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オズの世界の歩き方  作者: 藍沢
【第二章】 トロルのカカシ
23/51

─2 身支度②

***


 また、夢。


 ここは俺の勤務先の会議室。いつもの定例会議の場。

 誰かが詰問されている。それも三、四人が寄ってたかって、あまりにも一方的な物言いだ。ひたすらそれ受け続ける彼は、突っ伏したまま項垂れている。

 しかしそれを誰も、言い過ぎだと止めようとする者はいない。

 皆がそれを、自分には関係ないという風に目を逸らす。

 そもそも予定時間になっても会議に参加しない奴もいる。


 ──じゃあ俺は? 

 俺も一緒だ。傍観者多数の中に紛れて、顔を伏せていた。

 

 胸が、騒つく。

 この中で一番腹立たしいのは、俺自身だ。

 

 そもそも、これは実際にあった事なんだっけ? それとも妄想なのか?

 灰色の霧が、俺の見ている視界を塞いでいく。

 全てがもやに包まれていく──。


***

 



 目を覚ました。

 ──何か夢を見ていた気がするが、はっきりと思い出せない。

 枕元に置いてあるポーチから、トトのぬいぐるみが溢れ落ちているのを見つける。軽く撫でてやり、「おはよう」と挨拶をした。

 

 身支度を整え、台所に置いてあった朝食用の果物を手に取る。

 リンゴを一口齧ったところで、オズが部屋から出てきた。……服は着ている。


「おはようオズ。お前もちゃんと眠れたか?」

「ん……おはよう。寝てる寝てるぅ。はぁ、前なら一年中起きてたって平気だったのに。眠くて眠くて仕方が無いよ……」


 ふぁ、と遠慮の無いあくびをして背伸びをしたオズ。……睡眠まで不必要だったとは。元のオズは相当な無敵だな。家で潰れて死んだけど。


「シロー。魔法を使わなきゃなんないカデンって、あとは何がある?」

「あー……。急務なのは、まず部屋の明かりかな? 夜はどうしても部屋での作業がしにくいもんで」

「ふーん。じゃあそこらに中に燭台を取り付ければいいかな」

「ああ、待て待て。蝋燭灯すより、まず試してもらいたい事があるんだが……」

「?」


 俺は玄関に向かった。

「ねー。いきなりどこ行くの」

「まずは外に出てくれ。使・い・方に寄っちゃ危険過ぎるんだ」


 オズは不思議そうな顔をしながらも、言われるがままに俺の後ろを付いて来た。


 家から10メートル程距離を取る。晴れた日の元。原っぱの真ん中。

 俺はオズに向き合って尋ねた。


「オズ。『雷』は操れるか?」

「雷? そりゃあ勿論。その気になれば、天候なんてコロコロ変えられるよ」


 城にいた時の事。オズの感情の起伏が激しくなった瞬間、天気が一変していたのだ。あの異常さは明らかに魔法によるものだと考えていたが、まさに思った通りだ。


「上手くいけば、その雷の力で俺の家電は動く! ……はずなんだ、オズ。いっちょ試しに、いい感じの雷を出してみてくれ」

「ふーんそうなんだ。じゃあやってみよう」

「お〜! ……で、できれば手の平サイズで自由に持ち運びできるような、モバイルバッテリー的なものになればいいから……。いやそれだと分からないか」

「もば……? 手の平サイズ? 何言ってるの? 雷っていうのは……」


 オズは右腕を頭上へ伸ばし、大きく仰いだ。

 すると──みるみるうちに、辺り一体に雲が渦巻くように集まってきた。ビュウ、と風が強く吹き始める。もう既に分厚い層を成している雲から、不気味な轟音が聞こえた。

 

 ──カッ。

 俺の目の前は真っ白になった。

 

 落雷。


 オズの掲げた腕へ、まともに直撃する。


 爆音。

 

 そして、とんでもない衝撃派が俺を襲う。後方へ吹き飛ばされ、呆気なく地面に頭を打った。


「いッッッッ──〜〜⁉︎」

 声にならない痛みに、俺は体を屈めて堪えた。──ゲイエレットさん? 痛みに耐える体になったんじゃなかったっけ? それともある程度は死なないってだけ?


 地面に転がるダンゴムシのようになった俺の元にオズが近付いてきた。そしていつものあっけらかんとした声で言う。


「どう? お望み通り雷落としてみたけど。これでカデン、使えるようになる?」

「……すまん。これじゃ……無理だ」

「え? 何か違った? じゃあもう一回やってみよう!」

「待て待て! これを何度やっても、家電を動かす為の手段が無いんだ!」

「? どういう事?」

「あ〜つまり……」


 俺はまだ痛む頭を押さえながら、ゆっくり立ち上がった。


「……俺が馬鹿だった。例えオズが自由に雷を出せたとしても、電化製品を動かす電力として利用する方法が全く分からない」

「つまり……。僕の魔法は使い物にならないって事?」


 オズは見るからにしょげて俯いた。頭の触覚みたいな髪も垂れている。


「いや! オズは全く悪く無い! 俺が無知過ぎたのが悪い! ……むしろこんな俺に協力してくれるだけで本当に感謝だ。……だからそんな気ぃ落とす事無ぇよ」

「……そう?」


 ゆっくりと顔を上げても、まだ申し訳無さそうにキョドキョドとしている。

 俺はオズの肩を軽く叩いた。

「別にこれで全く生活できねぇって訳でも無いんだ! 何とかなる! とりあえず、そろそろ先を急ごうぜ!」

「う、うん。そうだね!」


 最終的に元気を取り戻したオズ。

 俺は家の中から、トトのポーチと籠を取って来る。


 準備が整ったのを見計らって、オズは家の方へ左手を掲げ、それを綺麗に仕舞った。


 さて、出発だ!

次回更新は 3/5(水)12:00 予定となります。

面白いと感じて頂けましたら、ブックマーク、高評価をよろしくお願い致します。とても励みになります!


***

X(旧Twitter) @ppp_123OZ

日常ツイ・進捗、更新報告等行っております。

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