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ポテンシャル


 差し出されたリリカの手を見て俺は緊張した。

 形の良い爪や指が、やけに綺麗に見えてしまったのだ。


「いまからリリカの魔力を確かめる。君の手のひらに俺の手を合わせるがかまわないだろうか?」


 そう言うと、リリカは差し出した手をいったん引っ込めた。

 やっぱり嫌か……。

 って、違うぞ。

 リリカは自分のシャツでごしごしと手のひらをぬぐっている。

 それから迷いのない動作で手を突き出した。


「師匠、遠慮なくやってください!」

「うむ……」


 俺も同じようにシャツの裾で手のひらを拭いた。

 これってセクハラにならないよな?

 いやいや、こんなふうに意識するのは弟子に対して失礼というものだ。

 リリカのポテンシャルを知りたいだけで、俺に邪な気持ちはない。

 師匠らしく威厳を保ちつつ、もっと堂々としなくては……。

 大きく深呼吸してから、俺は自分の手をリリカの手に重ねた。


「ほぉ……」


 自分の魔力をリリカに送り、波のように返ってくるリリカの魔力を探る。

 これは驚いた……。

 リリカから返ってくる反応は深海を思わせるほど広く、深い。

 彼女が実力者であることはエターナルフォースのメンバーということからもわかっていた。

 だが、これほどのポテンシャルを秘めているとは思っていなかったぞ。

 年齢を考えれば伸びしろは無限大だ。

 意気込みに負けて弟子にしたけれど、俺は期せずして最良の逸材を弟子にしてしまったようだ。

 道端に転がっていた石を拾い上げてみたら、1000カラットのダイヤモンド原石だったという感じか?

 リリカならいつか俺を超える弁当屋になるかもしれない。

 これぞ師匠冥利に尽きるというものだろう。


「ククク……」

「ど、どうしました、師匠?」

「いや、うれしくてな」

「うれしい? 私と手を合わせたことが!?」


 手を引っ込めたリリカが頬を赤らめている。

 え?


「ち、違うぞっ! かわいい女の子と手を合わせて喜んだんじゃない! 俺はリリカの中に眠る可能性に期待ができると思っただけだ!」

「私の可能性……?」

「そうだ。リリカなら立派な弁当屋になれるかもしれない。そう考えて嬉しくなっただけだぞ」


 言い訳がましく聞こえるだろうが、これは事実である。

 だが、リリカは浮かない顔をしていた。


「とても信じられません。私、エターナルフォースの中でもずっと力を出せずにいました。いつも仲間の足を引っ張っていて……」

「だが、チームリーダーはリリカを首にはしなかっただろう?」


 冒険者は競争の激しい世界だ。

 役に立たないものは戦闘の果てに息絶えるか、退場を余儀なくされる。

 非情ではあるが、命がかかっているのだ。

 そして、こうした傾向はトップチームほど顕著になる。

 エターナルフォースのリーダーがリリカを切らなかったのは、こうしたリリカのポテンシャルを見抜いていたからだろう。


「だけど、私はまだまだなんです。他のメンバーだったら、きょうの私みたいに息切れなんて起こさなかったと思います。師匠に回復魔法をかけてもらうまでもなかったはずなんです!」


 リリカは悲しそうに首を振った。


「それはリリカが経験不足なだけだ。身体強化魔法や魔力循環に無駄があるのだろうな」

「同じことをチームリーダーのリューネさんにも言われたことがあります。でも、私、どうしたらいいかわからなくて」


 弟子が肩を落としている姿は見過ごせなかった。


「う~ん、ナンバリングシステムを使えば……。いや、あれはまずいか」


 思わず口に出してしまったが、俺は慌てて自分の言葉をひっこめた。

 だが、リリカはビクンと体を震わせて反応してしまう。


「ナンバリングシステムってなんですか!? いま、なにか言いかけましたよね!」

「それは……」

「師匠、私を導いてください。お願いします!」


 いちど口に出してしまえば、それを取り消すことは難しい。

 俺は渋々、ナンバリングシステムについて説明をすることにした。


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