよ」

「勇者さん、それは殺生やで。地下で出てくるかどうか分からん敵を待つより、どんどん押し寄せてくるのをなんぼでも殴って良いんやで。うちは、地上戦に使って欲しいわぁ」

「いやいやいや、勇者クンはくの一くんに期待してるんだよ。気持ちは分かるよ。でも、何のかんの言っても、君も大きな戦力なんだからね」

 ミドリちゃんが、そう言ってフォローしてくれた。

「そ、そうか? ん~、なら地下に潜ってもええかな。へへへ、勇者さん、期待してや」

 あ~~~、やっとシノブちゃんの機嫌が治った。毎度毎度、面倒臭い人だ。


「じゃぁ、作戦を説明するっすね。まず、サンダーが単独で先行して、敵の注意を引き付ける。その間に残りの人員で、こっそりと遺跡の地上施設へ進入する。侵入したら、巫女ちゃんの探知魔法で行き先を支持してもらいながら進む。後は臨機応変に対応すること。良いっすか?」

 俺がそう言うと、

「勇者殿。地上の戦いは、サンダー殿一人で大丈夫でござるか? 今までも、地上の敵兵にすら手こずっていたでござろう」

 と、サユリさんが疑問を挟んだ。

「そうかも知れないけどぉ……どうしようか」

 俺は、サユリさんのその言葉で行き詰まってしまった。

「はいはいはいぃー、やっぱりうちが残るんでええと思いますー。地上の雑魚なんか、うちが一人で綺麗に倒したるわ」

「だからぁ~、シノブちゃん。さっきも言っただろう。シノブちゃんには、一緒に地下に行って欲しいって」

 相変わらず、派手なことがしたいシノブちゃんを、俺は窘めた。

「えー、つまらんわぁ」

「それじゃぁ、流星号を置いていくのはどうかな。同じ勇者ロボットだから、サンダーとの連携も取れるかも知れないし。ね、くの一クン」

 ミドリちゃんが、新たな提案をしてくれた。


(流星号かぁ……。まぁ、あいつなら、別に地上に残しても構わないかな。地下で邪魔になっても困るし)


「うーん、流星を置いてくのかぁ。別に構わんけど。サンダーさん、流星のやつ、邪魔にならんとええんやけど」

「姐御、ここはオイラに任せておくんなまし。サンダーの旦那と組んで、地上の魔獣は一掃してやるぜ」

「そうかぁ。なんや心配やなぁ。お前、くれぐれもサンダーさんの邪魔はすんなよ。うちの面子がかかってるからな。しっかり働かなあかんで」

「合点承知だ。この流星号にお任せあれ」

 と、件のバイクロボは、大きく胸を張った。

 シノブちゃんは心配そうにしていたけれど、俺も同じように心配していた。コイツにサンダーのサポートを任せてしまっても大丈夫なのか?

「それじゃ、オイラは、殲滅用兵器のオプションを装備してきますぜ。旦那に姐御達、地上はオイラに任せておくんなまし」

 と言って、流星号は意気揚々とブレイブ・ローダーの整備ユミットに消えた。

 あー、ますます不安になる。

 俺は、小声でサンダーに言っておいた。

「なぁ、サンダー。流星号が邪魔だったら、適当に盾に使っていいからな」

「大丈夫でござる。アヤツには『鉄砲玉』になってもらうつもりでござる」

 サンダーも、同じように思っていたらしい。しかし、『鉄砲玉』かぁ。いつまでたっても報われないやつだ。俺は、流星号のことが少しだけ可哀想になった。


 しかし、そんなことより、遺跡の攻略の方が大事だよね。ここは、頑張っていくぞ!




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