草野吹雪之夜明け物語
それは……永い夜の事でした。
貴方は今日も冬の凍てつく氷針の中を歩いて仕事に行きましたね。
そして――。
帰って来た貴方は冬の寒さに同化していたのでした。
私はその時、ただ後悔と貴方を逝かせてしまったことへの懺悔でいっぱいでした。
それから冬が明けるまで、貴方の声が聞こえない吹雪の中で家に籠りました。
□ □ □
冬が明けた頃。
私は命が芽吹く春とは反対に冬の寒さを引きずり、体はすっかり枯れ果てました。
ゆらゆら視界が動き。
息吹は小さくなり。
鼓動は緩やかに失われていきました。
そして――。
私も春に、逝きました。
□ □ □
初めに気がついたのは、鼓動への意識の応答でした。
失われたはずの鼓動が私の意識に流れ込んできたのを感じたのです。
それから……。
息が蘇り、視界が定まり、命が芽吹いたのです。
目を覚ますと……そこはまるでおとぎ話の様な世界でした。
遠くに城下町とお城が見え、周りは森に囲まれ、私は花畑に横たわっていました。
戸惑いました。
とても。
次に気がついたのは、自分の服の異様さでした。
それは……まるでお姫様の様なドレスで、私は更に戸惑い、どうすればいいのか途方に暮れていました。
それを見かねたのか、森の動物達が私の元へ集まり、私に寄り添って身体と心の雪を溶かしてくれました。
とても暖かく、心地良いので、天の国に誘われたのだと私は思いました。
暫くそこで温まっていると、ふと懐かしい声が聞こえたのです。
それは――待ち望んでいた声。
一番の太陽。
寒い冬に逝ったのとは反対に太陽の様な明るい声。
それが城下町の方から聞こえたのです。
私はそれを聞いた時に、直ぐに決心しました。
私はこの声を探しに行こう……と。
森の動物達に別れを告げ、歩を進めました。
森に吹雪いていた雪は溶け。
日差しが私を照らし。
夜明けとともに私の物語が始まりました。




