①発信源
科学は人の暮らしを豊かにしてきた。
今日、科学の人類にもたらす恩恵というものは、
まるではかり知ることもできない。
人は脚が遅くとも、力が弱くとも、
耳や鼻が利かなくとも、淘汰されることが無くなった。
さて、科学の進歩は人類を進化させたのだろうか。
それとも退化させたのだろうか。
人類の未来を栄えさせるのだろうか。
それとも滅ぼすのだろうか。
しかし、どちらにしても、まったく、
人類の進歩は、科学の進歩と共にある。
ボタン一つで風呂が沸き、設定ひとつで冷水から熱湯まで好きな温度の水が出せる。
それだけのことでも、昔と比べたら今はとても恵まれた環境にあることだろう。
昔はお湯を沸かすだけの為に、わざわざ水を容器に入れて薪に火をつけて、火加減の調節まで自分たちでやらなければいけなかったというのに、今やヒートポンプなどの技術により、お湯を出すのには火を使わない場合も珍しくない。
いや、火も使わないというのは違うかな? 未だに我々の電力というものは、その多くが燃料を燃やすことで作られている。だから電気を使うということは、間接的に火を使っているということである。
――なんて、物化なら言うかもしれない。
「和くん、いる?」
「わあっ! 何ですか急に?」
何の前触れも無く、澄奈央さんが浴室の戸を開けた。
「急に戸を開けないで下さいよ」
「あ、ごめんね。ひょっとして考え事してた?」
考え事をしていたのは間違いないが、そういう問題じゃない。
僕にも普通の高校生程度には、異性に裸を見られるのが恥ずかしいと思うくらいの羞恥心がある。
しかし澄奈央さんにそれを説明するのは――なんというか、奇妙な気恥ずかしさがある。例えるならば、幼い子供と一緒に見ていたテレビドラマが、急にベッドシーンに切り替わってしまった時の親の心境、とでも言うのだろうか。
もちろん僕は親ではないし、澄奈央さんのことを子ども扱いしているわけでもない。それに、子ども扱いをされているのは断然僕の方である。
「それで、何か用事ですか? お風呂ならもうすぐあがりますけど」
「ううん、お風呂はゆっくり入っていていいんだけど。和くんは、次の土曜日は何か予定がある?」
「次の土曜ですか? それなら、特にありません」
「そう。良かった」
中間テストは終わったし、期末テストはまだ遠い。部活やクラブに所属しているわけでもないので、週末はたいてい家や図書館で読書か趣味の自転車である。
「実はね、次の土曜日に、和くんと一緒にお買い物に行きたいと思って、」
「買い物――ですか?」
これはどういった提案なのだろう。服を大量に買い込むから荷物持ちについてこい、なんてことだとは、澄奈央さんに限っては考えにくい。
「うん。お父さん――富義伯父さんにね、プレゼントを買おうと思うのよ」
澄奈央さんがそう言って人差し指を立てた。
「ほら、今度の日曜日は『父の日』でしょう? この間の母の日は、まだ引っ越して来たばかりだったからどうかなって思ったけど、もう和くんもここに来て一ヶ月以上は経つんだし、一緒にプレゼントを選ぶくらいのことはしても良いでしょ?」
「はあ。澄奈央さんのお願いとあれば、協力するのはやぶさかじゃないですが、伯父さんにプレセントですか。でもそれなら、ただの親戚の僕が選ぶより、澄奈央さんが一人で選んだ方が伯父さんも喜ぶんじゃないですか?」
伯父さんの澄奈央さんに対する親の愛情は相当のものだ。中学、高校時代に澄奈央さんに恋人の一人もできなかったのは、裏で伯父さんがお節介を焼いていたからだと、伯母さんから少し聞いたことがある。
そんな絵に描いたような親バカ父さんなのだから、僕がとやかく言うよりも娘からの心のこもったプレゼントが世界で一番の贈り物に違いない。
「そんなこと言わないの。親戚だって立派に血のつながった家族なんだから、」
「じょ……冗談ですって」
あまり見られると恥ずかしいんだけど……。
「それにね」
穏やかな口調に戻して言う。
「私は、家族の形って一つじゃないと思うわ。法や決まりの話じゃなくてね。家族っていうのは血の繋がりだけじゃなくて、例えば、自分を一番身近で一番親身に思ってくれる人たちのことも言って良いと思うの」
「……そうですね」
批判も否定の余地も無い。これが澄奈央さんという女性である。
「それじゃあ、土曜日ね。それまでにどんなものをプレゼントしたいか考えておいてね」
返事をすると、澄奈央さんはやっと戸を閉めた。
風呂から脱衣所に出て、僕は体重計に乗った。
電源を入れて足を乗せ、二秒ほどで電子音が鳴り、液晶の数字が点滅する。
57.8キロか。少し増えたのかな? 最近は雨であまり自転車に乗っていないから、その分が体重に出たのかもしれない。まあ気にするほどの変動ではないけど。
「ああそうそう、それからね、」
「ええぇっ!?」
脱衣所の扉が開き、再び澄奈央さんが現れる。僕は慌ててバスタオルで体を隠した。
「こ……今度は何ですか?」
「あ、体重測ってたの? どう? 何キロだった?」
澄奈央さんが僕の足元を覗き込む。
「えぇ~57.8キロ~。和くんは身長高いんだから、もっと食べないと駄目だよ」
「いや、平均身長よりほんの少し高いくらいですって」
普段何事にも動じない澄奈央さんだが、体重のこととなると少し目の色が変わる。
「そんなことより、まだ何かあるんですか?」
聞くと、ぽんと手を叩いて「ああそうそう、」と言いなおす。
「言い忘れていたんだけど、今日学校で、和くんについて教えてほしいって言われたのよね」
「僕について? 誰にですか?」
「1年2組の井炭寺希未って子よ。メガネをかけていて、前髪で顔も半分くらい隠しちゃってる大人しい子なんだけど、背が高くてモデルさんみたいな体型で――……和くんは見たことない?」
「うーん……あまり記憶にないですね」
二組か。登下校時に教室の前を通ってはいるが、教室内をじっくり観察したことは一度も無かった。
「それで、澄奈央さんは何て答えたんですか?」
「私は、他の生徒に和くんのことを無断で教えるのは良くないと思って断ったのよ。ただその子がどうしてもって言うから、ついつい『最近二人も女の子の友達ができたのよ』って言っちゃって――。ひょっとして、和くんとしてはあまり他人に知られたくなかったのかな、って思ったんだけど……」
「そのくらいのことなら全く問題無いです」
それなら別に隠しているわけでもないし、薄々感づいていた人もいるだろう。
むしろ僕に友達ができたという情報が広まれば、僕に対する妙な誤解も少しは解けることだろう。うん、何も悪いことなんて無い。
「だから…あの……もうドア閉めてもらっても良いですか?」
「ドアを? ――あ、」
ようやく伝わったのか。
「ごめんね。6月でも、湯冷めするのは良くないわよね」
そう言って澄奈央さんは扉を閉めた。
…………。
風呂から出たばかりなのに心労がどっと溜まった気がする。
もう一度湯船に浸かっておこうかな。
僕は大きくため息を吐き、バスタオルを置いて浴室に戻った。
ほんの数日前にお天気ニュースでは梅雨入りが宣言され、天気図上では前線が見事に本州に横たわっている。雨は今週の週明けから早速降り出す予報のようで、実感としても本格的に雨の日が多くなってきたように思える。
今日も朝から見事に雨天で、雨水が降り込まないように締め切られた教室内では、高い湿度と人が密集していることが併せて、梅雨らしい不快度の高い空気を充満させている。
「――はい、今回の授業はここまで」
鐘が鳴り、英語の先生がそう授業の終わりを告げた。
昼休みになるとまず僕の周りの生徒が席を立ち、それから続々と教室中の生徒が席を立って室外に出て行く。そうして教室には遠くの席に残った数名の生徒と僕だけになる。毎度のことながら、避けられているにも程がある。
「おぉーい和義ー!」
叫びながら、才氣が購買から戻ってくる。
「お前のこと、見失ったぜ!」
才氣は僕の机をドンと叩いて、芝居臭くそう言った。
「こんな目の前にいるのに?」
「まさか……まさかお前がそんなことをするなんて………」
「……。そうか。それは残念だ。けど僕は才氣のことをあまり見損なっていないよ」
わざとらしい演技を続けるので、僕は適当に流して弁当を開いた。
「――って、待て待て、ちょっとは動揺しろよ! それに『あまり』ってなんだ! 何か俺がお前に幻滅されるようなことしたか?」
言われてすぐに先日の球技大会のイカサマプレーを思い出したが、まあその後ちゃんと協力してくれたし、その分は帳消ししておいてやってもいいだろう。
「今のところは思い当たらないかな」
「なんでこれからありそうみたいに言うんだよ!」
さて、今日の弁当の具は――おお、今日はほうれん草入りの厚焼き玉子か。
「あ、」
才氣が卵焼きをつまみ食いして、ようやく僕の前の席に着いた。
「それで、今の悪ふざけはどういうことだったんだ?」
弁当をつつきながら尋ねると、才氣はパンを咥えたままモゴモゴと何かを言って、ポケットを漁った。そして携帯電話を取り出して、なにやら画面を操作し始めた。
「あった。これだよこれ。知ってるか?」
パンを口から放して、携帯電話を机の上に置いて見せた。
「どれどれ――」僕は画面を覗き込む。
「これは、この学校の掲示板?」
「そうそう。いわゆる『裏掲示板』って奴だな」
この手のサイトは僕も以前、気になって調べてみたことがある。
中学三年生だった自分は、誰にでも見られて誰にでも書き込める、検索したら普通に出てくるサイトのどこが裏なのだろうと不思議に思った記憶がある。
「ちょっと気になって調べてみたんだが、お前の悪い噂は、ほとんどここで書き込まれてから広まっていってるみたいなんだよな」
「そうなのか」
まったく酷いことをする人たちがいるものだ。
「でも、それにしては情報が広範囲に伝わりすぎじゃないか? こんな妙なところを覗いている生徒は、割合としてはあまり多くないと思うけど」
「だろうな。俺だって今までチェックしてなかったし。実際に情報を広めてるのは知り合い同士のネットコミュニティみたいなのだろう」
「つまり、掲示板はただの発信源で、そこからSNSのようなものを通じて情報が拡散しているということか」
「そういうことだな」
才氣は携帯電話をつまみ上げ、手に持って何か操作をしてから、再び机の上に置いた。
「で、これがさっきクラスの奴から回ってきた噂の、その発信源だと思うんだけど」
画面を見ると、どうやらネット掲示板の書き込みのようだ。
そこには、
『某生徒は既に女子を二人も脅して服従させている』
と書かれていた。当然身に覚えはない。
「この『某生徒』っていうのは僕のことだよね」
「ああ。過去のログを見たところ、ここで『某生徒』って書いてあったら十中八九はお前のことだと思うぜ」
またこんな根も葉もない噂が……――いや、
これはもしかして――
「これが書き込まれたのはいつ?」
「えーっと、昨日の午後6時くらいだな」
ならば日にちも時間もおかしくない。
「それがどうかしたのか?」
「才氣。ひょっとすると、」
「ん?」才氣はまたパンにかじりついていた。
「僕はこの発信者が誰なのか分かったかもしれない」
「才氣は、二組の井炭寺希未を知っているか?」
「井炭寺……名前はどこかで見たことある気がするが、そいつが犯人なのか?」
「あくまで可能性として、だけど」
まだ断定はできない。しかしタイミングが合い過ぎている。
それから、澄奈央さんが質問に答えたのが昨日で、その同日の夕方に書き込まれたはずの内容が、澄奈央さんの回答とは既に大きく違っている。
噂の内容が事実と異なってしまうのは、情報が多くの人に伝わっていく過程で、事実とは異なる情報を発信する人が現れるからだ。そして、そういった誤った情報や曖昧な情報、勝手な憶測や推測が大人数の間で飛び交うせいで、最後にはどれが本当に正しかったのか分からなくなってしまう。
伝言ゲームは情報の伝達に関わる人数が多いほど正答率が下がるのだ。
しかし、この掲示板に書き込みをする生徒はそう多くない。よってこれが発信源になっているとすれば、書き込み以前に関わっているのはある程度少人数に絞られる。
ではなぜその少人数での伝達で、情報がここまで大きく変化したのか。
可能性の一つはその少人数の内の誰かが非常に勘違いしやすい性格の持ち主であること。意図してやったことでないのだから、仕方ないと思えるところもある。が、いい迷惑であることには違いないので見つけ出して注意した方が良いだろう。
そしてもう一つの可能性は、誰かが意図的に事実を捻じ曲げているということだ。
しかしそうなればまた疑問が残る。
一体、何が目的でそんなことをしているのか。
「思い出した!」
唐突に才氣が声を上げた。そしてまた携帯電話をいじり始めた。
「井炭寺って、確かこの写真の奴だ」
すると僕の携帯電話の画面が光る。
「何か送ったのか?」
才氣から届いたメールを開き、添付ファイルを再生する。
そこには、思わず目を見張るような美しい女性の姿が写っていた。
女性の服装はこの学校の制服で、場所もこの学校の教室――恐らく隣の1年2組の教室だろう。窓際の席に座っていて、左手で前髪を軽く上げて、右手に黒い淵のメガネを持っている。様子からすると、髪をよけてメガネを掛けようとしているところだろうか。
「この人が、井炭寺希未……?」
「――の、奇跡的に可愛く撮れた一枚なんだとさ」
才氣は「それもクラスの奴から貰ったんだけどな」と付け足した。
僕は再び画像を拡大しながらよく見る。
肌は色白だが血色が良く、透明感がある。肩甲骨まで伸びた生糸のような黒髪は、しかし光の当たっている部分は澄んだ琥珀のような色を返している。
鼻は高くないが鼻筋はすっと通っている。唇は薄く、目元も整っており、目は印象的な二重瞼だ。
そして、その瞳の虹彩は僅かに青く輝いている。
「……確かに、これは奇跡的だな」
「だよなあ。普段はメガネかけてて冴えない奴らしいんだけどな」
日本人離れした美貌――いや、しかし日本以外のどの地方の人に似ているとも言い難い。
ここまで来ると、もはや「人間離れ」と言ってしまった方が適切であるかもしれない。
これは本当に写りの問題なのだろうか?
昼休みが残り少なくなり、僕はトイレに向かっていた。
廊下は歩いている生徒や立ち話をしている生徒が数多くいるが、僕が歩くと皆目を背けたり教室に戻ったりしてしまう。
お陰で昼休みの最中だというのに、廊下は一瞬、授業中のように静まり返る。
そんな中で、
「そんなはずがあるか!」
一際目立つ、至って聞き覚えのある叫び声が廊下に響き渡った。
今度は何だ? また誰かに噛み付いているのだろうか。
僕は少しうんざりしたような、ほっとしたような気分になって、その怒号のする方へ向かった。
声がしたのは北校舎三階の廊下の突き当たりだ。そこに二人の女子生徒がいるのが見える。
一人の背の低い生徒は物化だろう。
もう片方は、女子生徒ではあるようだが、物化と比べると随分と背が高い。
それだけでなく、脚が長い。頭身が高いファッション誌モデルのような体形だ。
「あら? あなたは―――」
長身の女子生徒が先にこちらに気づいた。長い前髪と淵のあるメガネでほとんど隠れてしまっているが、一瞬だけ眉をひそめたように見えた。
「あなたは生地さんに用があるんですよね? では、私はこれで――」
「待て! 話はまだ終わっていない!」
女子生徒が歩き出そうとすると、物化は走って僕の前まで来て、進行方向を遮る。
「今度は何が気に食わないんだ?」
「気に食わないんじゃない。コイツが私にケンカを売って来たんだ!」
そう言って女子生徒の顔を指さす。
こうなっては、物化に話を聞くのは得策ではないだろう。
「えっと、井炭寺希未さん――で、合っているのかな? 物化さんには何を言ったんだい?」
「私の名前……」
「ああそれなら、ちょうどさっきクラスの友達から聞いたんだよ。隣のクラスに凄く可愛い子がいるって、」
物化が恨めしそうにこちらを見ているが、あいにく僕は初対面の人に急に怒鳴りつけるようなことはしない。
「私は――私はただ、生地さんが人間関係に困っているようでしたので、少しでも力になれればと思ったんですけど」
ぱっと見る限り、才氣に貰った画像とはまるで別人のようだが、澄奈央さんの言っていた通り引っ込み思案な性格であるようだ。
いやしかし、そんなことの為にこの指名手配級の要注意人物に接近するのは非常に勇気の要ることだ。となると、案外意志は固い方なのだろうか。
「ふん、何が『力になる』だ!」
要注意人物が鼻を鳴らした。
「私は困ってなどいない。メールだのチャットだの、そんなものができないから何だと言うんだ。下らん噂など聞く気にもならん。そんなに力になりたければ、磁力でも重力でも勝手になっていろ!」
大手を振って喚く物化に、逆に希未が困っているようだ。
噂――そうだ、僕はこの大人しい女子生徒に疑いをかけていたところだった。
けど、こんなに良さそうな人が、本当にそんな酷いことをするものだろうか。
「あの……、私もう、教室に戻っても良いですか?」
「あ……ああ、引き留めて悪かったね」
希未は軽く頭を下げて、僕と物化の横を小走りで抜けて行った。
「おい待て! まだ話は――」
言い出した時に、午後の授業の予鈴が鳴った。
物化は不満そうに低く唸って、それから小さく舌打ちをして一人で教室に戻って行った。
「平良、もう授業だぞ」
トイレから出て教室に戻ろうとしていたところで、階段を上がってきた太田先生に声を掛けられた。一年生の社会科を担当している大柄な先生で、三階まで上がってきたので少し息を切らしている。
「次はお前のクラスだからな。もう授業の準備はできてるのか?」
「はい、大丈夫です」教室を出る前に授業の準備は済ましてある。
聞いて、先生は「そうか」と言って微笑み、教室に向かってゆっくり歩きだした。
太田先生は学年主任を務めている。その責任感からか、本当に生徒への思いやりが強いのかは分からないが、校内の多くの教職員が僕と進んで関わろうとしない中で、この先生は僕に対しても親しげに話しかけてくれる。
「家族が家族だけに、色々大変だな。何かあったら先生も相談に乗るからな」
廊下にいた生徒が僕を見て教室に戻っていくのを見て、先生は言った。
「それなら大丈夫です。ありがとうございます」
「なら良いんだけどな。無理はするなよ」
この扱いならもう慣れたし、特に危害を加えられているわけでもない。先生にどうにかしてもらう内容でもないだろう。
「そうだ。先生もこの間、町で変な女の子にお前について訊かれたよ」
もう少しで教室に着くところで、先生が立ち止ってそう言った。
「変な女の子?」
「ああ。この学校の生徒じゃあないみたいだったが、平良は、このあたりの他の学校にも知り合いがいるのか?」
「いえ、特には」
「そうか。やっぱり学校の外でも有名人なんだな」
先生は「頑張れよ」と言って前の戸から教室に入って行った。




