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オズの世界の歩き方  作者: 藍沢
【第二章】 トロルのカカシ
41/42

─20 カカシのトロス

「ボックさん。短い間だったけど、親切にしてくださってありがとうございました」

「いやいや、これくらいの事。もっと居てくれてもいいくらいだよ」

「忘れられない楽しい思い出になったわ。こちらこそ、どうもありがとう」


 いよいよ出発の時となった。

 彼らは俺達の旅の無事を祈って、数え切れない程の食材を用意してくれた。有り難く頂戴することにしよう。


 外へ出ると、オズはもう既に俺の家をしまい込んでいた。畑一つ分遠くの方へ行って、行先を眺めている。

 

 ボック夫婦が名残惜しそうに、カカシ……もとい、トロスの手を取って、見送りの挨拶を重ねていた。


「トロス、元気でな。ここを離れ、多くの経験を積んでくるといい。……今お前さんは長年の時を経て自由になったのだから」

「覚えておいて。ここは貴方にとっての我が家。辛い事があったら、いつでも帰ってきてもいいからね」

「お……おう」


 返答を何としようかと困惑気味ではあるが、ボック達の話はきちんと正面から聞いているようだ。


「じゃ、行くぜ。……ありがとな。また会いにくるぜ」


 トロスからボック夫婦への別れの言葉を後ろで聞いて、振り返り俺もまた手を振った。それを合図にトロスも後に続いて歩み始めた。


 俺達は、先程見た時よりさらに遠くまで行ってしまったオズを追いかけ、昨日脱線した黄色の煉瓦の道で合流する。

「あのなオズ。あんま遠く行くと見失うから、できれば近くに居てくれよ」

「見失うわけないじゃないか、こんな視界良好なところで!」

「一瞬で消える可能性が無きにしも非ずなんだよお前は!」


 勝手気ままなオズの事はともかく、俺達の最初の目的地は南の領地を目指す事だ。

 

 当分はここから見える途方も無い畑の道を歩くことになるだろうが、話せるメンバーが増えたし、食料も足りているし、きっと大丈夫だろう。


 あと今日の夜はオズにやってもらいたい事も──。


「なぁ」


 一番後ろを歩くカカシが尋ねる。振り向くと、両手にはペンとノートがあった。

 ……まさか書きながら歩くつもりかこいつ。どんだけ勉強熱心なんだ。


「と……トロス、その調子じゃ絶対転ぶぞ。せめて休憩の時とか、夜にまとめて書き溜めるとかにしとけよ」

「知りてぇ事が多すぎんだよ。気になることがありゃ都度聞いておかねーと、次の朝方になりゃ全部パァだからな」

 ……難儀だな。


「そんだけ意欲がありゃ、次の日でもその次でも、同じ事を思いつくだろ。そんな先走って不安がること無いと思うけどな」

「……そんなもんかな。じゃあとりあえず、一つだけ聞くが、お前等はこの先向かう所で何するつもりなんだ?」

「何って……。あぁ、詳しく言うと長くなるなぁ。オズ、お前から話す事は?」

「言いたくなーい」


 一応こちらの話し声に耳は傾けているようだ。


「じゃ、俺から説明するよ……。歩きながらになるからまずペンを……」

「あっ」


 ズシャッ! カカシの藁の軽い音が地面に響いた。予想通り、すっ転んだわけだ。


「昼になりゃ書けばいいから!」

「……そうするぜ」

次回更新は 5/24(土)12:00 予定となります。

面白いと感じて頂けましたら、ブックマーク、高評価をよろしくお願い致します。とても励みになります!


***

X(旧Twitter) @ppp_123OZ

日常ツイ・進捗、更新報告等行っております。

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