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第一章:宣告の夜(結)
リビングでの不可解な出来事の後、俺たちは逃げるように各自の個室へと引きこもった。
「呪い」も「預言」も、誰かが仕組んだ茶番だ。そう自分に言い聞かせ、俺はドアに鍵をかけ、内側から椅子を立てかけてバリケードを作った。
しかし、眠れるはずがなかった。
真夜中。午前二時を回った頃。
――コン。
静寂を切り裂いて、乾いた音が響いた。
ドアを叩く音だ。
俺はベッドの上で飛び起きた。心臓が喉まで競り上がってくる。
「……誰だ。アリスか? ジャッジか?」
応答はない。ただ、
――コン。コン。コン。
一定の間隔で、ドアの「一番低い位置」が叩かれている。まるで、小さな子供がしゃがんで叩いているような位置だ。
俺は息を殺し、ドアの隙間を見つめた。
そこから、じわりと黒い液体が染み出してきた。雨水じゃない。それは、ドロドロとした、腐敗臭のする泥だった。
「ひっ……!」
俺は部屋の隅へ後ずさり、スマホのライトを向けた。だが、光が当たった瞬間、叩く音は止み、染み出していた泥も、まるで最初からなかったかのように消え失せていた。




