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オズの世界の歩き方  作者: 藍沢
【第二章】 トロルのカカシ
32/51

─11 ここに在る意味

「お、おいオズ?」

 ぐるりと家の中を見渡すと、微かに玄関のドアが開いているのを見た。あいつ、一人で外に……。

 カカシの言葉に堪えたんだろうか。鈍感な自覚のある俺でも分かるくらい、オズってやつは非常に繊細だ。……だったらもっと早くにフォローに入れば良かったな。


 三人を後にして外に出ると、案外オズはすぐ側に居た。家の壁に背を預けて、静かに夜空を眺めていた。


 今さっきまで、気の利いた言葉を考えていたのに、何故か居た堪れない気持ちに圧されてしまう。

 

「……オズ、あのさ」

「何で魔法使いになったんだろうって、よく考えるんだ」

「え?」


 オズは自身の両手を開いては閉じてを繰り返していた。別に手の中にその答えがある訳でもあるまいに、じっと一点見つめながら、また口を開く。


「いつだって、みんながもっと喜んでくれたら、楽しんでくれたら。なんて。そうやって昔の僕は、今日見たやつみたいな物を、魔法で沢山作ってたんだ。……そしたら、ちゃんとした、僕がここに居る意味があるような気がして」

「ここに居る意味……」


 言葉を反復しながら、オズの話に耳を傾ける。


「僕が僕だって気付いた頃には、魔法が使えるのなんて当たり前になってた。それより前は……どうしても思い出せないんだ」


 右手の人差し指をくるりと回す。そこら辺に落ちていた石ころが足元で煌めいて、一瞬でタンポポの綿毛になった。

 やはり慣れない光景に目を見張るも、その綿毛は一瞬にして空に散っていった。


「何だって僕はこんな力を手に入れたんだろうね。……辛そうだった、カカシ。みんな泣いてた。だったら……もう──」


「良くない!」


 俺は両手で、オズの弱々しい手をバチンと挟んだ。

 びくりと肩を振るわせたオズは、何すんだと言いたげな目で俺を睨む。

 ──ああ、良くない!


「考えても分かんねえ事は考えない! ……つーのが俺のモットーだ」

「モットー?」

「そーだ! 大体、その悩みとやらが分かったところでお前が魔法使いなのは変わらねえだろ。それに、作った物も今は戻せないんだろ。 やめちまえ! その無駄に考え込む事!」

「……そんな簡単に言わないでよ。ずっと悩んでるのに」

「じゃあ一生悩まないって魔法を自分にかけりゃいいじゃねーか」

「それは……」


 オズは言い淀んでから、ブスッとして答えた。

「それは、僕じゃなくなるような気がするから嫌だ」

「そうか。じゃあずっと悩んだままだ。そういう奴なんだお前は。ずーっと、このまんま!」

「……!」

 オズはキッと歯を剥いて威嚇し始めた。

「バカにして!」


 わざといけすかない減らず口を装って、目の前のガルガルしているただのガキをいなす。


「あの時あーすれば、こうすれば、悩んで悩んで悩みまくって後悔して! そしたらどうだ? 全っ然解決しねー! でもとりあえず今生きてるから、ひっしでもがくんだよ! 分かるか? 『必死』。『かならず・し』だ。必ず死ぬから今生きてんだ! 人間てのはそういう宿命なんだ!」

「なんかよく喋るね君。黙ったら? そろそろ」

「ああ。疲れたからこの辺にしとく」


 どすん、と地べたに腰を下ろす。

 オズはふんと鼻を鳴らして、少し間を置いて、言った。


「……君が何でここに来たか何となく分かってきた。神様が僕を叱るためによこしたんだ。絶対そうだ」

「俺の世界に神なんざ居ねえからな。代わりに悪魔か死神が口聞いたのかも知れねーぞ。現にお前死んでるし」


 その言葉に、オズはギョッとして、慌てて辺りをきょろきょろと見渡す。

「何だよ? 神いんのその辺に……」

「……あ、あのねぇ。ゲイエレット程信じてる訳じゃ無いけど。神は居るんだよ、この世界にはさ」

「……ぇえ?」


 意味も無く小声で伝えてくるが、何でゲイエレットさんより信仰の薄いお前が一番の魔法使いなんだよ、という疑問により、呆れた溜め息しか出ないのであった。

 世界ってのは本当に、意味不明に溢れている。


 さっきから酒に酔っても無いくせに、らしくもない人生哲学のようなものをひけらかしているような自分に驚きと羞恥心を覚え始める。


 ──のしのしと木の板を踏み締める音が背後からして、玄関に目をやる。同時にドアが勢い良く開いて、危うくぶつかりそうになった。

 中の明かりを背にして、不気味な影を作った巨大な体躯が俺達を見下ろした。


「何やってんだお前ら」

「おー、ただの反省会だ」

「反省会ぃ?」


 じろりとオズを睨むカカシ。オズは気まずそうに、さっと背を向けた。

 カカシは、さっきの勢いは大分収まっていて、憎悪に満ちていた表情は少し和らいでいるように見えた。


「……なんかよ、もうすぐ来るらしいぜ」


 何の脈絡もなく、カカシはそう言った。


「ん? 何がだ?」

「あ〜……! ほら、あれだ。きっとな」


 顎をくいと前にやったカカシ。俺と、聞き耳を立てていたオズはその方向、ザクザクと足音を立てて草花の生えた夜道を歩く集団が、こちらに近づいて来るのを目にした。

次回更新は 4/9(水)12:00 予定となります。

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X(旧Twitter) @ppp_123OZ

日常ツイ・進捗、更新報告等行っております。

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