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第一章:宣告の夜


その部屋には、窓がなかった。

山奥に佇む貸切コテージ。リビングの中央に置かれた円卓を、五人の「仮面」が囲んでいる。

狐、般若、ピエロ、そして無機質な白いドミノマスク。

「……これ、本当にやるのか?」

俺――カイトの声が、首に下げたボイスチェンジャーを通じて、金属的なノイズ混じりの低音に変換される。

向かいに座る長身の男、ハンドルネーム『プロフェット(預言者)』が、黒いローブの袖から細い指を出し、卓上の中央に置かれたスマホをタップした。

【通知:グループチャット『箱舟』に新しい投稿があります】

全員のスマホが、同時に、葬らるような低い通知音を鳴らす。

画面に浮かび上がったのは、不気味なカウントダウンの数字。

『00:24:00:00』

「今夜、僕たちは『罪』を清算する」

プロフェットの声は、チェンジャー越しでも震えるような威圧感を持っていた。

「この中に、嘘つきがいる。そして……カイト。君には24時間後に『死』が訪れる」

心臓が跳ねた。

なぜ、俺の名前を指名した?

SNSのログでは、俺はただの「仕事に疲れたサラリーマン」を演じていたはずだ。このオフ会に参加したのは、彼らが俺の隠したい過去――あの雨の夜、泥の底へ沈めた「何か」を知っているのではないかという、確認したくてもできない恐怖に突き動かされたからだ。

「死ぬ……? 冗談だろ。オフ会の演出にしては悪趣味すぎる」

俺の隣に座る、フリルのついたドレスを着た『ドール』が、震える声で言った。

しかし、プロフェットは動じない。

「これは預言ではない。確定した未来だ。……ただし、救済はある。この24時間の間に、自分の『真実』をこのチャットに書き込めば、呪いは解除される」

「呪い、だって……?」

俺は必死に笑い飛ばそうとした。だが、リビングの隅に置かれた古びた柱時計が、重苦しい音で午後八時を告げた瞬間。

ドサッ。

背後の廊下で、何かが落ちる音がした。

振り返っても、そこには誰もいない。ただ、閉まりきったはずのドアの隙間から、どこか懐かしい、雨上がりのアスファルトのような――そして、ひどく腐ったような土の匂いが、ゆっくりと流れ込んできた。

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