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第二章:泥濘の告発(結)


「が、あ……ッ! 離せ、離せえッ!」

ジャッジの屈強な体が、床に吸い込まれるように沈んでいく。泥の中から突き出した無数の指は、彼の肉に食い込み、骨を軋ませていた。

「助けてくれ、カイト! アリス! 俺は、俺はまだ死ぬわけにはいかないんだ!」

般若の面を捨て、形相を歪ませるジャッジ。だが、アリスもドールも、腰を抜かしてその光景を見守ることしかできない。背後の『5人目の影』が、ジャッジの首筋に冷たい指を添えた。

『……ねえ。どうして、私に嘘をついたの?』

少女の囁きが部屋中に響き渡った瞬間、ジャッジの叫びが、告白へと変わった。

「悪かった! あの時、俺は……俺は出世したかったんだ!」

ジャッジの口から、泥混じりの真実が溢れ出す。

「カイトの事故を調べた時、俺はすぐに確信した。あの日、お前が犯人だと! だが、お前の親父が……地元の有力者であるお前の親父が、俺に取引を持ちかけてきたんだ!」

カイトの頭の中で、パズルのピースが音を立てて繋がっていく。

「捜査資料を改ざんし、目撃者の証言を握りつぶした……。その見返りに、俺は署内での地位と、一生遊んで暮らせる裏金を手に入れたんだ! ドール、お前に『何も見るな』と脅しをかけたのも、俺だッ!」

「……え?」ドールが絶句する。

「プロフェットに誘われた時、俺はこいつを裁くことで、自分の罪を上書きできると思った。正義の味方になれば、過去は消えると思ったんだ! だから、助けてくれ……俺が一番悪いわけじゃない、金を受け取らせたこの社会が……!」

その醜悪な言葉が最後だった。

『……なら、一生、その金と一緒に眠って』

影がそう囁いた瞬間、ジャッジの口、目、鼻、あらゆる穴から、黄金色に輝く泥が逆流するように溢れ出した。

金貨を飲み込んだかのような鈍い音を立てて、ジャッジの体は内部から膨れ上がり、そして床下へと一気に引きずり込まれた。

ボコッ、ボコボコ……。

ジャッジが消えた後の床には、ただの乾いた板が戻っていた。だが、そこからは、かつてジャッジが受け取ったであろう血まみれの裏金――古い万札の束が、腐った花のように何枚も吐き出されていた。

「あ、ああ……」

カイトは呆然と立ち尽くした。

味方だと思っていた『正義』は、実は自分を地獄へ誘うための共犯者だったのだ。

その時、逃げ道を失った俺たちのスマホが、一斉に震えた。

【通知:新しいイベントが開始されました】

【内容:共犯者たちの『かくれんぼ』】

【ルール:午前0時までに『本物の遺体』を見つけられなかった方は、全員、チェックアウトです】

部屋の明かりが、一斉に消えた。

闇の中、どこからか、びしょ濡れの足音が、ペタ、ペタ、と廊下を歩く音が近づいてくる。

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