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Rosalie: A Human History  作者: 田中


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第九話 The River That Remembered Light

 地球は、境界を知らない。

 海も空も、信号も、そして──光も。


 国と国の境界すら、我々が作った幻想に過ぎない。


─環境学者 イーサン・グレイ『北方異常現象観測報告書』より



────


──カナダ オンタリオ州・セントメアリーズ川


 二〇二八年四月二一日、午前四時一七分。

 環境庁北方観測センター、サドベリー支局。


 レーダーが最初の異常波形を示したとき、夜勤担当のカレン・ハーストはカップの底で冷めたコーヒーを見つめていた。

 モニターの端で“BAND-4 INTERFERENCE”の赤い文字が瞬く。


「またノイズ? 氷が割れたのかしら」


 そう呟いて波形を拡大する。


 だが異常は消えない。

 周期は約〇・八秒。

 単発ではなく、心拍のように律動している。

 しかも、三つのセンサーが同時に反応していた。このような波形を、カレンは見た事が無かった。


 カレンは眉をひそめ、隣のモーガンを呼んだ。


「ねぇ、これ……地震波じゃない。ほら、周期が一定すぎるの」


「また誤作動だろ。昨日の電磁嵐でセンサーが──」


「違うの。パターンが“生きてる”感じがする」


 モーガンがカレンの言葉に、渋々モニターを覗き込む。その顔は苦いコーヒーを一気に呷った時よりも渋い顔をしている。

 確かに、揺らぎは呼吸に似ていた。


 これは異常だと理解したモーガンが、カレンと共に過去一〇年分の観測ログを呼び出す。


 検索条件:“波長干渉/周期性発光/生体反応類似”。


 ──結果:該当データあり(米国環境保護委員会 / ミシガン州 スペリオル湖観測)

 ──日付:二〇二六年七月一八日


 カレンが息をのむ。


「……まさか、同じパターン?」


 画面の地図上で、赤い波形が川を遡っていた。

 米国側から、カナダ国境を越えて。


 自動記録が新しいコードを割り振る。


 UNID-02(未確認生体波源ー02)


 カレンは震える声で呟いた。


「これ、上に報告しなきゃ……」


 だが、モーガンは首を振った。


「まず確証を得なければならない。──“あれ”を、ただのノイズで済ませた連中のようになりたくはないだろう」



────


 ──カナダ オンタリオ州・セントメアリーズ川下流域


 二〇二八年四月二一日 午前五時五三分。


 夜はまだ完全には明けていなかった。

 灰色の空の下、氷が溶け残った川面を薄い霧が流れていく。

 カレン・ハーストは防寒ジャケットの襟を立て、持ち出した簡易測定器を雪に半ば埋もれた岩の上に設置した。


「センサー、オンライン。波形の振幅は安定……でも、ベースラインが呼吸みたいに動いてる」


「風じゃないのか?」


 後ろで手帳を開いているモーガンが答える。彼の手袋は鹿革でできており、それでも芯まで冷えるような気温に彼の唇からは白く染まった吐息が零れている。

 風は穏やかで、松の葉すら揺れていない。

 それでも川面には、まるで何かが水の底を這っているかのように、ゆるやかなうねりが走っていた。


「音、拾えるか?」


 カレンはヘッドセットを耳に押し当てた。

 かすかに、低い、泡立つような音が聞こえる。

 ぐつぐつと煮え立つ鍋の中を、水の底から覗き込むような音。

 空気ではなく、水そのものが鳴っているようだった。


「……何か、いる」


「まさか。魚群反応はゼロだぞ」


「魚じゃない。生きてる何かの、脈動」


 その瞬間、川面がふっと明るくなった。

 朝日ではない。

 川の底から、青白い光が脈打つように浮かび上がる。


「カメラ、回して!」


 モーガンが慌てて三脚を立てる。

 だがレンズ越しの映像はノイズを伴って揺れた。

 信号干渉。

 GPSもコンパスも狂っている。

 方位を示す針が、まるで怯えるように震えていた。


「……嘘だろ。これ、人工的なものじゃない」


 カレンの息が白く曇る。

 光はゆらゆらと揺れながら、まるで“呼吸”しているように強弱を繰り返している。

 そして、ゆっくりと形を成した。

 丸みを帯びた頭部。波間を滑る胴体。

 四肢らしき影が、川底の砂を押し上げていた。


「動いてる……生きてるぞ……!」


 モーガンが無意識に一歩下がる。

 川面の反射で、二人の顔が青白く照らされた。

 光の正体が、彼らの視界に“形”を持ち始める。


 水の底、薄いクリーム色の鱗の下で、微かに動く筋肉。

 人間の腕ほどの太さをした脚。

 それが岩を押し割り、緩慢に身体を持ち上げる。


 音もなく、川の流れが逆巻いた。

 冷たい霧の中、ひとつの“生物”が頭を出す。


 ──そして、光が消えた。


 世界から音が消え、カレンは息を呑む。

 次の瞬間、川面が静かに閉じた。


「……記録できたか?」


「……たぶん。ノイズまみれだけど、熱反応は残ってる」


 モーガンが震える手でデータを確認する。

 波長は四〇六ナノメートル。水中ではあり得ない発光強度だった。

 そして──動体反応が一瞬、川の中を遡上した。


「……上流へ行った」


 モーガンの呟きに、カレンは顔を上げた。

 川の彼方、霧の向こうで、再び青白い光が瞬く。

 それは遠く、遠くへと移動していく。

 まるで境界など存在しないかのように。



 ──同日 午前九時二六分。


 環境庁北方観測センター・サドベリー支局


 観測データのアップロードが完了した瞬間、カレンのディスプレイが真っ黒に染まる。


“TRANSMISSION COMPLETE(送信完了)”


 その文字が一瞬だけ点滅し、すぐに全ファイルが消えた。


「……ちょっと待って、いま、誰かが──」


 モーガンが隣の端末を覗き込む。

 同じように、彼のログも消えていた。

 代わりに、電子署名のないアクセス記録が一行だけ残されている。


“DATA ARCHIVED — CENTRAL(アーカイブデーター中央)”


「中央って……まさか、オタワの本部に?」


 カレンは一瞬、笑おうとした。だがその笑い声は漏れること無く、ただ喉が鳴るだけだった。

 彼女の指がマウスを掴み、フォルダを開く。そこには何も無い。空っぽだった。

 バックアップデータも、外部送信も、何ひとつ残っていない。


「モーガン、これ……削除された」


「いや、“移された”んだ。──俺たちには見せたくないんだろう」


 室内の照明がわずかに揺らめく。

 モーガンは端末を睨みながら、低く息を吐いた。


「カレン、これ、報告書にどう書くべきだ?」


「“機器誤作動”……それが、上の求めてる答えでしょうね」


 カレンの声は冷たく乾いていた。

 彼女はしばらく黙り込み、次にゆっくりと机の引き出しを開けた。

 中から、古いUSBメモリを取り出す。


「データの断片、キャッシュに残ってたの。解析できる保証はないけど……」


「持ち出す気か?」


「ええ。削除されるくらいなら、隠す方がマシよ」


 カレンはUSBを小さな封筒に入れ、胸ポケットに差し込んだ。

 その指先がかすかに震えている。


「……あんた、クビになるぞ」


「構わないわ。何かが、川を越えたのよ」


 モーガンは返事をしなかった。

 ただ、天井の蛍光灯を見上げたまま、腕を組んでいる。


 外では風が強まっていた。

 昼になっても、陽の光は弱く、空気はどこか重たい。

 川の向こうでは、雲の隙間から細い光が差している。

 その光が、まるで水の中から放たれているように見えた。


「……まさか、また同じ過ちを繰り返すのか」


 モーガンの呟きは、カレンの耳には届かなかった。

 彼女はモニターを睨みつけたまま、ひとつだけ残ったログを見つめている。


>UNID-02:波形途絶/移動方向 北北東。


 その“北北東”の先にあるのは、オンタリオ湖。

 そして、その向こうには──トロント。



 ──トロント郊外・オンタリオ湖畔


 二〇二八年四月二四日 午前五時三八分。

 トロント市西部・ハンバー湾。


 夜明け前の湖は、鏡のように静かだった。

 漁師のピーター・グラントは、いつものように小舟を出して網を確認していた。

 ここ三日、魚はほとんど獲れない。

 それでも、朝の湖を見ないと一日が始まらない。彼にとっては、もうそれが“儀式”のようなものだった。


 網を引き上げる。

 だが、今日も空っぽだ。

 代わりに今日は粘つくような灰緑色をした“膜”が網に絡みついている。


「……藻か?」


 指でつまむと、ぬるりとした感触。

 しかし、藻ではない。触れた指先に、かすかな熱を感じた。

 ピーターは眉をひそめ、指をこすり合わせる。

 淡い光が、指先でちらりと弾けた。


「……? なんだ?」


 目を凝らして湖面を見た。

 遠く、水面下で“何か”が動く。

 波紋がゆっくりと広がり、その中央で淡い光が揺れた。


 彼は一歩、船べりに近づく。

 水深は浅い。いつもなら小魚の群れが通るあたりだ。

 だが今日は──静まり返っている。


 次の瞬間、船が僅かに傾いた。

 何かが、底を擦った。

 まるで巨大な生き物が船底をなぞったように。


 ピーターは慌てて櫂を掴む。

 足元のバケツが倒れ、魚の餌が転がった。

 それを拾おうとしゃがんだ、その時──“ドン”と鈍い衝撃が、真下から突き上げた。


「なっ……!」


 船体が浮き上がり、バランスを崩す。

 次の瞬間、黒緑の“何か”が水面を割った。


 一瞬だった。

 それは巨大な鰻のように見えたが、そのクリーム色に黒緑色の斑点が散る頭は平たく、体の側面に小さな脚が見えた。

 そして、全身を覆う粘膜が淡く光っている。


 ピーターの喉が凍りつく。

 声を出すより早く、その生き物が再び水中へ沈む。

 しぶきが上がり、船がぐらりと傾いた。


「……おい、冗談だろ……」


 湖面は再び静まり返った。

 夜明けの光が差し始め、水平線が薄桃色に染まる。

 だが、ピーターの瞳にはその色は映らない。

 彼の視線はただ、水面に残る無数の細かな泡を見つめていた。


 その泡は、ゆっくりと北へ──トロント市街の方向へと流れていった。




────


 ──トロント西部・工業地区


 二〇二八年四月二五日 午後二時五九分。

 オンタリオ湖沿岸、ハンバー工業地帯・下水管理局施設。


 配管技師のルーカス・ノランは、モニターに映る圧力グラフをぼんやりと眺めていた。

 昼食のコーヒーはまだ冷めきらず、指先でカップの縁を叩いていた。

 下水管の水圧が異常に高い。

 朝から続く謎の詰まり。

 ポンプを全開にしても、流量が戻らない。


「……またゴミ?」


 隣の若手職員ミアが、画面を覗き込みながら言う。

 だが、ルーカスは首を振った。


「違うな。圧力波のリズムが……おかしい。機械的じゃない。生きてる感じがする」


 言ってから、自分の言葉に苦笑した。

 “生きてる感じがする”──そんな馬鹿げたこと、技師が言う言葉じゃない。

 だが、波形は確かに心拍のように揺れていた。

 まるで、どこかで巨大な“肺”が呼吸をしているように。


 ミアが冗談めかして言う。


「ネズミでも詰まってるんじゃない? それか、下水ゴーストとか」


「幽霊の方がまだマシだ」


 ルーカスは計器を確認し、現場点検に向かった。


 下水路は暗く、ぬめりとした水音が響く。

 懐中電灯の光が濁った壁を照らす。

 配管の内壁には、灰緑色の薄い“膜”が張りついていた。

 藻でも、カビでもない。

 手袋越しに触れると、ぬるりとした粘性があり、わずかに温かい。


「……なんだこれ」


 指先を光にかざす。

 薄く、淡い青白い光が浮かび上がった。

 その輝きが、まるで“呼吸”しているように明滅していた。


 その瞬間、下流側から“ドン”という低い衝撃音が響く。ルーカスの腹の底を震わすほどの音だ。

 水面が盛り上がる。

 ルーカスが懐中電灯を向けると、濁流の奥で何かが蠢いた。


「おい……ミア! ポンプ止めろ! 逆流が──」


 言い終えるより早く、濁流が爆ぜた。

 水しぶきとともに、何かが配管の中を逆流して突き上がってくる。

 灰緑の塊。平たい頭。濡れた鱗。

 ほんの一瞬、その体表が光を帯びた。


 ルーカスが後ずさる。

 だが、地面にこびり付いた膜に足が滑る。

 次の瞬間、光の塊が跳ね上がり、暗闇が彼を飲み込んだ。


 ミアが通信機越しに叫ぶ。


「ルーカス!? 返事して! ルーカス!!」


 返答は、なかった。

 ただ、マイクの向こうから“濡れた呼吸”のような音が聞こえた気がした。



────


 ──カナダ オンタリオ州・セントメアリーズ川


 四月二三日、午前六時四八分。


 カナダ環境庁は、サドベリー支局から上がった異常波形報告を受け、現地調査班を派遣した。

 調査員三名、技術者二名、護衛として州警察の巡査一名。

 氷解したばかりのセントメアリーズ川の水面は、まだ濁って鈍い光を返している。


「流速、平均より二パーセント上昇。水温は……四度?」


 技術主任のベン・クラークが眉をひそめる。


「おかしいな。こんな気温で、こんな水温差が出るなんて」


 機材を積んだトラックからセンサーを降ろし、川岸に設置する。

 ドローンが低空を飛び、赤外線カメラが水面を舐めるように走った。


「カレン、信号を確認したらすぐに送ってくれ」


 モーガンの声が無線に響く。サドベリー支局では、カレンが前夜からモニターの前を離れていなかった。


「了解。こっちは準備完了。BAND-4波、リアルタイムで受信中」


 その時、ノイズが走った。

 ザーッという音の後に、断続的な“呼吸”のような律動が重なる。


「……いまの聞こえたか?」


「ええ。風じゃないわ」


 モーガンの手元で波形が跳ねた。

 周期は〇・八秒──前回と同じ。

 だが、今回は明確に“近づいている”。


 川面が静かに震えた。

 氷解後の泥を含んだ水が、円を描いて膨らむ。まるで水底から空気を吐き出すように。

 その膨張が二度、三度と続いた。


「なにか……生きてる?」


 護衛の巡査が呟く。手のひらには汗。

 ベンがドローンのカメラ映像を拡大する。

 暗い水底に、微かに光るものがあった。


 人の瞳ほどの大きさ。

 それが一つ、また一つと点滅する。

 そして、全てが同じタイミングで瞬いた。


 心臓の鼓動のように。


「モーガン、数を数えて!」


「八……いや、一〇。一〇体だ!」


 次の瞬間、電波が途絶えた。

 センサーの表示が一斉に消え、画面が真っ暗になる。


 その瞬間、モーガンの目の前で何かが“弾けた”。

 川面が爆ぜ、泥水が空へと吹き上がる。


「下がれ!」


 巡査が叫ぶより早く、モーガンの身体が後方へ引きずられた。


「うわああああ! 誰か! 食われる! 食われ……!」


 モーガンの悲鳴が、セントメアリーズ川の冷えた空気を引き裂く。

 ベンがモーガンの腕を掴む。しかし、彼の腕はぬるりと滑る。手に残ったのは血ではなく、どろりと光る灰緑の粘液だった。


「嘘だろ……モーガン!?」


 彼の叫びを掻き消すように、水音が弾ける。

 モーガンの姿はもうなかった。

 巡査が銃を抜き、川に向けて引き金を引く。

 銃声と共に閃光──そして、風が変わる。


 強烈な熱。

 川辺の空気が揺らめき、ベンは思わず腕で顔を覆った。

 巡査の叫びが一瞬響き、次には何もなかった。


 カレンが支局で立ち上がる。


「……モーガン? 応答して! モーガン! ベン!」


 だが返事はない。

 受信機の奥で、微かな“水音”だけが続いていた。

 まるで誰かが、ゆっくりと水の中で息をしているように──。



 四月二四日、午前九時三六分。


 サドベリー支局のモニター室には、ただひとり、カレン・ハーストだけが残っていた。

 夜明け前から続く無線の呼びかけに、誰も応じない。

 通信ログは沈黙のまま、最後に受信した音声波形を繰り返し再生していた。


「……モーガン、ベン、誰か……返事して」


 指先が震えて、エンターキーを押すたびに爪が小さく音を立てた。

 画面の隅には、“SIGNAL LOSS(信号喪失)”の赤い警告。

 だが、ひとつだけ異なる数字があった。


 ―UNID-02 / SEQUENCE ACTIVE(作動中)


 観測波形は途切れず、まだ“生きている”。

 周期は前夜よりも速い。〇・八秒から〇・六秒へ。

 まるで“呼吸”が浅く速くなっているようだった。


 カレンは立ち上がり、緊急回線に手を伸ばす。

 その時、ドアが開く。


「ハースト博士、もういい。上が動いた」


 支局長のレイモンド・ハリスが入ってくる。

 顔色は紙のように白く、片手には回線封鎖の命令書が握られていた。


「現地班は全滅と見なす。映像記録をすべて本庁へ送信しろ。コピーは禁止だ」


「そんな……まだモーガンたちが──」


「いない。救助隊が到着した時、川岸一帯が蒸発していた。放射線量は臨界に達してる。君も検査を受けろ」


 言葉を失うカレンに、レイモンドは封筒を投げた。

 封の隙間からは赤いスタンプが覗く。


 NATIONAL SECURITY DIRECTIVE(国家安全保障指令) / CLASSIFIED – ROZALIE INCIDENT(機密事項ーロザリー事件)


 その綴りを見た瞬間、カレンは息を呑んだ。

 “ROZALIE”──あの配信映像で、最初に呼ばれた名。


「誰が……その名前を?」


「米国側だ。昨年のスペリオル湖事件の報告で、コードネームとして使われていた」


 レイモンドが短く息を吐く。


「彼らはもう“ノイズ”とは呼ばない。“生物”だと認めた」


 その時、モニターが一瞬だけ明滅する。

 停止していたドローンカメラの一台が、遅れて映像データを送信してきたのだ。


 暗い水底に、何かが動いていた。

 ぬめりを帯びた灰緑の体表。

 瞳孔のない黒い眼が、一瞬だけレンズを見た。


 そして、画面が真白に弾ける。

 放射ノイズが走り、すべての映像が焼き付いた。


 カレンは呟く。


「……これが、ロザリー……」


 その囁きが、ログに最後の音声として記録された。


 そして数時間後。

 サドベリー支局は封鎖された。

 以降、公式な記録は残っていない。

 ただ一つ、環境庁の内部サーバーに未承認データが残っていた。


 ──UNID-02 : ACTIVE / MIGRATION NORTH-BOUND(北へ向かう)

 ──位置:ハドソン湾方面へ移動中

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