第二章:密室の預言者
一睡もできぬまま、白濁とした朝が来た。
リビングに集まった俺たちは、互いの顔を見て息を呑んだ。
ジャッジの眼窩は落ち窪み、ドールは仮面の下でガタガタと震えている。
「……プロフェットが、出てこない」
アリスが、血走った目で奥の廊下を指差した。
午前八時。宣告から十二時間が経過した。プロフェットが「瞑想する」と言って閉じこもった部屋のドアは、固く閉ざされたままだ。
「おい、プロフェット! 朝だぞ、開けろ!」
ジャッジが激しくドアを叩くが、返事はない。
「……鍵は?」「内側から閂がかかってる。予備の鍵じゃ開かないわ」
「壊すしかない。……いくぞ」
ジャッジと俺が肩を並べ、体当たりで古びたドアを押し破る。
二度、三度。
――バキィッ!
嫌な音を立てて閂が弾け飛び、ドアが勢いよく開いた。
室内に踏み込んだ俺たちは、その光景に言葉を失った。
窓はすべて内側から施錠され、目張りがされている。完全なる密室。
その中央で、プロフェットは……いや、**『プロフェットだったもの』**は、椅子に座ったまま事切れていた。
「そんな……嘘だろ……」
彼の死に様は、あまりにも「不自然」だった。
外傷はどこにもない。だが、その顔は、まるで見えない巨大な手に首を絞められたかのようにどす黒く鬱血し、舌が飛び出している。
そして、彼の膝の上に置かれたタブレットが、音もなく画面を更新した。
【預言:残り 12時間。カイト、逃げ場はない】
「う、うわあああああッ!」
ドールが悲鳴を上げて部屋を飛び出す。
俺は崩れ落ちる膝を必死に支えながら、死んだプロフェットの首筋を見た。
そこには、生々しい**「泥の手形」**が、焼き付いたように黒々と残っていた。




