表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

7/8

第三章:地下の埋葬、真実の泥

「かくれんぼ」という名の処刑が始まる。

完全な闇に包まれたコテージで、俺たちは互いの荒い呼吸だけを頼りに、リビングの床下へと続く隠し階段を見つけ出しました。


「ここだ……。図面にはなかったけど、床板の厚みがここだけ違う」

アリスが震える手でタブレットのライトを床に照射します。ジャッジが呑み込まれた場所のすぐ隣。重いソファを退けると、そこには古びた真鍮の取っ手が付いた、小さな跳ね出し戸がありました。

「開けるぞ」

俺が取っ手を引くと、地下から立ち上ってきたのは、これまでの比ではない**「圧倒的な死の匂い」**でした。湿った土と、長い年月をかけて腐敗した何かが混ざり合った、肺を拒絶するような臭気。

梯子を降り、地下室へ足を踏み入れた俺たちのライトが映し出したのは、豪華なコテージの地上階からは想像もつかない、異様な光景でした。

そこは、コンクリート剥き出しの空間ではなく、**「部屋の中に、もう一つの山がある」**ような場所だったのです。


泥の丘と「忘れ物」

地下室の中央には、黒い泥がうず高く積まれていました。それはまるで、誰かが外から少しずつ運び込んだかのように。

「見て、あれ……」

ドールが悲鳴をこらえて指差した先。泥の山から、小さなピンク色のスニーカーが片方だけ突き出していました。

「あ……」

俺の視界が歪みます。

あの日、俺が山に埋めたと思っていたのは、ただの幻覚だったのか。それとも、誰かが掘り返して、ここへ「持ち帰った」のか。


アリスの限界

「嘘だ、計算に合わない。ここはただの別荘で、地下室なんて構造上……っ!」

アリスが狂ったようにタブレットを叩きます。しかし、画面に映し出される地図データは、ノイズにまみれ、いつの間にか少女の顔の形へと変貌していました。

「うわあぁぁぁ!」

アリスはタブレットを投げ捨てます。彼が信じていた「情報」という武器は、この怨念の迷宮では何の役にも立ちませんでした。


本物の遺体

俺は吸い寄せられるように、泥の山へと歩み寄りました。

泥を素手でかき分ける。爪の間に黒い土が入り込み、皮膚を切り裂く。それでも止められない。

「いた……」

泥の中から現れたのは、あの日の少女――ではありませんでした。

そこに横たわっていたのは、「半分だけ泥に変わった、複数の人間たちの死体」。

その一番新しい顔は、先ほど死んだはずのプロフェット。そして、その下には、数年前に「行方不明」として処理された、このコテージの歴代のオーナーたち。

彼らは全員、この地下で、少女に「隠されて」いたのです。

『……ねえ、見つけてくれた?』

背後で声がしました。

振り返ると、ドールの影が異様に長く伸び、彼女の背中から無数の泥の手が這い出して、彼女の口を塞ごうとしていました。

「助けて……カイト……!」

ドールの瞳が恐怖で裏返ります。

その時、俺のスマホが午前0時を告げるアラームを鳴らしました。

【通知:タイムアップ。本物の遺体(私)は見つかりませんでした】

「……え?」

俺は目の前の泥の山を見ます。そこにあるのは、代わりの犠牲者たちの死体だけ。

少女の本体は、ここにはいない。

『……だって、私はまだ、あなたの車の中にいるんだもの』

俺の記憶が、濁流のように溢れ出します。

そうだ。あの日、俺は彼女を埋めなかった。パニックのあまり、彼女を車のトランクに押し込み、そのまま廃車工場へ回したんだ。プレス機にかけられた車の中で、彼女は生きたまま……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ