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オズの世界の歩き方  作者: 藍沢
【第二章】 トロルのカカシ
34/51

─13 相応しき者へ

「オズ様、改めて……。私の先祖から受け継がれし物について、お話しましょう」


 ボックは机の側に置いてあった、魔法の絵の具を持ってきた。

 一同は身を乗り出して、机の真ん中に置かれたそれの蓋が、ゆっくりと開かれるのを見る。


「こんなにまじまじ見たのは久しぶりかもなぁ〜」

 そう言った一番髭の長い息子が、絵の具のチューブを指差して数える。


 俺も目で追っていく、が。先程もふと気づいた事を尋ねた。

「これってさ、明らかに青が無いよな?」


 こういう絵の具のチューブセットは、大抵虹色に揃っているものだ。赤・橙・黄・緑・青・紫で六色。……ん? 虹って七色じゃ無かったっけ。

 何にせよ、並んでいるチューブに一箇所だけ空いた窪みがあるところを見ると、明らかに足りないと思えるのだが。

 ボックはそれを聞いて、くぐもった声をあげた。


「や、やはりそう思うか。……実はわしの子供の頃、初めて中身を見た時から色は五種類でな。そう、どこに行ったのか、見当も付かんという訳だ……いやはや、オズ様。申し訳ありません」


 オズはそれを聞いて、大した事無さそうに微笑んだ。

「こんだけの期間、一本無くしたくらいで気にする事ないさ! むしろ全部無いと思ってたからさぁ〜!」

 そう聞いたボックは、安堵の息をついた。


「……いや良くねえよ」

 後ろでカカシは言った。

 ──この絵の具を使う事に、長年懸念を抱いていたカカシ。しかし激昂していた先程と比べて、声色は落ち着いているものだった。


 俺は言った。

「……カカシ。もし無くした色がどこかで使われて、お前と同じような生き物が生まれてきたとしても、全員が全員、お前と同じく悲惨な境遇に置かれてる訳じゃ無いはずだ」


 きっと。どこかで自由の限りを尽くして生きているのだろうと。……俺がそう思いたいだけかもしれないが。


「……どうだろうな」

 カカシは顎に指を当て、じっくりと絵の具を見つめている。


 すると突然、横で話を聞いていたオズが、身を乗り出してカカシの眼前に顔を近づけた。ギョッと顔をゆがませたカカシは引きつった声を上げるが、当然御構い無しだ。


「ほら! 君の目、青だ!」

「あ?」

 ぱちくりと開け閉めするカカシの目は、オズの言う通り、確かに青色だった。カカシが作られた当時は確かにあったのだという事を、全く色褪せない真っ青な目がそれを物語っている。


 ボックは絵の具箱を手に取って言った。

「昔、親父に尋ねた事もあったが、結局誰も分からずじまいだ。遥か昔にこの欠けた一つは何処かに無くしてしまったか、あるいは持ち去られたのだろうと、そう結論づいて、それっきりだ」

「何が目的なんだろうな……」とカカシ。


 椅子から腰を上げたボックは机をぐるりと回ってカカシの前に立った。


「カカシ君。わしの親父はこうも言っていた。──いつか本当にこの絵の具が必要な者が現れた時、渡していいんじゃないか、と」

 ボックは箱をカカシに差し出した。

「あの欠けた一つも、必要な者に巡り会えたのかもしれない。物はやはり、使われる事が本来の役目だと思う。それがたとえ、オズ様からの授かり物であろうと」


 カカシは戸惑った。それはそうだ。さっきこれを自ら叩き壊した直後に、彼はその張本人に手渡そうとしているからだ。

「……オレがそいつを必要としてるってか? 要らねえよ。さっきオレが何したか見ただろ」

「これから先、これと長く一緒に居られるのはお前さんだけだ。……お前さんなら、今度こそ、わしらよりもずっと大事に使ってくれるはずだと信じている。だから、貰ってくれ」


 まだ戸惑いが隠せないままのカカシ。

 俺は無粋ながら口を挟んだ。

「貰っといていいんじゃないか? 間違った事に使われるのが嫌なら、自分で持っといた方がいいと思うぞ? ま、最初の使用目的が間違っていたかはさておきだが」

「いや間違ってるだろ。だってよ、オレは……これのせいで生まれて……それで……」


 ガタン、と勢いよく立ち上がったオズ。……待て待て、もう揉め事は懲り懲りなんだが。


「それじゃあさ! 使い方を変えればいいんだよ!」


 自信満々に言い切った。

 その場に居た全員は揃って首を傾げた。それに構わず、オズは足早にボックに近付き、ひょいと絵の具箱を取り上げた。


「お、オズ様? 何をなさるのですか?」

「カカシにあげるのは構わないんだけど、宝の持ち腐れなんて僕が嫌だからね! どうせ持ち歩くなら、君に合った物に作り変えてあげるよ!」


 片手で箱をひらひらとやりながら、カカシに向き合ったオズ。何か突然やる気スイッチが押されたらしい、妙なテンションだ。

 俺も大概ついていけないが、カカシは先程よりもっと複雑な表情を浮かべていた。


「オレに合った物っつーのは、オレが決める事、なのか?」

「そうだよ! 例えば、君が今一番困ってる事って何?」

「こ、困ってる…か。そうだな」

  カカシはおなじみの思案顔に戻った。


 オズは何をするつもりなんだろう……。

次回更新は 4/19(土)12:00 予定となります。

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X(旧Twitter) @ppp_123OZ

日常ツイ・進捗、更新報告等行っております。

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